日経の『私の履歴書』シリーズが気に入り、引き続き読んでいます。今回は女流作家編です。実は、新聞でこの女流作家編の紹介記事を見て読みたくなり、本屋さんに行ったら、この隣に桂米朝さんの「私の履歴書」が積んであって、そっちもついでに買ってしまい、そっちを先に読んで先にブログにUPしました。
登場する女流作家は円地文子さん、瀬戸内寂聴さん、佐藤愛子さん、田辺聖子さんと、錚々たる方たちです。作家さんなので、もちろんご自分ですべてお書きになっています。こうやって、四人並ぶと、文章もそれぞれの方たちの特徴(性格)が出て、興味深いものです。この並び方は年齢順になっています。円地さんが明治、瀬戸内さん、佐藤さんが大正、田辺さんが昭和生まれで、円地さんは既に亡くなられています。
田辺さんは、ついこの前までNHKで「芋たこなんきん」をやっていたので、ある程度どのようにしてこられたのかは知っていましたが、他のお三方は全く存じ上げませんでした。明治・大正生まれと昭和生まれで少し違うんですが、いずれにしても波乱万丈の人生です。皆さん、女学校ぐらいまでは何不自由のないお嬢様で、多くの本がある環境の中で育ち、好きな本ばかり読んでいたような生活です。円地さん、瀬戸内さん、佐藤さんは結婚で大きく人生が変わります。親の決めた相手と言われたとおり結婚されますが、それは家を出る手段のような意味合いがあります。円地さんは、「馬が合わない」と自分でもお書きになりながら、離婚のことは出てこなかったので、一応婚姻関係は継続されたんでしょうが、瀬戸内さんと佐藤さんは離婚→再婚→離婚で私生活はかなりすったもんだし、田辺さんは、終戦で結婚相手になる年頃の男性がみんな戦死してしまって、結婚したくても出来ない状況でした。
と、私生活はそれぞれありますが、四人の方に共通するのは、本が売れるまではどんな苦労も厭わなかった点です。皆さん、売れ始めたのは結構中年になってからです。それまでは、同人誌に書いても、こてんぱんに批評されたり、直接出版社に原稿を持ち込んでも突き返されたりと、今の売れ方からすると、想像できない様な仕打ちを受けられています。しかも、それに自分の生活も支えていかないといけない状況です。男性作家の方で「生活のことは奥さんに面倒見てもらい、自分は小説だけ書いていた」と言うお話はよく聞きますが、この方たちは自活しながら、小説も書いていらっしゃいます。「根性」あります。今や、月刊誌・週刊誌の連載があって、単行本の出版、小説のテレビ化・映画化、とすごい活躍ですものね。
円地さんは最後に「作家の履歴書は、作品を読む方が本当のことを語っていると思う」と結ばれていますが、作家自身の手による履歴書はやっぱりおもしろいです。