16日に開催された「晴の会」の番外公演です。「晴の会」のメンバー、松十郎さん、千壽さん、千次郎さん、りき彌さんの4人が揃って9月がお休み月になったので、「せっかくだから」と急遽決まった公演です。3週間前に正式発表、2週間前からチケット発売という急ごしらえの公演で、さすがに客席が満席というわけにはいきませんでしたが、それでも2回とも8割ぐらいの入りで「良かったね」となぜか私までホッとしておりました。これもやっぱりSNSのおかげなんでしょうね。
演目と出演者です。
一、素踊り
地唄 万歳獅子 片岡りき彌
常磐津 助六 片岡松十郎
上方唄 黒髪 片岡千壽
地唄 ねずみの仇討 片岡千次郎
一、座談会
「晴の会」を振り返って
松十郎、千壽、千次郎、りき彌
(聞き手 坂東亜矢子)
一、素踊り
長唄 雨の五郎 片岡千太郎
一、狂言舞踊
常磐津 釣女
太郎冠者 片岡千次郎
大名 片岡千壽
上﨟 片岡りき彌
醜女 片岡松十郎
最初の「素踊り」、当日も書きましたが難しいものなんですね。“一人”で踊るってことに慣れていらっしゃらないせいもあると思います(そのことは座談会でもおっしゃっていました)。りき彌さんがトップバッターでしたが、昼の部の時は本当に倒れるのではないかと思うほど緊張していらっしゃいました。踊りも、もともとかっちりとした踊りだそうですが、固かったように思います。松十郎さんの「助六」は十二代目仁左衛門丈が「助六」の花道の出端を常磐津節で作られ、それが山村友五郎さんのお祖母様に伝わり、山村流でずっとお持ちで、「松嶋屋の誰かに踊ってほしい」と思われていたそうで、今回松十郎さんにとお鉢が回ってきたそうです。松十郎さんならば上背もあるし、さぞかし格好いい助六になるのではと期待していましたが、正直それほどでもなく、ご本人も「すみません」って座談会で謝っていらっしゃいました。千太郎ちゃんの「雨の五郎」がとても良かったので(同じ曽我五郎ですよね)、千太郎ちゃんにぜひ踊っていただきたいと思いました。
千壽さんの「黒髪」、しっとりと良かったのですが、音楽がテープなので…。上方式の「四谷怪談」ではお岩様の髪梳きの場でこの「黒髪」がかかります。「晴の会」の時は、勝之弥さんがとても艶やかなお声を聞かせてくださって、そのお声の記憶がまだあるので、気分がもひとつになります。いっそ、「晴の会」の時の髪梳きの場で、千壽さんが髪梳きを中断して一指し舞ってくださったらよかったのに、とまたまたしょーもない想像をしてしまいました。
千次郎さんの「ねずみの仇討ち」は唄も踊りもとてもわかりやすく楽しい演目でした。動きはかなりハードで、身体能力を要求されるようです。千次郎さんの出番が終わってすぐに「座談会」に入りましたが、まだ息が上がっていたし、滝のような汗でお召し物も色が変わってきて大変そうでした。
お楽しみの「座談会」、聞き手の坂東亜矢子さんは関西を中心に活躍されている歌舞伎専門(だと思う)のフリーライターさんで出演者の皆さんと普段から行き来があるので、いろいろなお話を上手に聞きだして進行されていました。お客さんのほうも常日頃から出演者には関心を持っている人が多く、“見守ってる感”があって、会場全体がとても温かい雰囲気でした。個人的にいちばん受けたのは、りき彌さんに「今日はがんばろう」って声をかけられてところです。りき彌さんってあまりインタビューとかアドリブを要求される場に慣れてなくて、どうしても後ろへ引っ込みそうになるのを表へ引き戻したはりました。それ以降は、りき彌さんもがんばって答えたはったように思います。
今年の「晴の会」の「四谷怪談」、立役は孝夫さん
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がつきっきりでご指導なさったそうです。松竹座の七月公演の後半は空き時間はずっと孝夫さん
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の楽屋で松十郎さんと千次郎さんに、台詞の一言一言を全部口移しでお稽古をつけられたそうです。松十郎さん、何がプレッシャーって、この「当代仁左衛門の当たり役の伊右衛門を当代から直々に習った」と言われることだったそうです。孝夫さん
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ファンは大勢いらっしゃいますからね。
あと、全員の弱点?として、皆さん上方の方なので、江戸弁が全くダメでご苦労されたようです。イントネーションに気を取られると芝居のほうがお留守になってしまうので、両方を一度にって大変なんでしょうね。
後半の狂言舞踊「釣女」は皆さんお化粧・お衣装をつけて、常磐津も生演奏でした。秀太郎さんのおかげなんでしょうか。そうそう「座談会」のほうで、昼の部では皆さん「秀太郎旦那」とか「仁左衛門旦那様」とか敬称をつけて敬語でお話でしたが、夜の部では「秀太郎」「仁左衛門」となってました。秀太郎さんがご注意なさったのかしらと思いました。
話がそれました。狂言舞踊ですので、もともとが明るい笑い飛ばすお話なので、楽しく面白く拝見しました。松十郎さんの醜女、他の方だと「福笑い」で失敗したお多福のような顔ですが、そこまで崩れてなくて、「おへちゃ」って感じでした。
りき彌さんのブログに
記念写真が載っていました。
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舞台です。目付柱とワキ柱は外してありました。昼の部は脇正面、夜の部は正面からでした。
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ロビーの展示です。能楽会館らしい、って当たり前ですが。こちらの会館、老朽化で今年末で閉館することが決まっています。実は、こちらは初めてではなく、三十数年前に一度だけ来ました。大学の卒論で狂言の日本語を取り上げたので、一回ぐらい実物を見ておかないといけないかしらと見に来ました。何を見たのかは全く覚えていませんが。最後にもう一度来れてよかったです。