大型で強い台風19号が日本列島を縦断中です。大阪の岸和田に再上陸したそうで、雨風が強くなってきました。皆様お住まいの地域はいかがでしょうか。どうぞくれぐれもお気をつけてお過ごしくださいませ。
さて、その台風とぶつかるのか?とおそるおそる上京しましたが、台風の速度が自転車並みとかで、帰阪するまでは特に影響もなく無事所期の目的を達成いたしました。
今月の歌舞伎座は本当に充実しています。「十七世中村勘三郎二十七回忌・十八世中村勘三郎三回忌追善」ということで、勘九郎・七之助兄弟を孝夫さん
、玉ちゃん
が全面的にバックアップ、贅沢で華やかな追善興行でございました。久しぶりの孝玉コンビ
ということで、一等席を奮発、夜の部は2列7番、昼の部は3列7番、花道下のお席でした。本当は14番とか15番とかあたりを取りたいのですが、そのあたりは役者さんの後援会が押さえているらしく、ゴールド会員の予約日の10時に入っても、ありません。花道横の席で大体空いているのが7番で、昔と違って、お席と花道の間が通路があるので何とか許容範囲かと…。ちょうど真横が花道の七三にあたり、役者さんが立ち止まって何かなさる場所です。昼の部の「伊勢音頭」で孝夫さん
扮する喜助が貢を追いかけていく時に、ちょうど私の真横で、着物の裾を捲り上げ太もも露わなお姿で台詞を一言二言、もうー、ワタクシ、ドキドキしてしまって、「あー、これだけでここに座った甲斐があったものよ」と思ってしまいました。
夜の部→昼の部の順で見たので、まず夜の部の演目と配役からです。
一、菅原伝授手習鑑(すがわらでんじゅてならいかがみ)
寺子屋
松王丸 仁左衛門
武部源蔵 勘九郎
戸浪 七之助
涎くり与太郎 国 生
百姓吾作 松之助
春藤玄蕃 亀 蔵
園生の前 扇 雀
千代 玉三郎
二、道行初音旅(みちゆきはつねのたび)
吉野山
佐藤忠信実は源九郎狐 梅 玉
早見藤太 橋之助
静御前 藤十郎
三、鰯賣戀曳網(いわしうりこいのひきあみ)
鰯賣猿源氏 勘九郎
傾城蛍火実は丹鶴城の姫 七之助
博労六郎左衛門 獅 童
傾城薄雲 巳之助
同 春雨 新 悟
同 錦木 児太郎
同滝の井 虎之介
同 乱菊 鶴 松
庭男実は薮熊次郎太 市 蔵
亭主 家 橘
海老名なあみだぶつ 彌十郎
「寺子屋」は7月の松竹座でかかったばかり、3回見に行ったので、孝夫さん
の松王丸の記憶はまだ鮮明で、駕籠から降りて登場されただけで、結末まで思いを馳せてしまい、その時点でもうウルウルしてしまいました。お衣装が松竹座のときは黒地でしたが、今月は鼠色でした。これって、やっぱり上方とお江戸の違いなんでしょうか。個人的には黒のほうがきりっとして好みです。(私の好みはどうでもいいけど)
千代登場は花道からだったので、玉ちゃん
、私の真横をお通りです。やはりここでもいろいろ思い出してしまい、こみ上げるものがあります。そして、孝夫さん
が再び登場されて、玉ちゃん
が孝夫さん
にぴったりと寄り添います。久しぶりに同じフレームの中に孝玉コンビ
が納まったって感じです。巷ではそれぞれの芸質が変わった云々かんぬんと言われていますが、やっぱりこのお二人、よくお似合いです。「夫婦役者」と言われるだけはあります。なんとも言えない“夫婦の情”が醸し出され、「寺子屋」がより立体的になり、松王丸の自分だけは時平の家来、桜丸の切腹…etc.という台詞、千代の寺子屋に小太郎を置いていく時の様子の台詞、小太郎の最期の様子を聞いた後の松王丸の台詞…がいちいちこちらにダイレクトに響きます。涙無しでは見ていられません。千代に対して「あれだけほえたではないか」と言うあたりでは、なぜか私の頭の中に、松王丸・千代夫婦の来し方が走馬灯のように思い浮かびます。最後、白い喪服になる場面では、孝夫さん
が羽織を脱ぐ際に玉ちゃん
がそっと手を添えられ、いつもそうしたはるんやろうなぁと思えるくらいそれがとてもナチュラルで、その場面、“萌え”ました。(他の役者さんでもそうなさっているのかもしれませんが) 白い喪服のペアルック?、本当によくお似合いで、こちらも“萌え”です。やっぱり、孝夫さん
の松王丸はよろしゅうございます。そして、久しぶりに孝玉コンビ
を堪能でき、素晴らしい「寺子屋」でした。
続いての舞踊は「吉野山」、静御前と忠信が登場します。最近、狐忠信といえば亀ちゃんのイメージがあって、キレキレのパツパツの忠信を想像してしまうので、申し訳ないけれど、梅玉さんではちと厳しかったです。そして、早見藤太といえば、何年か前の又五郎さんの襲名披露公演で“天下の二枚目”の孝夫さん
が三枚目の早見藤太を演じていらっしゃいますので、こちらもどうしても孝夫さん
につい「脳内変換」してしまいます。スミマセンって感じです。
最後は「鰯賣戀曳網」です。三島由紀夫が書いた歌舞伎の戯曲です。最高傑作の呼び声高く(三島は戯曲が一番上手くて、評論、小説の順と言われております)、三島ファンとしてはぜひ一度と思いながら、なかなかチャンスがありませんでした。歌舞伎座さよなら公演でかかり、テレビで放映があったので、それはチラッと見ました。勘三郎さんの猿源氏に玉ちゃん
の蛍火でした。今回は勘九郎さんと七之助さんで、勘三郎さん・玉ちゃん
コンビをよく写していらっしゃいました。私の後ろのお席の方が勘三郎さんのファンの方らしく、揚幕の中から勘九郎さんの声が聞こえただけで、「あぁ~、そっくり」とため息をついていらっしゃいました。お話は御伽草子から取った文字通りおとぎ話で、ほんわかふんわりする楽しいお芝居です。勘九郎さん、七之助さんが本当にご立派にお勤めになられ、Happyendなのに、なんだか泣きそうになりました。今「ほうおう」のインタビュー記事を読んだら、「兄弟で幕外に引っ込みます。天上の二人にメッセージを届けられたらいいですね」とおっしゃっていました。メッセージは伝わり、十七世勘三郎さんも十八世勘三郎さんもきっと頼もしく思っていらっしゃると思います。
新宿伊勢丹にある「
イッツサンドイッチマジック」のたまご卵タマゴサンドです。
この日は桔梗さんとごいっしょになったので、歌舞伎座の裏手にある「
カンティーナ・シチリアーナ」で祝杯?をあげました。歌舞伎座で「鰯賣戀曳網」がかかっているからではないと思いますが、沼津産のイワシが本日のオススメになっていました。ワインもいろいろあって、1階はバールのようで、おひとりさまでも入りやすそうでした。また行ってみたいです。