2016年5月 京都を歩く ⑧奥の院へ 息つぎの水 背比べ石 木の根道 大杉権現社 義経堂 僧正ガ谷不動堂 奥の院魔王殿 磐座
冬柏亭の先に石段があり、手前に奥の院への標示があった。
階段を上り、門をくぐると、一気に山奥の雰囲気になった。森が深くなり、道も険しさを増してきた。それでも手入れがされている。
少し登ると息つぎの水と書かれた小さな湧き水がある。伝承では、牛若丸は鞍馬寺で昼は仏道を学び、夜になると奥の院で天狗から兵法の学ぶためにこの山道を駆け上っていった。
その途中、この湧き水で喉を潤していたことから、息つぎの水と呼ばれるようになったそうだ。ひしゃくも置いてあったが、水を持参しているので通り過ぎる。
崖っぷちに建っている地蔵堂を右に眺め、左カーブを登ると、崖側に背比べ石と書かれた石が置かれている。
牛若丸が奥州平泉の藤原秀衡を頼って鞍馬寺を去るとき、この石と背比べをして名残を惜しんだという伝承があるそうだ。
事実なら、牛若丸はかなり小さい。それとも岩が風化して小さくなったのか、参拝者が縁起を担いで削り取ったため小さくなったのか。伝承は、あまり詮索しない方がロマンになるようだ。
左手が小高くなっていて、登ると根っこが地表面に露出した「木の根道」という珍しい光景が現れる(写真)。まるでハリー・ポッターの映画のように、いまにも根っこが襲いかかってきそうに見える。
山道を歩いていると、ときどき木の根っこが地表に飛び出していることがあるが、それはたまたまであって、ここは、ここに根付いているすべての木の根っこが露出しているのである。
説明によると、このあたりの地盤である砂岩がマグマによって硬化したため地中に根を伸ばすことができず、地表に根を伸ばしたためだそうだ。
ほとんどが杉で、根っこが地表に伸びていても立派に成長している。自然の生命力の旺盛さに感服する。木の根っこを踏まないように一回りして、山道に戻る。
このあたりから山道は下りになる。木の根道の杉もみごとに育っていたが、山道の杉も大きく育っている。樹齢が1000年に及ぶ杉もあるそうで、とりわけ護法魔王尊影向の杉と名づけられた大木は参拝者の崇敬を集め、大杉権現社が建てられた。
残念ながらその大木は台風が通過したとき倒れてしまったそうだが、霊力のみなぎった大杉がたくさん息づいていて、このあたりで瞑想にふける人が多いそうだ。
山道の大杉は延々と続く。杉の霊力に後押しされながら、下りのせいか?、歩きが楽なった。
右手の石段の上に義経堂が建つ。義経の御霊が鞍馬に帰ってきたと信じられ、この堂が建立されたそうだ。
左手には白木の僧正ガ谷不動堂が建っている。最澄が天台宗立教の悲願を込めて彫った不動明王が祀られているそうだ。
緩い下りで歩きが楽になったとはいえ、山道であるから杉の根っこが露出したところもあれば、ぐらついた石もあり、湿って滑りやすい凹凸もある。足もとに気を取られながら下っていったら、杉の大木に囲まれた社が見えた。
奥の院魔王殿である。二組のカップルが写真を撮りあっていた。
切妻の社には白地の幕が掛けられ、中に入ると磐座いわくらと呼ばれる岩が安置されていた。
650万年前?、この岩に護法魔王が降臨されたことから宇宙の力がこの岩からあふれ出し、鑑禎を始めとする修行者を鞍馬に導いて、宇宙の真理に目覚めさせたとされる。
今風にいえば、パワースポットの原点になろう。合掌しただけでは宇宙の真理に目覚めないだろうが、手をあわせパワーを分けてもらう。