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1990通世代同居の住み方調査=「楽しい・安心できる・助け合える」などのメリットあり

2016年09月13日 | studywork

1990 「通世代同居家族の住み方にみる家共同体」 日本建築学会中国大会

 総務省の統計によれば、依然、核家族化は進行していて、全世帯の56%に上り、微増している。対して同居家族は微減していて10%ほど、一方単独世帯が増え続け、いまや32%に上る。
 私自身も結婚と同時に世帯を独立させた。理由は、家が狭いことと、通勤が遠すぎたことである。そのころ、農村の住み方を調べていて、同居家族の利点を強く感じた。とりわけ、三重県阿児町での隠居慣行は目から鱗が落ちるほど、優れた住み方に見えた。もちろん、慣行を成立させる条件は厳しいし、社会情勢に見あった慣行の修正も必要だが。

 そのころに同居家族の住み方の特徴を調べた結果が「通世代同居家族の住み方にみる家共同体である」。一つの母屋のなかに住みあう事例と、同じ屋敷のなかに別棟を建てて住みあう事例に分けて整理した。
 聞き取りでは、嫁と姑が気兼ねなく本音を話せるように、一人ずつに話を聞くようにした。
 その結果だけ列挙する。各事例のまとめはホームページを参照されたい。

同棟に同居している事例のまとめ
1)家族構成:老夫婦・中夫婦とその子どもの三世代、5~6人家族が多い
2)主な働き手:世帯主は主に中夫であるが、老夫・中夫、さらに老婦・中婦ともに働く傾向が高い。
3)世代交替:特に決まってはいないが、老夫が60才になった時、または老夫が働けなくなった時点が多い。
4)住み方:就寝は世帯主夫婦は世帯主専用の部屋、非世帯主は2階や土間空間を改築した部屋、食事・炊事、団らん・接客は共用の部屋を用いている。
5)家族の助け合い:①炊事は老婦中心・中婦手伝いから、中婦中心・老婦手伝いに移行する、②育児は親である中夫婦を基本とし、老夫婦が補佐する、③農業や行事では、老夫婦を中心とし中夫婦が手伝う、④病気の時は状況に応じて介護、仕事分担が行なわれる。
6)評価:通世代家族の同居に対し、家族が大勢で楽しい・病気の時でも安心できる・子供の世話を見てもらえるなど通世代家族の同居を高く評価している、また、老世代はなるべく若い者の意見に従う・中世代は困ったとき老世代に相談するとしており世代間の協調が見られる。
3 まとめ  
 各世代はそれぞれの専用就寝室をもちプライバシーを確保する一方で、食事・炊事室、団らん・接客室の共用により家族のまとまりが形作られ、また、それぞれの世代・属性に応じて仕事を分担する一方、相互扶助を通じて仕事の手順や作法・慣習の伝承がなされている、つまり通世代家族の同居により安定した生活共同体が形成されている。

別棟を建てて同居している事例のまとめ
1)家族構成:隠居夫婦・老夫婦、中夫婦とその兄弟および子どもの四世代8~9人家族が多い。
2)主な働き手:世帯主は二番目の世代にあたる老夫が多く、働き手は二番目と三番目の老世代と中世代が中心である。
3)世代交替:老夫が60才になった時点か、または老夫が働けなくなった時点が多い。
4)住み方:世帯主夫婦の就寝は伝統的な慣習によった主屋の専用の部屋を、非世帯主家族は納屋などを改築した別棟を用いるが、食事・炊事、団らん・接客は通世代家族が主屋の部屋を共用する。ただし、隠居夫婦など 病弱の場合は特定の部屋が隠居世代の生活専用の場となる。
5)家族の助け合い:①炊事は老世代が比較的元気なうちは中心となり、中世代が手伝い、徐々に中世代が中心、老世代が手伝いに移行する、こうした役割の交替の中で老世代から中世代へと家庭の味やしきたりなどが継承されていく、②育児は親である中世代婦が中心となるが、中婦が外で働いている場合は隠居夫婦や老夫婦が育児を補佐する、つまり中夫婦は安心して外で仕事ができ、また若世代は隠居夫婦や老夫婦から遊び、家のしきたりや礼儀作法を学ぶ、③農作業や行事の中心は世帯主夫婦の場合が多いが、老世代が元気なうちは老世代中心・他の世代が手伝いとなり、徐々に世帯主夫婦中心・若世代手伝いに移行する、この過程で家や村のしきたり、慣習の学習・継承がなされる、④病気の時は、状況に応じて介護、仕事の分担がなされる。
6)評価:家族が大勢で楽しい・病気の時でも安心できる・子どもの世話を見てもらえる、村のしきたりなど困ったときに相談できるなど通世代家族の同居を高く評価している、また、年長世代はなるべく若い者の意見に従う・年少世代は何でも年長世代に相談するとしており家族構成員の協調が見られる。

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