2006年 第6回・埼玉卒業設計コンクール/埼玉建築設計監理協会主催
埼玉建築設計監理協会主催の卒業設計コンクールは、「・・新しい世紀の第1線で活躍が期待される建築系学生の能力向上、育成を図る目的で、次代を先取りした意欲ある作品を募集し、若い学生達の考えた想像価値と熱意を奨励・・」を目的に、2001年から毎年開催されている。
第6回目には埼玉、東京の大学から26点の応募があり、プレゼンを含む審査の結果、最優秀賞1点、優勝賞2点、埼玉賞1点を選んだ。
最優秀賞「新世紀農業集落の風景」は、新潟県上越市での農業、農村再生をテーマにしている。家業が兼業農家だそうで、農業、農村の衰退を日々感じていたのが動機のようだ。
場所は上越であっても日本の農業、農村問題、ひいては国土形成計画への一石となるテーマであり、まずテーマ性を高く評価したい。
さらに従来型の農業生産、農村社会の限界を感じ、現代的な多様な農業展開、多様なライフスタイルの魅力を取り入れ、10のライフスタイルを想定した農業、農村再生計画のアイデアもいい。
真摯なプレゼンテーションも好感が持て、最優秀賞に選ばれた。
しかし、農業、農村の風景はその土地の地域特性を読み切り、構築されてきた文化としての表現のはずだが、提案されたデザインは上越の風景への理解が乏しく感じられた。
大いに農村を歩き、風景として表現された文化を考えて欲しい。
優秀賞「systema city」は最優秀賞に準じた得票を得た作品である。
大型ロケット発射場として知られる種子島宇宙センターは発射時期には職員が3000人となる。しかし、発射がないときは70人ほどに激減する。
そこで、3000人のための空間を日常的にも活用できないか→種子島の歴史、宇宙ロケット、美しい海を題材にしたミュージアムはどうか→ミュージアム⇔集合住宅へと可変できるシステムをどう組み立てるか、と構想が発展し、優れた作品となった。
調査報告書も展示されていて、その努力も高い評価になった。が、システムの提案に重点がおかれすぎたため、種子島という場所性が薄れ、あるいはこのテーマを通した社会への切り込みが弱まってしまったように思う。
優秀賞「連なる境界線」は多様な活動で社会を支えているNPO、ボランティア団体が活動拠点に不足し、また横の連携が弱いことに着目し、お台場に共同オフィスを構想した作品である。
活動が波のうねりのように連続し、発展することをイメージした形はユニークで、模型は注目を浴びた。が、形の処理にとらわれすぎたためかテーマの掘り下げが弱い。
例えば、災害などに特化し、防災減災、災害支援、復旧復興支援活動の意義を掘り下げた方がよかった、と思う。
埼玉賞「MACHI+REKISHI=MUSEUM」は川越を取り上げ、町並みを構成する環境要素すべてを展示媒体とするエリアミュージアムを提案した作品である。
伝統を保存しつつ活性化を図るエリアミュージアムの発想が高く評価されて、埼玉賞となった。
川越は再三取り上げられているし、研究蓄積も多い。単に環境要素をエリアミュージアムとして再構成するのではなく、エコミュージアムのように、環境要素の社会的意義を掘り起こした活用やこれからのまちのあり方を見越した再構成の提案が望まれる。