yoosanよしなしごとを綴る

つれづれなるままにパソコンに向かいて旅日記・斜読・よしなしごとを綴る

韓国の伝統住居は冬の寒さをしのぐオンドルと夏向きのデッチョンで構成される

2017年04月01日 | 旅行

1995 韓国のオンドル /1995.1
                             
 韓国にはオンドルと呼ばれる床暖房方式が一般に使われている。
オンドルとは、温突の字をあてる、一種の床暖房である。近代化された住まいでは温水などに切り替えられているが、原型は床下に煙道を設け、薪を燃やした煙を流して室内の床面全体を暖める。
 中国にもカンと呼ばれる床面を暖める暖房方式があるが、これは部屋全体の床を暖めるのではなく寝台だけを暖める方式であり、発想は似ているが、煙を通すか火種をおくか、床全体を防火構造にするか寝台だけを防火構造にするか、裸足で坐式か土足で椅子座なのかなど、構造や起居様式が異なっている。
 さらには、寝台だけを暖めるのであれば寝台の1がカンに拘束されるだけで部屋の配列はあるていど自由になるが、部屋全体の床を暖める場合には炊き口と煙道に部屋の配列が拘束されてくる。つまり韓国の伝統住居は平面がオンドルに規定されることになる。

 このようにオンドルは、立ち居振る舞いや住居平面と深くかかわって成立してきた。そのため、オンドルを日本の畳と同じように韓国の住様式を特徴づけるキーワードであるとの指摘もある(韓国現代住居学)。
 実際、日本では続き間座敷に代わって洋室が住まいの中核に位置づくのと軌を一つにして自由な平面プランと高層アパートが普及したが、韓国でもオンドルに温水が用いられ始めてから自由な平面プランと高層アパートが一般的になってきた。(写真:新築住居も温水によるオンドル=床暖房が普通)

 さて、ソウルの緯度は38°ちかく、日本では新潟、福島ぐらいに相当する。緯度だけを考えると、日本人の感覚として部屋の床全体を暖めるオンドルの発想にはとどかない。しかし、韓国は朝鮮半島を本拠としていて、その北辺はそのまま中国・シベリア大陸につながり、冬季には乾燥した大寒気団が吹き荒れる。
 オンドル発生の最大の理由はこの厳しい寒さにある、と思う。中国のカンもこの寒気団に由来している。

 ところで、朝鮮半島に位置することは一方で海洋の影響も受ける。ソウル以南の半島突端部は暖流に直面し、緯度も広島や北九州ぐらいに近く、夏はけっこう蒸し暑くなる。住まいは寒さを防ぐ備えとともに蒸し暑さをしのぐ仕掛けも必要であった。さいわい、オンドルのある部屋、オンドルバンの室内の床、壁は土を塗りあげ、油をひいた韓紙を何枚も貼って仕上げにしてある。
 このため日本の土蔵のように土が呼吸し、蒸し暑いときは湿気を吸収してくれ、夏でもしのぎやすい感じになる。自然の素材はいろいろな性質を兼ね備えており、先人はそれを巧みに活かす技に優れていて、伝統住居からはいつも学ばされることが多い。

 そのうえ、韓国の住まいはオンドルバンとは別に庭に開放されている板の間が必ず設けられている。この板の間はデチョン、あるいはマルと呼ばれ、空間的には日本の縁側にやや似ているが、使い方は、蒸し暑い夏のあいだの接客やくつろぎ、団らんが行われる(写真:伝統住居のデチョン)。
 オンドルのある部屋が冬の部屋とすると、デチョンは夏の部屋ともいえる。2種類の部屋を設けて寒さと暑さに対処しようとする発想は、日本では想像できない独自性をもつ。

 伝統的なオンドルには薪を燃やす炊き口が必要になる。通常はプオクと呼ばれる土間の台所でかまどを兼ねて薪が燃やされる。結果としてプオクとオンドルバンは隣接することになるが、不思議なことはプオクとオンドルバンとを土壁で遮断し、空間的にも機能的にも分離している。かつては使用人が食事を運んでいたたため支障がなかったとのことだが、炊事の土間と食事の部屋を遮断することは日本では考えにくい。
 韓国と中国、日本は同じ文化圏にみなされることが多いが、それぞれ独自な文化を保持していることがオンドルによっても解読することができよう。

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