【ドイツ】内田篤人を直撃!「じゃあ、シーズンの振り返りでもしますか?」
了戒美子●文 text by Ryokai Yoshiko
木場健蔵●写真 photo by Koba Kenzo
試合後、チームメイトと優勝を喜び合う内田
長かった内田篤人の1シーズンが終わった。
最終戦となったのは、ドイツカップ決勝デュイスブルグ戦。だがそのスターティングメンバーに彼の名はなかった。後半36分に交代で出場。今季初タイトルのピッチに一応は立ち、歓喜の瞬間をメンバーと共に味わった。
「有終の美とか、終わりよければすべてよしとか、そういう言葉がオレはキライ。そこまでの過程が悪かったことへの言い訳をしているみたいに聞こえるでしょ。オレは全部勝ちたいし、全部優勝したい」
試合後にそう話す内田は、シーズンを終えたことへの安堵感を交えた穏やかな表情を見せてはいるが、悔しさをすべては隠しきれない、そんな風に見えた。
スタメン落ちは、週の早い段階で予想できたことのようだった。
「練習のときに監督に呼ばれて、『俺が就任した当初のインパクトあるプレイはどうした?疲れてるのか? 練習を見てからメンバーを考えさせてくれ』って言われた。その日の練習がダメだった」
“がっくし”と言わんばかりに少し大げさに肩を落として、報道陣から笑いを取って見せる。
「『お前はワールドカップから休みなく試合をやりすぎているから』って心配までしてくれたし、今日のことは納得しているから、シーズン開始当初に試合に出られなかったのとは違うと思っている。でも、たくさん試合をするには、力の抜き方、さぼり方を覚えなきゃいけないのかもしれないとも思った。全部一生懸命やったら、最後の1試合分の力が出なかった感じ。自分でも疲れているなっていう感覚もあったし」
もちろん監督の言葉を受け入れてはいるし、それなりに状況を理解もしている。だが、言葉のはしばしにはちょっとしたエクスキューズめいたものが浮かんでしまう。
そもそも、およそ2週間前にチャンピオンズリーグで敗退した頃は、残すリーグ戦を飛び越して、この決勝への強い意気込みを語っていた。「決勝は何かできそうな気がする。大舞台はなんだか力を出せそうな気がする」と、期待に満ちているようでもあった。だからこそ、見た目以上に落胆していることは想像がつかないでもなかった。
話が進むと「じゃあ、シーズンの振り返りでもしますか?」とおどけながら、自ら切り出した。その割には「いろいろあった一年だったなあ」と話す程度にとどまったが。
内田にとっての収穫はチームに馴染みきったところだろう。ドイツ語が話せるようになったわけでもないし、英語も「聞いて分かるけど、思っていることを100パーセントは伝えられない」というレベル。それでも、チームメイトから愛されていることはミックスゾーンでの様子から伝わってくる。
内田の横を通るほぼすべての選手が何かしら片言の日本語で声をかけていく。「最近チームメイトには、リスペクトしているものには『さん』をつけろ、と教えているんだよね」と言う。あのラウルが「ウッシーさん、ウッシーさん」と声をかけてくる。
優勝セレモニー後には、最も気にかけてくれたノイヤーとメッツェルダーに肩車をされながら優勝カップを掲げた。だが、そのノイヤーも来季はバイエルン・ミュンヘンへの移籍が濃厚と言われている。ミックスゾーンで横に立つノイヤーに、冗談めかしながら「さみしいなー、さみしいなー」と繰り返しささやいていた。本人の性格もあるが、良きチームメイトとスタッフにめぐまれたからこそ、萎縮することなくリラックスした中で力を発揮できたのだなと、あらためて思う。
このドイツカップ優勝で、シャルケはヨーロッパリーグ出場権を手にした。試合数も増え今季以上のハードスケジュールとなるだろう。さらに日本代表としてはワールドカップ予選も始まる。多忙を極めるであろう来季に向け内田は「監督から、『人より長く夏休みをやる』と言われた」そうだ。
「最初はドクターから提案されて、それではサボるみたいだからといったんは断ったんだけど、結局、監督がそう言ってくれたから、しっかり休もうと思う」
猛スピードで駆け抜けた1シーズンだった。
独チャレンジ一年間を終えたシャルケの篤人である。
手応え有り、挫折有りの様子である。
ラウルに「ウッシーさん」と呼ばせるあたり、馴れを感じる。
確実に成長した右の翼は、来季はユーロ・リーグにチャレンジすることとなる。
それまでは、つかの間の休息を取って欲しい。
来季も楽しみにしたい。
了戒美子●文 text by Ryokai Yoshiko
木場健蔵●写真 photo by Koba Kenzo
試合後、チームメイトと優勝を喜び合う内田
長かった内田篤人の1シーズンが終わった。
最終戦となったのは、ドイツカップ決勝デュイスブルグ戦。だがそのスターティングメンバーに彼の名はなかった。後半36分に交代で出場。今季初タイトルのピッチに一応は立ち、歓喜の瞬間をメンバーと共に味わった。
「有終の美とか、終わりよければすべてよしとか、そういう言葉がオレはキライ。そこまでの過程が悪かったことへの言い訳をしているみたいに聞こえるでしょ。オレは全部勝ちたいし、全部優勝したい」
試合後にそう話す内田は、シーズンを終えたことへの安堵感を交えた穏やかな表情を見せてはいるが、悔しさをすべては隠しきれない、そんな風に見えた。
スタメン落ちは、週の早い段階で予想できたことのようだった。
「練習のときに監督に呼ばれて、『俺が就任した当初のインパクトあるプレイはどうした?疲れてるのか? 練習を見てからメンバーを考えさせてくれ』って言われた。その日の練習がダメだった」
“がっくし”と言わんばかりに少し大げさに肩を落として、報道陣から笑いを取って見せる。
「『お前はワールドカップから休みなく試合をやりすぎているから』って心配までしてくれたし、今日のことは納得しているから、シーズン開始当初に試合に出られなかったのとは違うと思っている。でも、たくさん試合をするには、力の抜き方、さぼり方を覚えなきゃいけないのかもしれないとも思った。全部一生懸命やったら、最後の1試合分の力が出なかった感じ。自分でも疲れているなっていう感覚もあったし」
もちろん監督の言葉を受け入れてはいるし、それなりに状況を理解もしている。だが、言葉のはしばしにはちょっとしたエクスキューズめいたものが浮かんでしまう。
そもそも、およそ2週間前にチャンピオンズリーグで敗退した頃は、残すリーグ戦を飛び越して、この決勝への強い意気込みを語っていた。「決勝は何かできそうな気がする。大舞台はなんだか力を出せそうな気がする」と、期待に満ちているようでもあった。だからこそ、見た目以上に落胆していることは想像がつかないでもなかった。
話が進むと「じゃあ、シーズンの振り返りでもしますか?」とおどけながら、自ら切り出した。その割には「いろいろあった一年だったなあ」と話す程度にとどまったが。
内田にとっての収穫はチームに馴染みきったところだろう。ドイツ語が話せるようになったわけでもないし、英語も「聞いて分かるけど、思っていることを100パーセントは伝えられない」というレベル。それでも、チームメイトから愛されていることはミックスゾーンでの様子から伝わってくる。
内田の横を通るほぼすべての選手が何かしら片言の日本語で声をかけていく。「最近チームメイトには、リスペクトしているものには『さん』をつけろ、と教えているんだよね」と言う。あのラウルが「ウッシーさん、ウッシーさん」と声をかけてくる。
優勝セレモニー後には、最も気にかけてくれたノイヤーとメッツェルダーに肩車をされながら優勝カップを掲げた。だが、そのノイヤーも来季はバイエルン・ミュンヘンへの移籍が濃厚と言われている。ミックスゾーンで横に立つノイヤーに、冗談めかしながら「さみしいなー、さみしいなー」と繰り返しささやいていた。本人の性格もあるが、良きチームメイトとスタッフにめぐまれたからこそ、萎縮することなくリラックスした中で力を発揮できたのだなと、あらためて思う。
このドイツカップ優勝で、シャルケはヨーロッパリーグ出場権を手にした。試合数も増え今季以上のハードスケジュールとなるだろう。さらに日本代表としてはワールドカップ予選も始まる。多忙を極めるであろう来季に向け内田は「監督から、『人より長く夏休みをやる』と言われた」そうだ。
「最初はドクターから提案されて、それではサボるみたいだからといったんは断ったんだけど、結局、監督がそう言ってくれたから、しっかり休もうと思う」
猛スピードで駆け抜けた1シーズンだった。
独チャレンジ一年間を終えたシャルケの篤人である。
手応え有り、挫折有りの様子である。
ラウルに「ウッシーさん」と呼ばせるあたり、馴れを感じる。
確実に成長した右の翼は、来季はユーロ・リーグにチャレンジすることとなる。
それまでは、つかの間の休息を取って欲しい。
来季も楽しみにしたい。