ロビンの観劇日記

芝居やオペラの感想を書いています。シェイクスピアが何より好きです💖

「夏の夜の夢」

2023-07-12 22:06:03 | 芝居
7月4日紀伊國屋サザンシアターで、シェイクスピア作「夏の夜の夢」を見た(文学座公演、演出:鵜山仁)。






パンデミック、戦争、自然災害・・・私たちを取り巻く世界は、
私たちの頭の中のリアルを超えてしまいました。
いま目に見えるもの、いまここにいる自分。
それだけでは受け止めきれない現実に向き合う力をもらいに、
妖精が跋扈し、恋人たちが疾走する森にいらしてください(チラシより)。

文学座がサザンシアターを使うのは珍しいのではないだろうか。
翻訳は小田島雄志。
駄洒落が多いので有名な彼の訳は、原文から大胆にそれて行っているので、学者の間では評判が悪いそうだが、
上演となると、また話は別だ。
日本語で笑えるダジャレにしてくれているので、当然、客席が沸く。
今回、セリフを言った後で役者同士、笑ったりする。

アテネ市民は全員、白一色の服装。
対照的に、村の職人たちは、それぞれカラフルな服。
同じ役者たちが演じる妖精たちは、思いっ切りはっちゃけた衣装。
妖精の女王は華麗な青い衣装で王様が赤。この二人の衣装がいい。まさに夢の世界だ(衣装:原まさみ)。

舞台奥に打楽器奏者が二人。時々生演奏。

いたずら妖精パックをベテラン中村彰男が演じる。
このキャスティングがいけない。
そもそもパックは子供とまでは言わないが、若くて、あまり深くものを考えたりしない。
だからいたずらばかりでなく、あわてんぼうで、よく失敗する。
若いからこそ敏捷で、「地球を40分で」一回りして戻って来れるのだ。
これほど年取ったパックは見たことがない。
しかも彼は人間ぽい。全然妖精らしくない。
妖精の王オーベロンは、石橋徹郎。
この人は好きな役者さんだが、今回はいささか失望させられた。
なぜって、王様にふさわしい威厳がないから。
特にパックと友達のような口をきき合うのはよくない。

森の中で二組の恋人たちが激しく争い、しまいには大立ち回りまで演じるシーン。
これが実に面白い。
特にヘレナ役の渡邊真砂珠が出色。
ハーミア役の平体まひろも好演。

あちこちに演出家がセリフを足したのか、耳慣れない言葉が聞こえた。
妖精の女王タイテーニアが「・・ナタデココ」と言ったり(笑)
このタイテーニアを演じた吉野実紗がまたよかった。
全体にゆったりと女王らしい威厳をまといつつも、恋に溺れた時の様子は可愛らしくチャーミング。

今回、ボトムの頭に被せられるロバの頭は、帽子程度の小さなもので、どこがロバなのかよくわからなかった。
個人的な好みを言うと、もっと大きくてリアルなのがほしい。
でないと職人仲間たちの驚きが不自然に感じられてしまう。

ラスト、妖精も貴族も村人も、みんな一緒に踊り出す。
これをどうとらえたらいいのだろうか。
演出家にはきっと、何か特別な意図があるのだろうが。
こんなことをしたら、作品世界とかけ離れてしまうのではないだろうか。






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