ロビンの観劇日記

芝居やオペラの感想を書いています。シェイクスピアが何より好きです💖

井上ひさし作「紙屋町さくらホテル」

2022-07-12 23:14:31 | 芝居
7月7日紀伊國屋サザンシアターで、井上ひさし作「紙屋町さくらホテル」を見た(演出:鵜山仁)。



昭和20年5月、広島の紙屋町さくらホテル。
新劇の名優・丸山定夫、そして宝塚少女歌劇団出身の女優・園井恵子を核とする移動演劇隊のさくら隊。
ホテルの所有者である日系二世の神宮淳子と心やさしきそれぞれの事情を抱えた同居人たち。
淳子の従妹の正子、言語学者の大島先生、ピアノの得意な玲子。
日系人である淳子をスパイ容疑で監視する特高刑事・戸倉までが同居を始め、
天皇陛下の密使・海軍大将長谷川と、陸軍中佐・針生が身分を隠してホテルにやって来る。
果たしてその目的は・・・
この風変わりなさくら隊が繰り広げる感動の物語(チラシより)。
ネタバレあります注意!

最初の場面は、終戦後。男二人が向き合っている。かつての海軍大将・長谷川(たかお鷹)は、自分は戦犯だ、と自首して来たが、相手は、それを決めるのは我々だ、と
断わる。長谷川は、相手がかつての陸軍中佐・針生(千葉哲也)ではないか、とようやく気づく。針生は今、進駐軍の下で働いている。
しまいに針生も正体を認め、二人は終戦直前の広島でのことを懐かしく思い出す。

場面は変わって昭和20年5月。広島のさくらホテルには移動演劇隊「さくら隊」の隊員募集中の貼り紙。
空襲警報の合間に歌の練習をする人々。そこへ富山の薬売りと称してやって来たのは天皇の密使で海軍大将の長谷川。
次に傷痍軍人という触れ込みで来たのが陸軍中佐の針生。
さらに怪しい動きをする若い男。この男は特高刑事・戸倉(松角洋平)だった。彼は日系二世で敵性外国人である淳子(七瀬なつみ)を監視するために現れ、
淳子に今後外出は一切禁止と告げ、自分は今日からこのホテルに泊まってお前を監視する、と言う。さらに彼は、そこにいる全員の氏名・職業も調査済み。
だが皆は、人数が足りないからと彼を説得し、彼もまたさくら隊に入ることになる。

芝居の稽古の一環として、座長が課題を出し、皆に順番にやらせる。
隣室に自分の一番大事な人が臨終の床についている。その人のことを思ってつぶやいてみること、というのが課題。
それが役者としての宝になるというのだが、これが実につまらない。退屈だし白ける。
このやり方で、それぞれの生い立ちが観客にわかるという利点はあるが、あまりにわざとらしくてついて行けない。
他の皆が課題を終え、最後に長谷川が「陛下・・」とつぶやくので一同驚くが、また警報が鳴り、人々は防空壕へ急ぐ。
最初から長谷川のことを怪しんでいた針生は「ついに正体を表しましたね。長谷川閣下」と話しかけるが、長谷川は彼を無視して去る。
2幕
いよいよ本番直前のリハーサル。巡査が間違えて、同じセリフを二度言ってしまうために、針生も長谷川も同じセリフを繰り返し、芝居は
堂々巡り。ここちょっとくどいけど、おかしい。
実は巡査は、淳子を敵性外国人の収容所に連行せよとの命令を受けていた。彼女の家庭の事情を知った今、彼は同情し、苦しんでいる。
皆も命令書を読み、何とか今回の公演に彼女も出演できるように願い出ることにする・・・。
長谷川は天皇の密使として国内の主要都市を回り、本土決戦の備えがどれくらいできているか偵察していた。
これまで彼の見たところ、どこも備えはまるでできていなかった。
それを陛下に正直に申し上げる、と言うと、針生はそれをやめさせようとする。
彼は陸軍中佐として、本土決戦しかない、という立場から、長谷川の動きを察知し、これまで部下に彼を尾行させていたのだ・・・。

次の場面は、最初の部屋。長谷川は針生に聞かれるままに、あの後、淳子が収容所に行かずに済むようにしてやったことを話す。
ラストはまた昭和20年5月に戻り、みなピアノに合わせて歌っている。皆に見送られて長谷川が去ってゆく。客席の端を通って。

劇中劇が面白い。
宝塚を揶揄?するシーンも面白かった。
言語学者の大島が針生の素性を怪しむのが、まるで映画「マイフェアレディ」のヒギンズ教授のよう!
生まれが仙台だというが、東北訛りが全然ないのはおかしい、呼びかけに対する返事から、千葉の出だろう、と彼はズバリ推測する。
ここも井上ひさしらしい楽しいシーンだ。
ただ、皆でしんみりするのはやめてほしい。
舞台上の人々がしんみりするのでなくて、こっちをしんみりさせてくれないと困る!
これは井上ひさしの芝居を見るたびに言っていることですが。































コメント
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