梅雨が長引いている今日この頃、あちこちで白いアジサイを見かける。
アナベルという名前がついている。
それを見るたびに思い出すのは、О.ヘンリーの短編「甦った良心」だ。
ちょっと、そのわけを聞いて下さい。
ジミー・ヴァレンタインは、腕利きの金庫破り。ムショから出て部屋に戻ると、警察が家宅捜索しても見つけられなかった大事な七つ道具の入ったカバンを取り出す。
彼はまたもや仕事を再開。性懲りもなく3度ほどあちこちで金庫を開け、資金を貯めると、列車で遠い町に向かう。高飛びはいつものことだった。
列車を降りホテルに向かって歩いていると、一人の若くて美しい女性が歩いて来た。
彼女は通りを横切り、角で彼のそばを通ると、「エルモア銀行」と書かれたドアの中へ入って行った。
ジミーは彼女の瞳を見た瞬間、恋に落ちてしまう。
彼女の方は彼を見て少し頬を染めた。彼は若くておしゃれで、一見、スポーツをやる、帰省中の大学生風。こういう田舎にはあまりいないタイプなのだ。
彼は近くにいた男の子に、さりげなくたずねる。
「あれはミス・ポリー・シンプソンだよね?」
するとガキは「ちがわい、あれはアナベル・アダムスだよ。この銀行はあの人のお父さんのだよ」と答えた。
この日、彼は決めた。
金庫破りの稼業はきっぱりやめ、この町でまともに生きて行こうと。
そしてラルフ・某と名前を変えて情報収集し、靴屋を開き、成功。
あの時運命の出会いをした彼女とも親しくなり、彼女の家族にも快く受け入れられ、ついに婚約。
そしてもうすぐ結婚式という日。
彼とアナベルの家族が銀行に集まっている時、彼女の幼い姪っ子が最新式の金庫に閉じ込められてしまう。
その子の命を助けることができるのは彼しかいない。しかも彼は、偶然そこに例の七つ道具を持参していた。
だが、その場には婚約者とその家族がいる。
そんなことをすれば、隠していた自分の過去が明るみに出てしまう。
子供の母親(アナベルの姉)は半狂乱、祖父(アナベルの父)もどうすることもできず、取り乱すばかり。
そんな中、ジミーをひたすら愛し尊敬しているアナベルは、彼にできないことはない、とでも言うように、彼に言う。
「何とか助けられない?ラルフ?」
彼は、奇妙な笑みを浮かべて、アナベルに言う。
「アナベル、あなたの胸に刺している、そのバラを僕にくれませんか」
彼女はわけが分からないまま、バラの蕾を取って彼に手渡す。
彼はそれを大事そうにベストのポケットにしまうと、上着を脱ぎ、腕まくりしてみんなに言うのだった。
「さあ、皆さん、どいて下さい。」・・・!
そして彼はかつての手慣れた仕事に取りかかる。いつもそうしていたように、軽く口笛を吹きながら。
10分後、子供は無事に助け出された。これまでの彼の記録を破るタイムだった。
この後、彼を追って来た刑事とのひとくさりがあるのだが、それはここでは省略。
О.ヘンリーは、さすが短編の名手。一行も、いや一語も、無駄なところがない!
ちなみに、この話を、赤塚不二夫がチビ太を主人公にしてマンガにしたのを、偶然テレビで見たことがある。
それも、涙無しには見られない感動的な作品だった。
というわけで、白いアジサイ(=アナベル)を見るたびに、この話を思い出して胸がキューッと締めつけられてしまうのでした。
アナベルという名前がついている。
それを見るたびに思い出すのは、О.ヘンリーの短編「甦った良心」だ。
ちょっと、そのわけを聞いて下さい。
ジミー・ヴァレンタインは、腕利きの金庫破り。ムショから出て部屋に戻ると、警察が家宅捜索しても見つけられなかった大事な七つ道具の入ったカバンを取り出す。
彼はまたもや仕事を再開。性懲りもなく3度ほどあちこちで金庫を開け、資金を貯めると、列車で遠い町に向かう。高飛びはいつものことだった。
列車を降りホテルに向かって歩いていると、一人の若くて美しい女性が歩いて来た。
彼女は通りを横切り、角で彼のそばを通ると、「エルモア銀行」と書かれたドアの中へ入って行った。
ジミーは彼女の瞳を見た瞬間、恋に落ちてしまう。
彼女の方は彼を見て少し頬を染めた。彼は若くておしゃれで、一見、スポーツをやる、帰省中の大学生風。こういう田舎にはあまりいないタイプなのだ。
彼は近くにいた男の子に、さりげなくたずねる。
「あれはミス・ポリー・シンプソンだよね?」
するとガキは「ちがわい、あれはアナベル・アダムスだよ。この銀行はあの人のお父さんのだよ」と答えた。
この日、彼は決めた。
金庫破りの稼業はきっぱりやめ、この町でまともに生きて行こうと。
そしてラルフ・某と名前を変えて情報収集し、靴屋を開き、成功。
あの時運命の出会いをした彼女とも親しくなり、彼女の家族にも快く受け入れられ、ついに婚約。
そしてもうすぐ結婚式という日。
彼とアナベルの家族が銀行に集まっている時、彼女の幼い姪っ子が最新式の金庫に閉じ込められてしまう。
その子の命を助けることができるのは彼しかいない。しかも彼は、偶然そこに例の七つ道具を持参していた。
だが、その場には婚約者とその家族がいる。
そんなことをすれば、隠していた自分の過去が明るみに出てしまう。
子供の母親(アナベルの姉)は半狂乱、祖父(アナベルの父)もどうすることもできず、取り乱すばかり。
そんな中、ジミーをひたすら愛し尊敬しているアナベルは、彼にできないことはない、とでも言うように、彼に言う。
「何とか助けられない?ラルフ?」
彼は、奇妙な笑みを浮かべて、アナベルに言う。
「アナベル、あなたの胸に刺している、そのバラを僕にくれませんか」
彼女はわけが分からないまま、バラの蕾を取って彼に手渡す。
彼はそれを大事そうにベストのポケットにしまうと、上着を脱ぎ、腕まくりしてみんなに言うのだった。
「さあ、皆さん、どいて下さい。」・・・!
そして彼はかつての手慣れた仕事に取りかかる。いつもそうしていたように、軽く口笛を吹きながら。
10分後、子供は無事に助け出された。これまでの彼の記録を破るタイムだった。
この後、彼を追って来た刑事とのひとくさりがあるのだが、それはここでは省略。
О.ヘンリーは、さすが短編の名手。一行も、いや一語も、無駄なところがない!
ちなみに、この話を、赤塚不二夫がチビ太を主人公にしてマンガにしたのを、偶然テレビで見たことがある。
それも、涙無しには見られない感動的な作品だった。
というわけで、白いアジサイ(=アナベル)を見るたびに、この話を思い出して胸がキューッと締めつけられてしまうのでした。