ロビンの観劇日記

芝居やオペラの感想を書いています。シェイクスピアが何より好きです💖

「RED」

2015-10-02 00:13:39 | 芝居
8月25日新国立劇場小劇場で、ジョン・ローガン作「RED」をみた(シス・カンパニー公演、翻訳・演出:小川絵梨子)。

20世紀を代表する抽象画家マーク・ロスコ(田中哲司)のニューヨークのアトリエに、画家志望の青年ケン(小栗旬)がやって来た。巨大な
壁画制作のためのアシスタントとしてロスコの面接を受けに来たのだ。「何が見える?」「何を感じる?」妥協知らずのロスコの問いかけに
圧倒されながらも必死に向き合うケンだったが…。

人気脚本家ジョン・ローガンの二人芝居。トニー賞6部門受賞作品の日本初演。

画家ロスコはアシスタントとして雇ったケンを質問攻めにする。ケンは今時の普通の若者で、教養もさほどない。それに対してロスコは幅広い教養を
持ち、古今の詩人・作家・哲学者の思想について論じ、とどまるところを知らない。シェイクスピア・ニーチェ…。
彼の演説に圧倒されつつも彼を理解しようとし、彼と議論できるようになろうとするケン。

画家は仕事にとりかかる時、必ずモーツァルトの曲のどれかをかける。この芝居は、二人が仕事つまり壁画を制作し続けるシーンの連続なので、
舞台ではたいていモーツァルトが流れていることになる。
画家は伝統を破ることを信条とする前衛芸術家だが、彼の耳は古典派であるモーツァルトを偏愛し、前衛たるジャズを受け入れることができない。
何とも皮肉だが、分かるような気がする。人間ってそういう感性の部分では理屈じゃないのだ。

暗転のたびに二人が大きな絵やテーブルを移動させて忙しく動き回る。黒子やスタッフを使わないのが好感が持てる。
二人の日常そのままを表しているわけだ。

残念ながら、現代美術の知識がないと、セリフの面白さがよく分からないところはある。
役者は二人共熱演。特に田中哲司はこういう知的な芸術家が意外に似合っていて驚いた。
コメント
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