8月26日サントリー小ホールで、細川俊夫作曲のオペラ「班女」(はんじょ)を観た。
またしても日本初演!(既にフランスやドイツでは演奏されている。)
原作は世阿弥作とされる能をもとに、三島由紀夫が新たな登場人物を加え、ストーリーを大きく変貌させた作品で、三島の「近代能楽集」に収められている。
作曲家細川はドナルド・キーンの英訳に基づいて自ら台本を書いた。
休憩なしで75分で終わる短い作品。
花子は吉雄を待ち続けるうちに心を病む。女絵描き・実子(じつこ)は花子に惚れ、自宅に連れ帰って保護している。ある日、ついに吉雄が現れ、実子は花子を奪われると脅えるが、狂った花子にはもはや吉雄が分からない。あなたは吉雄ではない、と拒絶され、吉雄は失意のうちに去る。
実子役のフレドリカ・ブリレンブルクの声と演技が素晴らしい。
実子の不安、そして最後に訪れる安堵と喜びが、かえって胸に沁みて痛い。
気の毒な花子。彼女の人生はただ「待つ」ことだけ、しかもその対象は、もはや実体とかけ離れ、虚像となってしまっているから、決してその人と再会することはないのだ。そして失意の吉雄。実子はどうか?彼女の不安は消えたが、彼女の愛する人は、これからも別の人を待ち続け、慕い続け、決して彼女の方を振り向いてはくれないのだ。三者三様の苦しみ、哀しみ・・。それでも実子は「素晴らしい世界」と言う。ただ花子と共に暮らせるだけで満足なのだろうか。
三島はやっぱり面白い。もとの能のストーリーは至ってシンプルだが、そこからこういう新たな世界を紡ぎ出すとは、尋常なことではない。
オケ(東京シンフォニエッタ)の演奏は上質。
音楽は・・よく分からないが、能と三島の世界に違和感なく溶け込んでいて美しい。心地よさと、そのゆるやかなテンポに、中盤つい眠気に誘われてしまった。
またしても日本初演!(既にフランスやドイツでは演奏されている。)
原作は世阿弥作とされる能をもとに、三島由紀夫が新たな登場人物を加え、ストーリーを大きく変貌させた作品で、三島の「近代能楽集」に収められている。
作曲家細川はドナルド・キーンの英訳に基づいて自ら台本を書いた。
休憩なしで75分で終わる短い作品。
花子は吉雄を待ち続けるうちに心を病む。女絵描き・実子(じつこ)は花子に惚れ、自宅に連れ帰って保護している。ある日、ついに吉雄が現れ、実子は花子を奪われると脅えるが、狂った花子にはもはや吉雄が分からない。あなたは吉雄ではない、と拒絶され、吉雄は失意のうちに去る。
実子役のフレドリカ・ブリレンブルクの声と演技が素晴らしい。
実子の不安、そして最後に訪れる安堵と喜びが、かえって胸に沁みて痛い。
気の毒な花子。彼女の人生はただ「待つ」ことだけ、しかもその対象は、もはや実体とかけ離れ、虚像となってしまっているから、決してその人と再会することはないのだ。そして失意の吉雄。実子はどうか?彼女の不安は消えたが、彼女の愛する人は、これからも別の人を待ち続け、慕い続け、決して彼女の方を振り向いてはくれないのだ。三者三様の苦しみ、哀しみ・・。それでも実子は「素晴らしい世界」と言う。ただ花子と共に暮らせるだけで満足なのだろうか。
三島はやっぱり面白い。もとの能のストーリーは至ってシンプルだが、そこからこういう新たな世界を紡ぎ出すとは、尋常なことではない。
オケ(東京シンフォニエッタ)の演奏は上質。
音楽は・・よく分からないが、能と三島の世界に違和感なく溶け込んでいて美しい。心地よさと、そのゆるやかなテンポに、中盤つい眠気に誘われてしまった。