goo

SFマガジン2009年11月号


SFマガジン2009年11月号№644     早川書房

雫石人気カウンター
1位 ナルキッソスたち              森奈津子
2位 コーラルDの雲の彫刻師    浅倉久志訳  J・G・バラード
3位 太陽からの知らせ      柳下毅一郎訳  J・G・バラード
4位 メイ・ウエストの乳房縮小手術 増田まもる訳 J・G・バラード
5位 ZODIAC2000       増田まもる訳 J・G・バラード

 本年4月19日に死去した、イギリスの「にゅーうぇーぶ」作家J・G・バラードの追悼特集が、今号のメイン企画。
 上記の雫石人気カウンターで、お判りになるとおり、小生はバラードは好きではない。世にバラードファンが多数おられることは、小生とて承知している。ファンとまでいかなくても、バラードの理解者も、このSFマガジンの読者にも多くおられるだろう。そのバラードの特集ということで、今号はいつもより売上げが多かったのではないか。
 今号の出来は良かった。表紙がいい。バラードのアップ。良い表情だ。企画もいい。短編が4編。バラード作品の中でもファンが多い「バーミリオン・サンズ」の「コーラルDの雲の彫刻師」有名な作品だ。追悼企画なら外せない作品。あとの3作もいかにもバラードしている。あとは、評論とエッセイ、著作リストなど。バラードという作家を手際よくコンパクトに紹介している。
 特集解説で柳下毅一郎が、バラードは「“オールドウェーブ派”からはSFをつまらなくした元凶と憎まれてさえいたかもしれない」と書いていたが、小生はこの“オールドウェーブ派”である。憎んではいなかったが、バラードを始めとする「にゅーうぇーぶ」は何が面白いのかさっぱり判らない。
 だいたいが、外宇宙の「センス・オブ・ワンダー」を求めてSFを読んでいるのであって、バラード一味の「内宇宙」なんてもんにはなんの興味もない。ただ、J・G・バラードなる作家が、SFに一石を投じたことは認めざるを得ない。そして、それがかなり大きな波紋を生じたことも認めよう。しかし、それは波紋であって、SFの本質をも変えてしまったことはないと信じたい。
 バラードの作品をシュールレアリズムであるとの見方もある。それには賛成だ。確かにバラードはシュールレアリズムだ。
 小生、バラードは嫌いだが、シュールレアリズムは好きだ。マグリット、エルンスト、デルヴォーなどの絵は好んで見ている。小生が小説を読む時は、絵をイメージしながら読む。文を読む→絵を思い浮かべる→感動、となるわけだ。だからこそ小生は「SFは絵だね」といった野田昌宏さんの言葉は名言だと思うわけ。絵の場合はもっとストレートで、絵を見る→感動となる。
 シュールレアリズムの絵、例えばマグリットの「ピレネーの城」、空中に大石が浮遊している絵だが、それにどういう意味をくみ取るかは、見る人によって様々だが、あの作品はだれがどう見たって、空中に浮遊する大石の絵である。林間を馬で行く絵には見えない。
 小説の場合、文を読まなければならない、で、その文を読んで、どういう絵を、どういうイメージを思い浮かべるかは、人様々だ。作家がこういう絵をイメージして欲しいと文章を書いたとて、まったく違う絵をイメージするかもしれない。ゆえに、小説でシュールレアリズムを表現しても、小生にはちっとも面白くないわけだ。ようするバラードの小説からは絵がうかばない。小生とは違う小説の読み方をする人なら、面白いかもしれない。そういう人はバラードの良き理解者だろう。小生はバラードの良き理解者ではないのだ。残念ながら。
 
コメント ( 2 ) | Trackback ( 0 )