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蘇る金狼


監督 村川透
出演 松田優作、風吹ジュン、成田三樹夫、小池朝雄、千葉真一、佐藤慶

 小生は大藪春彦の大ファンである。たいていの作品は読んだかな。数多ある大藪作品の中でも、「蘇る金狼」は大好きな作品。
 会社で好き勝手やっている、エライさんどもをギュッという目にあわせる。サラリーマンならだれでも一度は夢見たことだろう。ところが、現実はそんなことはできない。エライさんに媚びへつらって、会社の犬となって生きるか、リストラされゴミのように廃棄されるかのどっちかだ。この、できないことを、主人公朝倉哲也がやってくれる。スカッと痛快。のはずだが、この映画にそんな爽快感はない。鑑賞後の印象は、暗く悪魔的で悲劇的だ。原作は、もうずいぶん前に読んだので、忘れているが、もう少し爽快感があったように記憶する。これは暗い画面が多く、衝撃的なラストによるものだろう。
 松田優作はコミカルな演技もできる俳優だ。テレビ「探偵物語」のファンだった人にはご理解いただけると思う。このテレビシリーズの探偵の松田優作と、刑事の成田三樹夫のからみなどは絶品であった。この作品も松田VS成田のからみがあったが、成田三樹夫は相変わらずの成田三樹夫。
 小生、成田三樹夫という俳優は大好きな俳優。「柳生一族の陰謀」では千葉真一と、「仁義なき戦い」では菅原文太とからんでいたが、成田三樹夫はやっぱり松田優作とからむのが一番面白い。おふた方とも鬼籍に入られた。まことに残念である。
 それはそうとして、大藪作品の主人公を演じた俳優は、この松田優作、草刈民雄、仲代達也と3人いるが、やはり松田が一番いい。監督は「遊戯」シリーズで松田とコンビを組んでいる村川透が自然の流れで勤めたが、はたして村川の演出でいいのだろうか。
 大藪春彦から銃と車を取れば、何も残らないとアホをいうやつもいるが、大(だい)大藪はそんな単純なものではない。大藪の小説というと、ハードなアクションといわれるが、大藪にはえもいわれぬユーモアがある。それも独特なブラックユーモアである。松田優作にも、さきほどいったようにコミカルな面がある。この大藪ブラックユーモアと松田コミカルを組み合わせたら、もっと面白い映画ができそうだ。そういうことを考えると、村川透は「遊戯」シリーズではいいが、大藪春彦原作となると適任とはいい難い。
「蘇る金狼」「汚れた英雄」「傭兵たちの挽歌」「野獣死すべし」などが大藪の代表作とされている。これらの作品に比べて忘れられがちの作品だが、「戦いの肖像」がある。小生の好きな大藪作品だが、初めは普通の現金輸送車強奪だが、だんだん話がでかくなってアメリカ海軍の原子力空母まで乗っ取る、壮大なホラ話だが、この作品を松田優作主演、監督岡本喜八で映画化したら、さぞかし面白い映画になったのではないだろうか。 
 で、映画「蘇る金狼」に話をもどそう。さっきもチラッといったが、ラストが衝撃的。このラストによって大人のおとぎ話だったのが、一気にシリアスな悲劇となった。
 成田三樹夫、小池朝雄、今井健二、南原宏治、岸田森、佐藤慶、安部徹、待田京介、これらの人たちがみんな出ていた。悪役脇役マニアにはこたえられない映画である。
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