人生の目的は音楽だ!toraのブログ

クラシック・コンサートを聴いた感想、映画を観た感想、お薦め本等について毎日、その翌日朝に書き綴っています。

恩田陸著「蜜蜂と遠雷(下)」を読む ~ 国際ピアノコンクールで争われるコンテスタントたちの戦い:10月4日に松坂桃季、松岡菜優、森崎ウィン、鈴鹿央士他のキャストによりロードショー公開!

2019年05月31日 07時18分52秒 | 日記

31日(金)。わが家に来てから今日で1701日目を迎え、本日 5月31日は世界禁煙デーということで、受動喫煙のない社会を目指す来年4月の改正健康増進法全面施行を前に、企業があの手この手で社員の禁煙に取り組んでいる というニュースを見て感想を述べるモコタロです

 

     

     ご主人様は「歩行喫煙している奴を見ると張り飛ばしたくなる」と言っているよ

 

         

 

昨日、夕食に「鶏もも肉のソテー」と「トマトとレタスの卵スープ」を作りました 「鶏もも~」は いつもは塩コショーの味付けですが、今回は塩とブラックペッパーで味付けしました。一味違って美味しかったです

 

     

 

         

 

恩田陸著「蜜蜂と遠雷(下)」(幻冬舎文庫)を読み終わりました

舞台は3年に1度開かれる芳ケ江国際ピアノコンクール 自宅にピアノを持たない16歳の少年・風間塵、かつて天才少女としてデビューしながら突然の母の死以来、ピアノが弾けなくなってしまった20歳の栄伝亜夜、楽器店勤務で28歳の高島明石、母親がペルーの日系三世で審査委員ナサニエル・ジルヴァ―バーグの愛弟子のマサル19歳ーこの4人を含む90数人が第1次予選に挑みました 4人は見事に審査をクリアして第2次予選に進む24人の中に入ります

第2次予選では、すべてのコンテスタントが弾かなければならない課題曲として、新曲で現代曲の菱沼忠明「春の修羅」が立ちはだかります 40分の演奏時間の中で、この曲を含む少なくとも4曲を順番を決めて演奏する必要があります。4人はそれぞれの戦略に基づいて曲と演奏順を決め、独自の解釈により演奏に挑むことになります ここで、最年長で唯一の妻帯者・高島明石が自他ともに認める会心の演奏をします しかし、彼は総合的な評価で次のステップには進めませんでした 残りの3人を含む12人が第3次予選に進むことになります

第3次予選では60分を限度に各自 自由にリサイタルを構成することになっています   ここで、風間塵は異例のプログラムを組みます。それは①サティ「あなたがほしい」、②メンデルスゾーン「無言歌集」より”春の歌”、③ブラームス「カプリッチョ」、④ドビュッシー「版画」、⑤ラヴェル「鏡」、⑥ショパン「即興曲第3番」、⑦サン=サーンス(風間塵編)「アフリカ幻想曲」というものです マサルの言葉を借りると「たぶん、コンクールでエリック・サティの曲を聴くのはこれが初めてだし、おそらくこのあともないのではないだろうか」というサプライズな選曲です しかも、彼はそれを次の「春の歌」に自然につなげたばかりでなく、次のブラームスの後に再びサティを演奏したのです これを聴いたマサルは「プログラムに『あなたがほしい』の曲名が載っているが、もちろん2度弾くとは書かれていない。提出したプログラムと異なる演奏をして、規定違反ということになりはしないか」と心配します

第3次予選の審査結果の発表が遅れています コンクール事務局員の慌ただしい動きから、「誰かが失格したらしい」という噂が流れます マサルや亜夜たちは「風間塵のあの自由な演奏が規定違反に問われて失格になったのではないか」と疑います しかし、サン=サーンス「アフリカ幻想曲」の演奏で自ら作曲したカデンツァが高い評価を得たこともあり、彼はマサル、亜夜とともに本選に進む6人に入ったのです

本選で弾いたのはマサル=プロコフィエフ「ピアノ協奏曲第3番」、栄伝亜夜=プロコフィエフ「ピアノ協奏曲第2番」、風間塵=バルトーク「ピアノ協奏曲第3番」でした

第6回芳ケ江国際ピアノコンクールの最終審査結果は491ページの裏に発表されています ほぼ予想通りの結果と言ってもよいと思いますが、奨励賞に高島明石の名前があります 私はコンクールの実情を良く知らないのですが、奨励賞というのは、本選に残らなかったコンテスタントの中から選ばれるのですね

 

     

 

「下巻」の中で特に印象に残った言葉をご紹介したいと思います

まず最初に、高島明石の高校時代の同級生で、今回の取材のため彼に密着している雅美のコンクールに対する感想です

「なんて残酷で、なんて面白い、なんて魅力的なイベントなんだろう 芸術に点数がつけられるか? そう聞かれれば、誰だって『優劣などつけられない』と答えるだろう それはむろん、誰でも頭では分かっている。しかし、心では優劣がつけられたところを見たいのだ 選び抜かれたもの、勝ち残ったもの、ほんの一握りの人間にだけ許されたギフトを目にしたい。そこに労力がかけられればかけられるほど、歓喜と涙はより感動的で興奮させられるものになる 何より、人はそこに至る過程を、人々のドラマを見たいのだ。頂点を極めスポットライトを浴びる人を見たいのと同時に、スポットライトを浴びることなく消えた人たちの涙を見たいのだ

この感想は雅美に託して言わせた恩田陸さんの感想と言っても良いでしょう ひいては、この本を読んでいる多くの読者の感想と言っても良いかも知れません

次は、マサルが第3次予選に挑む前に舞台袖で考えていたことです

「プロのピアニストを見ていると、なかなか弾きたいプログラムを弾けないように思える 聴衆の聴きたい曲と、ピアニストの弾きたい曲は必ずしも一致しない。例えば、いわゆる現代音楽は、『普通の』聴衆には敬遠される。リサイタルの主催者からプログラムに現代音楽は入れないでくれと懇願された話はよく聞くし、ショパンやベートーヴェンらの人気曲を入れ、そちらを宣伝に押し出すことでようやく現代音楽を1曲入れられたらいい方だという 新聞や雑誌、チラシに印刷されたプログラムの中に、お客さんの聴きたい曲とピアニストの弾きたい曲とのせめぎあいが見える チケットを売る側の思惑と、冒険したいピアニストとの駆け引きが透けて見える。そういう点では、コンクールというのは、チケットの売り上げを気にせずに実験的なプログラムを試すことができる場所かもしれないし、おのれの技術の極限を示すという点でも最も冒険できる場所かもしれない。自分が弾きたい曲と、聴衆が聴きたい曲が一致したピアニストになりたい

これはよく分かります コンサート会場の入口近くで渡される1キロもあるチラシの束をめくっていると「チケットを売る側の思惑と、冒険したいピアニストとの駆け引き」が想像できるコンサートが少なくありません 

マサルの「自分が弾きたい曲と、聴衆が聴きたい曲が一致したピアニストになりたい」というのは、「渚のアデリーヌ」のリチャード・クレイダーマン、あるいは「ピアノ・レッスン」のマイケル・ナイマンのような存在だと思いますが、純クラシックの世界での「コンポーザー・ピアニスト」ということになると、誰がいるでしょう??? なかなか難しい道だと思いますが、マサル・カルロス・レヴィ・アナトール君には頑張ってほしいと思います

この本を読むに当たって、マサルや亜夜や風間塵が本選で演奏したプロコフィエフやバルトークのピアノ協奏曲をBGMとして流しながら読み進めましたが、あっという間に読み終わってしまいました

「この作品、映画化したら絶対に面白いだろうな」と思っていたら、10月4日にロードショー公開されるようで、オフィシャル・サイトがアップされていました キャストは高島明石を松坂桃季(実際の演奏は福間洸太朗)、栄伝亜夜を松岡菜優(同・河村尚子)、マサルを森崎ウィン(同・金子三勇士)、風間塵を鈴鹿央士(同・藤田真央)が演じるようです。これは 観ないわけにはいきませんね

 

     

 

     

 

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東京文化会館「オペラ夏の祭典~トゥーランドット」無料リハーサルあります / 恩田陸著「蜜蜂と遠雷(上)」を読む ~ 浜松国際ピアノコンクールをモデルにして書かれた若き天才ピアニストたちの熱い戦い

2019年05月30日 07時21分33秒 | 日記

30日(木)。わが家に来てから今日で1700日目を迎え、文部科学省のキャリア官僚が自宅マンションで覚醒剤と大麻を所持していたとして逮捕された というニュースを見て感想を述べるモコタロです

 

     

         文科省のキャリアが覚醒剤と大麻のキャリアーだったとは 驚き桃の木山椒の木!

 

         

 

昨日、夕食に「塩だれ豚丼」と「冷奴」を作りました 「豚丼」は娘のリクエストです。立ちっぱなしの仕事のためスタミナが消耗するので、ニンニクやネギを使ったこの種の料理が食べたくなるようです 「冷奴」には、ミョウガ、オクラ、削り節を載せました

 

     

 

         

 

昨日の日経朝刊 東京・首都圏経済面に「オペラ夏の祭典  リハを無料公開」という見出しが躍っていました 超訳すると

「東京文化会館は7月、音楽イベント『オペラ夏の祭典』のリハーサルの一部を無料公開する 2020年五輪・パラリンピックに向けた文化プログラムの一環で、幅広く参加を促して五輪の機運醸成につなげる リハーサルを公開するのは7月12~14日に本番を控えるオペラ公演『トゥーランドット』だ 本番直前の9~10日、全3幕の第1幕のみ、45分程度の内容を無料で鑑賞できるようにする 6月1日からインターネットなどで申し込みを受け付け、応募が多ければ抽選で各日400人程度を招待する。本番のチケットは最高ランクで3万円以上するため、敷居が高いイメージを持たれがちだと判断した

本番直前のリハーサルなのでゲネプロ(本番と同じ衣装を着けてオーケストラをバックに歌い演じるリハーサル)だと思われます 公開時間の45分は短いと思いますが、ホンモノのオペラに接するチャンスです 「東京文化会館」を検索して申し込んでみてはいかがでしょう

 

         

 

恩田陸著「蜜蜂と遠雷(上)」(幻冬舎文庫)を読み終わりました 恩田陸は1964年宮城県生まれ。1992年「6番目の小夜子」でデビュー。2005年「夜のピクニック」で吉川英治文学賞新人賞と本屋大賞、2017年「蜜蜂と遠雷」で直木賞と本屋大賞をダブル受賞しています

 

     

 

舞台は、近年 その優勝者が世界的なコンクールを制覇するなど、世界の音楽界から注目を集めるようになった芳ケ江国際ピアノコンクールです 3年ごとに開かれ第6回目を迎えるコンクールに出場するのは、養蜂業を営む父親とともに各地を転々と移動しながら生活している風間塵16歳、かつて天才少女としてデビューしながら突然の母親の死以来、ピアノが弾けなくなり一度は現役を引退した栄伝亜夜20歳、楽器店勤務のサラリーマンで唯一の既婚者・高島明石28歳、母親が日系三世で、審査員のナサニエル・シルヴァ―バーグの愛弟子マサル・カルロス・レヴィ・アナトール19歳、この4人の天才ピアニストたちが中心となりコンクールの火蓋が切られます

審査員たちを驚かせたのは、風間塵が提出した履歴書に、「コンクール歴なし。日本の小学校を出て渡仏、(弟子を取らないことで有名な)故ユウジ・フォン・ホフマンに5歳から師事」と書かれていたからです さらに驚かせたのは、父親が養蜂家ということで移動生活のためピアノを持っていないという事実でした

マサルは両親の仕事の関係で日本からフランスへそして11歳の時アメリカに渡ったのですが、それ以前の日本にいる時、亜夜と同じピアノの先生に習っていたことがコンクールで再会した時の会話で分かります。二人は幼馴染みでありコンクールのライバルでもあるわけです

恩田陸さんを25年も担当している出版社の志儀保博氏が巻末の「解説」を書いていますが、それによると

「恩田さんから『ピアノコンクールの話を最初から最後まで書いてみたい それで、今年の浜松国際ピアノコンクール(浜コン)を取材したい』と言われたのは2006年の夏。前年2005年のショパン国際ピアノコンクールで優勝したポーランドのラファウ・ブレハッチさんが初めて出場した国際コンクールが2003年の『浜コン』で、最高位(1位なしの2位)になりましたが、その時の出場自体が書類選考を経たオーディションから勝ち上がってのもので、しかも彼の自宅にはグランドピアノがなく、それらはどれもが異例でした

ということです

このことから分かるように、この小説は浜松国際ピアノコンクールをモデルにして書かれています 恩田さんは3年ごとに開かれる「浜コン」を、その後も毎回聴きに行ったようです その間、「浜コン」は2006年=アレクセイ・ゴルラッチ(ウクライナ)、2009年=チョ・ソンジン(韓国)、2012年=イリヤ・ラシュコフスキー(ロシア)、2015年=アレクサンデル・ガジェヴ(イタリア/スロベニア)と優勝者を輩出しましたが、このうち韓国のチョ・ソンジン(1994年生まれ)は2015年の第17回ショパン国際ピアノコンクールで優勝を果たしています 恩田さんはこれらすべてのコンクールを聴き、何らかの形で小説に取り込んでいったことになります

「上巻」(454ページ)では第1次予選と第2次予選の途中までの模様が描かれています 上巻の中で特に印象に残った言葉を抜き出してみようと思います

最初は、第1次審査が終わった後で、風間塵の演奏があまりにも独創的で審査員の評価が真っ二つに割れた時に、シモンとスミノフが嵯峨三枝子を説得する言葉です

「彼の音楽を許すの許さないのというのは、我々が決めるべきことではない。ある一定のラインに達して入れば、機会を与える。それがこのオーディションの目的なのであって、候補者の音楽性が気に入るか気に入らないかは、現時点では問題ない。もう1回聴いてみたくない?あれがまぐれだったのかどうか、確かめたくない?」

この言葉は、演奏を聴く時の指針になるものだと思います 誰もが上手で優劣の判断が難しい時に、最終的な決め手になるのは「演奏をもう一度聴きたいと思うかどうか」ということだと思います

次は日本人や韓国人がクラシック音楽をやる意味についてです

「今回、目を引くのは近年あらゆる分野で活躍著しい韓国勢だ。いわゆる韓流スターをみていても思うことだが、彼らにはまっすぐなパッションと、この言葉がふさわしいのか分からないが、ある種の『いじらしさ』を感じるのだ 彼らが民族的に持っている『激しさ』と『いじらしさ』はドラマティックなクラシック音楽とは相性がいいように思える。じゃあ日本人らしさってなんだろう。日本人の売りは何だろう

これはクラシック音楽を考える上での根源的な問題です 演奏する人たちはそれぞれの答えを持っているのだろうか

上巻では、4人とも一次審査を通過しました 下巻(508ページ)ではどうなるでしょうか? 栄冠は誰の手に? 楽しみです

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ノエミ・ルボフスキー監督「マチルド、翼を広げ」、グザビエ・ルグラン監督「ジュリアン」を観る ~ ギンレイホール

2019年05月29日 07時24分33秒 | 日記

29日(水)。トランプ大統領が来日中に、ツイッターで日米貿易交渉について「多くの成果は7月の選挙後まで待つ」と投稿した際に、「選挙」を「elections」と複数形で表記したことから、野党の間に「衆参同日選を意味しているのではないか」との憶測が流れています 日本語では曖昧なことが、英語に訳すと明確になることがしばしばありますが、トランプ氏との”密談”で 安倍首相もそこまでは読めなかったでしょう   複数形と言うより複雑系と言った方が良いかも知れません

ということで、わが家に来てから今日で1699日目を迎え、メキシコ市から成田空港に向かっていた飛行機内で日本人男性が死亡し、体内からコカインのカプセル246個が見つかったが、メキシコ司法当局は男性が密輸しようとした疑いがあると見ている というニュースを見て感想を述べるモコタロです

 

     

      カプセルが壊れて胃や腸に流出したらしいけど  なぜキャベジン飲まなかった?

 

         

 

昨日、夕食に「サバの塩焼き」「タコの山掛け」「生野菜サラダ」「具だくさん味噌汁」を作りました たまには魚も食べないとね   具だくさん味噌汁には人参、ジャガイモ、シメジ、玉ねぎ、ナスが入っています 野菜を簡単にたくさん取るにはこれが一番かも

 

     

 

         

 

昨日、神楽坂のギンレイホールで「マチルド、翼を広げ」と「ジュリアン」の2本立てを観ました

「マチルド、翼を広げ」はノエミ・シヴォウスキー監督・脚本・出演による2017年フランス映画(95分)です

9歳の少女マチルドは、情緒不安定な母親の突飛な行動に振り回され、学校では友だちができず孤独な毎日を送っていた ある日、母親が小さなフクロウを連れてきた。驚いたことにフクロウはマチルドに話しかけてきた 彼女がピンチに陥ると適切なアドヴァイスを与えてくれて救ってくれる。フクロウと楽しい時間を過ごすマチルドだったが、やがて母親が騒動を起こす マチルドはそんな母親でも大切に思う気持ちは変わらない

 

     

 

マチルドを演じたのはこの作品がデビュー作となるリュス・ロドリゲスですが、どっちが母親か分からないようなしっかり者の小学生を演じていてチャーミングです 一方、どこか間の抜けた母親を演じているのはノエミ・ルポフスキー監督自身ですが、この人もチャーミングです それにもう一人(?)の主人公フクロウがとてもチャーミングです マチルドの腕に飛び移ったり、母親の頭の動きに合わせて頭を上下左右に動かしたり、颯爽と滑空したり、”主演動物賞”ものです

マチルドが授業で骸骨の模型に興味を抱き、半分生きていると思い込んで、どうすべきかフクロウに相談すると「学校の物置から救い出して埋葬すべきだ」と言われ、森の中に埋葬するシーンは印象的です 骸骨に服を着せ、指環まではめて身体を布に包み、スコップで穴を掘って埋葬します このシーンは 母親だけでなくマチルドもどこかおかしいのではないか、そもそも「埋葬すべきだ」とアドヴァイスしたフクロウがおかしいのではないか、と思ってしまいます しかし、この映画はそのように観るべき作品ではないでしょう どんなに迷惑を被っても母親を最後まで見捨てない、娘マチルドの覚悟と心情を描いた映画だと言うべきでしょう

 

         

 

「ジュリアン」はグザヴィエ・ルグラン監督による2017年フランス映画(93分)です

離婚したプレッソン夫妻は11歳になる息子のジュリアン(トーマス・ジオリア)の親権をめぐって争っていた ミリアム(レア・ドリュッケール)は夫のアントワーヌ)(ドゥ二・メノ―シェ)に子どもを近づけたくなかったが、裁判所はアントワーヌに隔週の週末ごとにジュリアンとの面会の権利を与える アントワーヌはジュリアンに、共同親権を盾にミリアムの連絡先を聞き出そうとするが、ジュリアンは母を守るため必死で嘘をつき続けていた アントワーヌの不満は次第に蓄積されていき、やがてジュリアンの嘘を見破り、一家がアントワーヌに内緒で引っ越ししたことを知り、引っ越し先に乗り込む

 

     

 

予想外の結末に驚きを禁じ得ません というのは、最初から最後まで夫アントワーヌが暴力的で自分本位な男として描かれ、どんでん返しがないまま終わってしまうからです

映画の終盤で、アントワーヌがミリアムに「俺は変わったんだ」と訴えるシーンがあります。このセリフから、アントワーヌは過去に問題(家庭内暴力など)を引き起こしていたと推測できます この後に続くセリフは「だから、一緒にもう一度やり直そう」だと思いますが、ミリアムは彼の言葉を無視します 「口先だけなら何とでも言える」ということでしょう ここから、アントワーヌは昔のアントワーヌに戻ってしまい、銃を持って新しい住居に乗り込む事態に陥ります

そういう観点からみると 救いようのない 不満の残る作品ですが、離婚した夫婦の間に挟まれて悩む子供の立場からみれば、「もっと子供本位で考えてほしい」ということになるでしょう 上の写真にあるジュリアンの悲し気な顔が、そう訴えています。そういう意味では、考えさせられる映画です

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フレデリック・ワイズマン監督「ニューヨーク公共図書館 エクス・リブリス」を観る ~ Public がなぜ「公立」でなく「公共」なのかが理解できる3時間25分:岩波ホール

2019年05月28日 07時19分45秒 | 日記

28日(火)。わが家に来てから今日で1698日目を迎え、英国ではブレグジット党が首位に立ち、フランスではルペン党首が率いる極右国民連合が第1党の勢いで、イタリアでは極右政党「同盟」の得票率が第1党となった というニュースを見て感想を述べるモコタロです

 

     

     おい、ヨーロッパ連合のEC君 傷は深いぞ がっかりしろ  なんて言ってる場合か!

      

         

 

昨日、夕食に「野菜たっぷりドライカレー」を作りました 夏のように暑い日は熱いカレーが一番です

 

     

 

         

 

昨日、神保町の岩波ホールでフレデリック・ワイズマン監督による2017年アメリカ映画「ニューヨーク公共図書館  エクス・リブリス」(3時間25分)を観ました この映画は世界中の図書館員の憧れの的であるニューヨーク公共図書館の舞台裏を映し出したドキュメンタリーです ニューヨーク公共図書館は19世紀初頭に建てられた荘厳なボザール様式の建築物である本館、研究目的のために公開されている4つの研究図書館、地域に密着した88の分館に、合計6000万点ものコレクションを収蔵しています 単に本を貸し出すだけでなく、地域住民や研究者たちへの徹底的なサービスを行っています

 

     

 

10時15分上映開始のため早めに家を出て9時半には岩波ビルに着いたのですが、すでに1階の当日券売り場には列が出来ていて、開演時間には満席になりました 平日なのに凄い人気です

この映画は、図書館が一般向けに公開している講演会の模様から始まりますが、映画にしては長く写し出しています その後も、何人かの講師による講演や、文化人へのインタビューなどが映し出されます これは、ニューヨーク公共図書館が、単に本を貸し出すところでなく、講演活動等を通して市民の啓蒙活動も行っていることを強調していることが窺えます

The NewYork Public Library」と名称に「パブリック(Public)」が入っていますが、運営母体は独立法人で、市や州からの公的資金と民間の寄付によって成り立ち、パブリックは「公立」の意味ではなく、誰にも開かれた「公共」の意味を持っています 映画では、図書館の運営に携わる人々の議論も映し出されますが、行政からの資金援助が減少傾向にある中で、紙の本かデジタル本か、ベストセラー的な”読まれる本”を多く仕入れるのか、より多くの人々に”読まれるべき本”に重点を置くのか、図書館に来るホームレスとどう向き合うべきか、といった悩みや課題が浮き彫りにされます これはどこの国の図書館にも共通する問題ではないかと思います

特に印象に残ったのは、地域に密着した分館で開催されている「子どもへの読み聞かせ活動」です 地域のボランティアが図書館で地元の子どもたちに絵本を読み聞かせる活動ですが、両親とも働いていて子どもとの接触が少ない状況の中で、こうした地道な活動は図書館好きを増やし、”将来の読者”を育てることになるでしょう これは新聞界で言えば、「Newspaper   in   Education」(NIE:教育に新聞を)に通じる活動です

大統領は知性のかけらもないトランプだけど、アメリカには「知の殿堂  ニューヨーク公共図書館」がある まだまだアメリカの民主主義を信じて良いかも知れません

途中10分間の休憩が入りますが、3時間25分の上映は、クラシックで言えばワーグナーの楽劇並みの長さです それなりの覚悟を持って観た方が良いと思います 

エンドロールで チェンバロの独奏によりJ.S.バッハ「ゴルトベルク変奏曲」のテーマ(アリア)が流れますが、「知の殿堂 ニューヨーク公共図書館=エクス・リブリス」を 静かに讃えているかのようでした

 

     

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柚月裕子著「慈雨」を読む ~ 定年退職した後も現役時代の失点に決着を付けようとする男の矜持:新作を発表するたびに進化を続ける筆者の力作  

2019年05月27日 07時29分12秒 | 日記

27日(月)。欧州連合(EC)からの離脱問題で、英国の離脱方針をまとめきれなかったメイ首相が5月24日、来月7日に与党・保守党の党首を辞任することを表明しました   手を変え品を変え、何とかスムーズにブレグジットできるようにあがきましたが 終始メイ走し、与野党からメイ惑がられていました 株式市場のアノマリー(相場格言)に「Sell in May 」(5月に株を売れ)というのがあります これはアメリカの株式市場の格言ですが、イギリスでは「5月にメイを売れ」となってしまったようです 後任の党首にはジョンソン前外相など強硬離脱派が有力視されているようですが、「合意なき離脱」に繋がるジョン損にならないことを祈るばかりです

ということで、わが家に来てから今日で1697日目を迎え、来日中のトランプ米大統領が国技館で優勝力士・朝乃山にアメリカ大統領杯を授与した後、表彰状を読み上げるシーンをテレビで見て 感想を述べるモコタロです

 

     

     片手で表彰状を持って読んでなかった? 日本人がやったら片手落ちと言われるぜ

 

         

 

柚月裕子著「慈雨」(集英社文庫)を読み終わりました 柚月裕子は1968年岩手県生まれ。2008年に「臨床真理」で第7回「このミステリーがすごい!」大賞を受賞してデビュー 13年「検事の本懐」で第15回大藪春彦賞を、16年「孤老の血」で第69階日本推理作家協会賞を受賞しています このブログでは「孤狼の血」「朽ちないサクラ」「ウツボカズラの甘い息」をはじめ何冊かご紹介してきました

 

     

 

神場智則は警察官を定年退職し、妻の香代子と共に四国遍路の旅に出た 旅先のテレビで知った少女誘拐・殺人事件は、16年前に自らが捜査に当たった事件に酷似していた 神場の胸にはその時の事件への悔恨の想いがあった。事件の成り行きが気にかかる神場は、旅先から 手がかりのない捜査に悩むかつての部下・緒方佳祐に電話を入れ、捜査の進捗状況を聞きながら次の寺に向かう 旅の途中、過去に身内の者を殺して刑務所に収監され、出所してすぐに贖罪の旅に出たという男と知り合いになり、その出会いがヒントになり神場は犯人像の絞り込みを行い、緒方に連絡を入れる そして今回の事件で目撃された白い軽ワゴンがNシステムの監視カメラから突然消えたことについて、喫茶店で出会った男性と孫との会話からヒントを得て推理し 緒方に連絡を入れる。それが元になり捜査は大きく進展し犯人は逮捕される

神場がなぜ遍路の旅に出ることになったのか? その理由は16年前の事件の捜査が大きな動機になっています 定年退職した後まで新たな事件に首を突っ込もうと思ったのは「新たな事件を起こさせてなならない」という強い信念でした

この小説では、神場と香代子の娘・幸知と、神場のかつての部下・緒方との交際がもう一つの流れとして描かれていますが、自身の辛い経験から「警察官の嫁にだけは行かせたくない」神場が、どこまでも警察官として生きる覚悟を決めた緒方の熱意と幸知への思いを認めざるを得なくなり、二人の結婚を許すことになります この辺の記述は目頭が熱くなります。神場は事件解決後、16年前の事件の決着をつけるため、自身の財産をすべて放棄する覚悟を決めますが、最後の八十八番札所に向かう二人に、晴れた空から、雨粒が落ちてきます。雷雨でも、豪雨でもない、優しく降り注ぐ、慈しみの雨、慈雨です

柚月裕子の作品は、新作を発表するたびに、小説へのアプロ―チが進化しているように思います 今回の主人公は自ら動いて事件を解決するわけではなく、現職の警察官に自分の考えを伝えるだけです そういう意味では、”安楽椅子探偵”のような存在です それでもストーリーにリアリティを感じるのは筆者の優れた筆力によるものだと思います

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ジョナサン・ノット ✕ ダニエル・ホープ ✕ 東響でブリテン「ヴァイオリン協奏曲ニ短調」、ショスタコーヴィチ「交響曲第5番ニ短調」を聴く ~ 終始 熱量の高い演奏で聴衆を圧倒!

2019年05月26日 07時22分48秒 | 日記

26日(日)。わが家に来てから今日で1696日目を迎え、来日中のトランプ米大統領が国技館で今日の大相撲を観戦する というニュースを見て感想を述べるモコタロです

 

     

        飛んできた座布団を警護のSPが地対空ミサイルで撃ち落としたら 座布団3枚!

 

         

 

昨夕、サントリーホールで東京交響楽団の第670回定期演奏会を聴きました プログラムは①ブリテン「ヴァイオリン協奏曲ニ短調作品15」、②ショスタコーヴィチ「交響曲第5番ニ短調作品47」です ①のヴァイオリン独奏はダニエル・ホープ、指揮はジョナサン・ノットです

 

     

 

オケは左奥にコントラバス、前に左から第1ヴァイオリン、チェロ、ヴィオラ、第2ヴァイオリンという対向配置=ノット・シフトをとります コンマスは東響の顔、水谷晃氏です。会場はノット人気の為せる業か、かなりの聴衆が入っています。いつもこうだと良いのですが ステージ上には そこかしこに収音マイクが林立しています 演奏記録として楽団内部で使用するのか、定期会員特典CDのような形で生かすのかは不明です

1曲目はブリテン「ヴァイオリン協奏曲ニ短調作品15」です    この曲はベンジャミン・ブリテン(1913-1976)が1939年に作曲し、翌1940年3月28日にニューヨークのカーネギーホールで、アントニオ・ブローサのヴァイオリン独奏、ジョン・バルビローリ指揮ニューヨーク・フィルの演奏で初演されましたが、その後1958年に改訂されています 第1楽章「モデラート・コン・モート」、第2楽章「ヴィヴァーチェ」、第3楽章「パッサカリア:アンダンテ・レント」の3楽章から成りますが、切れ目なく演奏されます 井上征剛氏のプログラム・ノートによると、「ブリテンは1930年代後半、当時活動を共にしていた詩人オーデンの影響もあって、自らが社会的・政治的姿勢を強く押し出した作品を多く書いていた 『ヴァイオリン協奏曲』は器楽曲の形式の中に作曲家の政治理念を凝縮させた、この時期のブリテンを代表する作品のひとつである」とのことですが、「政治理念を曲の中に凝縮させる」と言われても、音楽として聴いている側としては、何が何だかさっぱり分かりません 続いて「スペイン内戦で敗れた反ファシスト派への共感の表明として、しばしばスペイン舞曲風のリズムが現われる」と書かれていたので、何となく分かったような気になりました 曲はヴァイオリンの技巧を極めたもので、ダニエル・ホープが極めて優れたヴァイオリニストであることは演奏を聴けば理解できました それとヴァイオリンの音色がとても美しいのが印象的でした

アンコールにシュルホフのヴァイオリン・ソナタの第2楽章を演奏し、満場の拍手を浴びました

 

     


プログラム後半はショスタコーヴィチ「交響曲第5番ニ短調作品47」です   この曲はドミートリ・ショスタコーヴィチ(1906-1975)が1937年に作曲し、同年11月21日にエフゲニー・ムラヴィンスキー指揮レニングラード・フィルにより初演されました 共産党による批判に対する名誉回復を成し遂げた傑作と言われている作品で、「社会主義リアリズムの偉大な成果」と賞賛されました  しかし、ショスタコービチの本心は未だに解かっていません 第1楽章「モデラート~アレグロ・ノン・トロッポ」、第2楽章「アレグレット」、第3楽章「ラルゴ」、第4楽章「アレグロ・ノン・トロッポ」の4楽章から成ります

ノットの指揮で第1楽章が開始され、荘重なカノンが展開します ノットは全体的に速めのテンポでグングン引っ張っていきます 左右に分かれたヴァイオリン同士の対話や、第1ヴァイオリン対第2ヴァイオリン+ヴィオラの対話が目で見ても楽しむことができ、対向配置の成功事例として記憶に残りました やはり、弦楽器の配置にはそれなりの合理的な理由があるものです 第2楽章はスケルツォですが、この楽章でも小気味の良い速めのテンポでサクサクと進め緊張感を持続させます 中盤でのコンマス・水谷晃のソロは素晴らしかった 第3楽章は一転、ゆったりとした葬送音楽となりますが、ここでは相澤政宏のフルート、荒木奏美のオーボエ、福井蔵のファゴット、吉野亜希菜のクラリネットが冴えわたりました ティンパニの連打で開始される第4楽章は、まるでオーケストラ総動員による”怒涛の快進撃”です

東響は終始 熱量の高い集中力に満ちた演奏を展開し、聴衆を圧倒しました あらためてジョナサン・ノットの非凡な統率力を感じさせるコンサートでした

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ヴァィグレ ✕ ユリア・ハーゲン ✕ 読売日響でシューマン「チェロ協奏曲」、ベートーヴェン「交響曲第3番」、ワーグナー「ニュルンベルクのマイスタージンガー」前奏曲を聴く ~ 読響新時代の幕開けか

2019年05月25日 07時22分42秒 | 日記

25日(土)。わが家に来てから今日で1695日目を迎え、米フェイスブックは23日、存在しない人物や組織を装った偽アカウントの削除件数が2019年1~3月に約22億件に上り、前の四半期からほぼ倍増したと発表した というニュースを見て感想を述べるモコタロです

 

     

       そのうちの何割かはトランプ・ファミリーじゃないの? 今日 本人が来日するけど

 

         

 

昨日はほとんど夏でしたね ということで 昨日の夕食は 涼し気な「棒棒鶏」と「冷奴」を作りました   隠し味にニンニクを少し入れましたが、美味しかったです

 

     

 

         

 

昨夕、サントリーホールで読響名曲シリーズ演奏会を聴きました プログラムは①ワーグナー:楽劇「ニュルンベルクのマイスタージンガー」第1幕への前奏曲、②シューマン「チェロ協奏曲」、③ベートーヴェン「交響曲第3番”英雄”」です ②のチェロ独奏はユリア・ハーゲン、指揮はセバスティアン・ヴァィグレです

今年4月から読響第10代常任指揮者を務めることになったセバスティアン・ヴァィグレはドイツ出身の指揮者ですが、1982年からベルリン国立歌劇場の首席ホルン奏者として活躍後、指揮者に転身し、現在フランクフルト歌劇場音楽総監督を務めています   

 

     

 

私は前回、コンサートが重なったので他のシリーズに振り替えたため、今回のコンサートがヴァィグレの指揮で聴く初めての公演になります 自席は前シーズンの1階左ブロック中央(S席)から 1階右ブロック後方(A席)に移りました。それでも限りなくS席に近いA席で、しかも通路側なので満足しています    会場は他のオケに比べてかなり埋っている方だと思います

オケはいつもの読響の並びで、左から第1ヴァイオリン、第2ヴァイオリン、チェロ、ヴィオラ、その後ろにコントラバスという編成。コンマスは小森谷巧氏です   プログラム冊子には日下紗矢子の名前が書かれていましたが、この日は副コンマスに回りました

1曲目はワーグナー:楽劇「ニュルンベルクのマイスタージンガー」から第1幕への前奏曲です 楽劇「ニュルンベルクのマイスタージンガー」はリヒャルト・ワーグナー(1813-1883)が自ら台本を書き、1862年から1867年にかけて作曲した3幕15場から成る楽劇です 実在の靴屋の親方であるマイスタージンガーのハンス・ザックス(1494-1576)を扱い、彼の新しい民衆的芸術の理念が主人公のワルターによって実現される話です ワーグナー自身をハンス・ザックスと見立て、旧弊にとらわれるベックメッサ―を当時ワグネリズム攻撃の先鋒だったハンスリックに似させています 第1幕への「前奏曲」は祝祭的な色彩の強い華やかで壮大な音楽です

ヴァィグレが颯爽と登場、さっそく演奏に入りますが、読響の底力を発揮したスケールの大きな堂々たる演奏でした

2曲目はシューマン「チェロ協奏曲イ短調作品129」です この曲はロベルト・シューマン(1810-1856)が1850年に作曲、その後加筆修正され、シューマンの死後の1860年6月に初演されました 第1楽章「速すぎず」、第2楽章「ゆっくりと」、第3楽章「きわめて生き生きと」の3楽章から成りますが、各楽章は切れ目なく続けて演奏されます

チェロ独奏のユリア・ハーゲンは、1995年ザルツブルク生まれといいますから今年弱冠24歳の新星です 父親は「ハーゲン・クァルテット」のチェロ奏者クレメンス・ハーゲンです

ブルーの衣装に身を包まれたユリア・ハーゲンが登場、ヴァィグレの指揮で第1楽章に入ります 「切れ目なく演奏される」ところがソリストのユリア・ハーゲンにとっては辛いところだったと思います 全体的に平板な演奏という印象が残ります 予習にジャクリーヌ・デュプレの演奏によるCDを聴いて臨んだのですが、まったく印象が違います シューマンを弾くチャレンジ精神は買いますが、演奏するには若干早すぎたのではないかと思います

アンコールにバッハの「無伴奏・第1番」のサラバンドが演奏されましたが、無理してアンコールに応えなくても良かったのではないかと思います

 

     


プログラム後半はベートーヴェン「交響曲第3番変ホ長調”英雄”作品55」です この曲はルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェン(1770-1827)が1803年から1804年にかけて作曲し、1804年にウィーンのロブコヴィッツ侯爵邸で非公開初演された後、1805年4月にアン・デア・ウィーン劇場で公開初演されました 共和主義の象徴であるナポレオンに献呈する予定で作曲され、手稿譜の表紙には「ボナパルト交響曲」と記されましたが、ナポレオンの皇帝就任の知らせを聞いて激怒し、取り止めたと伝えられています

第1楽章「アレグロ・コン・ブリオ」、第2楽章「葬送行進曲:アダージョ・アッサイ」、第3楽章「スケルツォ:アレグロ・ヴィヴァーチェ」、第4楽章「アレグロ・モルト」の4楽章から成ります

この曲は、長大さと巨大さ、第2楽章に葬送行進曲を採用、第3楽章でホルン3本を効果的に活用など、あらゆる面で新境地を開いた作品としてクラシック音楽史の中で燦然と輝いています

オケは前半と異なり、規模が縮小し全体で60人規模の古典派演奏形態を採ります

ヴァィグレのタクトで第1楽章が主和音2連打で開始されますが、「ドイツ出身の指揮者は 遅めのテンポで悠然と曲を進めるのではないか」という私の予想に反して、速めのテンポでサクサクと進め、スッキリとまとめていくスタイルを取ることに驚きました これは、彼がオペラ指揮者であることが強い要素になっているのではないかと推測します それにしても第1楽章は長い 初演当時の聴衆の驚きが目に浮かぶようです

ヴァィグレは第2楽章の葬送行進曲ではテンポをグンと落とし、オケにゆったりと歌わせます 冒頭のオーボエ・ソロが心に沁みますが、首席の蠣崎耕三の演奏が素晴らしい 蠣崎氏が東京フィルの団員だった時にモーツアルトを聴いて以来、ファンになりました この曲で思い出すのは、今から31年前、昭和天皇が崩御された時に、NHKテレビが朝から晩までN響の演奏による「葬送行進曲」を流していたことです それに比べ 平成から令和への移行時における政府主導のお祭り騒ぎはどうでしょう

第3楽章では、従来にない活用方法としてホルン3本が演奏されます このトリオは何回聴いても良いですね 第4楽章では、冒頭近くで弦楽トップによる四重奏が演奏されますが、コンマスの小森谷巧、第2ヴァイオリン首席の瀧村依里、チェロ首席の富岡廉太郎、ヴィオラ首席の鈴木康浩による演奏が素晴らしかった こういうところはCDばかり聴いていても分からないですね 実際に演奏を見ながら聴くと、誰と誰から音が出ているのかが理解できます。これが生演奏の醍醐味の一つだと思います

終演後は新常任指揮者を歓迎する満場の拍手とブラボーの嵐でしたが、今回のドイツもののコンサートは まさに的を射た素晴らしい演奏だったと思います   しかし、常任指揮者はドイツものばかり取り上げているわけにはいきません    問題はドイツ以外の作曲家のプログラムの時の指揮ぶりです。次回以降のヴァィグレの指揮を楽しみにしたいと思います

 

     

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ネーメ・ヤルヴィ✕N響でイベール「モーツアルトへのオマージュ」、フランク「交響曲ニ短調」、サン=サーンス「交響曲第3番」を聴く~N響Bプロ定期演奏会

2019年05月24日 07時23分00秒 | 日記

24日(金)その2.よい子は「その1」も見てね   モコタロはそちらに出演しています

 

         

 

昨夕、サントリーホールでNHK交響楽団の第1914回定期演奏会(Bプロ)を聴きました   プログラムは①イベール「モーツアルトへのオマージュ」、②フランク「交響曲ニ短調」、③サン=サーンス「交響曲第3番ハ短調作品78」です   演奏は③のオルガン独奏=鈴木優人、指揮=ネーメ・ヤルヴィです

ネーメ・ヤルヴィは1937年エストニア生まれで 今年82歳を迎えました。言うまでもなくN響の首席指揮者パーヴォ・ヤルヴィの父親です   エストニア放送交響楽団(現・エストニア響)の首席指揮者、エーテボリ交響楽団の首席指揮者、デトロイト交響楽団の音楽監督、スイス・ロマンド管弦楽団の音楽・芸術監督などを歴任し、2010年にエストニア国立交響楽団の音楽監督に復帰しています

オケはいつものN響の並びで、左から第1ヴァイオリン、第2ヴァイオリン、チェロ、ヴィオラ、その後ろにコントラバスという編成。コンマスは”マロ”こと篠崎史紀氏です

1曲目はイベール「モーツアルトへのオマージュ」です    この曲はジャック・イベール(1890-1962)が1956年、モーツアルトの生誕200年を記念して、フランス国営放送からの依頼により作曲しました 単一楽章の5分程度の曲です

ネーメ・ヤルヴィがゆったりとした足取りで指揮台に向かいます 満場の拍手に一礼し、オケの方に振り返ったかと思ったら 両手が上がり 指揮の態勢に入っています   楽員の方がその俊敏な動作に追い付けない様子です  このことからも分かるように、ヤルヴィの指揮は俊敏そのものです   曲は 20世紀にモーツアルトがワープしたらこういう曲を作るのだろうか、と思えるような軽妙洒脱な音楽でした

2曲目はフランク「交響曲ニ短調」です この曲はベルギー生まれで フランスに帰化したセザール・フランク(1822-1890)が1886年から1888年にかけて作曲し、翌1889年に初演された作品です

作品は第1楽章「レント~アレグロ・ノン・トロッポ」、第2楽章「アレグレット」、第3楽章「アレグロ・ノン・トロッポ」の3楽章から成りますが、楽章を超えて共通の主題が使用される循環形式により、全体に統一感が保たれています

ヤルヴィの指揮は、この曲でも俊敏そのもので、全体的に速めのテンポでグイグイ押していきます ヤルヴィの必要にして最小限のタクトの動きから、オケは金管を中心によく鳴ります 無駄のない動きは息子のパーヴォに受け継がれたのかも知れません


     


プログラム後半はサン=サーンス「交響曲第3番ハ短調作品78」です この曲はカミーユ・サン=サーンス(1835-1921)が1886年に作曲、同年ロンドンで初演されました

第1楽章:第1部「アダージョ~アレグロ・モデラート」、同第2部「ポコ・アダージョ」、第2楽章:第1部「スケルツォ」、同第2部「フィナーレ」の2楽章4部から構成されていますが、全体を通して、循環形式が取られており、主題が繰り返し出てきます

演奏で特に印象に残ったのは第1楽章第2部で、オルガンに導かれて弦楽器が美しいメロディーを奏でるところです 鈴木優人の演奏するパイプオルガンの重低音が弦楽器にかぶさり、会場内の空気を振動させます こういうところはオルガン奏者でもあったサン=サーンスの真骨頂といったところです

そして第2楽章第2部の冒頭、オルガンの強奏に続き、厳かな主題が現われ、ピアノの分散和音が奏でられますが、この部分の一連の演奏はとても美しく、魅了されます

演奏を聴き終わって思うのは、この曲はパイプオルガン奏者でもあったサン=サーンスらしいオルガンの魅力を最大限に発揮した作品だな、ということです

ヤルヴィは満場の拍手に応え、各セクションごとに立たせましたが、2階正面のオルガン操作卓に居る鈴木優人に対し、DA  PUMP よろしく「カモン・ベイビー」と1階に降りてくるよう手で合図しました。弦楽器をセクションごとに立たせている間に鈴木優人が指揮台の傍らに登場、ヤルヴィと握手しました 私はこれまでこの曲を何回も聴いてきましたが、オルガン奏者を1階まで降ろしたのはネーメ・ヤルヴィが初めてです

若手の女性ヴァイオリン奏者から花束を受け取ったヤルヴィは 嬉しそうな表情を見せ、満場の拍手に 耳に両手をあて、「聴こえない、もっと大きな拍手を」と言わんばかりの仕草を見せ 聴衆の笑いを誘いました   こういうのを「年の功」というのでしょう これを若手や中堅の指揮者がやったら、間違いなく鍋や洗濯機が飛んでくるでしょう

今回のコンサートは、82歳にしてまったくブレない指揮を見せたネーメ・ヤルヴィに魅了された公演でした

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藝大モーニング・コンサートでグラズノフ「アルトサクソフォンと弦楽オーケストラのための協奏曲」(Sax:蒙和雅)、シベリウス「ヴァイオリン協奏曲」(Vn:大島理紗子)を聴く / 藝大主催公演あり

2019年05月24日 00時02分30秒 | 日記

24日(金)その1.わが家に来てから今日で1694日目を迎え、第一生命の「第32回サラリーマン川柳」の第1位に「五時過ぎた  カモンベイビー  USA(うさ)ばらし」が選ばれた というニュースを見て感想を述べるモコタロです

 

     

     ご主人様は DA PUMP なんて知らないから この川柳の意味が理解できないようだ

 

         

 

昨日、夕食に「豚バラ麻婆茄子」を作りました 何回か作っているので、豆板醤と甜面醤の味付け加減が上手になりました。ピリ辛で美味しいです

 

     

 

         

 

昨日午前11時から東京藝大奏楽堂で「藝大モーニング・コンサート」を、午後7時からサントリーホールでN響定期演奏会(Bプロ)を聴きました ここでは「第4回  藝大モーニング・コンサート」について書きます


     


全席自由です。1階8列24番、センターブロック右通路側を押さえました

1曲目はグラズノフ「アルトサクソフォンと弦楽オーケストラのための協奏曲」です この曲はアレクサンドル・グラズノフ(1865-1936)が1931年に作曲し、1934年にパリで初演された作品です 単一楽章の曲ですが、大きく急ー緩ー急の3つの部分に分かれています

弦楽奏者が配置に着きますが、いつもの通り左から第1ヴァイオリン、第2ヴァイオリン、チェロ、ヴィオラ、その後ろにコントラバスという並び。コンマスは戸原直氏です

アルトサクソフォン独奏は藝大4年・蒙和雅(もん かずや)君です。藝大音楽学部教授・音楽学部長の迫昭義嘉氏の指揮で演奏に入ります

ロシアの作曲家グラズノフがサクソフォン協奏曲を書いていたとは驚きでしたが、蒙君の演奏で聴くこの曲は極めてロマンに満ちた曲想で、主題が全体を通して繰り返し出現するので親しみやすい作品であることが分かります 蒙君はサクソフォンの音色の魅力を存分に引き出し、終始 滑らかに演奏して聴衆を魅了しました ライブで演奏されることがほとんどない作品を取り上げ、素晴らしい演奏を聴かせてくれた蒙君に感謝します


     


プログラム後半はシベリウス「ヴァイオリン協奏曲ニ短調作品47」です   この曲はジャン・シベリウス(1865‐1957)が1903年に作曲しましたが、その後、自作に厳しい彼は1905年に改訂しました シベリウスはプロのヴァイオリニストを目指していましたが、途中で諦め、作曲に専念するようになりました それくらいの人なので、ヴァイオリン協奏曲は技巧を極めた演奏困難な作品に仕上がっています 第1楽章「アレグロ・モデラート」、第2楽章「アダージョ・ディ・モルト」、第3楽章「アレグロ、マ・ノン・タント」の3楽章から成ります

ヴァイオリン独奏の藝大4年・大島理紗子さんが淡いピンクの衣装で登場、迫田氏の指揮で第1楽章に入ります この楽章では、北欧の冷たい空気を感じさせる大島さんのヴァイオリンが冴え渡りました 2か所ほどちょっとひっかかりを感じましたが、後半ではそれをリカバリーし堂々と終結に結び付けました 独奏ヴァイオリンの出番がないオケだけの演奏では、ティンパニに強打が印象に残りました

第2楽章では、大島さんの抒情的な演奏が素晴らしく、コントラバスの重低音がしっかりと支えていました 第3楽章ではリズミカルなティンパニに導かれて演奏される大島さんの躍動感溢れる演奏が心地よく響きました フィナーレの大団円は圧巻でした

この日出演の二人はともに愛知県出身ですが、それぞれ地元の公立高校を卒業後、東京藝大に入学し、現在4年次在学中です。これからの二人の活躍を期待したいと思います


     


         


東京藝大主催公演があります 例年恒例になったコンサートで、「ベルリン・フィル首席奏者 ヴェンツェル・フックスとシュテファン・ドールを迎えて」です 7月12日(金)午後7時から東京藝大奏楽堂で開かれます。当日は午後6時半からフックス&ドールによるプレトークがあるそうです 全席自由で2000円です。プログラムと出演者は下のチラシの通りです 残念ながら私は当日、読響アンサンブルのコンサートがあるので聴けません これは超お薦めコンサートです

 

     

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清水和音「オール・ショパン・プログラム」を聴く~芸劇ブランチコンサート「名曲リサイタル・サロン」スタート / 新交響楽団第246回演奏会のチケットを取る

2019年05月23日 07時20分21秒 | 日記

23日(木)。先日のブログに、赤ワインやチョコレートに含まれるポリフェノールの効用について書きましたが、昨日の朝日朝刊・医療面に「ポリフェノール摂取でアルツハイマー予防?」という記事が載っていました 記事によると、植物に含まれる成分ポリフェノールの一種「タキシフォリン」に、アルツハイマー病にかかわる異常なたんぱく質の蓄積や炎症を抑える効果があることが、国立病院機構京都医療センターなどのマウスの実験で分かったとのことです 実験によると、「タキシフォリン」がタンパク質の一種アミロイドβをつくる細胞を活性化させる酵素の働きを抑えているようだということです 「タキシフォリン」はアザミなどの植物に含まれるそうです ワイン、チョコレート、そして今度はアザミです ただし、人での効果は確認されていないといいますから、今後の研究を待つしかありませんね

ということで、わが家に来てから今日で1693日目を迎え、25日に来日するトランプ米大統領が東京・国技館で大相撲を観戦する際に、土俵近くの升席に椅子を置いて座って観戦し、複数の警護官(SP)が周囲について座布団が舞った場合に備えることが明らかになった というニュースを見て感想を述べるモコタロです

 

     

      日本はせいぜい座布団が飛ぶくらいで済むけど 北朝鮮だったらミサイルが飛ぶぜ

 

         

 

昨日、夕食に「鶏の唐揚げ」と「トマトとレタスの卵スープ」を作りました この前作った時に娘から「唐揚げなのに何でカラっとしていないんだろう」とクレームが寄せられたので、今回は初心に立ち返って 栗原はるみ先生のレシピ通りに作りました 先生のレシピは「250グラム程度の鶏もも肉の切り身を特製のうまみ醤油に漬け込んでポリ袋に入れ、片栗粉を入れてシャカシャカして全体にまぶしてから180度の油で3分+3分揚げる」のですが、以前は600グラム分をいっぺんに作るので、片栗粉をまんべんなくまぶすために、シャカシャカしないで片栗粉を鶏肉に揉み込んでいました。これが揚げた時にグチャグチャになる原因になっていたのです 今回は2つの袋に鶏肉を300グラムずつ別々に入れてシャカシャカしたものを揚げました 結果は大成功でした

人はこうして失敗のうえに成功体験を積み重ねながら成長していくのでしょうね まだまだ修行が足りないな

 

     

 

         

 

7月15日(月・祝)午後2時から東京芸術劇場コンサートホールで開かれる新交響楽団第246回演奏会のチケットを取りました   プログラムは①ベルリオーズ:劇的交響曲「ロメオとジュリエット」より抜粋、②プロコフィエフ:バレエ組曲「ロメオとジュリエット」より抜粋、③バーンスタイン:「ウエストサイドストーリー」より「シンフォニックダンス」です 指揮は矢崎彦太郎です

 

     

 

         

 

昨日、池袋の東京芸術劇場で「芸劇ブランチコンサート 第1回名曲リサイタル・サロン」を聴きました これは、これまで隔月に開いてきた「芸劇ブランチコンサート『名曲ラウンジ』」が好評で、毎回満席に近い状況に欲を出した、もとい、気を良くした主催者が、今度は出演者が一人だけの「リサイタル」(ギャラが一人分で済む)を開いてみようと企画した新シリーズです 両方ともチケット代は@2400円なので、リサイタル・サロンはボロもうけではないか 清水和音氏が1枚絡んでいることは間違いありません それを証拠に、第1回目の「リサイタル・サロン」の出演者は清水氏その人です

プログラムはショパンの①即興曲第2番 嬰へ長調、②4つのマズルカ(第22番 嬰ト短調、第23番 ニ長調、第24番 ハ長調、第25番 ロ短調)、③バラード第1番 ト短調、④ノクターン第5番 嬰へ長調、同第14番 嬰へ短調、⑤ワルツ第6番 変ニ長調「子犬のワルツ」、同第7番 嬰ハ短調、同第8番  変イ長調、⑥ポロネーズ第6番 変イ長調「英雄」です

 

     

 

これまでの『名曲ラウンジ』ほどではないにしても、1階席を中心にかなりの集客率を誇っています

”必殺仕掛け人”清水和音氏が登場し1曲目の「即興曲第2番嬰へ長調」の演奏に入ります この曲はフレデリック・ショパン(1810‐1849)が1839年に作曲した作品です

「名曲ラウンジ」の初代ナビゲーター八塩圭子さんが当シリーズでカムバックし、清水氏にインタビューしましたが、彼は「ショパンはこの作品を失敗作と言っていましたが、私は好きな曲です」と語ったうえ、次に演奏するマズルカとワルツの違いについて「同じ3拍子の曲でも、ワルツは貴族のための曲で、マズルカは庶民のための曲です」と解説しました

4つのマズルカ」(第22番 嬰ト短調、第23番 ニ長調、第24番 ハ長調、第25番 ロ短調)は1837年から1838年にかけて作曲され、R.モストフスカ伯爵令嬢に献呈されました 清水氏の演奏は長調と短調の弾き分けが見事でしたが、個人的には第23番の元気のいいマズルカが好きです

続けて演奏された「バラード第1番 ト短調」(1835年に完成。シュトックハウゼン男爵に献呈)について清水氏は、「この曲は苦労して作曲した形跡があります。迷いながら書いている感じがします この曲は指回りが難しいので嫌いです」と語っていました。プロの演奏家が「嫌いです」と言っていいのか 嫌いな曲を弾くピアニストの演奏を 気持ちよく聴けると思うか 嫌いだったら わざわざプログラムに載せなければいいだろう ショパンの作品は山ほどあるんだから こういうところが清水氏はどーもなぁ、と思うのです

この曲はクラシックを聴き始めた頃に、よくホロヴィッツのCDで聴きました まさに感動的な名演です


     


次にノクターン第5番 嬰へ長調(1830~31年に作曲)、同第14番 嬰へ短調(1841年に作曲)を演奏、続けて1846年から翌47年にかけて作曲したワルツ第6番 変ニ長調「子犬のワルツ」、同第7番 嬰ハ短調、同第8番  変イ長調を演奏しました 「ノクターン」は夜想曲のことですが、アイルランドのピアニスト、ジョン・フィールド(1782‐1837)が創始者と言われています 個人的には第13番ハ短調作品48-1(レント)のノクターンが一番好きです

次に演奏するポロネーズ第6番 変イ長調「英雄」について清水氏は、「ショパンの曲は初期の作品に有名な曲が多いんです 幻想即興曲にしても、子犬のワルツにしてもそうです。その一方、このポロネーズは後期の1842年に作曲された作品です ショパン・プログラムのアンコール曲と言えばこの曲がよく選ばれます」と語り、演奏に入りました。パワフルな清水氏にはこういう曲が向いているように思います


     

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