人生の目的は音楽だ!toraのブログ

クラシック・コンサートを聴いた感想、映画を観た感想、お薦め本等について毎日、その翌日朝に書き綴っています。

カーチュン・ウォン ✕ 小山実稚恵 ✕ 読売日響でモーツアルト「ピアノ協奏曲第20番」、ブラームス「交響曲第4番」、バーバー「弦楽のためのアダージョ」を聴く

2019年02月28日 00時18分03秒 | 日記

28日(木)。「二月は逃げる」と言いますが、早いもので2月も今日で終わりです 今年も残すところあと305日になりました。明日から3月です

 

         

 

昨日の夕食は「寄せ鍋」にしました 何しろ時間があまり無かったので、鍋スープに材料をぶち込むだけでいい鍋料理(料理と言えれば)は簡単で助かります

 

     

 

         

 

昨夕、池袋の東京芸術劇場コンサートホールで読売日本交響楽団のコンサートを聴きました これは2019都民芸術フェスティバル参加公演です。プログラムは①バーバー「弦楽のためのアダージョ」、②モーツアルト「ピアノ協奏曲第20番ニ短調K.466」、③ブラームス「交響曲第4番ホ短調作品98」です ②のピアノ独奏は小山実稚恵、指揮はカーチュン・ウォンです

指揮者カーチュン・ウォンは1986年シンガポール生まれ。2016年第5回グスタフ・マーラー国際指揮者コンクール優勝者です

 

     

 

自席は2階K列5番、左ブロック右通路側です。会場はほぼ満席。読響+小山実稚恵の組み合わせはよく入りますね

弦楽セクションが配置に着きます。左から第1ヴァイオリン、第2ヴァイオリン、チェロ、ヴィオラ、その後ろにコントラバスという いつもの読響の編成。コンマスは小森谷巧氏です

1曲目はバーバー「弦楽のためのアダージョ」です    この曲はアメリカの作曲家サミュエル・バーバー(1910-1981)が26歳の時、1936年に作曲した「弦楽四重奏曲ロ短調 作品11」の第2楽章を弦楽合奏により演奏するものです   葬儀の時に流されるクラシック音楽といえば、ベートーヴェンの英雄交響曲の第2楽章「葬送行進曲:アダージョ・アッサイ」か バーバーの「アダージョ」か というくらいよく聴かれます    ひと言でいえば「静謐な音楽」です

カーチュン・ウォンの指揮で演奏に入りますが、極めてゆったりしたテンポで丁寧に音を紡いでいきます   悲しみを感じるというよりは、純音楽的に美しいと思います

2曲目はモーツアルト「ピアノ協奏曲第20番ニ短調K.466」です   この曲はウォルフガング・アマデウス・モーツァルト(1756‐1791)がザルツブルクを離れウィーンに出てきて4年が経とうとする1785年(作曲者29歳)の時に作曲されました モーツアルトのピアノ協奏曲で短調の曲はこのK.466と第24番ハ短調K.491だけですが、両曲とも名曲です 第1楽章「アレグロ」、第2楽章「ロマンツェ」、第3楽章「アレグロ・アッサイ」の3楽章から成ります

グリーン系の衣装に身を包まれたソリスト、小山実稚恵が指揮者とともに登場、ピアノに向かいます 数少ない例外を除いて、モーツアルトのピアノ協奏曲はオーケストラの序奏が続き、ピアノは女王の如くおもむろに登場します この曲も例外ではありません。ピアノが登場してからのオケとのやり取りはデモーニッシュでドラマティックです 第2楽章は穏やかに始まり中間部で嵐となり、再び穏やかに終わります。この楽章は好きです 第3楽章は音楽がドラマティックに疾走します この楽章の終盤でソリストは比較的長いカデンツァを弾きましたが、ベートーヴェンだろうか、ブラームスだろうか、はたまたフンメルだろうか 聴きごたえのあるカデンツァでした

カーチュン・ウォンの指揮は指示が適格で、楽員やソリストは演奏しやすいのではないかと思いました

ソリストのアンコールは同じモーツアルトかと思ったら、得意のショパン「ノクターン第21番ハ短調”遺作”」を鮮やかに演奏し聴衆のクールダウンを図りました


     


プログラム後半はブラームス「交響曲第4番ホ短調作品98」です この曲はヨハネス・ブラームス(1833‐1897)が1884年から翌85年にかけて作曲し、1885年10月25日にブラームスの指揮、マイニンゲンの宮廷管弦楽団により初演されました 第1楽章「アレグロ・ノン・トロッポ」、第2楽章「アンダンテ・モデラート」、第3楽章「アレグロ・ジョコーソ」、第4楽章「アレグロ・エネルジーコ・エ・パッショナート」の4楽章から成ります

カーチュン・ウォンの指揮で第1楽章の演奏に入ります 冒頭のため息のようなメロディーを聴いた時、この曲に合わせて1曲目のバーバー「アダージョ」をプログラミングしたのだろうか、と思いました 第1楽章が終わってもタクトは下ろされず、そのまま第2楽章に入りました こういうやり方はあまり見たことがありません。第2楽章が終わるとさすがにタクトは下ろしましたが、ほとんど間を置くことなく第3楽章に入りました この楽章ではトライアングルが活躍しますが、ステージを見てもどこにもトライアングル奏者がいません 音のする方角を見ると、2階左サイドのバルコニー席の扉近くにスタンバイしていました トライアングルを2階に上げるという試みも初めて見ました 別のアングルでトライしようとしたのでしょうが、これは効果的でした また、この楽章では固いマレットによるティンパニの打ち込みが爽快でした また、第3楽章から第4楽章にかけても間を置かず続けて演奏しました このことから分かるのは、カーチュン・ウォンはこの曲を大きく前半と後半の2つの塊りと捉えて演奏したということです その意図は本人にしか分かりませんが、楽員の集中力を維持するためには有効な手法だと思います

演奏では木管楽器、とくにフルートのフリスト・ドブリノヴ、クラリネットの藤井洋子、オーボエの蠣崎耕三、ファゴットに吉田将の演奏が際立っており、金管ではホルンの松坂隼の演奏が冴えていました

アンコールはブラームスの「スラブ舞曲」の何番かと思いきや、エルガーの「愛のあいさつ」でした カーチュン・ウォンはゆったりしたテンポでたっぷりと歌わせ、聴衆のクールダウンを図りました

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METライブビューイングでチレア「アドリアーナ・ルクヴルール」を観る ~ アンナ・ネトレプコ、ピョートル・ベチャワ、アニータ・ラチヴェリシュヴィリ、アンブロージョ・マエストリにブラボー!

2019年02月27日 07時27分44秒 | 日記

27日(水)。モコタロが強制給餌(注射器のようなシリンジに水で溶かした餌を入れ、口から注入する)が必要になったので、昨日駒込の動物病院に行って微粉末のラビットフードを買ってきました これです 100グラム入りですが、皆さん、いくらだと思いますか? 私は明細書を見て 思わずのけ反りそうになりました

 

     

 

3,880円です。100グラムで   ペットの世界も人間と変わりませんね もっとも、入院させると1日15,000円かかるということなので、まだ良い方かもしれません 

 

         

 

昨日、夕食に「豚バラ肉のエリンギ炒め」と「野菜と豆腐とホタテのプチ鍋」を作りました 「豚バラ~」は何度も作っていますが、娘の大好物です

 

     

 

         

 

昨日、新宿ピカデリーでMETライブビューイング、フランチェスコ・チレア「アドリア―ナ・ルクヴルール」を観ました これは今年1月12日に米ニューヨークのメトロポリタン歌劇場で上演されたオペラのライブ録画映像です キャストは、アドリア―ナ・ルクヴルール=アンナ・ネトレプコ、マウリツィオ=ピョートル・ベチャワ、ブイヨン公妃=アニータ・ラチヴェリシュヴィリ、ミショネ=アンブロージョ・マエストリ、ブイヨン侯爵=マウリツィオ・ムラ―ロ。管弦楽=メトロポリタン歌劇場管弦楽団、演出=ディヴィッド・マクヴィカー、指揮=ジャナンドレア・ノセダです

 

     

 

舞台は1730年のパリ。有名劇場コメディ・フランセーズの看板女優アドリア―ナ・ルクヴルールは、ザクセン伯爵の旗手マウリツィオと恋仲になっている   アドリア―ナを密かに愛する舞台監督ミショネは、恋人との再会を喜ぶアドリア―ナの姿を見て、自らの想いを諦める(以上第1幕)。

舞台はブイヨン侯爵の別荘。ブイヨン公妃がマウリツィオを待っている。実はマウリツィオはザクセン伯爵その人で、かつては彼女の愛人だったが、今は政治的職務のため繋がっていた   公妃はマウリツィオの冷淡さをなじるが、夫である公爵が現われたので身を隠す。マウリツィオは続いて現われたアドリア―ナに、政治的に重要な女性だからと公妃を逃がして欲しいと頼む。彼女の正体も知らずに引き受けたアドリア―ナだが、やり取りするうちに相手が恋敵であることを知る(以上第2幕)

舞台はブイヨン侯爵邸の大広間。夜会が開かれている。アドリア―ナと公妃は初めて顔を合わせるが、互いの声から相手が別荘の夜の恋敵と知る   余興に朗読を所望されたアドリア―ナは、夫を裏切った女性フェードルの物語を朗読する。侮辱された公妃は怒りに震える(以上第3幕)

公妃との対決以来、病に伏せったアドリア―ナのもとに、かつて彼女がマウリツィオに贈ったスミレの花が届く。実はマウリツィオはその花を公妃に渡してしまい、公妃がアドリア―ナに届けたのだった。そうとは知らないアドリア―ナは、贈った花を突き返す恋人の冷たい仕打ちを嘆く   マウリツィオが駆けつけて誤解を解くが、突然アドリア―ナは苦しみ始める。スミレの花には毒が仕込まれていたのだった(以上第4幕)

 

     

 

「アドリア―ナ・ルクヴルール」はフランチェスコ・チレア(1866-1950)が1902年に作曲した彼の代表作で、主役のアドリア―ナ・ルクヴルール(1692‐1730)は実在したパリの名門劇場コメディ・フランセーズの看板女優です ザクセン(現在のドイツ東部にあった国)選帝侯の庶子で武勲の誉れ高かった伯爵マウリツィオと恋仲だったことや、ブイヨン公妃が恋敵だったのも事実です 本物のアドリア―ナは舞台上で倒れて2週間後に亡くなる劇的な死を遂げたため、公妃による毒殺説が流れましたが、真偽は不明とのことです

開幕を前に、別室でMET総裁ピーター・ゲルブとヒロインのアドリア―ナ・ルクブルールを歌うアンナ・ネトレプコとの対談がありました ネトレプコは「本番が始まったら集中して役に成り切るので、幕間のインタビューは避けてほしいとお願いしました」と語っていました 彼女のパフォーマンスを観れば良く理解できます

1971年ロシア生まれのアンナ・ネトレプコは今やMETを代表する看板スター歌手に上り詰めています 今回、第1幕で歌われるアリア「私は芸術の卑しいしもべ」を聴いて、いつも通りビロードのような高音にしびれましたが、これまでと比べて、若干声が低くなったように感じました 円熟味が増してきたと言うべきでしょうか。幕前の”宣言”通り、役に成り切って身体を張って歌に演技に没頭していました

マウリツィオ(=ザクセン伯爵)を歌ったピョートル・ベチャワは1966年ポーランド生まれのMETを代表するスター・テノールです いつも歌と演技に全力投球する姿勢は多くの人々の支持を得ています

迫力満点だな、と思ったのはブイヨン公妃を歌ったアニータ・ラチヴェリシュヴィリです METライブ「アイーダ」でネトレプコと共演、アムネリスを歌って存在感を見せつけたメゾ・ソプラノです 幕間のインタビューで、進行役のテノール歌手ポレンザ―二に「あなたは、あのリッカルド・ムーティから現在 最高のメゾ・ソプラノと言われたそうですね」とマイクを向けられていましたが、今が絶頂期かも知れません    この人は恵まれた体格から出る迫力ある歌声と迫真の演技力で圧倒します

ミショネを歌ったアンブロージョ・マエストリは1970年イタリアのパヴィア生まれのバリトンです   METライブビューイングでは、ヴェルディ「ファルスタッフ」のタイトルロールやドニゼッティ「愛の妙薬」のドゥルカマーラ博士など、喜劇的なオペラでの活躍が目立った歌手ですが、今回、ヒロインに想いを寄せながらも相手がいると知って身を引く初老の舞台監督の悲哀を見事に演じ 歌っているのを見て、マエストリのもう一つの魅力を発見したようで嬉しくなりました   幕間のインタビューにブイヨン侯爵役のムラ―ロらと3人で登場した際、いきなりイタリア語で話し出したので、進行役のポレンザ―二から「あのぅ、ここはアメリカで・・・」と言われ、「英語は苦手なんで、通訳してくれるかな」と頼んだら、「それじゃ、他の2人を先にして、あとで」と言われお預けを食ってしまいました   結局、時間切れで「あとで」のインタビューはなくなってしまいました    METでは自国語の他に英語が話せないと存在自体を無視されるようです マエストリ、かわいそ~

1966年スコットランド生まれのマクヴィカーによる演出は、METライブの「イル・トロヴァトーレ」「ノルマ」「トスカ」と同様、緻密な時代考証をベースとした伝統的でオーソドックスなもので好感が持てました オペラの演出はこうであってほしいと思います

1964年ミラノ生まれのジャナンドレア・ノセダは、幕間のインタビューでメトロポリタン歌劇場管弦楽団について訊かれ、「世界のメジャー・オケと肩を並べる実力を持っているが、柔軟性の高さにおいては最高峰のオーケストラだ」と語っていました。ノセダはオケを煽り立て局面に応じてよく歌わせていました

2回の休憩、幕間のインタビュー等を含めて約3時間20分の上映です 上映は28日(金)まで、新宿ピカデリーは午前10時から、東銀座の東劇は15時からと19時からの2回上映です 現在望みうる最高のキャストによる上映です。お薦めします

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最大はバッハ・コレギウム・ジャパン、最小はNHK交響楽団~在京オーケストラのチケットの大きさを比較してみれば / ピエール・ルメートル「天国でまた会おう(上・下)」を買う

2019年02月26日 07時23分12秒 | 日記

26日(火)。昨日午前、豊島税務署に確定申告に行ってきました 例年は2時間かかるのが今回は1時間半で終わりました 前回までは医療費控除があった関係で多少の戻しがあったのですが、今回はそれがないので、追加徴収されます。悔しいです

一方、娘は1週間ぶりに駒込の動物病院にモコタロを連れていき血液検査をやってもらいました。「立っていられない。ローリングを繰り返す(クルクル回転する)」という症状については、依然として原因は不明で、検査の結果は総白血球数と血中尿素が多いということでした 薬を変えて様子を見て金曜日に再診するとのことです。わが家にとって、モコタロは家族同様なので、この1週間は娘と私が交代で夜中に付き添ってローリングするたびに止めて、食事(水に溶かしたもの)と水をやっていたのですが、今後は朝と夜だけやればよいとのことなので 安心して眠れます この1週間は、ローリングで暴れても良いようにキャリーバックの中に布を敷いて寝かしていたのですが、ケージに戻した方が良いとのことなので、ケージ購入後約1600日くらい経って初めてケージとその周辺を大掃除しました 出てくるわ出てくるわ(中原中也かい!)牧草やらモコタロの毛やら、フンやら・・・大量に出てきました 床に吸水シートを敷いて、周りに緩衝材(小型座布団のようなもの)を置いて準備を済ませました

下の写真は病院から帰ってきて、キャリーバックの中で横になって大好物の乾燥パパイヤを食べるモコタロです

 

     

     

         

 

昨日、夕食に「牛肉と大根の煮物」と「トマトとレタスのスープ」を作りました 「牛肉~」は本当に久しぶりに作りましたが、美味しかったです

 

     

 

         

 

在京オーケストラの定期会員券(チケット)の大きさ(半券付き)を測ってみました 下の写真は、上から①NHK交響楽団、②読売日響、③新日本フィル、④東京都交響楽団、⑤東京交響楽団、⑥新国立劇場、⑦バッハ・コレギウム・ジャパンという順番です チケットのサイズ(横✕縦)は①16センチ✕4.5センチ、②16センチ✕6センチ、③16センチ✕5センチ、④18センチ✕5センチ、⑤21センチ✕4.6センチ、⑥16センチ✕6.5センチ、⑦19センチ✕8センチです ※写真は座席番号を伏せるため裏側を撮っています

 

     

 

以上から分かるように、最小はNHK交響楽団(16センチ✕4.5センチ)で、最大はバッハ・コレギウム・ジャパン(19センチ✕8センチ)です

私の場合は月平均17回程度コンサートに通っていますが、その月分のチケットは財布に入れて持ち歩いています その関係で困るのは、N響のチケットは小さすぎて他のチケットに埋没しそうな一方、東京交響楽団とB.C.Jのチケットは大きすぎて、ミシン線のところで折らないと財布に入り切らないことです やはり最適なのは読売日響、新日本フィルの「横16センチ✕縦6センチ」というサイズです 在京オーケストラの定期会員券だけでも良いので、サイズをある程度 業界で統一できないものでしょうか

ついでに言えば、N響のチケットはミシン線が切れやすくなっていて、ある時モギリの担当者に渡す前に切れてしまったことがありました 改善してほしいと思います。「たかがチケット、されどチケット」です

 

     

 

         

 

ピエール・ルメートル著「天国でまた会おう(上・下)」(ハヤカワ・ミステリ文庫)を買いました 実は先に同じ著者による「炎の色(上・下)」を購入してあり、さて読もうと思っていたら、新聞のコラムに「炎の色」は「天国でまた会おう」の後日談である旨が書いてあったので、「天国でまた会おう」を先に読んだ方が良いと思ったのです もちろん、両著はそれぞれ独立したストーリーとして読んでも一向に差し支えないと書かれていましたが、私はこういうのは読む順番が気になります 「この本、まだ読んでいないよな?」と思って最初の1ページを立ち読みしたら 初めて読む話のように思ったので買い求めました ピエール・ルメートルと言えば「その女、アレックス」や「悲しみのイレーヌ」で大きな話題を呼んだページ・ターナーです 面白いこと間違いなしでしょう

 

     

 

     

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片山杜秀著「音楽放浪記 世界之巻」を読む~カザルスがチェロの歴史を変えたと言われる根拠、アファナシエフの演奏が極端に遅い理由など興味深い話が満載

2019年02月25日 07時21分08秒 | 日記

25日(月)。片山杜秀著「音楽放浪記 世界之巻」(ちくま文庫)を読み終わりました 片山杜秀は1963年宮城県生まれ。思想史家、音楽評論家。慶應義塾大学法学部教授

 

     

 

この本は、アルテスパブリッシングから刊行された「片山杜秀の本1 音盤考現学」(2008年2月)、「片山杜秀の本2 音盤博物誌」(2008年5月)に所収の100篇から55篇を採録したもので、文庫化にあたり再編集されたものです なお、この2冊は第30回サントリー文芸賞と第18回吉田秀和賞をダブル受賞しています

「クラシック音楽は、聴衆の高齢化に伴って、このままいけば衰退の一途をたどり絶滅する」と危機感を持っていつも警告を発信し続けている一人が片山杜秀氏です その一方で、この本で扱われている作曲家や作品などの紹介を読むと、ショスタコーヴィチやシェーンベルクは当たり前、クセナキス、ノーノ、べリオ、ブーレーズ、シュトックハウゼン、ライヒといった現代音楽の作曲家が次々と出てきて、著者はこの分野で他の追随を許さないオタク的な知識を披露します この分野に限らず、法学部教授がどうしてこんなことまで知っているんだろう と驚くほど幅広い知識を持ち合わせていることに驚きます

分かり易いところでご紹介すると、SP時代にヴァイオリン小曲集が多く録音されたことについて著者は次のように書いています

「SP時代の代表的名盤解説書、あらえびすの『名曲決定版』が、指揮者でもなくピアニストでもなくヴァイオリニストから始め、そこに膨大なページをとるのは、たんに あらえびす がヴァイオリン・ファンということだけでなく、SPや蓄音機の特性からいっても当然至極だろう そうした音響特性を最大限に発揮させるべく、艶やかなヴィブラートを一様にかけつづけ、本物もびっくりというくらいの魅惑的な響きを世界中の蓄音機から発して、音楽ファンを狂喜させたのが、クライスラーのSPなのだ

この理屈はよく理解できます また、カザルスがチェロの歴史を変えた理由について、著者は次のように書いています

「チェリストたちは、かつては両手を体にくっつけていた。上腕部は胴から離さない。しっかり押さえつける。それで、下腕部だけを動かす。そうやって、左手の先ではチェロの棹の部分を握る。右手の先では弓を持つ。身をすぼめて、大きな楽器を抱え込む要領である。それがチェロ奏者の正統的な姿だった。カザルスはそこに爆弾を落とした 身を小さくするのをやめ、手を胴から解放したのである 楽器の表現力が大きく変わったのだ。それでは何故、19世紀末までチェロ弾きたちは手を胴から解き放たなかったのか。それはチェロにはエンド・ピンが付いていなかったからである チェロは床に立てられなかった。床から浮かせ、両足で挟むものだった。両ひざでしっかりつかまえないと楽器は固定しない

また、私の好きなピアニストの一人、アファナシエフの演奏が極端に遅い理由について次のように書いています

「90年代末になって本人にインタビューする機会が訪れた 単刀直入に訊いた。『遅く弾き、響きに耳を傾けている、奇妙な演奏スタイルへと、あなたを誘惑した犯人は誰ですか?』と。アファナシエフの答えは日本の能だった 彼はモスクワで十代の半ばに、輸入盤の能のLPレコードを聴き、魅せられたという そのどこにか? まず緩慢な時の流れにである 一音一語、たっぷり引き伸ばすくだりで、自分もこういうゆったりした時間に生きたいと願ったという しかし、より重要なのは声の質だ。アファナシエフは能役者の声色を気に入ったらしい。分かり易く言えば”だみ声”である

さらにアファナシエフは次のように付言したといいます

「メロディア・レーベルから発売されていた、ソ連軍がナチ・ドイツから接収したフルトヴェングラーの数々の録音の、遅くうねるような演奏に影響され、そこに能が重なって、今日の自分ができた

「能」と「フルトヴェングラー」からインスパイアされ、遅い演奏スタイルを確立したというアファナシエフです しかし、フルトヴェングラーは遅いだけでなくテンポをかなり揺らしますが、アファナシエフは一貫して遅いと思います

この本を読んで是非聴いてみたいと思ったのはソ連の作曲家ミャスコフスキーの交響曲です 著者は次のように書いています

「1920年代、新興国家ソ連に遅まきながら炸裂した19世紀ロシア・シンフォニズムの最後の2発の打ち上げ花火 ある研究者がそう呼んだのは、シチェルバチョフの第2番、そしてミャスコフスキーの第6番である。この2曲は、帝政末期にラフマニノフ、リヤブノフなどが花開かせた後期ロマン派大型交響曲の歴史に華々しくケリをつけ、ショスタコーヴィチやポポフら、いわば純ソ連育ちのシンフォ二ストによる次の時代の到来をも促したというわけだ ミャスコフスキーの第6番は、同じ第6番のせいもあってチャイコフスキーの『悲愴』と比較されもする。が、少なくとも第1楽章に限れば『悲愴』というより『悲劇的』だ マーラーの第6番だ。後のショスタコーヴィチやポポフに深く影を落とすマーラーが『ミャス6』にもすでにハッキリいる 第1楽章は地獄落ちモットーと懐疑動機とマーラー的ジェスチャーをドロドロ煮詰めつつ、イライラし、猛り狂い、打ちのめされ、虚脱するのである

こういう文章を読んで、聴かないではいられなくなるのはクラシック・ファンとしては当然の心理です 今度CDショップに行った時は購入しようと思います

なお、この本には、巻末に「参考音盤ガイド」が付いており、本文中に登場したCDについて詳細な解説が書かれています。それによると、ミャスコフスキーの第6番は「スヴェトラーノフ不滅の大業!」としてエフゲニ・スヴェトラーノフ指揮ロシア連邦アカデミー響のCD(世界初のミャスコフスキーの交響曲全集からの分売)が推薦されています 私はスヴェトラーノフが大好きなので、ますます買わざるを得ません

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エルディーディ弦楽四重奏団でモーツアルト「弦楽四重奏曲第21番」、ベートーヴェン「弦楽四重奏曲第8番」、イベール「弦楽四重奏曲」を聴く~円熟した演奏:第一生命ホール

2019年02月24日 07時23分21秒 | 日記

24日(日)。モコタロは不調のためしばらくお休みします  

 

         

 

昨日、晴海の第一生命ホールでエルディーディ弦楽四重奏団のコンサートを聴きました プログラムは①モーツアルト「弦楽四重奏曲第21番ニ長調K.575”プロイセン王第1番”」、②イベール「弦楽四重奏曲ハ長調」、③ベートーヴェン「弦楽四重奏曲第8番ホ短調作品59-2”ラズモフスキー第2番”」です

エルディーディ弦楽四重奏団は、1989年東京藝大出身者により結成されました メンバーは第1ヴァイオリン=蒲生克郷、第2ヴァイオリン=花崎淳生、ヴィオラ=桐山健志、チェロ=花崎薫の4人です

 

     

 

自席は1階8列25番、右ブロック左通路側です。会場は6割程度の入りでしょうか

1曲目はモーツアルト「弦楽四重奏曲第21番ニ長調K.575”プロイセン王第1番”」です この曲はウォルフガング・アマデウス・モーツァルト(1756-1791)が晩年の1789年に作曲した作品で、プロイセン王フルードリヒ・ヴィルヘルム2世に献呈された3曲(K.575、K.589、K.590)のうちの最初の曲です 王がチェロの名手だったことを配慮してチェロに重要な役割を与えています。第1楽章「アレグレット」、第2楽章「アンダンテ」、第3楽章「メヌエット:アレグレット」、第4楽章「アレグレット」の4楽章から成ります

4人の演奏は、気負いがなく終始落ち着いた音楽作りをしています 人生を達観した人たちによる演奏とでも言うべきでしょうか アンサンブルが優しく 美しく響きます

2曲目はイベール「弦楽四重奏曲ハ長調」です この曲はジャック・イベール(1890-1962)が1937年から1942年にかけて作曲し、1944年にパリで初演されました 第1楽章「アレグロ・リゾルート」、第2楽章「アンダンテ・アッサイ」、第3楽章「プレスト」、第4楽章「アレグロ・マルカート」の4楽章から成ります

第1楽章は フランス音楽らしい軽妙洒脱でエスプリに満ちた曲想でした 第2楽章は一転、重々しい雰囲気の曲想で、イベールの音楽としては暗く 意外な印象を受けます 第3楽章はピッツィカートによるスケルツォです 曲想としては同じフランスの作曲家ドビュッシーやラヴェルに通じるものを感じます。第4楽章は推進力に満ち、華麗なフィナーレを迎えます


     


プログラム後半はベートーヴェン「弦楽四重奏曲第8番ホ短調作品59-2”ラズモフスキー第2番”」です    この曲はルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェン(1770-1827)がウィーン駐在のロシア大使ラズモフスキー伯の依頼により1805~6年に書いた弦楽四重奏曲第7番から第9番までのうち唯一短調の作品です 第1楽章「アレグロ」、第2楽章「モルト・アダージョ」、第3楽章「アレグレット」、第4楽章「フィナーレ:プレスト」の4楽章から成ります

この曲においても、4人の演奏は非常に落ち着いていて 気負いを感じさせないもので、言わば「繰り返して聴くのに耐え得る」演奏です ただ、ベートーヴェンの曲に限っては、もう少し激しい感情の発露があっても良いように思います ベートーヴェンは常に現状を打破する音楽を書いてきたのですから

4人はアンコールにモーツアルト「弦楽四重奏曲第22番変ロ長調K.589”プロイセン王第2番”」から第3楽章「メヌエット」を演奏し、円熟した4人のコンサートを締めくくりました

 

     

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ローター・ツァグロゼク ✕ 読売日響でブルックナー「交響曲第7番」、リーム「Ins Offene・・・」を聴く ~ 日下紗矢子コンミスあっての名演奏:読響第585回定期演奏会

2019年02月23日 00時30分10秒 | 日記

23日(土)。わが家に来てから今日で1604日目を迎え、宇宙航空研究開発機構(JAXA)は22日、探査機「はやぶさ2」が地球から約3億キロメートル離れた小惑星「りゅうぐう」に午前7時29分着陸したと発表した というニュースを見て感想を述べるモコタロです

 

     

       このスケールの大きい偉業に比べれば 国会内の与野党のいざこざは些細なことだ

 

  昨日は、娘も私も夜外食だったので、夕食作りはお休みしました   

 

         

 

昨夕、サントリーホールで読売日響第585回定期演奏会を聴きました プログラムは①リーム「Ins  Offene・・・」、②ブルックナー「交響曲第7番ホ長調」(ノヴァーク版)です 指揮はローター・ツァグロゼクです

ツァグロゼクは1942年ドイツのバイエルン州生まれ。パリ・オペラ座、ライプツィヒ歌劇場音楽総監督、ベルリン・コンツェルトハウス管弦楽団首席指揮者、シュトゥットガルト歌劇場音楽総監督などを歴任しています 1955年夏、レーゲンスブルク大聖堂合唱団に在籍していた12歳の時に巨匠フルトヴェングラーに見い出され、ザルツブルク音楽祭の「魔笛」の第一童子に抜擢されデビューしたとのこと。生きている伝説ですね 音楽活動はそれ以来63年の長きにわたるそうです。読響とは2016年以来2度目の共演となります

 

     

 

1曲目はリーム「Ins  Offene・・・」の日本初演です この曲はドイツの作曲家ウォルフガング・リーム(1952~)が1992年に作曲し1995年に初演された作品です タイトルの「Ins  Offene・・・」は「開いた・・・の中へ」という程度の意味だそうです

ステージには、オケが3つのグループに分かれてスタンバイしています 舞台中央にヴァイオリン、トランペット、打楽器のグループ、向かって右サイドにピッコロ、クラリネット、ホルン、トロンボーン、打楽器、ヴィオラ、チェロのグループ、左サイドにバスクラリネット、コントラファゴット、チューバ、ハープ、ピアノ、打楽器、コントラバスのグループが配置されています さらに2階席の前後左右にヴァイオリン奏者などが配置されており、合計39人で演奏されます

指揮者ツァグロゼクが指揮台に上がり、さっそく演奏に入ります この曲は、各グループ間の音のやり取りや音色の変化が楽しめる作品らしいのですが、典型的な”現代音楽”で、この手の音楽が苦手な私にはチンプンカンプンでした 恥も外聞もなく さらに言えば、なぜ3つのグループに分けなければならないのか、必然性が理解できません 終演後、会場いっぱいの拍手が送られていましたが、どれほどの人が曲を理解した上で称賛の拍手を送ったでしょうか そういう私も拍手をしましたが、それはあくまでも演奏者に対する敬意からです


     


プログラム後半はブルックナー「交響曲第7番ホ長調」(ノヴァーク版)です この曲はアントン・ブルックナー(1824-1896)が1881年から83年にかけて作曲、1884年12月30日にライプツィヒで初演された作品です 第1楽章「アレグロ・モデラート」、第2楽章「アダージョ」、第3楽章「スケルツォ」、第4楽章「フィナーレ」の4楽章から成ります

ステージ上はフル・オーケストラ態勢でスタンバイします 弦は左から第1ヴァイオリン、第2ヴァイオリン、チェロ、ヴィオラ、その後ろにコントラバスという いつもの読響の並び。コンミスは日下紗矢子さんです

ツァグロゼクが指揮台に上がり 第1楽章が弦のトレモロで開始されます そこにホルンとチェロが入ってきますが、この「ブルックナー開始」はいつ聴いてもワクワクします 続いてブルックナーらしい雄大な音楽が展開します 弦楽器が美しい 木管ではフリスト・ドブリノヴのフルートが良い味を出しています

さて、この曲の演奏で私が一番感銘を受けたのは第2楽章「アダージョ」でした ワーグナー・チューバとヴィオラにより重心の低い演奏で始まりますが、弦楽合奏が主題を感動的に歌い上げます この時、コンミス・日下紗矢子さんの動作の大きい演奏姿を見ていて、まるでヴァイオリン・セクション全員の音が日下さんの身体に吸収され、彼女のヴァイオリンを通して客席に訴求してくるように感じました こういう経験は今回が2度目です。1度目は10年ほど前にユベール・スダーンが東京交響楽団を指揮してシューベルトの「交響曲第3番」を演奏した時です その時コンミスを務めたのは大谷康子さんでしたが、今回と同じように感じました なぜか 両方とも女性のコンマスなのが不思議です

ツァグロゼクの指揮で「アダージョ」を聴いていると、彼のテンポで呼吸が出来ることに気が付きます 彼が人間の生理に合った自然な音楽の流れを作っている証左です 弦楽器を中心に、金管も木管も、そして打楽器もスケールの大きな演奏を展開します 終盤のワーグナー・チューバによる葬送音楽を聴いていたら胸が熱くなってきました ここはブルックナーが敬愛していたワーグナーの死を悼んで作曲した音楽です

第3楽章「スケルツォ」はリズム感も良くトランペットと弦楽器が会話を交わします

第4楽章「フィナーレ」は軽快な音楽で開始され、次第にスケール感を増していき、最後はオケの総力を持って音の大伽藍を築き上げます

会場割れんばかりの拍手とブラボーに、ツァグロゼクはコンミスの日下紗矢子さんと固い握手を交わしました

ツァグロゼクはかつてベルリン・コンツェルトハウス管弦楽団の首席指揮者を務めていたことがあり、一方、日下紗矢子さんは現在 同管弦楽団の第1コンサートマスターを務めているので、その関係性が今回の演奏に何らかのケミストリーを生じさせたこともあるかも知れません 今回のツァグロゼク ✕ 読売日響のブルックナーは、コンミス日下紗矢子あっての名演奏だったと思います

 

     

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パーヴォ・ヤルヴィ ✕ NHK交響楽団でストラヴィンスキー「春の祭典」「花火」「幻想的スケルツォ」「ロシア風スケルツォ」「葬送の歌」を聴く ~ スーパー・ドライな演奏:第1908回定期演奏会

2019年02月22日 07時21分27秒 | 日記

22日(金)その2.よい子は「その1」から見てね。モコタロはそちらに出演しています

昨夕、サントリーホールでNHK交響楽団第1908回定期演奏会(Bプロ)を聴きました オール・ストラヴィンスキー・プログラムで、①幻想曲「花火」作品4、②「幻想的スケルツォ」作品3、③「ロシア風スケルツォ」、④「葬送の歌」作品5、⑤バレエ音楽「春の祭典」です 指揮はパーヴォ・ヤルヴィです

オケは左から第1ヴァイオリン、第2ヴァイオリン、ヴィオラ、チェロ、その後ろにコントラバスという編成。左奥にはハープが3台スタンバイします。コンマスはマロこと篠崎史紀氏です

1曲目は幻想曲「花火」作品4です この曲はイーゴリ・ストラヴィンスキー(1882-1971)が1908年に、作曲の師匠リムスキー・コルサコフの娘の結婚祝いのために書き始めた作品ですが、何と師匠は死去してしまい、楽譜は戻されてきたそうです。「花火」は不発に終わったことになります しかし、この曲が 次に演奏される「幻想的スケルツォ」とともに1909年2月6日にサンクトペテルブルクで初演された時に、ロシア・バレエ団を率いる伝説の興行師セルゲイ・ディアギレフが聴いていたのです 彼こそ、ストラヴィンスキーに「火の鳥」「ペトルーシュカ」「春の祭典」のバレエ三部作を書かせたその人です その意味では「花火」は後で大倫の花を咲かせることになります

曲を聴いた範囲では、花火と言っても打ち上げ花火のようなものではないように感じます しかし、ヤルヴィの指揮で聴くこの曲は、管弦楽の鳴り方がすでにストラヴィンスキーそのもので、色彩感豊かな演奏が展開します

続いて演奏される「幻想的スケルツォ」作品3は、幾分おとなしめの作品です

3曲目は「ロシア風スケルツォ」です この曲はロシアからアメリカに渡ったストラヴィンスキーが、新大陸で作曲した意欲作です 「プログラム・ノート」によると、「最初、ある戦時プロパガンダ映画のために用意されたものが、次にジャズ・バンド用に仕立て直され、最後にフル・オーケストラ用に編曲された」とのことです どこか「ペトルーシュカ」をジャズ風にアレンジした曲のような感じがします 演奏がのってきて速いテンポで絶好調に達したと思ったら急に音楽が止まってしまいます われわれ聴衆は、急ブレーキをかけて止まった車から慣性の法則によって前に放り出されたような感覚に襲われます こういう感覚はストラヴィンスキーの他の作品にあったような気がします

前半最後の曲は「葬送の歌」作品5です この曲は師と仰ぐリムスキー・コルサコフを亡くしたストラヴィンスキーが、1908年の夏に、彼の死を悼んで作曲した音楽です 「プログラム・ノート」によると、楽譜は初演後、革命の混乱のなかで失われたと言われてきたそうです その後、2015年のサンクトペテルブルク音楽院の図書館改修工事の折に、初演から100年以上の時を経て「葬送の歌」の楽譜が発見されたそうです

ヤルヴィの指揮で演奏が開始されます。冒頭の低弦によるトレモロが不気味な雰囲気を醸し出します 曲想は異なるものの、私にはムソルグスキーの「禿山の一夜」や、ベルリオーズの「幻想交響曲」に近い不気味な音楽に思えました。暗く重い音楽です


     


プログラム後半はバレエ音楽「春の祭典」です 前述の通り、この曲はロシア・バレエ団の主宰者・ディアギレフの依頼により「火の鳥」「ペトルーシュカ」に次いで作曲され、1913年5月29日にパリのシャンゼリゼ劇場でピエール・モントゥーの指揮、ロシア・バレエ団のバレエにより初演されました 初演当日は、支持派と反対派の怒号が飛び交い、ろくに演奏が聴こえなかったと言われています

ヤルヴィの指揮で第1部「大地の讃仰」の演奏に入ります 冒頭の「序奏」はファゴットの独奏で始まりますが、この演奏が異様に長く感じました。今まで聴いた中で一番長いと思います 第1部の終曲「大地の踊り」は速いテンポで絶好調に達したところで急にストップします 前半で聴いた「ロシア風スケルツォ」と同じで、慣性の法則で前に放り出されたような感覚を覚えます

第2部「いけにえ」を含めて全体を通して聴いた印象は、当初の予想通りメリハリの利いた明快な演奏でした キャッチフレーズ的に言えば「スーパー・ドライ」な演奏です ビールの「超辛口」ではありません。「アサヒ・スーパー・ドライ」の宣伝文句を思い出してください。そう、「コクがあるのに キレがある」です 歌わせるところは十分に歌わせて「コクがある」一方、ファゴット、オーボエ、イングリッシュホルン、フルート、クラリネットといった木管楽器、トランペット、トロンボーン、ホルンといった金管楽器、ティンパニ、大太鼓、シンバルといった打楽器の個々の楽器の演奏にキレがありました N響の楽員はヤルヴィの指揮に俊敏に反応してスピード感あふれる演奏を展開しました

終演後、若手の女性ヴァイオリン奏者からヤルヴィに花束が手渡されました 次に定期公演を振るのは6月なので、今回で一段落といったところでしょう


         

 

コンサートに先立って、サントリーホール窓口で、6月に「サントリーホール チェンバーミュージック・ガーデン」の一環として開かれる「クス・クァルテット ベートーヴェン・サイクル Ⅰ~Ⅴ」の引き換え券と5枚のチケットとを引き替えました 今年もベートーヴェンの弦楽四重奏曲を全部聴くぞ


     

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ラフマニノフ「ピアノ協奏曲第3番」(Pf:沼田昭一郎)、グレンダール「トロンボーン協奏曲」(Tb:藤田麻里奈)を聴く~東京藝大モーニングコンサート / 2019年度年間チケットを取る

2019年02月22日 00時09分00秒 | 日記

22日(金)その1.モコタロの調子が良くありません うつろな目をして顔が左に傾いているので、娘が駒込の動物病院に連れていき診てもらったところ、原因は不明だが神経系統か三半規管の障害だと思われるとのことでした 元気がなくケージの外に出ようとしないのですが、食事はおやつも含めてちゃんと食べているので、処方された飲み薬を飲ませてしばらく様子を見ることにしました

ということで、わが家に来てから1603日目を迎え、21日午前の衆院予算委員会の審議が、桜田義孝五輪相が遅刻したため中断した というニュースを見て感想を述べるモコタロです

 

     

       桜田氏は スペインのサクラダファミリアみたいに 政治家としては未完成のままだ

 

         

 

昨日、夕食に「豚肉のアスパラ巻き焼き」と「トマトとレタスのスープ」を作りました 「豚肉~」は久しぶりに作ったので ちょっと手順を間違えましたが、味は大丈夫でした

 

     

 

         

 

昨日、午前11時から東京藝大奏楽堂で「第13回藝大モーニング・コンサート」を、午後7時からサントリーホールでN響B定期公演を聴きました ここでは「第13回藝大モーニング・コンサート」について書きます。プログラムは①グレンダール「トロンボーン協奏曲」(Tb:藤田麻里奈)、②ラフマニノフ「ピアノ協奏曲第3番ニ短調作品30」(Pf:沼田昭一郎)です 管弦楽は藝大フィルハーモニア管弦楽団、指揮は高関健です


     

 

全席自由です。1階11列13番、センターブロック左通路側を押さえました   2018年度最後のモーニング・コンサートとあってか、会場は文字通り満席です

オケは高関シフト=左奥にコントラバス、前に左から第1ヴァイオリン、チェロ、ヴィオラ、第2ヴァイオリンという対向配置をとります。コンマスは植村太郎です

神奈川県横浜市出身の藤田麻里奈さんが濃紺のシックな衣装で登場、センターでスタンバイします   演奏するのはデンマークの作曲家・ヴァイオリニスト・指揮者だったラウ二・グレンダール(1886-1960)が28歳の時、1924年に作曲した「トロンボーン協奏曲」です 第1楽章「モデラート・モルトマエストーゾ」、第2楽章「アンダンテ・グラーヴェ」、第3楽章「マエストーソ」の3楽章から成ります

高関氏の指揮で演奏に入ります。第1楽章冒頭のメロディーを聴いた時、まるで映画音楽のようだと思いました 全楽章を通じて感じたのは、北欧の冷たい空気を感じさせる弦楽器と、温かみのあるトロンボーンの優しい音色のコラボレーションが鮮やかだったということです 藤田さんは、確かなテクニックの裏付けによって最高音から最低音まで美しい音色でグレンダールの世界を表出しました 滅多に演奏される機会のない曲を取り上げ、素晴らしい演奏をしてくれた藤田さんに感謝します 藤田さんは現在、藝大6年生ということですが(6年生と大学院2年生は違うのでしょうか?)、これからどういう道に進むにせよ、自分の信じる道をしっかりと歩んでほしいと思います


     


プログラム後半はラフマニノフ「ピアノ協奏曲第3番ニ短調作品30」です この曲はセルゲイ・ラフマニノフ(1873-1943)が1909年に、アメリカとカナダを旅行中に作曲した作品で、作曲者は「アメリカのために作曲した」と語っています 第1楽章「アレグロ・マ・ノン・タント」、第2楽章「インテルメッツォ:アダージョ」、第3楽章「フィナーレ:アラ・ブレーヴェ」の3楽章から成ります

演奏するのは学部3年生、埼玉県出身の沼田昭一郎君です 高関氏とともに現れた青年は、細身のひょろっとした体つきで、この難曲を弾きこなすスタミナとパワーがあるのだろうか?と心配になるくらいでした その結果は40分後に分かるはずです

高関氏のタクトで第1楽章が開始されます オケによる短い序奏に続いてピアノが叙情的な第1主題を奏でます。次第に盛り上がっていき、カデンツァでピアノ独奏は超絶技巧の頂点に達します 技術的には完璧で、相当 複雑かつ演奏困難であろうパッセージを、沼田君は何の苦もなく弾いているように見えるところが凄い 最初からパワー全開です。第2楽章は冒頭のオーボエによる美しい旋律が印象的です 第3楽章は再びパワフルなピアノのよる怒涛の快進撃が続きます 高関氏も負けていません。藝大フィルハーモニアを煽り立て、歌わせるべきところは歌わせます ピアノとオケとの丁々発止のやり取りが激しいフィナーレは圧巻でした

会場いっぱいの拍手とブラボーは、「細身のひょろとした体つきで、この難局を弾きこなすスタミナとパワーがあるのだろうか」という懸念を一気に吹き飛ばした沼田君の 胸のすくような演奏に送られました 2018年度「モーニング・コンサート」の最後を飾るのに相応しい素晴らしい演奏でした    私たちは「人は見た目で判断してはならない」という教訓を沼田君から教えられました


         


昨日、午前11時からの「モーニング・コンサート」に先立って、奏楽堂の受付で「2019年度モーニング・コンサート」の全13回セット券(@1,000円✕13枚。全席自由。入場整理番号付き。限定200セット)を取りました 午前10時から発売開始なので9時25分頃 現地に着いたのですが、すでに30人以上が並んでいました   私の取ったチケットの整理番号は36番です。今年度が35番だったので1番違いです

2019年度モーニング・コンサートの日程等は下のチラシの通りです 2019年度も26名の藝大生が出演しますが、どんな学生が誰のどの作品を演奏するのか、今から楽しみです


     

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原田慶太桜 ✕ 伊藤恵 ✕ 新日本フィルで リスト「ピアノ協奏曲第1番」、ラフマニノフ「交響曲第2番」他を聴く ~ 都民芸術フェスティバル / METライブ「アドリアーナ・ルクヴルール」の指定を取る

2019年02月21日 07時21分57秒 | 日記

21日(木)。「あっ、ヤバい」と声を出してしまいました。昨日の新日本フィルのコンサートは19時開演とばかり思っていたのです 手帳にそう書いてあったので ところが念のためチケットを見たら14時開演となっているではありませんか 時間的には十分間に合ったので支障はなかったのですが、チケットを見なかったらコンサートは聴けず、チケット代も無駄にするところでした

私はチケットを買うとすぐに、手帳の「月間スケジュール」のページと「週別スケジュール」のページの両方と 居間の月別カレンダーに、コンサートの公演名と開演日時・会場を書き入れて忘れないようにしているのですが、時として今回のように時間を勘違いしたり会場を間違えるミスを犯すことがあります 自分では気を付けているつもりですが、どういうわけか年に何回かやっちまいます 今日から 朝出かける前にチケットを確かめることにしました 取りあえず今日の2枚(11時:東京藝大、19時:N響定期)は大丈夫です

という訳で、わが家に来てから今日で1602日目を迎え、米紙ニューヨークタイムズ(電子版)は19日、トランプ米大統領が元顧問弁護士マイケル・コーエン被告の捜査に介入しようとした疑いがあると報じた というニュースを見て感想を述べるモコタロです

 

     

     疑惑のデパート トランプは自分に有利になるように恥も外聞もなく裏工作してる

 

         

 

昨日、夕食に「いり鶏」を作りました レシピにはシイタケが入っていませんでしたが、入れてみました。そしたら見た目が筑前煮になりました いいんです。美味しければ

 

     

 

         

 

METライブビューイング、チレア「アドリア―ナ・ルクヴルール」の座席指定を取りました 劇場は新宿ピカデリーで26日(火)午前10時からの部です。このオペラは初めて観ます。今から楽しみです

 

     

 

         

 

昨日、池袋の東京芸術劇場コンサートホールで新日本フィルハーモニー交響楽団のコンサートを聴きました これは2019都民芸術フェスティバル参加公演です。プログラムは①ワーグナー:楽劇「ニュルンベルクのマイスタージンガー」~第1幕への前奏曲、②リスト「ピアノ協奏曲第1番変ホ長調」、③ラフマニノフ「交響曲第2番ホ短調作品27」です ②のピアノ独奏は伊藤恵、指揮は原田慶太桜です

 

     

 

自席は2階LBA17番、左サイドのバルコニーの中央です 1階、2階席は埋っていますが、3階はかなり空いています。全体で8割くらいの入りでしょうか

オケは左奥にコントラバス、前に左から第1ヴァイオリン、チェロ、ヴィオラ、第2ヴァイオリンという対向配置をとります コンマスは西江王子。対向配置で良かったのは、第2ヴァイオリンの篠原英和さんと松崎千鶴さんが正面に見えることです

1曲目はワーグナーの楽劇「ニュルンベルクのマイスタージンガー」から第1幕への前奏曲です この楽劇はリヒャルト・ワーグナー(1813-1883)が1862年から1867年にかけて作曲したもので、1868年6月にミュンヘン宮廷歌劇場でハンス・フォン・ビューローの指揮により初演されました 物語は実在の靴屋の親方であるマイスタージンガーのハンス・ザックス(1494-1576)を扱っており、彼の新しい民衆的な芸の理念がワルターによって実現するというストーリーです

原田氏の指揮で「前奏曲」の華やかで雄渾な音楽が展開します 芸劇のバルコニー席は言わばオーケストラに一番近い席なので、管楽器も弦楽器も打楽器も最大音量で迫ってきます。スカッとする演奏でした

2曲目はフランツ・リスト(1811‐1886)の「ピアノ協奏曲第1番変ホ長調」です この曲は1849年に作曲され、1852年2月17日にヴァイマルの宮廷演奏会でベルリオーズの指揮、リストのピアノで初演されました その後1853年と1856年に改訂され、出版されたのは1857年でした 第1楽章「アレグロ・マエストーソ」、第2楽章「クァジ・アダージョ」、第3楽章「アレグレット・ヴィヴァーチェ」、第4楽章「アレグロ・マルツィアーレ・アニマート」の4楽章から成りますが、切れ目なく演奏されます

白の鮮やかな衣装の伊藤恵さんが指揮者とともに登場、ピアノに向かいます この曲はトライアングルを使用するため、打楽器奏者が第1ヴァイオリン・山田容子さんの隣にスタンバイします。後方の定位置だとトライアングルはほとんど聴こえません 原田氏の指揮で力強い導入部の演奏に入ります 伊藤さんのピアノはスケールが大きくオケに負けません 原田氏はピアノにピタリとつけます 全体的に、華麗でダイナミックな演奏でした

会場いっぱいの拍手の中、ピアノの周りに3人の演奏者が集まりました 何が始まるんだろう?と思っていると、伊藤さんが「アンコールは(3人の演奏者への)たってのお願いによって、シューマンの『ピアノ四重奏曲』の第3楽章を演奏したいと思います」とアナウンスし、ヴァイオリン=西江辰郎、ヴィオラ=篠崎友美、チェロ=長谷川彰子、ピアノ=伊藤恵の4人により『ピアノ四重奏曲変ホ長調 作品47』(1842年作曲)の第3楽章「アンダンテ・カンタービレ」を演奏しました これがまた ロマンディックでしみじみと良い演奏でした 私はこれまでいろいろな形のアンコールを聴いてきましたが、オーケストラのアンコールで「ピアノ四重奏曲」を聴いたのは今回が初めてです 生のコンサートはいろいろな意味で何が起こるか分かりません それが良いところだとも言えます


     


プログラム後半はラフマニノフ「交響曲第2番ホ短調作品27」です この曲はセルゲイ・ラフマニノフ(1873-1943)が1907年に作曲した作品です 第1楽章「ラルゴ~アレグロ・モデラート」、第2楽章「アレグロ・モルト」、第3楽章「アダージョ」、第4楽章「アレグロ・ヴィヴァーチェ」の4楽章から成ります

原田氏の指揮で第1楽章の長大な導入部の演奏に入ります どこか懐かしいメロディーに惹かれます 森明子さんのイングリッシュホルンが素晴らしい 楽章最後のティンパニの強打の一音が強烈でした 第2楽章は総力を挙げてアグレッシブなスケルツォが展開します 第3楽章では中舘荘志氏のクラリネット、鈴木悠紀子さんのバス・クラリネットの演奏が素晴らしく、弦楽セクションのアンサンブルが美しい 第4楽章は喜びに満ちた音楽が躍動感あふれる演奏で展開します フル・オーケストラによる熱い演奏でした

原田慶太楼 ✕ 新日本フィルはアンコールにラフマニノフの「ヴォカリーズ」を演奏、聴衆のクールダウンを図りました

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「ラ・フォル・ジュルネTOKYO」の先行抽選販売に申し込む / アニエス・ヴァルダ監督「顔たち、ところどころ」、ルーシー・ヴォーカー監督「ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブ★アディオス」を観る

2019年02月20日 07時24分04秒 | 日記

20日(水)。昨日のブログに映画「ライ麦畑で出会ったら」のことを書いたら、勝浦市在住の大学時代の友人S君から電話があり、「当時は サリンジャーの『ライ麦畑でつかまえて』と高野悦子の『二十歳の原点』がバイブルみたいな存在だった」という話になりました   まっとうに読んだことのないサリンジャーはともかくとして、「二十歳の原点」は立命館大学文学部の学生だった高野悦子の日記や詩(1969年1月2日=大学2年から6月22日=大学3年まで)を元に著されたものです。全共闘運動に限界を感じ、恋人との関係に悩み、最後に自殺を選ぶまでの女子学生の心情が綴られていて、ほぼ同じ年代の若者として他人事とは思えませんでした  

S君の電話を機に、三島由紀夫の陸上自衛隊市ケ谷駐屯地立て籠り・割腹事件、連合赤軍による浅間山荘事件、大学側による学生締め出しロックアウト、O君と革マル派の集会を見物に行ったこと等々 学生時代に起こった あれこれ を思い出しました   S君、ありがとう。暖かくなったら また飲みに行きましょう

ということで、わが家に来てから今日で1601日目を迎え、トランプ米大統領が国境の壁の建設費を捻出するため、国家非常事態宣言を出したのは憲法違反だとして、カリフォルニア州など計16州が18日、カリフォルニア州の連邦地裁に提訴した というニュースを見て感想を述べるモコタロです

 

     

      トランプは最高裁の保守派判事を多くしたから 最終的には勝てると思っているぜ

     

         

 

昨日、夕食に「豚バラ大根」「白菜、シメジ、豆腐とタラのプチ鍋」「大根の葉のお浸し」を作りました 「豚バラ~」は大根をピーラーで剥いたので比較的短時間で出来上がりました

 

     

 

         

 

5月3日から5日までの3日間、東京国際フォーラムで開かれる「ラ・フォル・ジュルネ TOKYO 2019」の先行抽選販売(28日まで)の申し込みをしました 申し込んだのは3月2日からの先着販売では取れそうにない収容人数の少ないD7(221席)とG409(153席)の公演で、3日=5公演、4日=5公演、5日=4公演の計14公演です   抽選結果は3月1日(金)18時以降となっています。ダメ元ですが、抽選結果が楽しみです

 

     

        昨年のラ・フォル・ジュルネ音楽祭 ~ 東京国際フォーラム ガラス棟

 

         

 

昨日、早稲田松竹で「顔たち、ところどころ」と「ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブ★アディオス」の2本立てを観ました

「顔たち、ところどころ」はアニエス・ヴァルダ監督による2017年フランス映画(89分)です 「ヌーヴェルヴァーグの祖母」とも呼ばれる女性映画監督の先駆者で、2015年にはカンヌ国際映画祭で史上6人目となるパルム・ドール名誉賞、2017年には60年以上にもわたる映画作りの功労が認められアカデミー名誉賞を受賞したアニエス・ヴァルダ(作中で87歳)と、大都市から紛争地帯など様々な場所で、そこに住む人々の大きなポートレートを貼り出す参加型アートプロジェクトで知られるフランス人アーティストのJR(作中で33歳)。歳の差54歳の二人がフランスの田舎町をスタジオ付の小型トラックで巡りながら市井の人々と接し、作品をともに作り現地に残していく旅の様子を記録した、ロードムービー・スタイルのドキュメンタリーです

 

     

 

これは本当に楽しい映画でした 炭鉱労働者の村に一人で住む老女の写真を撮り、大きく拡大して住居の外壁に貼り出すと、それを見た老女が感動で涙するシーンは忘れられません これこそ生きた芸術ではないか と思った瞬間でした。これと同じようなことを行く先々で試みるわけですが、被写体となる市井の人々の笑顔がとても良く撮れていて、写真はその人の人間性を映し出すということが良く分かります

JRはどこに行っても決してサングラスを外さず帽子もとらないので、バルダは「あなたはマナーが悪い。本当の自分を隠している」と面と向かって非難し、二人の関係が険悪になったりもしますが、何とか折り合いをつけながら旅を続けます 村の人から「二人はどんな関係なの?」と訊かれると、JRは「出会い系サイトで知り合ったんだよ」とジョークを飛ばしますが、バルダは「ウソよ 私はそんな積極性は持っていないわ」と真面目に答えます こういうシーンは本当に可笑しいです

最後にバルダは「JRが 人と出会い顔を撮る という願いを叶えてくれた」として お礼に、 昔ともに映画の仕事をした映画監督J.L.ゴダールの家を訪ね JRを紹介するというサプライズを伝えます   しかし、バルダが予め訪問の日時を約束していたにも関わらずゴダールは留守にしていて、窓にメッセージが残されていただけでした それを見たバルダは気を悪くし涙を浮かべますが、その時 そばにいる54歳年下のJRは「僕が君に何かしてあげることはないかい?」と言って、初めてサングラスを外します この時初めてJRの素顔を見たバルダは「あなたは優しいのね」と呟きます。このシーンは目頭が熱くなりました    久しぶりにいい映画を観ました

 

         

 

「ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブ★アディオス」はルーシー・ウォーカー監督、ジム・ベンダース製作総指揮による2017年イギリス映画(110分)です

アメリカの偉大なギタリスト、ライ・ク―ダ―がキューバでセッションした地元のベテラン・ミュージシャンたちに声をかけて結成されたビッグバンドが「ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブ」です 彼らが1997年にリリースしたアルバムは世界的な話題を集め グラミー賞を受賞、アルバムは400万枚を売り上げました 彼らの音楽に惚れ込んだヴィム・ヴェンダースが1999年に監督した音楽ドキュメンタリー「ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブ」は世界中で公開され大きな話題を呼びました この映画は、それから18年を経て、グループによる活動に終止符を打つと決めた彼らのアディオス(さよなら)世界ツアーを追うとともに、彼らのプロとしてのキャリアの浮き沈みやこれまでの旅路を振り返るドキュメンタリーです

 

     

 

残念ながら、私は「ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブ」のメンバーを一人も知らないし、どういう歌を歌っていたのかも知らなかったので、この映画を”楽しむ”までのレヴェルには至りませんでした

この映画で一番印象に残っているのは、当時 アメリカ大統領だったオバマさんが「ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブ」のメンバーをホワイトハウスに招いてセッションを開いた時のシーンです その時、オバマ大統領は次のようにスピーチしました

「『ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブ』のアルバムが発売された時は、私もCDを買いました 今の若い人たちは知らないかもしれないけれど、このくらいの大きさの、丸い

つまり、オバマ大統領は「今の若い人たちは知らないかもしれないけれど、ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブ』はね・・・・」と説明するのでなく、「今の若い人たちは知らないかもしれないけれど、このくらいの大きさの、丸い」」とCDの説明を始めて、ジョークで笑いを取ったのです Good Job  でした。(今の大統領に出来るか?)

さて、ここで考えたいのは、アメリカとキューバの関係です 2015年4月にオバマ政権はキューバの「テロ支援国家」指定を解除すると発表、同年5月29日にリストの除外が正式に決定しました。そして、同年7月20日にアメリカ、キューバ相互に大使館が開設され、1961年に断交して以来54年ぶりに国交が回復しました 映画ではオバマ大統領とキューバのラウル・カストロ国家評議会議長が両国の国旗を背景に握手をするシーンが映し出されました

ところが、オバマ氏の後を継いだドナルド・トランプは2017年6月16日にオバマの対キューバ政策を完全に解消するという路線を打ち出しました オバマ政権下で緩和された施策を否定し、キューバ軍関連組織との商取引規制や渡航制限などの対キューバ制裁強化策が同年11月9日から施行されることになりました せっかく築き上げた信頼関係を平気でぶち壊すのがトランプの特技のようです

この映画はその年=2017年にイギリスで製作されましたが、トランプ政権へのイギリス映画界からの警告の意味も合わせ持っていると考えるのは 穿った見方でしょうか

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