人生の目的は音楽だ!toraのブログ

クラシック・コンサートを聴いた感想、映画を観た感想、お薦め本等について毎日、その翌日朝に書き綴っています。

清水和音「ピアノ・リサイタル」を聴く~芸劇ブランチコンサート / 佐藤正午「月の満ち欠け(抄録)」他を読んで~「オール読物9月号」

2017年08月31日 08時03分45秒 | 日記

31日(木).月日の流れは速いもので8月も今日で終わりです   わが家に来てから今日で1065日目を迎え,麻生太郎副総理兼財務相が30日,派閥の研修会の講演で「ヒトラーは,いくら動機が正しくてもダメ」と発言したことについて,「ヒトラーを例示としてあげたことは不適切であり撤回したい」とコメントした というニュースを見て 記者と麻生氏のやり取りを想像するモコタロです

 

     

       記者「誤解を招くことは言わない方が良くね?」 麻生「そんなこと知っとら~」

 

                                           

 

昨日,夕食にカワハギを焼いて,「マグロの漬け丼」「生野菜サラダ」「冷奴」を作りました   カワハギは千葉県勝浦市在住の大学時代の友人S君が送ってくれたものです.持つべきものは友だちです   「漬け丼」はマグロのほかシャケも漬けました   よろしかったでしょうか

 

     

 

                                           

 

昨日,池袋の東京芸術劇場コンサートホールで「芸劇ブランチコンサート 清水和音ピアノ・リサイタル」を聴きました   「ピアノ小品 名曲大全集」と題したコンサートで,プログラムは①ラフマニノフ「前奏曲”鐘”」,②ドヴォルザーク「ユーモレスク」,③チャイコフスキー「感傷的なワルツ」,④メンデルスゾーン「無言歌集」より春の歌,⑤ショパン「幻想即興曲」,⑥ドビュッシー「夢」,⑦ラヴェル「亡き王女のためのパヴァーヌ」,⑧プロコフィエフ「3つのオレンジへの恋」より行進曲,⑨スクリャービン「詩曲」,⑩リスト「超絶技巧練習曲集第11番”夕べの調べ”」という,いわば「アンコール・ピース」特集のような選曲です

 

     

 

自席は2階A列3番,左ブロック左通路側席です.この席もこの回で最後,秋からは1階に移ります   約2000席の会場は9割以上が埋まっているでしょうか.このコンサートは主催者側も驚くほどよく入ります   約1時間のコンサートで2,200円の料金設定が成功しているのだと思います

清水和音氏が登場,1曲目のラフマニノフ「前奏曲”鐘”」の演奏に入ります   この曲はちょうど1週間前に上原彩子さんの演奏で聴いたばかりです.清水氏らしくパワフルな演奏でした   演奏後,ナビゲーターの八塩圭子さんが登場,曲目の紹介に入りました.八塩さんが

「この曲はアイス・スケートの浅田真央さんが使用して有名になりましたね

と問いかけると,清水氏は,

「そうですか.私はアイス・スケートを見ないので分かりませんが,スケートにはこの暗いラフマニノフの音楽は合わないと思いますけどね. イメージとしては夜の音楽ですから すみません,朝から暗い音楽を聴かせてしまって

と答えていました.アイス・スケートには合わないというのは同感です   これから演奏する3曲について清水氏は次のように解説しました

「作曲家というと,誰もがピアノが得意だと思われがちですが,必ずしもそうではありません   ラフマニノフはピアノの名手でしたが,次に演奏するドヴォルザークはピアノを弾いたことがないんじゃないかと思います   曲を弾いてみると分かります.チャイコフスキーもあまりピアノは弾かなかったようです.また,作曲家のリヒャルト・シュトラウスも得意ではなかったようです

そして,ドヴォルザーク「ユーモレスク」,チャイコフスキー「感傷的なワルツ」,メンデルスゾーン「無言歌集」から「春の歌」を続けて演奏しました   八塩さんが

「清水さんは4歳の時に次に演奏するショパンの『幻想即興曲』を演奏されたそうですね

とマイクを向けると,

「そうですけど,そういう人はピアニストには沢山います   私の場合は,ルービンシュタインの弾いたレコードを聴いてこの曲が気に入って弾きました   でも今ではほとんど弾きません.なんか すごい恥ずかしくなるんですよ

と答えていました.そして幻想即興曲の演奏に入りました   あまりにも通俗的な名曲ということで避けられているようで,私も生演奏で聴くのは本当に久しぶりでした

 

     

 

次いでフランスの作曲家ドビュッシー「夢」とラヴェル「亡き王女のためのパヴァーヌ」を続けて演奏しました   清水氏の解説によると,ラヴェルは「亡き王女のためのパヴァーヌ」を最初にピアノで作曲し,後で管弦楽用に編曲していますが,この作品を駄作だと考えていたとのことです   一方,次に演奏するプロコフィエフの場合は,先に管弦楽曲を作曲して,後でピアノ曲に編曲したそうです   これは楽譜を売るためという意図があったようです   なおピアノ用のスコアの方が複雑になっていて演奏が難しいそうです   また,プロコフィエフは日本にも来たことがあり,その時の様子を日記に書いているそうです.彼はラフマニノフが嫌いだったそうです

解説のあと,プロコフィエフ「3つのオレンジへの恋」より行進曲,スクリャービン「詩曲」,リスト「超絶技巧練習曲集第11番”夕べの調べ”」を続けて演奏しました

1時間で10曲の小品を聴いたわけですが,さすがはプロと思ったのは,曲から曲への音色の変化です   とくに,ショパンからドビュッシーに移った時は,一気にフランスの音色に変わりました

昨年の第1回から今回の第9回までナビゲーターを務められた八塩圭子さんは,秋から大学で教鞭をとる関係で今回で引退となるとのことです   楽しい進行役ありがとうございました

 

     

     

 

                                           

 

「オール読物」9月号が第157回直木賞受賞者・佐藤正午さんを特集しています   賞を受賞した長編小説「月の満ち欠け」の選評と抄録,自伝エッセイ,映画監督・竹下昌男氏との記念対談を掲載しています

 

     

 

巻頭に,佐藤正午さんが生活の拠点としている長崎県佐世保市内で写された写真が掲載されています   佐世保競輪場(正午さんらしい),行きつけのコーヒー専門店とマスター,スナックとママが正午さん本人とともに紹介されています.正午さんはポーズを取って写っています   正午さんは普段,こういう人たちを相手に呑んでいるのね,という感じです

選評は浅田次郎,伊集院静,北方謙三,林真理子,桐野夏生,宮部みゆき,東野圭吾,宮城谷昌光,高村薫の各選考委員がコメントしていますが,とくに印象に残ったのは浅田次郎氏の次のような選評です

「・・・こうして候補作を顧みると,やはり受賞作のみが読者を意識した,プロフェッショナルの小説であると感じた   つまり受賞に至らなかった4作品は自己表現の軛(くびき)を免れてはおらず,受賞作ばかりが明らかに,読者本位の小説なのである.作家が愛される必要はない.作品が愛されればよい

中でも印象に残ったのは「読者を意識した,プロフェッショナルの小説」「読者本位の小説」という言葉です

次に受賞作「月の満ち欠け」の最初の何ページ分かが抄録されています   「オール読物」のページにして30ページ程度です.その後は「あらすじ」だけが紹介されています   小説の冒頭30ページ分を読み終わって,「このまま止めたら中途半端になって,読んだことにならない」という気持ちがだんだん強くなってきました   抄録を読んで単行本を買うことになれば「オール読物」の発行元・文芸春秋社ではなく,「月の満ち欠け」の発行元・岩波書店(佐藤正午さんの小説が岩波書店から出版される意外性)が儲かることになります   私はまだ,正午さんの長編大作「鳩の撃退法(上・下)」も買っていません.まだ文庫化されていないからです  こうなると,文庫・新書派の私だけれど 例外としてどっちも単行本で買わざるを得ないか・・・・と迷ってしまいます   このブログでもご紹介した通り つい先日,新たに5冊の文庫本と新書を買ったばかりだし,ますます迷ってしまいます

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

「METライブビューイング アンコール2017」でモーツアルト「ドン・ジョバン二」を観る~粒ぞろいの歌手陣,シンプルな演出

2017年08月30日 07時59分29秒 | 日記

30日(水).昨日の日経夕刊・くらし面のコラム「それでも親子」でピアニストの上原彩子さん(1980年香川県生まれ)が取り上げられていました   それによると,

「高校3年生のとき一度,チャイコフスキー国際コンクールを受けたが,途中で落選した   その後,もっと練習したいと高校を休学したが,両親は『好きにすれば』と自由にさせてくれた.ありがたかった   結局,先生たちに『高校は卒業したほうがいい』と説得されて20歳で卒業した   初回のコンクールの時は見に来てくれたが,2002年,2度目の出場となったチャイコフスキー国際コンクールで優勝した時は,ロシアまで旅費もかかるしプレッシャーにもなるので,両親に『来ないで』とお願いした

とのことです   また「ご自身も3人の子育ての真っ最中ですね」と訊かれると,

「母のように子供にうるさく言いたくなる気持ちが分かるようになりました   いまだに親には世話になっています.頭が上がりません

と答えています  それはそうでしょう.コンサートで弾く曲は暗譜できるまで練習に次ぐ練習でしょうから,そのための練習時間の確保は最低限必要でしょう  親の世話になりながらも,演奏活動を続けるのは,彼女自身のアイデンティティー存続の問題です.頑張って欲しいと思います   ところで,彼女のチャイコフスキー国際コンクール優勝が2度目の挑戦の結果だったということは初めて知りました   

ということで,わが家に来てから今日で1064日目を迎え,北朝鮮が29日午前5時58分ごろ弾道ミサイルを発射,約2700キロメートル飛行して北海道の襟裳岬上空を通過,午前6時12分ごろ襟裳岬の東約1180キロメートルの太平洋上に落下した というニュースを見て森進一の名曲をアレンジするモコタロです

 

     

       その昔「襟裳の春は 何もない 春です」 現在「襟裳の夏は ミサイル飛ぶ 夏です」

 

                                           

 

昨日,夕食に「 鶏のトマト煮」「生野菜とアボカドとサーモンのサラダ」「冷奴」「キャベツとウィンナのスープ」を作りました   「鶏の~」は娘の大好物です.娘は明日 健康診断があるため今夜夕食が食べられないので,昨夜は娘中心のメニューにしたのでした

 

     

 

                                           

 

昨日,東銀座の東劇で「METライブビューイング  アンコール2017」でモーツアルト「ドン・ジョバン二」を観ました   これは2016年10月22日に米ニューヨークのメトロポリタン歌劇場で上演されたオペラのライブ録画映像です   キャストは,ドン・ジョバンニ=サイモン・キーンリーサイド,ドンナ・アンナ=ヒブラ・ゲルツマ―ヴァ,ドンナ・エルヴィーラ=マリン・ビストラム,ドン・オッタ―ヴィオ=ポール・アップルビー,ツェルリーナ=セレーナ・マルフィ,レポレッロ=アダム・プラヘトカ,騎士長=クワンチュル・ユン,管弦楽・合唱=メトロポリタン歌劇場管弦楽団・合唱団,指揮=ファビオ・ルイージ,演出=マイケル・グランデージです

 

     

 

大きな拍手の中,ファビオ・ルイージがオーケストラ・ピットの指揮台に上がり,モーツアルトが一晩で書いたと言われる「序曲」の演奏に入ります   カメラはオーケストラ・ピットの中も映しますが,弦はヴァイオリン・セクションが左右に分かれる対向配置をとっていることが分かります   冒頭のデモーニッシュな音楽から軽快な曲想に変化し,序曲だけでオペラのエッセンスを表出します  こういうところにもモーツアルトの天才を感じます

「ドン・ジョバン二」を観た後,私が必ずブログに書くのは第1幕冒頭のシーンの素晴らしさです   幕が開いて,レポレッロが「もうこんなひどいご主人に仕えるのは嫌だ  おれも貴族になりたい」とこぼしていると,建物の部屋の中からドン・ジョヴァンニとドンナ・アンナの言い争う声が聞こえてきます.ドン・ジョヴァンニはドンナ・アンナの部屋に夜這いをかけて彼女に気付かれて失敗,彼女が助けを求めると父親が剣を持って登場し,ドン・ジョヴァンニと決闘になり,父親は刺殺されてしまいます.この一連のノンストップ・ミュージックが正味約3時間のオペラの中で一番好きなところです

ドン・ジョバンニは世界各国でモノにした女性のリストを従者レポレッロに作らせ,「スペインでは1003人」といった具合に記録の更新を狙っている稀代の女たらしですが,彼はあくまでも貴族です   したがって,歌と演技にノーブルなところがなければなりません   その点,タイトルロールを歌ったイギリス生まれのサイモン・キーンリーサイドはピッタリのはまり役です  セクシーであってもどこか品があります   第1幕の二重唱で村娘のツェルリーナを口説き落とすのに3分しかかからないのも説得力を持ちます

ドン・ジョバンニに3分で口説き落とされたツェルリーナを歌ったイタリア出身のセレーナ・マルフィは出演者の中では一番魅力のある歌手です   通常ツェルリーナはソプラノが歌う役柄ですが,なぜメゾ・ソプラノの彼女が歌うことになったのか分かるような気がします   ちょっとコケティッシュだけれど,したたかさも持ち合わせた美しい村娘にピッタリです

ドンナ・アンナを歌ったロシア出身のヒブラ・ゲルツマ―ヴァは透明感のあるソプラノで,歌はドラマティックです   その婚約者ドン・オッタ―ヴォを歌ったシカゴ生まれのポール・アップルビーはどこまでもドンナ・アンナに寄り添う真面目で一途な青年を見事に歌い演じました   「性格俳優」とでも呼びたくなったのはドンナ・エルヴィーラを歌ったスウェーデン出身のマリン・ビストラムです   歌が抜群に上手いだけでなく顔で演技の出来る人で,見ていて飽きませんでした   レポレッロを歌ったプラハ出身のアダム・プラヘトカはコミカルな役柄にピッタリです

最適のテンポ設定のもと,歌手陣をしっかり支えたファビオ・ルイージ指揮メトロポリタン歌劇場管弦楽団と合唱団の活躍を忘れるわけにはいきません

また,イギリス出身のマイケル・グランデージの極めてオーソドックスな演出・舞台作りも特筆に値します   これが,「まず演出ありき」のような「舞台を現代に置き換えてみました」みたいな演出だと本当にがっかりします  モーツアルトは「まずは音楽,次に演出」でなければなりません

モーツアルトのオペラはどれもが,アリアに次ぐアリアで飽きることがありません   また各幕のフィナーレで主役級の出演者が総出で歌う重唱も大きな魅力です   生きてモーツアルトを聴けるのは どれほど幸せなことでしょうか

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

メンデルスゾーン「Vn協奏曲」(キム・ボムソリ),ドヴォルザーク「Vc協奏曲」(岡本侑也),チャイコフスキー「P協奏曲第1番」(ダニール・ハリトーノフ)を聴く~読響「三大協奏曲」コンサート

2017年08月29日 09時03分46秒 | 日記

29日(火)その2.よい子は「その1」から見てね   モコタロはそちらに出演しています 

昨夕,東京オペラシティコンサートホールで読売日響「三大協奏曲」コンサートを聴きました   プログラムは①メンデルスゾーン「ヴァイオリン協奏曲ホ短調」,②ドヴォルザーク「チェロ協奏曲ロ短調」,③チャイコフスキー「ピアノ協奏曲第1番変ロ短調」です   ①のヴァイオリン独奏=キム・ボムソリ,②のチェロ独奏=岡本侑也,③のピアノ独奏=ダニール・ハリトーノフ,管弦楽=読売日響,指揮=海老原光です

 

     

 

自席は1階30列10番,左ブロック右通路側席(最後列に近い席)です.会場はほぼ満席状態.よく入りました   オケはいつもの読響の編成で,弦は左から第1ヴァイオリン,第2ヴァイオリン,チェロ,ヴィオラ,その後ろにコントラバスという並びです.コンマスは長原幸太です

1曲目のメンデルスゾーン「ヴァイオリン協奏曲ホ短調」は1844年に作曲され,翌5年3月13日にライプツィヒで初演されました   1989年韓国生まれ,現在28歳のキム・ボムソリが白の華やかな衣装で登場します   2010年の仙台国際音楽コンクール・ヴァイオリン部門で最年少入賞(第4位)を果たし,13年にはARDミュンヘン国際音楽コンクール・ヴァイオリン部門で最高位(1位なしの2位)に入賞しています   現在ジュリアード音楽院に在学中です

海老原光のタクトで第1楽章が開始され すぐにヴァイオリンが入ってきます.とても美しいヴァイオリンです   技巧的にも何の問題もありません   しかし,この曲を聴いていつも思うのは,誰の演奏も同じように聴こえ,個性って何だろう,ということです   ひと言で言えば「没個性」ということです.「記録に残るが記憶に残らない」演奏がいかに多いかということです   これは「名曲」と言われる作品ほどそのように思います.いかに他の演奏家との「差別化」を図るのか,説得力を持って耳に聴こえる形で表現することは相当難しいのではないかと思います  

キム・ボムソリはアンコールにソ・イサンの「庭園のソナタ」から第5番「小鳥」を演奏しましたが,こちらの方がお国柄からか個性的な演奏だと思いました

2曲目はドヴォルザーク「チェロ協奏曲ロ短調」です   ドヴォルザークはアメリカのナショナル音楽院の院長として1892年から95年までニューヨークに滞在しましたが,その間にボヘミア出身のチェロ奏者ハヌシュ・ヴィハンからチェロ協奏曲の作曲を依頼され,1895年に完成しました

チェロを弾く岡本侑也が今年6月にブリュッセルで開かれたエリザベート王妃国際音楽コンクールのチェロ部門で第2位に入賞したというニュースに接したのは,このコンサートのチケットを買った数日後のことでした   1994年東京生まれということなので現在23歳.現在,ミュンヘン音楽大学に在学中です

海老原光の指揮で第1楽章が開始されます   岡本のチェロが力強く入ってきます.彼の演奏も技巧的には何の問題もありません.とても美しいチェロです   しかし,彼にしかない個性って何でしょう? 演奏姿を見ていると,汗をかかずクールに演奏しているように思います   言い換えれば,必死の姿勢が見られません.たとえば,アレクサンドル・クニャーゼフの「命を懸けて渾身の演奏する」といったスタイルとは対極にある演奏です   クールがスタイルだと言えばそうなのでしょうが,それでは他の演奏家と差別化が図れません.最近クールな演奏が多いと思われるからです

 

     

 

休憩後はチャイコフスキー「ピアノ協奏曲第1番変ロ短調」です   この曲は1875年に作曲され,同年10月25日にアメリカ・ボストンで初演されました   ステージに現れたダニール・ハリトーノフは相当背が高いスマートなイケメン青年です   1998年サハリン生まれと言いますから,現在19歳です   モスクワ音楽院で学び,ゲルギエフやスピヴァコフに認められロシアやヨーロッパで活躍中とのことです

海老原光のタクトで第1楽章が始まります   ピアノが入ってきたとき,「これはイケるかも知れない」と思いました.弱冠19歳とはとても思えない巨匠風のスケールの大きな演奏を展開します   もちろん技巧は完璧と言っても良いでしょう.速いパッセージも何の苦もなく超高速で弾き切ります   一方,ゆったりしたパッセージでは一音一音に意味が込められています   バックを務めるオケも,フルート,オーボエを中心にソリストを盛り立てます

前半では何となくモヤモヤしていましたが,3人目にしてやっとスッキリしました   19歳のハリトーノフ 恐るべし,です

最後に3人が再登場し,満場の聴衆の拍手を受けましたが,3人ともまだ若い   「今が頂点」と言われないよう頑張って欲しいと思います

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

藤田敏八監督「スローなブギにしてくれ」「リボルバー」を観る~ブルッフ「ヴァイオリン協奏曲第1番」も流れる

2017年08月29日 08時21分24秒 | 日記

29日(火)その1.今朝6時前後から3回ほど,枕元のケータイがピコピコ鳴りました   この時間帯で鳴るのは「集中豪雨警報」か「北朝鮮のミサイル発射」くらいしかありません   6時17分に開いてみたら Jアラート(全国瞬時警報システム)情報でした.それによると,北朝鮮がミサイルを発射し日本の上空を通過中であるとのことで,警戒地域として北海道,東北各県,新潟,茨城,栃木が挙げられていました.警戒地域が広いのでてっきり複数のミサイルが発射されたのかと思ったのですが,あとでNHKテレビで確認したら1発だけで,北海道の襟裳岬上空を通過し太平洋上に落下したとのことでした   核とミサイルで武装するハリネズミ国家・北朝鮮の金正恩は本当に困ったものです   これでまたアメリカのトランプ大統領が反発して 下手なツイートをして挑発したら大変なことになります.これも困ったものです

ということで,わが家に来てから今日で1063日目を迎え,神戸市の橋本健市議(自民)が,市政報告の印刷費をめぐり政務活動費約700万円を不正請求した疑惑が浮上し,橋本氏は28日,所属会派を通じて「多大なご迷惑,ご心配をおかけし,心よりお詫び申し上げます.印刷費は返金します」として,議員を辞職することを明らかにした というニュースを見て感想を述べるモコタロです

 

     

     

         これは橋本議員一人の問題じゃない  全国的にSPEED上げて調査すべきだろうな

 

                                           

 

昨日,夕食に「豚しゃぶ」「生野菜とサーモンのサラダ」「冷奴」を作りました   「豚しゃぶ」は少量の日本酒で湯がきます

 

     

 

                                             

 

現在,池袋の新文芸坐では藤田敏八監督没後20年特集を上映中です   昨日,同監督映画「スローなブギにしてくれ」と「リボルバー」の2本立てを観ました   なぜ観たいと思ったかと言うと,「リボルバー」の原作者が愛すべき佐藤正午さんだからです   そういう意味では「スローなブギにしてくれ」は”ついで”です

 

     

     

 

「スローなブギにしてくれ」は片岡義男の同名小説と「ひどい雨が降ってきた」「俺を起こして,さよならと言った」を元に,藤田敏八が監督した1981年KADOKAWA映画(130分)です

第三京浜で白いムスタングから放り出されたさち乃(浅野温子)を助けたのはバイクで走っていたゴロー(古尾谷雅人)だった   これをきっかけに2人は同棲生活を始める.一方,ムスタングを運転していた中年男(山崎務)も男2人女1人の奇妙な同棲生活を送っていたが,男の1人(原田芳雄)がジョギング中心臓発作で死んでしまう   さち乃はクリーンエリザベスという名前のスナックで働き始めるが,ゴローは喧嘩をしてバイトを辞めてしまう.ゴローが家を出たため,さち乃は中年男と会って,また奇妙な 男1人女3人赤ん坊1人の同棲生活を始める   しかし,すぐに いたたまれなくなり家を出る.いろいろあって,ゴローとさち乃はよりを戻して再び同棲し さち乃は妊娠する.ある日,海からムスタングが引き上げられ,男は生きていたが 女は死んでいた

 

     

 

この映画は南佳孝によるテーマ・ソング「スローなブギにしてくれ」とともに大ブレイクしました   が,意外にもクラシック音楽が使われていました   1曲は,中年男がムスタングに乗ってスイッチを入れると流れてくるブルッフ「ヴァイオリン協奏曲第1番ト短調」第3楽章「アレグロ・エネルジコ」です   もう1曲は,中年男の娘が発表会で演奏するテクラ・バダジェススカ「乙女の祈り」です   クラシック音楽と言えば,監督の藤田敏八は鈴木清順監督「ツィゴイネルワイゼン」で青地役として出演していたのを思い出しました.役者としても立派でした

この映画では,当時の時代を反映して「セパレート・ステレオ」「ラジカセ」「カセット・テープ」「ドーナツ盤」といった懐かしい製品が出てきます.当時を思い出しました

ところで,この映画の終盤でテーマ音楽「スローなブギにしてくれ」のレコードがかけられるのですが,南佳孝の歌に合わせて「ウォンチュウ~」と歌い出すおじさんが近くの席にいて閉口しました   閉口四辺形の面積は「底辺✖高さ」.テーヘンだ声の高さが違ってる

 

                                             

 

2本目の「リボルバー」は佐藤正午原作,藤田敏八監督による1988年日活映画(115分)です

巡査部長の清水信彦(沢田研二)は,ある日公園でサラリーマンに殴られ拳銃を奪われてしまう   犯人の男は不倫相手のOLが別の男と結婚するというので逆恨みしていた   しかし,結局二人を殺すことが出来ず,拳銃を動物園のゴミ箱に捨てる   それを高校生が拾う.彼はある男にボコボコにされ恨みを持っており,その男を殺すべく北海道まで赴く   一方,清水は責任を取って警察を退職してヒモのような生活をしていたが,高校生が拳銃を持って北海道に赴くことを知り,後を追う.清水は高校生を殺人者にすることを止めることが出来るのか

 

     

 

何と面白い映画だろう,と思います   それは明らかに佐藤正午の原作が素晴らしいからです   ジュリー(沢田研二)が,真面目だけれど何となく頼りない巡査部長を好演していましたが,脇を固める人たちの個性が溢れています   とくに全国の競輪場を巡り,賭けては負ける男二人(柄本明+1)が可笑しい   いつの間にか主役を食っていたりします   今,これほど面白い映画はどれほどあるのだろうか

 

     

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

小宮正安著「コンスタンツェ・モーツアルト 『悪妻』伝説の虚実」を読む / 青柳いづみこ エッセイ「ピアノとスポーツ」を読んで思うこと / 中野雄「ストラディバリとグァルネリ」他,本を5冊を買う

2017年08月28日 07時45分39秒 | 日記

28日(月).わが家に来てから今日で1062日目を迎え,トランプ米大統領が25日,人種差別的な取り締まりで有罪となったアリゾナ州の元保安官ジョー・アルパイオに恩赦を与えた いうニュースを見て感想を述べるモコタロです

 

     

                   30%台のコアな支持層に向けたメッセージだろうが 残り70%は支持してない

 

                                           

 

昨日の日経朝刊・文化面にピアニストの青柳いづみこさんが「ピアノとスポーツ」というタイトルでエッセイを寄せていました.超訳すると

「東京オリンピックが開かれる2020年には,5年に1度のショパン・コンクールがワルシャワで開かれる   16歳から30歳までの若者が集まるが,書類審査とDVD審査,予備予選を通るのは80人.第3次予選で10人のファイナリストを選び,3人の入賞者が決まる   日本は1970年の内田光子が第2位で最高だった.指導者はどう指導すればよいか悩む   参考になるのはスポーツ界の水泳競技だ.それまでの水泳競技は各選手が所属するスイミング・スクールごとにトレーニングし,対抗意識から情報交換もなかったが,シドニーオリンピックの競泳日本代表のヘッドコーチ上野氏は,コーチ,クラブ間の垣根を取り払い,他のコーチの指導も受けられるようにした   その結果,最近では金を含む複数のメダルを獲得するようになった   日本には複数のピアノ教育団体があり,オーディションやコンクールを実施しているが,指導そのものは個々のレスナーに任されている   『門下』の意識が強く,先生を変えると破門扱いされたのは昔のことだが,今も複数の指導者に師事するのは簡単なことではないときく   ショパン・コンクールはショパンの曲のみで競うので,ショパンにふさわしい演奏をする必要があるが,『ショパンらしい演奏』が曲者で,審査員それぞれが抱くイメージがかなり違う.年度ごとの違いもある   従来は比較的保守的で,あまり逸脱した表現をすると実力があっても落ちてしまうケースが見受けられた.しかし2015年の時は自由なスタイルが主流で,オーソドックスな演奏は点数が出にくかった.このように演奏のコンクールでは審査員の顔ぶれ次第で結果もがらりと変わる   それでも,飛びぬけた実力者は必ず上に行くが,受験生としては傾向と対策も練らなければならない.そのとき,水泳競技方式がモノを言うと思うのだ.門下や学舎にとらわれず,すべての垣根を取り払って自由に情報交換ができる場があればどんなによいだろう

毎年数多くの音大生が卒業していく中で,この世界で生き残るのは大変なことだと思います   演奏家にとって,国内外のコンクールに入賞することは,広く実力が認められ,次のステージに上がる大きなステップになるでしょう   そういう意味で,コンクール,コンクールと言いたくはないものの,コンクールは演奏家の実力を知るための客観的な「必要悪」的な存在になっているように思います   コンサート・リスナーとしては,同じ曲を聴くなら実力のある演奏家の演奏を聴きたいと思うものです   今この瞬間にもショパン・コンクールを目指して練習に励む若者たちがいるのだと思います  「ショパンらしい演奏」を目指して個性を発揮する・・・・口で言うのは簡単ですが,相当難しい課題だと思います

 

                                           

 

小宮正安著「コンスタンツェ・モーツアルト 『悪妻』伝説の虚実」(講談社選書メチエ)を読み終わりました   小宮正安氏は1969年東京生まれ.現在,横浜国立大学教授.専門はヨーロッパ文化史およびドイツ文学.このブログでは「モーツアルトを『造った』男 ー ケッヘルと同時代のウィーン」(講談社現代新書)をご紹介しました

 

     

 

この本は次の8つの章から構成されています

序章  琥珀のなかの「蠅」

第1章 モーツアルト家 vs. ウェーバー家

第3章 コンスタンツェという女性

第4章 「理想のモーツアルト伝」のために

第5章 加速する「悪妻」イメージ

第6章 伝説は覆されたか?

第7章 日出ずる国のコンスタンツェ

終章   彼女を語るとき,ひとは・・・・

「序章」では,モーツアルトの妻コンスタンツェ(1762~1842年)について,音楽学者のアルフレート・アインシュタイン(物理学者のアルベルト・アインシュタインとは別人)が,著書「モーツアルト その性格 その作品」の中で述べている次の言葉を紹介しています

「モーツアルトの妻コンスタンツェ・モーツアルトとは,何者だったのか? 彼女の名声が今なお続いているのは,ヴォルフガング・アマデウス・モーツアルトが彼女を愛し,それによって彼女を永遠の中に連れていってくれたおかげである   それはまるで,琥珀のなかに蠅が閉じ込められたようすと同じなのだ.だからといって,彼女がこうした愛や名声に十分応えていたとは限らない

また,小宮氏は 世界三大悪妻の一人として,ソクラテスの妻クサンティッペ,トルストイの妻ソフィアと並んで,コンスタンツェが挙げられていることを紹介しています.そのうえで,なぜ彼女がそこまで悪く言われるようになってきたのか,コンスタンツェに関する受容史を探ることがこの本の目的だと述べています

第1章では,コンスタンツェ・ウェーバー(旧姓)が作曲家カール・マリア・フォン・ウェーバーの23歳年上の従姉であることを明らかにします   そして,母親のチェチーリアは 出身地マンハイムで下宿屋を営んでいたが,そこにモーツアルトが滞在することになり,最初は姉のアロイジアに熱を上げたが 振られたため,妹のコンスタンツェに鞍替えして結婚に漕ぎつけた旨を紹介します

第2章以降では,なぜコンスタンツェが「悪者扱い」されてきたかについて次の要因を挙げて理由を探ります

 ①歴史に残る超有名人(モーツアルト)と結婚した.しかも才能という点では,宮廷歌手を務めた姉アロイジア・ウェーバーと比べてみると,彼に釣り合わないどころか,釣り合うきっかけさえも見いだせなかった

 ②舅(モーツアルトの父レオポルド)と小姑(同・姉マリア・アンナ)と折り合いが悪かった.軽率さを夫にしばしばたしなめられ,だが一方ではその官能性で夫を魅了した

 ③家計が火の車になる中,夫が急死した.夫の葬儀は極端なまでに簡潔に執り行われ,埋葬場所さえわからなくなった

 ④夫の死後は,大出版社を相手に亡夫の楽譜を高値で売りつけた.「レクイエム」の初演や出版を依頼主を無視して決行し,騒動を巻き起こした

 ⑤デンマークの外交官(ニッセン)と知り合い,ついには彼の妻として「国家顧問官夫人」を名乗るようになった.やがて折り合いの悪かった小姑(マリア・アンナ)の住む街に引っ越し,ニッセンが亡くなった後は彼の著した『モーツアルト伝』の販売に心血を注いだが,ふたたびビジネス上のトラブルを巻き起こした

 ⑥モーツアルト記念祭関係の催しに何かにつけて首を突っ込み,さらには晩年まで衰えぬステージママぶりを発揮して,次男(フランツ・クサヴァ―・モーツアルト)を名誉あるポストに付けようとしたが失敗した

これらの要因について,小宮氏は「嫌われるのは もっともなことだが」と断りながらも,コンスタンツェに同情的なコメントを付しています   たとえば,③のモーツアルトの葬儀・埋葬場所については,「当時は簡素なやり方がごく普通であった」とか,④の楽譜を高く売りつけたことについては,「多額の借金を抱えており 生活のためやむを得ない措置だった」とか,史実を交えて述べています

モーツアルトとの関係において,コンスタンツェの人と成りについて考える時に,一番信頼できる資料はコンスタンツェの2番目の夫ゲオルグ・ニコラウス・ニッセンが著した『モーツアルト伝』であると言われています   今年5月の連休に第一生命日比谷本社で開かれた「ナンネルとモーツアルト 国際モーツアルテウム財団コレクション展」で,この初版本(1828年)が展示されていました   随分古めかしく,保存が大変だろうなと思ったのを覚えています   いずれにしても,コンスタンツェにとって,2番目の夫 ニッセンがモーツアルトを敬愛していたことはラッキーだったと言えます

『モーツアルト伝』を著すに当たり生き証人が隣にいるのですから,ニッセンにとってはこれ程都合の良いことはありません   ただし,モーツアルトが旅に明け暮れていたことから手紙が多く残されていたザルツブルク時代と比べて,コンスタンツェと結婚した後のウィーン時代は極端に手紙が少なくなっていたことから,当時の客観的な様子が分からないのが実態です   ニッセンは当然,すぐそばにいたコンスタンツェに当時の様子を聞いた上で伝記を書いたはずです.ここで気を付けなければならないのは,コンスタンツェは自分の不利になることも正直に話しただろうかということです   誰だって文字として残る書物で自分が悪く書かれるのは避けるでしょう  小宮氏はそのことについても書いています

「終章」の中で小宮氏は次のように述べています

「モーツアルトを愛でるのはよい.後世に生きる私たちは,彼の音楽を,さらにはその人生を楽しめばよい   だからこそ高級そうな知識をふりまわして,あるいはそうした知識をもっていることを鼻にかけて,他人の悪口を言う真似はそろそろ慎んだらどうだろう.コンスタンツェをいかに語るかという姿勢のなかには,それを語っている当人の本性が必ずや滲み出ているのだから

どうやら,これが小宮氏の一番言いたいことだったようです   「残された手紙や,後世の様々な『モーツアルト論』の中で明らかなように,モーツアルトはコンスタンツェを愛していたのだから,それでいいじゃないか」という主張も為されていますが,一方で,モーツアルトからコンスタンツェに向けた手紙は多く残っているのに,その逆の手紙はほとんど残っていないという事実や,それに基づいて,「コンスタンツェはモーツアルトを愛していなかった」という複数の説を読むと,果たしてモーツアルトは本当に幸せだったのだろうか,と考えてしまいます

 

                                             

 

本を4冊買いました   1冊目は中野雄著「ストラディバリとグァルネリ ヴァイオリン千年の夢」(文春新書)です

 

     

 

2冊目は丹羽宇一郎著「死ぬほど読書」(幻冬舎新書)です

 

     

 

3冊目は米澤穂信著「満願」(新潮文庫)です このブログではお馴染みの著者の作品です

 

     

 

4冊目は誉田哲也著「インデックス」(光文社文庫)です これもこのブログではお馴染みの著者の作品です

 

     

 

5冊目は藤野英人著「投資レジェンドが教える ヤバい会社」(日経ビジネス文庫)です   藤野氏の本は先日「投資家が『お金』よりも大切にしていること」(星海社新書)をご紹介しました

 

     

 

いずれも読み終わり次第このブログでご紹介していきます

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

小菅優+東京交響楽団でモーツアルト「ピアノ協奏曲第12番K.414」,「同 第9番”ジュノム”K.271」を聴く~モーツアルト・マチネ

2017年08月27日 07時52分10秒 | 日記

27日(日).わが家に来てから今日で1061日目を迎え,北朝鮮が26日午前,性懲りもなく日本海に向けて短距離ミサイルを3発発射した というニュースを見て感想を述べるモコタロです

 

     

     散髪だったら虎刈りゴメンで済むけど  ミサイル3発はどこに落ちるかわかんない

 

                                           

 

昨日,ミューザ川崎コンサートホールで東京交響楽団のモーツアルト・マチネ「モーツアルト ✕ ピアニストの挑戦」を聴きました   プログラムは①モーツアルト「ピアノ協奏曲第12番イ長調K.414」,②同「同 第9番変ホ長調K.271”ジュノム”」です   演奏は小菅優さんが東京交響楽団を弾き振りします

 

     

 

「フェスタサマーミューザ」以来のミューザ川崎です   会場には多くのモーツアルト好きが集まりました.自席は1階6列右側です.ステージ上には 演奏曲目がモーツアルトということで総勢24人(うちオーボエ2,ホルン2)のみの小編成です.モーツアルトの時代はこれが普通だったのでしょう   コンマスはグレブ・二キティンです.舞台中央には蓋を外したグランドピアノが,客席に鍵盤が見える向きに設置されています.ピアニストは客席に背中を見せる形で指揮をしながらピアノを演奏します

1曲目は「ピアノ協奏曲第12番K.414」です   ザルツブルクの宮廷音楽家だったモーツアルトは,故郷の大司教コロレド伯とソリが合わず1781年(モーツアルト25歳),遂に宮廷から解雇通告を受けます   彼はウィーンに移り住み,当時としては画期的なフリーランス音楽家として活動を開始します   彼は自らの企画・出演の形で演奏会を開いて収入源としました   その主なレパートリーがピアノ協奏曲でした.ウィーン時代に作曲された17曲のピアノ協奏曲のうち最初の3曲(第11番,第12番,第13番)は1782年から翌83年にかけて作曲されましたが,実質的に最初に書かれたのが第12番でした   この曲について,彼は故郷に居る父レオポルドに宛てた手紙で,「難しすぎず,簡単すぎず,その中間です」と書いていますが,楽譜が多く売れるようにという意図が見られます

よもぎ色のファッショナブルな衣装の小菅優さんが登場,ピアノに向かいます   第1楽章は当時のピアノ協奏曲の”お約束”通り,なかなかピアノが出てきません   小菅さんは座ったまま両手で指揮をします.オーケストラが優雅な主題を奏でた後,やっとピアノが登場します  小菅優さんといえば,パワフルな演奏スタイルを思い浮かべますが,相手はベートーヴェンではなくモーツアルトです.あくまでも優しくまろやかなアプローチを取ります

第2楽章はモーツアルトが尊敬していたヨハン・クリスティアン・バッハの死去(1782年1月)を悼むかのような,祈るような旋律が奏でられます   そして第3楽章では一転,愛らしい旋律で開始され,モーツアルトらしい軽快で優雅な音楽が展開します.小菅さんの演奏は軽快そのものでした

 

     

 

2曲目はモーツアルトが21歳の時に作曲した「ピアノ協奏曲第9番K.271」です   この曲は,1777年の冬にザルツブルクにやってきたフランス人ピアニストのジュノム嬢のために,同年1~2月に書かれたことから「ジュノム」という愛称で呼ばれています   最近の研究で この「ジュノム嬢」は,舞踏家・振付家のジャン=ジョルジュ・ノヴェールの娘ルイーズ・ヴィクトワール・ジュナミのことであることが分かっています   ノヴェールは半年後にパリで再会したモーツアルトにバレエ音楽「レ・プティ・リアン」の作曲を依頼した人です

この曲の特徴は第1楽章にあります 他のピアノ協奏曲が1曲目の第12番と同じようにピアノの登場が遅いのに対し,オーケストラの呼びかけにピアノが即座に応えるような形で,冒頭からピアノが登場するところに特徴があります   モーツアルトのピアノ協奏曲の中でこのスタイルを取るのはこの曲だけです   このスタイルは後のベートーヴェン「ピアノ協奏曲第4番」や「同第5番”皇帝”」の先駆けとなる形式として重要です   この楽章は独奏ピアノとオーケストラとの掛け合いが楽しく聴けます.ピアノはあくまでもエレガントです

第2楽章の悲痛な音楽を聴くと,なぜか「フィガロの結婚」第4幕におけるバルバリーナのカヴァティーナ「失くしてしまった」の音楽が頭に浮かんできます   曲想としては悲しく,淋しいといった感じの音楽です

楽章間を空けることなく入った第3楽章は一転,エネルギーに満ちた推進力のある曲想です   小菅さんはテンポ感もよく軽快に演奏を進め,輝かしいフィナーレを迎えました

プログラムを見て,最初は「なぜ後から作曲した第12番が先で,先に作曲した第9番が後なのか?」と疑問に思っていましたが,実際に演奏を聴き終わってその理由が分かりました   小菅さんは,この輝かしいフィナーレでコンサートを終わらせたかったのでしょう

ところで,指揮振りする小菅さんの後姿を見ながら思い浮かべたのは,モーツアルトの名手・内田光子さんの演奏姿でした   二人は体形こそまったく違います(華奢な内田さんに対し,たくましい小菅さん)が,いつか映像で観た内田光子さんがモーツアルトのピアノ協奏曲を弾き振りする姿が,小菅さんにダブりました   ひょっとして,小菅優さんは第2の内田光子さんになれる一番近いところにいるのかもしれない,と思いました

最後に,どこかのオケでモーツアルトの「ピアノ協奏曲全曲演奏会」をやってもらえないか,と希望します   なにも小菅優さんに限らずとも,東京交響楽団に限らずとも構わないのですが,せっかく東響は「モーツアルト・マチネ」シリーズがあるのですから,東響でやってもらえたらベストだと思います

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

イタリア映画「おとなの事情」を観る~新文芸坐 / 第157回直木賞:佐藤正午『月の満ち欠け』(抄録)収録のオール読物9月号を買う

2017年08月26日 08時02分40秒 | 日記

26日(土).わが家に来てから今日で1060日目を迎え,北朝鮮の核・ミサイル問題が緊迫する中,北朝鮮がロシアで初となる政府公認の旅行会社を開設し,主にロシア極東からの観光客の増加を狙っている というニュースを見て感想を述べるモコタロです

 

     

                まさか「ミサイルでアメリカ大陸まで最短距離の旅」なんて旅行じゃないだろな

 

                                          

 

昨日,夕食に「ビーフ・ストロガノフ」「生野菜サラダ」を作りました   何しろ子供たちは肉が大好きなので,8人前作ったはずが 6人前があっという間になくなってしまいました

 

     

 

                                          

 

昨日,池袋の新文芸坐で映画「大人の事情」を観ました  これはパオロ・ジェノペーゼ監督による2016年イタリア映画(96分)です

17歳の娘の反抗期に悩む夫婦,倦怠期を迎えた夫婦,新婚カップル,あいにくパートナーが所用で来れなくなった独身中年男性 の7人がホームパーティ―に集まり,全員がケータイをテーブルの上に置き,「メールが届いたら全員の目の前で開くこと」「電話がかかってきたらスピーカーに切り替えて話すこと」というルールを決め,お互いに隠し事がないことを確認するゲームを始める   次々と着信するメールや電話により,7人にとっては図らずも,夫婦間のもめ事や家庭問題,個人の性癖などの”秘密”が露呈していき,普段は友人に見せることのない隠れた”本心”が現れる

 

     

 

映画の冒頭の食事シーンを観て思ったのは,イタリア人はよくしゃべるなぁということです   映画だから,ということはあるかも知れませんが,食べながらもよくしゃべります

人生経験の豊富な人ほど「あるある,そういうこと」と頷くシーンが多いと思われる映画ですが,映画だからということで笑って済ませられるブラックな面も多々あります

この映画の大きな特徴は,一つの部屋の中での出来事だけを追っていることです   外に出ると言っても全員がベランダに出て月を眺めるシーンくらいしかありません   それでもストーリーに引き込まれるのは,プロットがしっかりしているからでしょう

それぞれの秘密が暴露されたところで,「ケータイを使ったゲームのせいで生活が滅茶苦茶になってしまう   ケータイをゲームに使うのは良くない」と誰かが言いますが,誰もが「他人のプライバシーは知りたいけれど,自分のプライバシーは他人に知られたくない」と思っているのではないかと思います   そういう意味では,彼らの行為は「ケータイを使った最も危険な遊び」だと言えそうです

ところで,この4組のカップル(1人の独身を含む)が抱えている秘密を計算式で表してみたら「球の表面積」と同じになりました   球の表面積=4パイアール二乗=心配ある事情   4組の”大人の事情”は(曲がりなりにも)球のように丸く収まったようです

 

     

 

                                           

 

第157回直木賞受賞作,佐藤正午「月の満ち欠け」(抄録)を収録した「オール読物」9月号を買いました   本当は単行本を買えば良いのですが,こちらには選評や自伝エッセイ,対談などが併録されているので魅力を感じました   問題はいつ読むか,です   いま 小宮正安著「コンスタンツェ・モーツアルト『悪妻』伝説の虚実」を読んでいる最中なので,これを読み終わったら読もうと思います

 

     

 

 

本日,toraブログのトータル閲覧ページ数が300万ページを超え, 3,000,028 P V となりました   因みにトータル訪問者数は 808,592 I P となっています.これもひとえに普段からご覧いただいている読者の皆さまのお陰と感謝申し上げます   これからも1日も休まず毎日根性で書き続けて参りますので,モコタロともどもよろしくお願いいたします

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

「 METライブビューイング 2017-18」特別鑑賞ムビチケカード3枚セットを買う / 映画「ラビング」を観る~アメリカの「異人種間結婚禁止法」を撤廃した夫婦の闘いの物語

2017年08月25日 07時47分52秒 | 日記

25日(金).わが家に来てから今日で1059日目を迎え,トランプ米大統領が22日,米アリゾナ州での演説で,メキシコとの国境の壁建設に向けた予算が認められなければ政府機関の一部の閉鎖も辞さない姿勢を示した というニュースを見て感想を述べるモコタロです

 

     

      「白人至上主義」から「壁建設公約至上主義」に目先を変えたね 次はなんだ?

 

                                           

 

昨日,夕食に「もやし巻き豚肉しょうが焼き」「生野菜とアボカドのサラダ」「冷奴」を作りました   「もやし~」はレシピに「お好みでモヤシのヒゲ根を取り」と書いてありましたが,手間がお好みでないので省略しました

 

     

 

                                           

 

11月18日から始まる「 METライブビューイング  2017-18」の特別鑑賞ムビチケカード3枚セットを買いました

チケット代は1作品@3,600円ですが3枚セットでは9,300円(@3,100円)と格安になります   3回作品以上観る場合はセット券が得です

 

     

 

     

 

新シーズンでは下のチラシの通り10作品が上映されます

 

     

     

10作品のうち新演出は第1作:ベッリーニ「ノルマ」,第4作:プッチーニ「トスカ」,第8作:モーツアルト「コジ・ファン・トゥッテ」です

 

                                           

 

新国立劇場から9月7日に開かれる「第2回避難体験オペラコンサート」の入場整理券が届きました   参加にはこの整理券が必要です.当日忘れないようにしないと

 

     

 

     

 

                                           

 

昨日,神楽坂のギンレイホールで「ラビング  愛という名前の二人」を観ました   これはジェフ・ニコルズ監督・脚本による2016年イギリス・アメリカ合作映画(123分)です

 

     

 

レンガ職人の白人男性リチャード・ラビングは,恋人の黒人女性ミルドレッドから妊娠していると告げられ,大喜びで結婚を申し込むが,1958年当時,バージニア州では異人種間の結婚は法律で禁じられていた   しかし,子どもの頃に出会って育んだ友情が,愛情へと変わっていったリチャードとミルドレッドにとって,別れることなど考えられないことだった   二人は法律で許されるワシントンDCで結婚し,地元に新居を構えて暮らし始めるが,夜中に突然現れた保安官に逮捕されてしまう   二人は,離婚するか故郷を捨てるか,二つに一つの選択を迫られる.そんな中,ミルドレッドは友人からロバート・ケネディ司法長官(ケネディ大統領の弟)に手紙を書いたらどうかとアドヴァイスを受け,窮地を救ってほしい旨の手紙を書く   するとケネディはアメリカ自由人権協会にこの案件の処理を委ね,同協会から派遣された弁護士によって裁判が進められる   この訴訟は最高裁まで持ち込まれ,1967年に「異人種間結婚禁止法」は違法であるという判決が下される

 

     

 

この映画は実話に基づく作品ですが,イギリス映画ではお馴染みの名優コリン・ファースが実話に感動してプロデューサーを名乗り出て実現した作品です   アメリカでは今からたった50年前まで,白人と黒人の組み合わせなど異人種間の結婚は違法だったなんてとても信じられません   驚くべきは,政治的な団体ではなく,ごく普通の夫婦の訴えが最高裁判所を動かし,旧態依然たる法律を変えさせたという事実です   もちろん,ロバート・ケネディ司法長官やアメリカ自由人権協会の弁護士の力がなければ実現しなかったわけですが,夫婦が途中で諦めていたら,「異人種間結婚禁止法」は 最近まで「正しい法律」として存続していたはずです

さらに,現代のアメリカに目を転じてみると,トランプ大統領が,まさにこの映画の舞台バージニア州で白人至上主義者と反対派が衝突した事件を巡り,明白に白人至上主義者を批判しなかったことを考えると,時代に逆行しているのではないか,と心配になってきます

この映画のタイトル「Loving」は,ラビング夫妻の名前であるとともに,人種を超えて深い絆で結ばれた二人の夫婦の愛を意味しています   名前に恥じない素晴らしい人生を貫いた二人に拍手を贈ります

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

上原彩子ピアノ・リサイタル「壮麗の先へ!ピアノ演奏の極み」を聴く~第一生命ホール「雄大と行く 昼のさんぽ」 / 10年周期大変動説~日本は大丈夫か?

2017年08月24日 08時28分31秒 | 日記

24日(木).昨日の朝日朝刊「金融・経済」面のコラム「経済気象台」は「10年周期大変動説」というテーマでした   ペン・ネーム「山猫」さんによるコラムを超訳すると

「10年周期で経済の大変動が訪れるらしい   振り返ると,1987年のブラックマンデーに始まり,97年のアジア通貨危機(国内大手金融機関の相次ぐ破綻),2007年のサブプライムローン問題と翌08年のリーマン・ショック,と 確かに10年ごとに大変動が起きている   現在,欧州各国の政治経済情勢は不安要素が増し,アメリカではトランプ政権が有効な経済政策を打てるとは考えられない  日本だって,わからない.日本銀行と連動したアベノミクスの中身が空っぽだからだ.日銀がETF(上場投資信託)を通じて上場株を『爆買い』し,日本国債の発行総額の4割近くまで買い付けている.これが『通貨の番人』である中央銀行のやることか  一方,日本経済の実態は,低賃金・長時間労働という犠牲の上に成り立っている.本質を見極め,地に足を着けた政策を打たないと,わが国は来るべき大変動の餌食になってしまう

10年周期大変動説で私が一番恐れているのは,まさに10年区切りの2017年にアメリカでトランプ政権が誕生したことです   政治にしても経済にしても,「何を言うか分からない」「翌日には反対のことを平気で言う」といった,まさに「一瞬先は闇」のトランプ大統領ほどのリスク要因は他にないでしょう.とくに大陸間弾道ミサイルの相次ぐ発射実験によって,ハリネズミのように自国を(というより金正恩ファミリーを)守ろうとする北朝鮮の動向を見る時,大きな危うさを感じます

ということで,わが家に来てから今日で1058日目を迎え,中国産マツタケが 中国国内の需要が伸びていることに加え 天候不順で生育が遅れていることから高値になっているというニュースを見て感想を述べるモコタロです

 

     

      一般庶民にとっては 安くなるのをマツダケ ってか   あ~ チャイナ チャイナ

 

                                           

 

昨日,夕食に千葉県勝浦市在住の大学時代の友人S君が送ってくれたアジを塩焼きにしました   あとは「生野菜とツナのサラダ」「マグロの山掛け」「冷奴」です.「アジ~」は大振りで美味しかったです.持つべきものは友だちです

 

     

 

                                           

 

昨日,晴海の第一生命ホールで「雄大と行く昼の音楽さんぽ」シリーズ第11回「上原彩子ピアノ・リサイタル 壮麗の先へ!ピアノ演奏の極み」公演を聴きました   プログラムは①ラフマニノフ「前奏曲”鐘”」,②同「ピアノ・ソナタ第1番ニ短調」です

 

     

 

この「昼の音楽さんぽ」シリーズの良いところは演奏する曲目をわかり易く解説してくれるところです   自席は1階11列11番,左ブロック右から2つ目です.会場は9割以上入っているでしょうか

朱色の鮮やかな衣装に身を包まれた上原彩子さんが登場,1曲目のラフマニノフ「前奏曲嬰ハ短調作品3-2『鐘』」を演奏します   第12回チャイコフスキー国際コンクール ピアノ部門で女性として,また日本人として初めて第1位を獲得した上原彩子さんから,

「ロシアではどんな小さな街にも教会があり,必ず大小様々な鐘があります   ラフマニノフは子供の頃から身近に鐘の音を聴いていたと思います」「ラフマニノフはピアニストとしては歴史上5本の指に入る偉大なピアニストだと思います

という話があり,音楽ライターの山野氏からは

「ラフマニノフは幼い頃から教会の鐘の音が大好きで,この曲をはじめ,いくつかの作品にその音色が生かされています

という話がありました.この曲では上原彩子さんらしいダイナミックな演奏が聴けました

 

     

 

2曲目はラフマニノフ「ピアノ・ソナタ第1番ニ短調」です   雄大氏から,

「この曲はコンサートで取り上げられる機会が少ないのですが,その理由は演奏に35分位かかる長い曲であること,そして音符が多いことだと思います   当初は45分もかかる曲だったのを大幅にカットしています.大規模な構想から彼は交響曲にすることも考えたましたが,特に第2楽章がピア二スティックなので断念しました

という解説があり,さらに,

「この曲は,ゲーテの『ファウスト』に登場する主要人物3人になぞられて着想されたと言われています   すなわち,第1楽章『アレグロ・モデラート』が悪魔と契約を結ぶ学者ファウスト,第2楽章『レント』が少女グレートヒェン,第3楽章『アレグロ・モルト』が悪魔メフィストフェレスという具合です   しかし,曲が人物を描写しているわけではありません

「音楽を聴くに当たっては,先入観や固定観念を植え付けないで素直に聴くのが一番だと思いますが,長大で難解なこの曲に関しては以上のような知識を鑑賞のヒントとして頭の隅において聴くと理解しやすいと思います」

と解説しました   上原さんからは,

「最初聴いたときは,難しい曲だと思ったのですが,何回も弾いてみて,身体の中にしっかり入ってきたら面白くなってきました

と語っていました

第1楽章では上原さんの解説にあった「コラール風」の音楽が聴かれ,第2楽章では息の長いロマンティックなメロディーが心地よく響き,第3楽章では悪魔的なリズムの音楽がダイナミックに演奏されました   自席からは上原さんの指使いが良く見えるのですが,いかに音符が多い曲かが目で見て分かりました   第3楽章に至っては,腰を上げて立ち上がって打ち下ろす姿も見られました

上原さんの演奏を聴いていつも思うのは,3人のお子さんをしっかりと育てながら着実に練習を積んで,繊細かつダイナミックな演奏を聴かせてくれる「地に足を着けたピアニスト」だな,ということです

上原さんはアンコールにリスト「メフィストワルツ」を鮮やかに演奏し,満場の聴衆から大きな拍手を浴びました

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

「METライブビューイング アンコール2017」で ワーグナー:舞台神聖祝祭劇「パルシファル」を観る / 鈴木秀美氏の言葉~朝日朝刊「折々の言葉」から

2017年08月23日 08時07分02秒 | 日記

23日(水).朝日新聞朝刊第1面掲載の「折々のことば」が昨日,チェリスト・指揮者の鈴木秀美氏の次の言葉を紹介していました

「個々の楽器がそれぞれ十分に鳴っているのが全体にとってベストとは限らない」

これについて,このコラムの執筆者・鷲田清一氏は次のようにコメントを書いています

「通奏低音とは『響きの土台』を作るもの.旋律を支える低音に和音をつけてゆく.そして上声部が自由に歌えるよう緩急をつけ,間合いをとる   『一つになって聞こえる』こと,そのために何を優先するかの判断が重要で,自分の楽器がちゃんと鳴っているかは二の次,三の次だとチェリストは言う.人の集団でもしんがりや黒衣,縁の下役が大事(『通奏低音弾きの言葉では,』から)」

「18世紀オーケストラ」「ラ・プティット・バンド」「バッハ・コレギウム・ジャパン」など,世界的な古楽器集団で首席チェリストを務めた鈴木秀美氏の言葉には説得力があります   上に紹介された言葉を読むと,同氏がチェリストだけでは物足りなくなり,オーケストラ全体の音のバランスを取りながら理想的な音楽を作っていく指揮者の道に足を踏み入れたことが理解できるような気がします

というわけで,わが家に来てから今日で1057日目を迎え,トランプ米大統領が21日,アフガニスタンから駐留米軍の拙速な撤収はせず,関与を継続するとテレビで語った いうニュースを見て感想を述べるモコタロです

 

     

     トランプ大統領の当初の公約は「自国第一主義」だったよね 聞いてんの? キミ!

 

                                         

 

昨日,夕食に「さっぱりトマトバンバンジー」「生野菜サラダ」「冷奴」を作りました 夏はバンバンジーがいいですね

 

     

 

                                           

 

昨日,東銀座の東劇で「METライブビューイングアンコール2017」のワーグナー:舞台神聖祝祭劇「パルシファル」を観ました   これは2013年3月2日に米ニューヨークのメトロポリタン歌劇場で上演された公演のライブ録画映像です   キャストは,パルシファル=ヨナス・カウフマン,クンドリ=カタリーナ・ダライマン,アンフォルタス=ペーター・マッテイ,グルネマンツ=ルネ・パーペ,クリングゾル=エフゲニー・二キティン,管弦楽・合唱=メトロポリタン歌劇場管弦楽団・合唱団,指揮=ダニエル・ガッティ,演出=フランソワ・ジラールです

「パルシファル」(全3幕)のあらすじは次の通りです

「舞台は伝説の中世スペイン.キリストを刺した聖槍とその血を受けた聖杯を護る騎士団の長アムフォルタスは,聖槍を魔術師クリングゾルに操られた魔性の女クンドリに奪われ,その槍で傷を負っている   この傷を治すには『無拓な愚者』の登場を待つしかない   ある日,臣下の老騎士グルネマンツは白鳥を矢で射た若者パルジファルと出会い,彼こそが王を救う『無拓な愚者』であると考えるが,若者は聖杯の儀式の意味が理解できない   パルシファルはクリングゾルの城を訪れ,クンドリの誘惑を受けるが,それに屈することなく,彼女の接吻で悟りを開く   クリングゾルはパルシファルに聖槍を投げつけるが,槍は彼の頭上で止まる   時を経て,パルシファルは聖槍を手に王の元に帰ってくる.パルシファルがアムフォルタスの傷口に聖槍を当てると,傷はみるみる消える.パルシファルは聖杯の王となり,聖杯は輝く

 

     

 

2013年3月のライブビューイングの時に この作品を見逃してしまったので,私が「パルシファル」を観るのは2014年10月2日に新国立劇場で上演された飯守泰次郎指揮東京フィルのバックでクリスティアン・フランツがパルシファルを歌ったプルミエ公演(飯守氏の新国立劇場オペラ部門 芸術監督就任披露公演)以来です 

指揮者ダニエル・ガッティがオーケストラ・ピットに入り.前奏曲の演奏が始まります   この序曲は魔力がありますね.大好きです   ステージは砂漠のような荒涼とした土地の上に男たちがスーツ姿で登場しています.ジラールの演出は舞台を現代に移しているようです   かと思っていると,彼らは上着を脱ぎ,靴と靴下を脱いで裸足になります   中央には奥から客席に向かって細い小川が流れています.第1幕では老騎士グルネマンツ役のルネ・パーペの出番が多く,深みのある低音の魅力を発揮します   新王であるアムフォルタス役のペーター・マッテイは脇腹に槍の傷を負っている設定なので,終始痛々しい演技のまま歌うので気の毒になるほどです   彼はMETライブでは「セヴィリアの理髪師」でのフィガロ役が適役だと思っていましたが,この手負いの王の役も堂に入っていました   この第1幕だけで正味2時間弱かかります   クラシックコンサート1回分が終わりです

以前このブログでも書きましたが,ワーグナーのオペラ・楽劇を生演奏で聴く時は絶対に遅刻してはなりません   たとえばこの「パルシファル」の場合で言えば,開演時間を1分でも遅刻したら休憩時間までは入場できず,残り2時間近くをロビーのモニター画面を観て過ごすことを強いられます.ワーグナーのオペラは休むことなく鳴り続ける「無限旋律」であることを忘れてはなりません

第2幕は,ステージが血の海になっています   花の乙女たちが「けがれ無き愚者=パルシファル」を誘惑するシーンですが,ステージは赤い水で満たされ,何十人ものロングヘアで顔を隠した女性たちが うなだれるような恰好で立っているシーンは,まるで「リング」の貞子が大勢いるようで不気味でした   この幕ではクンドリ役のカタリーナ・ダライマンが迫真の演技で歌い上げます   また主人公のパルシファル役のヨナス・カウフマンもこの幕から本領を発揮します   クリングゾル役のエフゲニー・二キティンは出番が少ないのですが,存在感抜群の歌唱力を発揮しました   この幕は約70分です

第3幕は,再びステージが荒涼たる砂漠のような土地に戻ります   この幕はまさに主人公パルシファルの独壇場です.カウフマン絶好調です   また,手負いのアムフォルタス役のペーター・マッテイも最後の力を振り絞ります   この幕は約80分です

驚いたのは,幕間のインタビューでバスのオーウェンスが指揮者ダニエル・ガッティに「客席側からは分かりにくいかも知れませんが,あなたはこの長時間公演を暗譜で指揮していましたね」と問いかけたことです   ガッティは「スコアを見て指揮する人にも素晴らしい演奏を引き出す人が多くいます   大切なのは,スコアを見るかどうかではなくて,いかに作品を解釈するかです」と答えていましたが,正味4時間半の作品を最初から最後まで譜面を見ないで指揮するなんてとても信じられません   ガッティの頭の中の構造はどうなっているのでしょうか

午後3時に始まった「パルシファル」が終わったのは夜8時35分でした   上映時間は休憩・インタビュー等を含めて5時間35分(正味の上演時間=4時間25分)でした   終演後のカーテンコールを観ながら思ったのは,「ああ,ワーグナーの長い旅が終わった」ということでした

 

     

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする