人生の目的は音楽だ!toraのブログ

クラシック・コンサートを聴いた感想、映画を観た感想、お薦め本等について毎日、その翌日朝に書き綴っています。

柚月裕子著「慈雨」を読む ~ 定年退職した後も現役時代の失点に決着を付けようとする男の矜持:新作を発表するたびに進化を続ける筆者の力作  

2019年05月27日 07時29分12秒 | 日記

27日(月)。欧州連合(EC)からの離脱問題で、英国の離脱方針をまとめきれなかったメイ首相が5月24日、来月7日に与党・保守党の党首を辞任することを表明しました   手を変え品を変え、何とかスムーズにブレグジットできるようにあがきましたが 終始メイ走し、与野党からメイ惑がられていました 株式市場のアノマリー(相場格言)に「Sell in May 」(5月に株を売れ)というのがあります これはアメリカの株式市場の格言ですが、イギリスでは「5月にメイを売れ」となってしまったようです 後任の党首にはジョンソン前外相など強硬離脱派が有力視されているようですが、「合意なき離脱」に繋がるジョン損にならないことを祈るばかりです

ということで、わが家に来てから今日で1697日目を迎え、来日中のトランプ米大統領が国技館で優勝力士・朝乃山にアメリカ大統領杯を授与した後、表彰状を読み上げるシーンをテレビで見て 感想を述べるモコタロです

 

     

     片手で表彰状を持って読んでなかった? 日本人がやったら片手落ちと言われるぜ

 

         

 

柚月裕子著「慈雨」(集英社文庫)を読み終わりました 柚月裕子は1968年岩手県生まれ。2008年に「臨床真理」で第7回「このミステリーがすごい!」大賞を受賞してデビュー 13年「検事の本懐」で第15回大藪春彦賞を、16年「孤老の血」で第69階日本推理作家協会賞を受賞しています このブログでは「孤狼の血」「朽ちないサクラ」「ウツボカズラの甘い息」をはじめ何冊かご紹介してきました

 

     

 

神場智則は警察官を定年退職し、妻の香代子と共に四国遍路の旅に出た 旅先のテレビで知った少女誘拐・殺人事件は、16年前に自らが捜査に当たった事件に酷似していた 神場の胸にはその時の事件への悔恨の想いがあった。事件の成り行きが気にかかる神場は、旅先から 手がかりのない捜査に悩むかつての部下・緒方佳祐に電話を入れ、捜査の進捗状況を聞きながら次の寺に向かう 旅の途中、過去に身内の者を殺して刑務所に収監され、出所してすぐに贖罪の旅に出たという男と知り合いになり、その出会いがヒントになり神場は犯人像の絞り込みを行い、緒方に連絡を入れる そして今回の事件で目撃された白い軽ワゴンがNシステムの監視カメラから突然消えたことについて、喫茶店で出会った男性と孫との会話からヒントを得て推理し 緒方に連絡を入れる。それが元になり捜査は大きく進展し犯人は逮捕される

神場がなぜ遍路の旅に出ることになったのか? その理由は16年前の事件の捜査が大きな動機になっています 定年退職した後まで新たな事件に首を突っ込もうと思ったのは「新たな事件を起こさせてなならない」という強い信念でした

この小説では、神場と香代子の娘・幸知と、神場のかつての部下・緒方との交際がもう一つの流れとして描かれていますが、自身の辛い経験から「警察官の嫁にだけは行かせたくない」神場が、どこまでも警察官として生きる覚悟を決めた緒方の熱意と幸知への思いを認めざるを得なくなり、二人の結婚を許すことになります この辺の記述は目頭が熱くなります。神場は事件解決後、16年前の事件の決着をつけるため、自身の財産をすべて放棄する覚悟を決めますが、最後の八十八番札所に向かう二人に、晴れた空から、雨粒が落ちてきます。雷雨でも、豪雨でもない、優しく降り注ぐ、慈しみの雨、慈雨です

柚月裕子の作品は、新作を発表するたびに、小説へのアプロ―チが進化しているように思います 今回の主人公は自ら動いて事件を解決するわけではなく、現職の警察官に自分の考えを伝えるだけです そういう意味では、”安楽椅子探偵”のような存在です それでもストーリーにリアリティを感じるのは筆者の優れた筆力によるものだと思います

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