人生の目的は音楽だ!toraのブログ

クラシック・コンサートを聴いた感想、映画を観た感想、お薦め本等について毎日、その翌日朝に書き綴っています。

「お茶をどうぞ 向田邦子対談集」を読む ~ 文章の達人 向田邦子は黒柳徹子、森繁久彌、和田勉、久世光彦らを相手にどんな話術で迫っているか

2019年05月08日 07時21分57秒 | 日記

8日(水)。わが家に来てから今日で1678日目を迎え、トランプ米大統領が5日、中国からの2千億ドル分の輸入品に対する10%の関税について、10日から25%に引き上げるとツイッターで表明したが、中国外務省の報道局長は6日の定例記者会見で「似た状況は過去何度もあった。米中が共に努力し、ウィンウィンの合意に至ることを望む」と述べた というニュースを見て感想を述べるモコタロです

 

     

     大国同士でウィンウィンの合意とか言ってんじゃないよ 小国の立場はどうなるだ

 

         

 

昨日、夕食いに「豚もやし炒めのおろしポン酢かけ」を作りました 安価な食材で作る料理ですが、栄養満点です

 

     

 

         

 

「お茶をどうぞ  向田邦子対談集」(河出文庫)を読み終わりました 向田邦子さんは1929年生まれ。実践女子専門学校国語科卒。映画雑誌編集記者を経て放送作家となりラジオ・テレビで活躍しました 代表作に「だいこんの花」「七人の孫」「寺内貫太郎一家」「阿修羅のごとく」等があります。1980年には初めての短編小説「花の名前」「かわうそ」「犬小屋」で第83回直木賞を受賞しています 著書に「父の詫び状」「眠る杯」「思い出トランプ」「あ・うん」等があります。1981年8月飛行機事故で急逝しました

 

     

 

この本は2016年に河出書房新社から単行本として刊行されたものを2019年1月に文庫化したものです

私が向田邦子さんの作品を読むようになったのは、娘が向田さんが通っていた実践女子の高校を受験することになり、どういう”先輩”だろうと興味を持ったのがキッカケでした  「眠る杯」「思い出トランプ」などのエッセイから読み始めましたが、すっかり彼女の文章の虜になり、エッセイや小説を片っ端から読み尽くしました 向田さんの文章の大きな特徴の一つは歯切れがあり簡潔明瞭で男っぽいというところです 基本的に「である」調で書かれ、一つのセンテンスが短く、テンポ感が良い文章です

さて、文章の達人 向田さんはどのような対談をするのでしょう。興味津々です

この本は、対談相手・内容から①テレビと小説、②おしゃれと食いしん坊、③男の品定めーの3つの章に分けられています 向田さんが「だいこんの花」「七人の孫」「寺内貫太郎一家」「阿修羅のごとく」などテレビ番組のシナリオ・ライターとして名を馳せていたことから、①テレビと小説が一番多く取り上げられています

対談の相手は「テレビ界のレジェンド」黒柳徹子、「テレビからミュージカルへ」の森繁久彌、「寺内貫太郎」のタイトルロール  小林亜星、「勝手にしやがれ」の作詞家・阿久悠、「ベルサイユのばら」の池田理代子、「おしん」の橋田壽賀子など錚々たる面々です

黒柳徹子さんとの対談では次のようなやり取りがあります

黒柳:受賞作のほかのも読ませていただいたんですけど、台詞のひとつひとつ、向田さんの独特の感受性というか、感性がとても女らしくて読むほうは楽しみなの

向田:そうですか。私ね、人間が女らしいってあまり言われないの ついでに文章も女らしくないっていう方もいるのよ。私の文章はポキポキしてて短いって。女の文章はセンテンスが長いと思いこんでいる方がいらっしゃるのね。あれはテレビ台本のト書きからきているんです

黒柳:ト書きって、例えば(黒柳、ドアを開けて表へ出る)っていう・・あれね

向田:それそれ 短く書く必要があるのね

黒柳:テレビ台本って何本お書きになった?

向田:一口に千本って言ってますけど・・・

黒柳:わあ、大変な量ね その上、ラジオの台本があるんでしょう?

向田:ラジオはもう、大変な量ですよ

黒柳:1万本以上?

向田:もっと書いていますね

彼女の文章の特徴の一つ「短い文章」は台本のト書きからきていたのですね

森繁久彌氏との対談は最初から翔んでます

森繁:向田さん、おいくつになるんですか?

向田:このお正月で51ですよ。私、若い時には自分が50になるという実感はなかったですね。今もないですけれども

森繁:50の人を見ると、すごいおばさんに見えたでしょう。

向田:見えました。私、20代の時に、男も女も年をとったら八丈島に埋めちゃえなんて、酔っ払って言ったことあるんですよね。あんなこと言うもんじゃないですね

森繁:言うもんじゃないですよ

向田:反省してます。若い時というのは、どうして歳とった人にいたわりがないのでしょうか・・・・イメージの不足なんでしょう

森繁:そして若い者の天下みたいなこと言ってるけどね、いつの間にか親と同じになっちゃうのね、考え方も大体 うちの倅なんか 第1反抗期、第2反抗期があって、どうなるかと思っていたら、今は僕と同じようなこと言ってますよ、自分の倅、つまり僕の孫に

「八丈島に埋めちゃえ」って、社会保障費が増大する一方の日本の中で、かなり乱暴なご提言だと思いますが、どうして八丈島なんでしょうね

同じ森繁氏との対談で「女性の第2の人生」について語り合っています

森繁:女の人も、50近くなって 第2の人生に入ったら、少女時代に出来なかったことでも何でもやってみるべきだ   うちの婆さんなんか、少女時代からシュバイツァーに会いたいとか夢があったもんだから、一人で世界中を飛び回ってますし、40過ぎて考古学をやったりしてね

向田:たしかに、やらなければならないことが多いと怒っている暇が惜しいですね    私も47歳になって文章を書き始めて、まあ大変に遅いですけれども、遅く始めるというのは割にいいことですね でも、遅く始めるなら、それまでを割とイキイキと油断しないで暮らさないと、50になってから始められないということはありますね

森繁:簡単に言えば、自己を発見していかなきゃならないと思うんですよ

向田:将来、いつかのために何かをやるというい感じはあってもいいでしょうね

一度しかない人生です。お二人が語っているように、50歳未満の女性はとくに 第2の人生に向けて準備をしておくべきでしょう

脚本家ジェームス三木氏との対談では「原稿を仕上げる速さ」について語っています

三木:向田さんは、聞いた話なんですが、「ラジオ喫茶室」やってらした頃ですか、原稿を届ける時に、原稿持たないで出て、電車の中で3本ぐらい書いたと・・・

向田:三本は書かないですけど(笑)。それに近いことはありました

三木:向田さんは「速い」といわれる説と、「遅い」といわれる説がありますが・・・・

向田:それは両方当たっているんですね。書き始めると遅くはないと思うんですけど、とっかかりが非常に遅いものですから、結果的には非常に遅くなるということなんですね

三木:外から見ると遅く見えるけれども、実際の作業は・・・

向田:やってる時間は短いんです

要するの向田さんは集中力が並外れているということなのでしょう

NHKの「阿修羅の如く」のプロデューサー和田勉、「時間ですよ」のプロデューサー久世光彦 両氏と向田さんとの「ことば」を巡る鼎談は抱腹絶倒です

和田:ことばの話になるけど、テレビには無声映画のような歴史がないわけで、はじめっからトーキーだった。で、役者は画面に出てしまえば、何かしゃべらなくちゃならない

久世:そこには言葉の面白さもあるけど、空おそろしいこともあるね 「青春の蹉跌」という映画に出た役者が、今でもその映画を「青春の挫折」と言ってる

向田:「故郷に綿を飾る」と言った人もいたようですね

和田:銭湯を「ゼニユ」と読んだりね これは相当名のある役者なんだけど、台本に「今夜はむしむしと蒸すなあ」と書いてあるのを、「今夜はむしむしとフカすなあ」と読んでしまった ま、感じは分かるんだけど

向田:和田さんだって大きなこと言えないわよ。ワカサギをずっと鳥だと思っていたんでしょう

久世:えっ、ホントですか?

和田:ワカサギは「足が早い」なんて向田さんが言うからさ

向田:「足が早い」ってのは、浜辺をチョコチョコ走ることじゃないのよ 「くさるのが早い」ってことなの

和田:それ知らなかった それ江戸の言葉でしょう

久世さんが指摘していた「青春の挫折」は、まさかその映画の主人公を演じたショーケン(萩原健一)のことじゃないでしょうね あっ、ご愁傷様でした

このように紹介していくとキリがありません。とにかく面白いこと限りない対談集です。お薦めします

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