人生の目的は音楽だ!toraのブログ

クラシック・コンサートを聴いた感想、映画を観た感想、お薦め本等について毎日、その翌日朝に書き綴っています。

新交響楽団のブルックナー「第5」,東京藝大のサン=サーンス「第2」他のチケットを入手

2012年10月31日 06時59分52秒 | 日記

31日(水).月日の流れるのは速いもので,今日で10月も終わりです 今年も残すところ2か月ですが,あと20回はコンサートに行きます

昨夕、27日に死去した当社のS元専務のお清め会がHCビル地下のKで開かれ、OBのSさんを含め8人が出席しました 私は29日の通夜は留守番部隊として会社に残り、30日の告別式は遠隔地で早朝から開始のため出席できませんでした  S元専務とは当社では3か月間の短いお付き合いでしたが,お世話になりました 現役の時のS元専務の活躍と人柄を偲びながら1時間半のひと時を過ごしました.故人は,飲食店街だった地下街を「メディカル・モール」に変えた大きな功績があります.ご冥福をお祈りいたします 関係者の皆さん,お疲れ様でした.

 

  閑話休題  

 

先日、防災訓練の反省会の際に警備T社のN部長が「ブログで紹介されていた宝塚出身の貴城けいさんの書いた『宝塚式”ブスの25カ条”に学ぶ”美人”養成講座』が研修の参考になると思って、女子社員2人に読むように渡したら、不評を買いました」とこぼしておられました。

私はこの本を6月22日付のブログで紹介していました。”こんなことをしたらブスになる”という「ブスの条件」を24カ条掲げています 貴城さんがブスの条件として挙げているのは『笑顔がない』、『お礼を言わない』、『おいしいと言わない』などなどです つまり,これを反面教師にして,『いつも笑顔で』,『お礼を言おう』,『おいしいと言おう』という”美人の24カ条”に転じさせようというわけです

渡す立場の意図はよ~く分かります。普段から内外の印象を良くしてほしい、と良かれと思って渡したのでしょう しかし、渡される方の立場になれば「なんで私なのよ」,「わたしをブス呼ばわりしないでよ」,「小さな親切、大きなお世話よ」てなもんでしょう。まだT社で良かったです.これが,尼崎だったら,今頃はドラム缶にコンクリート詰めされて太平洋深く沈められていたかもしれません オソロシ―・・・・・・まだ死にたくないし・・・・・・女性の扱いはほ~んとムズカシイです、はい

 

  も一度,閑話休題  

 

チケットを3枚買いました.1枚は11月21日(水)午後7時から虎の門のJTアートホールで開かれる「フィラ―ジュ・クインテット」のコンサートです これは「JTが育てるアンサンブルシリーズ」の一環として開かれるコンサートで,東京藝大の卒業生によるユニットです.プログラムは①ハイドン「弦楽四重奏曲第38番」,②ラヴェル「弦楽四重奏曲ヘ長調」,③フォーレ「ピアノ五重奏曲第2番」です.入場料は2,000円.これは曲目で選んだコンサートです

 

          

 

2枚目は来年1月27日(日)午後2時から,すみだトりフォニーホールで開かれる新交響楽団第220回演奏会です プログラムは①ベルク「3つの管弦楽曲」,②ブルックナー「交響曲第5番変ロ長調」の2曲,指揮は高関健です 入場料はS席3,000円.

高関+新交響楽団コンビがマーラー,ブルックナーを演奏する時には必ずと言ってもいいほど聴きに行っています.今回も楽しみです

 

          

 

もう1枚は2月10日(日)午後3時から,東京藝術大学奏楽堂で開かれる東京藝大チェンバーオーケストラ第20回定期演奏会です プログラムはパリに焦点を当てたもので①モーツアルト「交響曲第31番ニ長調”パリ”K.297」,②ルーセル「小オーケストラのためのコンセール」,③マルティヌー「室内オーケストラのためのセレナード」,④サン=サーンス「交響曲第2番イ短調」の4曲,指揮はサー・エイドリアン・ボールトの最後の弟子の一人,イギリスの指揮者ダグラス・ボストックです 入場料は自由席1,500円.

こちらはモーツアルトの「パリ交響曲」と,珍しいサン=サーンスの「第2交響曲」が生で聴けるので思わず買いました こちらも楽しみです

 

          

          

                 

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オーケストラを低料金で聴こう~2013都民芸術フェスティバル参加公演決まる 

2012年10月30日 06時59分22秒 | 日記

30日(火).一昨日,サントリーホールの入口で配られていたチラシの束の中に「2013都民芸術フェスティバル参加公演」のチラシが入っていました この公演は毎年1~3月に日本演奏連盟の主催で,都内のプロ・オーケストラが演奏するものです 東京都の助成事業のため在京オーケストラの定期公演より安価な料金設定になっています オーケストラは8公演ありますが,A席=3,800円,B席=2,800円,C席=1,800円と,通常の半額程度に設定されています また,室内楽は一律3,000円となっています

『オーケストラ・シリーズ』のコンサート日程・プログラムは以下の通りです(すべて午後6時開場,午後7時開演,会場は池袋の東京芸術劇場)

1月15日(火) 読売日本交響楽団 ①外山雄三「前奏曲」,②ベートーヴェン「ピアノ協奏曲第5番」(ピアノ:小川典子),③同「交響曲第7番イ長調」 指揮:外山雄三

1月30日(水) 日本フィルハーモニー ①チャイコフスキー「歌劇エフゲニー=オネーギンより”ポロネーズ”」,②リスト「ピアノ協奏曲第1番」(ピアノ:後藤正孝),③ブラームス「交響曲第4番」 指揮:ラザレフ

2月1日(金) 東京交響楽団 ①モーツアルト「歌劇:劇場支配人序曲」,②ハイドン「チェロ協奏曲ニ長調」(チェロ:堤剛),③ムソルグスキー「展覧会の絵」 指揮:大友直人

2月21日(金) 東京シティフィルハーモニー ①ムソルグスキー「禿山の一夜」,②ブルッフ「ヴァイオリン協奏曲第1番」(ヴァイオリン:前橋汀子),③ベートーヴェン「交響曲第5番”運命”」 指揮:飯守泰次郎

2月27日(水) 新日本フィルハーモニー ①チャイコフスキー「ピアノ協奏曲第1番」(ピアノ:浜松国際ピアノコンクール第1位),②同「交響曲第5番」 指揮:井上道義

3月7日(木) NHK交響楽団 ①コダーイ「ガランタ舞曲」,②プロコフィエフ「ヴァイオリン協奏曲第2番」(ヴァイオリン:ギル・シャハム),③チャイコフスキー「交響曲第4番」 指揮:ディエゴ・マテウス

3月13日(水) 東京都交響楽団 ①シューマン「ピアノ協奏曲イ短調」(ピアノ:小山実稚恵),②モーツアルト「レクイエム」 ソプラノ:森麻季,テノール:中鉢聡ほか,指揮:高関健

3月22日(金)東京フィルハーモニー ①ロッシーニ「歌劇:セヴィリアの理髪師序曲」,②ラフマニノフ「ピアノ協奏曲第2番」(ピアノ:島田彩乃),③ドヴォルジャーク「交響曲第9番”新世界から”」 指揮:川瀬賢太郎

『室内楽シリーズ』のコンサート日程・プログラムは以下の通りです(すべて18時半開場,19時開演.会場は東京文化会館小ホール)

1月8日(火) 「ふるさとに寄せて」 日本の歌 ソプラノ:釜洞祐子ほか.

1月24日(木) 「ピアノ・トリオの夕べ」 ①ハイドン「ピアノ三重奏曲第39番」,②ショスタコーヴィチ「ピアノ三重奏曲第2番」,③メンデルスゾーン「ピアノ三重奏曲第1番」 ピアノ:小菅優,ヴァイオリン:大谷康子,チェロ:宮田大

3月5日(火) 「室内楽の夕べ」 ①ストラヴィンスキー「イタリア組曲」,②ベートーヴェン「チェロソナタ第3番」,③デュティユー「ザッハーの名による3つのストローフェ」,④ショスタコーヴィチ「チェロソナタ ニ短調」

チラシを見ると,オーケストラ全セット券は10月12日から電話予約を受けているようで,1回券はオーケストラ,室内楽とも,WEB予約が昨日(10月29日)から,電話予約が11月1日(木)午前10時から,となっています 私は,昨年出足が遅くなり苦い思いをしたので,今回は受付開始日の昨日WEBで予約を済ませました 予約したのは,オーケストラではすでにコンサートの予定が入っている2月1日と3月7日を除いた6公演,室内楽では1月24日の「ピアノ・トリオの夕べ」1公演の計7公演です.ダブらなければ3月7日のN響公演のプロコフィエフ「ヴァイオリン協奏曲第2番」を聴きたかったです 個人的なお薦めは1月15日のベートーヴェンと3月13日のシューマン&モーツアルトの公演です

予約初日に手続きしたのに,いずれも良い席は既になく,端か後ろの席しか残っていません セット券でかなり買われてしまったのかも知れません

チケットぴあ他のプレイガイドでの1回券の発売については,明確に日時が書かれていないのですが,文脈から判断すると11月1日(木)午前10時からと思われます

普段”敷居が高い”と言ってクラシック音楽を敬遠している方には,安価で名曲が聴ける絶好のチャンスです.是非,会場に足を運んでみてください

 

          

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ウォルトン「ベルシャザールの饗宴」を聴く~東響第604回サントリーホール・シリーズ

2012年10月29日 07時00分00秒 | 日記

29日(月)。昨日、サントリーホールで東京交響楽団の第604回サントリーホール・シリーズ定期演奏会を聴きました プログラムは①武満徹「波の盆」、②マーラー「リュッケルトによる5つの歌」、③ウォルトン「ペルシャザールの饗宴」です。指揮は尾高忠明、バリトン独唱はローマン・トレ―ケルです

1曲目の武満徹「波の盆」は,1983年に日本テレビのスペシャル・ドラマ『波の盆』のために作られた音楽を,演奏会用に編曲したものです 監督の実相寺昭雄と脚本の倉本総が,太平洋戦争時のハワイの日系1世の男性を主人公に,日系ハワイアンの世代間の葛藤を描いた作品とのことです 第1曲「波の盆」から第6曲「終曲」まで6つの曲から成りますが,弦楽器を中心に美しいメロディーが全体を支配します 私は武満徹の曲はあまり積極的に聴こうとしないのですが,この曲は耳に入り易く,美しい曲だと思います

2曲目のマーラー「リュッケルトによる5つの詩」の演奏のため,バリトンのローマン・トレーケルが指揮者・尾高忠明とともに登場します.頭髪を剃り,上下黒一色のスタイリッシュな衣装に身を包まれた背丈の高い男を会場の拍手が迎えます 彼は指揮台に登った尾高と頭の位置がほぼ同じくらい背が高いのです 顔は,強いて言えばユル・ブリンナー似といったところでしょうか トレーケルは楽譜を携えていますが,それに頼らず歌うようです.プログラムのプロフィールを見ると「フィッシャー・ディースカウの元で研鑽を積んだ.日本では新国立劇場で”神々の黄昏”のグンター役など活躍した」とあります.どこかで見たような気がしました

トレーケルは深みのあるバリトンで,無理なくマーラーの世界を歌い上げました オケのバックも素晴らしく,とくに第4曲「私はこの世に棄てられて」におけるイングリッシュ・ホルン,ファゴット,ホルンの序奏は特筆に値する素晴らしさでした トレーケルは最後の第5曲「真夜中に」を歌うに当たり初めて楽譜を開きました.しかし,ほとんどそれを見ませんでした

最後の1音が鳴り終わると拍手とブラボーが会場を満たしました.素晴らしいバリトン歌手です

休憩後のウォルトンのオラトリオ「べルシャザールの饗宴」は作曲者が29歳の時,英国BBCから依頼を受け1929年~31年に書かれた作品です 通常の管弦楽器に加え,アルト・サクソフォーン,シロフォン,タム・タム,ムチ,オルガン,ピアノ,さらに舞台左右の2階席後ろにトランペット3,トロンボーン3,バスチューバ1のブラス・グループが控え,指揮者わきにはバリトンがスタンバイ,舞台後ろのP席(パイプオルガンの下)には約180名の合唱陣が控えるという大規模編成を取ります 合唱陣は平均年齢がそれほど若いとは思えないにもかかわらず誰一人楽譜を持っていません

ユダヤ人のバビロン捕囚をテーマにしたテクストは旧約聖書の「ダニエル書」,「イザヤ書」,「詩編」,新約聖書の「ヨハネ黙示録」から適宜採用されたとのこと 曲全体は単一楽章で,通して演奏されますが,内容的に①ユダヤ人の嘆き②ベルシャザールの饗宴と王の死③ユダヤ人の解放の喜びーの3つの部分に分けられます

曲の冒頭,トロンボーンのファンファーレとともにイザヤの預言が始まり,囚われの身となったユダヤ人の嘆きを合唱が歌います 次いで,舞台左右2階席のブラス・グループを加えた大管弦楽がペルシャザールの饗宴の場面を華々しく演奏します そして,王の死をバリトンが物語り,合唱が勝利の喜びを歌い上げます

フィナーレは,まるでジャズ・オーケストラの総奏のように華々しく終結します 本当に今から80年前にこの音楽が作曲されたのかと驚きます.会場は興奮の坩堝です 東京交響楽団はこういう音楽が得意ですね この日の選曲は指揮者・尾高忠明氏によるものでしょうが,日本に馴染みのない知られざる名曲を紹介したいという意欲と英国音楽へのこだわりを感じます 私は初めてこの曲を聴きましたが,もう一度聴いてみたいと思うほど素晴らしい音楽,演奏でした

 

          

               (プログラム表紙の絵はクリムト「音楽Ⅰ」)

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ハウシルトの代演,インドヤン新日本フィル第500回トリフォニーシリーズ定期にデビュー

2012年10月28日 08時06分20秒 | 日記

28日(日).昨日の朝日朝刊「生活欄」に「レコードのカビ落とし方法」の記事が出ていました 記事によると,

レコードにカビが生えたら,手っ取り早いのは市販のレコード用アルコール系クリーニング液を使って拭き取る方法とのこと

長期にわたるひどい汚れは,①まず水道水で表面についた汚れを洗い流す.②水をよく拭き取る,③10倍に薄めた中性洗剤を布(ベッチンが最良)にしみこませ固く絞る,④音溝に沿って,中の汚れを外に出していくイメージで軽く拭く,⑤拭き終えたら,再び水道水で洗剤が盤面に残らないようにすすぐ,⑥新しい布に純水を含ませ拭いていく,⑦乾いた布で水分が残らないように拭く.

どうです.すごく面倒くさいですね 私の場合,現在約1,500枚のLPレコードを所有していますが,1枚もカビは生えていません なぜかと言えば,レコードを聴くたびにアルコールで盤面を消毒した上で内袋に入れてジャケットに収め,垂直に立てて保存しているからです 要は普段から大切に扱うことが最良の方法だということです

 

  閑話休題  

 

昨日、すみだトリフォニーホールで新日本フィルの第500回トリフォニーシリーズ定期公演を聴きましたプログラムは①ワグナー「楽劇:トリスタンとイゾルデ」より”前奏曲と愛の死”」、②ベートーヴェン「交響曲第3番”英雄”」の2曲です

数日前,新日本フィルから「指揮者変更のお知らせ」のハガキが届きました.この日指揮する予定だったハウシルトが急病により来日中止となり,ドミンゴ・インドヤンが代わりにタクトを取るという内容です インドヤンは今クラシック音楽界で注目を集めているベネズエラの「エル・システマ」でヴァイオリンを学び,ジュネーヴ音楽院で指揮を学んだ,これからを嘱望される若手指揮者です

オーケストラを見ると,コンサートマスター席に豊嶋泰嗣,その隣に西江辰郎というダブル・コンマス・シフト(こんな言葉ないけど)を取ります これはハウシルトが振ることに対する万全のシフトといえるでしょう.残念ながらハウシルトは急きょ出演できなくなりましたが,急にシフトを変えることも出来ないのでしょう.というわけで,新日本フィルの第500回を記念する定期演奏会にベネズエラの新進指揮者インドヤンがデビューすることにあいなりました

指揮台に上がったインドヤンは背丈が高くガッチリした体格の青年です そのインドヤンのタクトで1曲目のワーグナー「トリスタンとイゾルデ」前奏曲と愛の死が始まります 「愛の成就は現世にはなく,二人の死によってしかもたらされない」という「トリスタンとイゾルデ」のテーマに相応しい,ある意味妖しげな,そして官能的な音楽が流れます この1週間の疲れがどっと出たのか,緩やかに流れる音楽に身を委ねているうちに居眠りをしていたようで,ガクン,と肘かけから肘が外れてズッコケそうになりました.イカン,イカンと目をパッチリ開けて耳を傾けました

休憩後のベートーヴェン「交響曲第3番変ホ長調”英雄”」は,今年7月にインドヤンが英国のフィルハーモニア管弦楽団を指揮したということです.そういう実績も踏まえて新日本フィルはハウシルトの代演者としてインドヤンに白羽の矢を立てたのかも知れません

インドヤンは指揮台に登って一礼し,振り向きざまにタクトを振り下ろしました.古くは,かのカルロス・クライバーの指揮スタイルを思い出します 若々しく”前進あるのみ”という気持ちの良い演奏でした とくに第2楽章の「葬送行進曲」における古部賢一のオーボエ,白尾彰のフルートは目を見張るべきものがありました

ベネズエラの音楽教育システム「エル・システマ」に戻ります.ここの出身の指揮者グスターボ・ドゥダメルはベルリン・フィルを振ったりして話題を呼びましたが,現在はロサンゼルス・フィルの音楽監督にまで登りつめています かつて「東洋人に西洋音楽が理解できるのか?」と言われていた時期に,小澤征爾がボストン交響楽団の音楽監督を経てウィーン国立歌劇場の音楽監督に就任したとき,いったい誰がこのような快挙を予想できたでしょうか そういう意味でも,何年かあと,世界のクラシック音楽地図はベネズエラ出身の音楽家によって大きく塗り替えられているかも知れません

”英雄”のフィナーレで,インドヤンのタクトが空中に突き上げられると,満場の拍手とブラボーの嵐が会場を満たしました.さて,後でこの演奏を振り返ったとき,彼のデビューはどういう位置づけに置かれるのでしょうか

 

          

 

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医療行政に対する挑戦状~海堂尊著「ジーン・ワルツ」を読む

2012年10月27日 07時37分14秒 | 日記

27日(土)。昨日、当ビルの防災訓練がありテナントの皆さんはじめ約130名(主催者側発表)の方々が参加しました 首都直下型地震に伴い地下1階の飲食店から火災が発生したという想定で、通報連絡、消火、救護、避難といった総合的な訓練に加え、今回は千代田区防災課から「起震車」を派遣してもらい、乗車して大地震を体験してもらいました

午後3時に地震発生のアナウンスを流す手はずで準備を進めていましたが,2時半過ぎ,「8階の高齢男性が倒れて救急車の出動を要請した」という連絡が入り,防災センター要員と当社の救護担当者はその対応に追われることになりました.これには焦りました 関係者はすべて役割分担が決まっているので一人でも欠けるとシナリオが狂っていまうのです.幸い手際よい対応で急患は病院に搬送され,防災訓練に影響が出ることはありませんでした.こんなことは当社の防災訓練の史上で初めてのことでしょう.幸い急患の方は大したことがなかったとのこと.関係者の皆さん,ありがとうございました

夕方から、火点(出火元)になっていただいた焼鳥Oに関係者を集めて反省会(別名”打ち上げ”)を開きました 総勢25名以上なので貸切状態です.これでもかーと,ぎんなん,焼き鳥,刺身,おにぎり,焼きそば・・・・・・と,いろいろ出てきてとても食べ切れませんでした 残った食糧は泊まり勤務の若者に引き取ってもらいました だれだ,こんなに注文しといたのは?・・・・・すいません,私です

その後,残った11人でタクシーに分譲,もとい,分乗して上野に向かいました.カラオケ・スナックFで点数表示付カラオケ歌合戦に参戦したのは,警備T社からN部長,S隊長,K副隊長,警備員I,T,Iの6人,迎え撃つは当社からN,S,E,Kそして私の5人です 最初から少数精鋭のトラさんチームの当社がリード,途中で若者中心のゾウさんチームのT社が盛り返しましたが,おっとどっこい,再びトラさんチームが追い抜いて僅差で勝利を収めました あ~楽しかった.参戦者の皆さん,お疲れ様でした 

頭イテー,今朝は6時に起きられなかったし・・・・

 

  閑話休題  

 

海堂尊著「ジーン・ワルツ」(新潮文庫)を読み終わりました この本は当ビル7階の住人から借りたものです.「本は自分で買う」というのが私のポリシーですが,読み終わった本はすべてこの住人に回して読んでもらっています 時に「これ面白いから読んで!」と半強制的に本を手渡されることがあります.今回はそのケースです

海堂尊は1961年,千葉県生まれ,医学博士です.2005年に「チーム・バチスタの栄光」で「このミステリーがすごい!」大賞を受賞して,翌年,作家デビューしました

帝華大学医学部の曾根崎理恵助教は,顕微鏡下対外受精のエキスパートです.彼女の上司・清川吾郎准教授もその才能を認めていました 理恵は大学での研究のほか,閉院間近のマリアクリニックで5人の妊婦の診断をしています 28歳のキャリアウーマン,すでに男の子をひとり持つ34歳の女性,もうすぐ20歳になるヤンキー娘,顕微授精を何度も経験した39歳の女性,55歳で双子を妊娠している女性k5人はそれぞれ深刻な事情を抱えており,生むか産まないか真剣に悩みます.理恵はマリアクリニックの後継者となる決意をしますが,テレビのキャスターに次のように語ります

「みなさんもご存知の通り,今,産婦人科医療は崩壊寸前まで追い込まれています それは産婦人科が抱える特異な問題のせいです.赤ちゃんが普通に生まれるのは当然と考える患者さん,そういかなかった時に医療を訴えるように焚き付ける弁護士の方たち,そうした体制を誘導しておきながら,個々の問題をあたかも部外者のような顔で糾弾する担当省庁の役人たち.そうした方々に対するささやかな反撃です

これこそが,この小説の中で作者が読者に言いたかったことだと思います.医師と小説家の2足のわらじを履く海堂尊の戦いはまだまだ続くのでしょう

 

          

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暗譜で弾くシューベルト~古典四重奏団のレクチャー付コンサートを聴く

2012年10月26日 07時00分03秒 | 日記

26日(金)。昨夕、上野の東京文化会館小ホールで「ムズカシイはおもしろい!古典四重奏団のシューベルト2012~レクチャー付きコンサート」第2回公演を聴きました 9月30日の第1回公演を聴いて、非常に興味深く面白かったので、是非第2回も聴きたいと思い,その日にチケットを買ったものです メンバーは第1ヴァイオリン=川原千真,第2ヴァイオリン=花崎淳生,ヴィオラ=三輪真樹,チェロ=田崎瑞博という面々で,田崎さん以外は女性です

 

          

 

第1回コンサートでは「弦楽四重奏曲イ短調”ロザムンデ”」ほかが演奏されましたが、第2回目の今回は①「弦楽四重奏曲ハ短調”四重奏断章”」、②「弦楽四重奏曲変ホ長調」、③「弦楽四重奏曲二短調”死と乙女”」がメインになっています 

自席はH列20番で,センターブロック通路側です.客の入りは前回と同じくらい150人位でしょうか この四重奏団は左から第1ヴァイオリン,チェロ,ヴィオラ,第2ヴァイオリンという態勢を取ります

午後6時45分から始まったコンサートは,最初にチェロの田崎さんの進行により「シューベルトらしさとは?」というレクチャーがありました まず,シューベルト「弦楽四重奏曲ニ長調」の第3楽章”メヌエット”が演奏されました.いかにもウィーン生まれのシューベルトらしい,ウィーン情緒豊かなメロディーが流れました

その後,メンバー紹介があり,前回に次いで”クイズ”が出されました.田崎さんが「前回は問題が難しすぎて正解者が少なかったので,今回は反省して,やさしい問題にしました」として,「次にシューベルトのピアノ・ソナタイ長調作品959の第4楽章を弦楽四重奏で演奏します.最初のAと後のBとどちらがシューベルトの曲か当てて下さい」という問題を出し,後半部分が微妙に異なる曲を2度演奏しました私は後に演奏したBの方がシューベルトらしいな,と思いBに挙手しました.正解はBでした Aは10人ぐらいいたようです.

田崎さんは2度の演奏について「最初のAは,最後の部分が”盛り上がる”ようになっています.これは私が編曲したものです 一方,後に演奏したBの方は最後の部分が”盛り上がっていない”作りになっています.これがシューベルトの特徴のひとつ”慎み深さ”です」と解説しました.

次にリストの「ノクターン」とシューベルトの「4つの即興曲」から第3曲を演奏しました.メロディーが良く似ています 田崎さんは「リストの方が後から曲を書いたのですが,シューベルトが同じようなメロディーを書いていたことなど意識していなかったでしょう」と解説していました

次にシューベルトの「弦楽四重奏曲変ホ長調」から第3楽章とベートーヴェンの「ピアノソナタ第4番」から第2楽章をよく似た曲として紹介しました

次いで,シューベルトの「弦楽四重奏曲ニ短調”死と乙女”」の第4楽章と第1楽章を演奏し,シューベルトのもう一つの特徴である”転調”に象徴される”大胆さ”を挙げました

次にブルックナーの交響曲第4番”ロマンティック”第4楽章のコーダを演奏しました.弦楽器4本でブルックナーの深淵な世界を見事に表現していたことに驚きました 彼らの演奏はフル・オーケストラの演奏に匹敵する素晴らしいものでした このカルテットは相当レヴェルが高いと思います

最後にシューベルトの「君こそ我が想い」を演奏してレクチャーを締めくくりました.ここまでが第1部で,15分の休憩に入りました

 

          

 

本編の最初は「弦楽四重奏曲ハ短調”四重奏断章”」です.このカルテットのレパートリーは80数曲にのぼるとのことですが,すべて暗譜で弾きます これは驚きです.四重奏断章は23歳の時の作品です.第2楽章の途中で断筆されているため”断章”のニックネームが付いています 最初から緊張感に満ちた曲想が展開します.曲の途中8時38分ごろ床の揺れを感じました.地震のようです.しかし,せいぜい震度1か2と思われます.演奏者も聴衆も慌てる様子はありませんでした

2曲目の「弦楽四重奏曲変ホ長調」は16歳のときの若々しい作品です.とくに第4楽章アレグロの第1ヴァイオリンの演奏は軽快で素晴らしかったです

ここで再び休憩.15分後に再開しました

3曲目は「弦楽四重奏曲ニ短調”死と乙女”」,シューベルト29歳の時の作品です.第2楽章のテーマは自作の歌曲「死と乙女」から取られています.どの楽章も慟哭のような,悲壮感溢れる曲想ですが,古典四重奏団の演奏は,どこまでも美しく,節度をもった演奏を展開しました

良い演奏というのは,その作曲家やその曲が,今まで以上に好きになるものですが,この日の古典四重奏団の演奏はまさにそうした演奏でした 来シーズンのレクチャーコンサートは「モーツアルト」を取り上げるとのこと.これは聞き逃せません

 

          

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ハイドン「”皇帝”四重奏曲」,ベートーヴェン「第13四重奏曲」を聴く~新日本フィル室内楽シリーズ

2012年10月25日 06時58分48秒 | 日記

25日(木)。昨夕、すみだトリフォニー(小)ホールで、新日本フィルの室内楽シリーズ「音楽家たちの饗宴2012-2013」第1回公演を聴きました 今シーズンは室内楽とオーケストラのプログラムに統一性を持たせて選曲されています つまり室内楽公演とオーケストラ公演で同じ作曲家の曲を演奏するわけです.この日のプログラムは①ハイドン「弦楽四重奏曲第62番ハ長調”皇帝”」、②ベートーヴェン「弦楽四重奏曲第13番変ロ長調」です

7時からこのシリーズの名物,篠原英和さんのプレトークがありました いつものように,にこやかに舞台に登場したかと思ったら,いきなり,

「今期限りでこのプレトークを引退することにいたしました!」

という爆弾発言が飛び出しました.

会場のあちこちで「えっ,本当?」という驚きの声があがります

「7年間続けてきましたが,今期をもって引退することにしました.一つは若い世代に道を譲りたいということ,もう一つは,惜しまれるうちに,ということです(笑).なお,私の後任は決まっておりますのでご安心ください(笑)」

会場は「残念だ」というため息混じりの声があちこちで囁かれていました それから,いつもの名調子で篠原さんのお師匠さんであるアマデウス弦楽四重奏団について,自らの経験を踏まえて紹介,併せて新日本フィルとも関係があるシモン・ゴールドベルクについても,その深い教えを紹介してくれました 新シーズン第1回目ということもあってか,いつものように笑いを取りにいくシーンが少なく,トークに力が入っていたように思います とくにアマデウスSQについて語る時の篠原さんは熱意に溢れていて,思わず引き込まれてしまいました

 

          

 

1曲目のハイドン「弦楽四重奏曲第62番”皇帝”」の演奏者は佐々木絵里子、中矢英視(以上ヴァイオリン)、原孝明(ヴィオラ)、山崎泉(チェロ)です。”皇帝”というニックネームは第2楽章がハイドン自身が作曲したオーストリア国家の歌詞の一部「神よ,皇帝フランツを守り給え」を使用していることから付けられました

新日本フィル第2ヴァイオリン・フォアシュピーラー佐々木絵理子さんを中心に明るく快活に演奏を展開しました 第2楽章のカンタービレでの佐々木絵理子さんのオブリガードは素晴らしかったです 後の楽章にいくにしたがって調子が上がってきたように思います

2曲目のベートーヴェン「弦楽四重奏曲第13番変ロ長調」の演奏者は新日本フィルのコンサートマスター・崔文殊、堀内麻貴(以上ヴァイオリン)、木村恵子(ヴィオラ)、森澤泰(チェロ)です

ハイドンの演奏は第1ヴァイオリン,第2ヴァイオリン,ヴィオラ,チェロという並びでしたが,ベートーヴェンの方は,第1ヴァイオリン,チェロ,ヴィオラ,第2ヴァイオリンという並びになっています.コンマスの崔さんの考えによるのでしょう

この曲は,ゆったりしていたかと思うと,一転,速いパッセージになったり,目まぐるしい音楽が展開します ベートーヴェン晩年の曲ですが,これが全く耳が聴こえない状態の中で作曲されたことに心底驚きます.とくに第5楽章「カヴァティーナ」の素晴らしさをどのように表現すれば良いのでしょうか・・・・崔さんのヴァイオリンはどこまでも美しく,味わい深く,冴えわたっていました 堀内さん,木村さん,森澤さんとのアンサンブルも見事でした

会場いっぱいの拍手に応えて,第5楽章「カヴァティーナ」を途中から演奏しました

終演後,ワンコインパーティーがあったので参加しました.500円を払って,ワッペンをもらい胸に貼りました

 

          

 

こちらも篠原英和さんが司会をされています.最初に,アマデウス四重奏団とシモン・ゴールドベルクの思い出を話され,次いでこの日演奏されたベートーヴェンの「弦楽四重奏曲第13番変ロ長調」についてお話されました

「この曲は,1826年にシュッパンツィヒ四重奏団によって公開初演されたときは,最後の楽章が長大なフーガになっていました.このフーガは演奏者からも聴衆からも評判が悪かったのです.ベートーヴェンは不本意ながら最終楽章を改作することを決め,フーガを切り離して(いわゆる”大フーガ”),新たにアレグロの第6楽章を作曲したのです

篠原さんの解説を聞いて,あらためて「あー,そうだったな」と思い出しました.その後,この日演奏された3人の方が篠原さんの質問に答える形でお話しされましたが,皆さんあまりトークが得意ではないようです 篠原さんのレベルまで引き上げなくとも,マイクの使い方を考えるとか,間の置き方を工夫するとか,篠原さんに教えを乞うて勉強された方がいいと思います.現代は演奏家もサービス業を兼ねる時代です.演奏は大事ですが,トークも大切です

その後,しばし歓談となりました.篠原さんの近くにいたので会釈すると,これまでの室内楽シリーズのトークを録音した「トーク集」をくださいました.実は,8月11日のクラシックへの扉コンサートの時に,2006年第5回,2008年最終回,2010年最終回,2011年最終回のトークを収録したCDをいただいたのですが,今度は2006年第1回,同最終回,2008年第1回,2009年第1回のトークを収録したCDをいただきました.(後で中のCDを見てびっくり,篠原さんのサイン入りでメッセージが書かれていました.感激です 篠原さん,ありがとうございます

 

          

          

 

その時,篠原さんは「きょうは,りらさんはお出でになっていないんでしょうかねえ?分かりませんよねぇ・・・・」と言っておられました 実は8月11日前後に,このブログに”りらさん”という方が「(トーク集のCD)いいなぁ」とコメントを寄せてくださったのですが,それをご覧になった篠原さんが私のブログのコメント欄に,りらさんにあてて「ワンコインパーティーで声をかけてくれたら,ベスト・トーク集のCDをあげます」と呼びかけていたのです

そんなことがあったので,この日篠原さんはりらさんに差し上げるCDも持参されていたのです・・・・・・残念ながら私も篠原さんも,りらさんと面識がないので声のかけようがありませんでした 

そういうわけですので,りらさん,次回の室内楽シリーズの時には篠原さんに声をかけてみてください.超レア・アイテム「篠原英和・室内楽シリーズトーク集」がもらえますよ

そういうわけですので,篠原様,次回の室内楽シリーズの時にはりらさんのためにベスト・トーク集のCDをご持参くださるようお願いいたします

 

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アマ・オケの人は他人のコンサートを聴かない?~小沼純一著「オーケストラ再入門」を読む

2012年10月24日 06時57分51秒 | 日記

24日(水).昨日の日経朝刊文化欄に名曲喫茶「ショパン」の店主・宮本英世さんが「絆の重奏・名曲喫茶~東京で営み30年,客を通じて世界を知る」というエッセイが載りました

「ショパン」は1981年に中野坂上にオープンしましたが,都庁の新庁舎の工事が始まり,騒音に悩まされて91年に池袋近くの自宅の1階に移転したとのことです 実は十数年前,「ショパン」を訪ねたことがあります.地下鉄「要町」駅で降りてしばらく歩いたところにその店はありましたが,あいにくその日は定休日らしくお店は閉まっていました.この時思わず「しまった!」と叫んでしまいました

「名曲喫茶」は昭和30年代が全盛期だったようで,かつては都内だけで30軒以上の有名店がありましたが,現在は10件ほどしか残っていません

交通新聞社の「東京クラシック地図」には,要町「ショパン」をはじめ都内の「名曲喫茶」が写真入りで紹介されています 私が就職した頃は,銀座「らんぶる」,新宿歌舞伎町「らんぶる」,中野「クラシック」,渋谷「ライオン」などによく通ったものですが,今は渋谷「ライオン」以外は消えてしまいました この本では渋谷「ライオン」のほか,高円寺「ネルケン」,吉祥寺「バロック」,国分寺「でんえん」などが紹介されています 同書によると「ショパン」という名前の喫茶店は淡路町にもあるようです.しばらく「名曲喫茶」に行っていないので,散歩がてらぶらりと出かけてみるのもいいかな,と思っています

 

          

 

おっと,泉麻人著「東京ふつうの喫茶店」(平凡社)にも渋谷「ライオン」が紹介されています.この本に登場する喫茶店の中で私が知っているお店は神保町「古瀬戸」,銀座「ウエスト」ぐらいですが,読んでいると訪ねてみたくなるお店ばかりです

 

          

 

  閑話休題  

 

小沼純一著「オーケストラ再入門」(平凡社新書)を読み終わりました 小沼純一氏は1959年生まれ.現在,早稲田大学文学学術院教授を務めています

この本は第1章「オーケストラとは何か」,第2章「楽器の分類と編成」,第3章「さまざまなオーケストラⅠ~雅楽からガムランまで」,第4章「さまざまなオーケストラⅡ~ジャズ・オーケストラを中心に」,第5章「伝統の再解釈から新たな”場”の創造へ」,第6章「映画の中のオーケストラ」,第7章「オーケストラの未来」から構成されています

第1章「オーケストラとは何か」の中で,小沼氏は女性の社会進出に伴って,演奏する楽器が広がってきたことを指摘しています

「かつては”女性が脚を開いて演奏するのはお行儀が悪い”とされていたため,チェロの女性演奏家はとても少なかったものです そもそも長い間ヨーロッパのオーケストラは男性中心であり,女性演奏家は男性に比べてずっと数が少ない時代が続きました.はじめに女性演奏家が増え始めたのは弦楽器で,それから木管,金管楽器が増え,今ではトロンボーンのような大きくて肺活量の必要な楽器でも女性演奏家がいます

これは実際に在京オーケストラを見れば一目瞭然です N響と読響はまだ男性が多いようですが,東響,東フィル,新日本フィル,シティフィルなどは弦楽器を中心に女性が多くなっています

また,アマチュア・オーケストラの演奏者の特徴を次のように述べています.

「アマチュア・オーケストラに入っている人たちの中には,オーケストラをやっていることが楽しくて,演奏を聴くのはむしろ二の次,三の次になっている人が多い 他人や他のオーケストラの演奏を聴きに行く人は意外に少ないようです・・・・・・・大学のオーケストラに入っていた人が大学を卒業して社会人になった後に,プロのオーケストラの定期会員になってくれていたら,プロのオーケストラも現在のような赤字に苦しむ状況に陥っていなかったのでは,と思うのは幻想でしょうか

これは意外でした.アマチュア・オケの人たちは普段から熱心に練習しながら,積極的にコンサート通いをしているとばかり思っていました また,ある意味”専門バカ”について次のように語っています.

「”演奏するのは好きだけれど,他の人の演奏は特に聴きに行ったりはしない”という態度はオーケストラに入っている人たちに限ったことではなくて,ピアノを習っている人などにもあります 自分の習っている先生のリサイタルには行くけれど,取り立てて他の演奏家のコンサートに行ったりCDを買って聴いたりはしない,というような

これは,その通りだと思います.かなり前のことですが,ピアニストの内田光子さんがレーザー・ディスクか何かでインタビューに答えていましたが「今の音大生は,自分の専門分野のことしか勉強しない.ピアノならピアノにしか興味を示さないし,他のコンサートに行ったりもしない オペラを観に行ったり,オーケストラを聴きに行ったり,もっと幅広く見聞を広めることによって演奏に幅が出てくるのに・・・・視野が狭すぎる」と嘆いていました 小沼氏の指摘も同様のことなので,時代を問わず専門バカ学生が毎年音大を卒業しているようです 不幸なことにこの人たちの就職先はほとんどゼロに近いと思われます

ほかにも興味深い指摘が示されているのですが,取り上げていくときりがないので,興味のある方は購入されることをお薦めします

 

          

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「響きの森クラシック・シリーズ」セット券入手~東京フィル・文京シビックホール定期

2012年10月23日 06時59分55秒 | 日記

23日(火).昨日の朝日夕刊の芸術・文化欄に音楽評論家・伊藤信宏氏が「ロリン・マゼール指揮NHK交響楽団」のコンサート評を寄せていました

批評の対象となった10月13日にNHKホールで開かれたN響定期演奏会のプログラムは①チャイコフスキー「組曲第3番」,②グラズノフ「ヴァイオリン協奏曲」,③スクリャービン「法悦の詩」の3曲です

伊藤氏は②と③についてはそれなりの評価をしていますが,チャイコフスキーの「組曲第3番」については,

「マゼールはそれをあくまでも小品の延長として捉えて緻密に描く・・・ただマゼールについて言うと,例えてみれば山のことは誰よりよく知っていて,危機のときにはたよりになるけれど,山登りの喜びだけは分かち合ってくれない道案内のような,ちょっとつれない印象も残る

と評しています.

私はその場に居合わせなかったので,その演奏を批評する立場にはありませんが,伊藤氏の批評が,かつて生でマゼールを聴いた時の印象とほぼ同じだったので,ちょっとました.

実は3か月ほど前,元の職場のOBで朝日新聞OBでもあるM氏から「10月にマゼールがN響を振るので聴きにいくのだが,マゼールについて君の評価はどうかね?」と尋ねられました その時,私は自分の経験から「もう30年程前に,生でマゼールがクリーヴランド管弦楽団を振った演奏会を聴いたのですが,”こんなの朝飯前”と言わんばかりの気軽な演奏で,音楽が頭の上をスースー通過していくような,あっけない印象が残っています」という趣旨のお答えをしました 

マゼールは8歳でデビューし,12歳のときにはアメリカのメジャーオーケストラを指揮して回ったという早熟の天才です そのマゼールも今や82歳.いまだに衰えを見せない精力的な活動には頭が下がります 何より一番の驚きは,演奏スタイルが何十年も前からまったく変わっていないということです

Mさんはこの日のコンサートを聴きに行かれたはずなので,今度お会いしたら感想を訊いてみようと思っています

 

  閑話休題  

 

昨日,会社帰りに文京アカデミーに寄って,文京シビック「響きの森クラシック・シリーズ」のセット券を入手しました.「会員継続チケット予約確定ハガキ」+S席代金19,800円と引き換えです

2013年~2014年の公演日程は次の通りで,すべて午後3時開演,オーケストラは東京フィルです

5月18日(土) 指揮:宮本文昭,ヴァイオリン:前橋汀子.ラヴェル「ボレロ」ほか.

9月28日(土) 指揮:大植英次,ピアノ:中村紘子.ラフマニノフ「ピアノ協奏曲第2番」ほか.

11月30日(土)指揮:小林研一郎.ベートーヴェン「交響曲第9番”合唱付”」

2月8日(土)  指揮:三ツ橋敬子,ピアノ:舘野泉.ラヴェル「左手のためのピアノ協奏曲」ほか.

 

          

 

  も一度,閑話休題  

 

次に読む本を買いました 佐藤雅彦編「教科書に載った小説」,川上未映子著「そら頭はでかいです,世界がすこんと入ります」,許光俊著「クラシックを聴け!」の3冊です

「教科書に載った小説」(ポプラ文庫)は日経の書評欄で紹介されていた本で,三浦哲郎「とんかつ」,永井龍男「出口入口」,菊地寛「形」,安倍公房「良識派」,芥川龍之介「雛」など選りすぐりの12編が収録されています

 

          

 

川上未映子の「そら頭はでかいです~」(講談社文庫)は,先日読んだ彼女の対話集「六つの星星」の中で話題になった本です

 

          

 

許光俊の「クラシックを聴け!」(ポプラ文庫)は,1998年に単行本の形で出された時から気になっていた本です

 

          

 

これらの本もブログで紹介していきます.毎度のことですが取り上げる順番は未定です

 

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園子温監督映画「希望の国」を観る~マーラー「第10交響曲・アダージョ」の流れる中で

2012年10月22日 06時59分03秒 | 日記

22日(月).昨日の日経朝刊・文化欄に作曲家の池辺晋一郎さんが「日本人と”声”」というテーマでエッセイを書いています ごく短く要約すると,

「諸外国の人は声が大きい.とりわけ中国人は大きい.それに比べて日本人は声が小さい 一方,ドイツのホテルで食事をしたとき,あまりの料理の多さに閉口した.ところで,オペラで歌を歌うには100人近いオーケストラの音を超えて客席に声を届けなければならない.昔はいざ知らず,今やヨーロッパの有名なオペラ劇場で活躍する日本人歌手が次々に現われている この背景には,日本人の食生活の変化が有るのかも知れない.”声”は人間の行動に大きな作用をもたらすのだ.声は身体のすみずみの動きと,また精神と,大きな関わりを持っている 食生活が変化しつつある日本人の声も,どんどん変わっていくだろう.声を出すことが健康に好影響をもたらすことは間違いない

諸外国の人は声が大きいという点については,個人差があるように思いますが,大量に飲み且つ食べることについては,まったく異論はありません 20数年前に仕事でドイツに行ったとき,現地人がビールのジョッキを何倍もお代わりし,大量の肉料理を平らげていたのを思い出します.南ドイツ新聞社の印刷工場を見学した時,廊下にビールの自動販売機が置かれていたのにはびっくりしたものです 「印刷工場にビールの自動販売機なんか置いていて,事故が起こったら労災問題で雇用者責任が問われかねないよね」と日本人訪問団は顔を見合わせたものです

池辺さんのご指摘のとおり,食生活の変化に伴って日本人歌手の海外進出がもっと進むのかもしれません 歌手はそれで良いのですが,時々コンサート会場で,今にも演奏が始まろうとする直前までペチャクチャしゃべりまくっている高年おばさんは何とかなりませんでしょうかねぇ・・・・いや,決して声が大きいわけではないのですが,周りが静かなので小声でも目立ってしまうのです.お線香のような微妙な香水の匂いとともに・・・・・・

 

  閑話休題  

 

昨日,新宿ピカデリーで公開されたばかりの園子温監督の最新作「希望の国」を観ました 園監督の作品を観るのは「冷たい熱帯魚」「恋の罪」「ヒミズ」に次いで4本目です

 

          

 

舞台は東日本大震災から数年後の日本,長島県.これは長崎と福島を合わせた架空の県名です.酪農を営む小野泰彦は,認知症の妻・智恵子と息子・洋一,その妻・いずみと平凡ながら幸せな毎日を送っていました そこにマグニチュード8.3の長島県東方沖地震が起こり,原発事故が併発します 原発から半径20キロ圏内が警戒区域に指定され,境界線の向こうにある隣家の鈴木家は避難生活へ,こちら側にある小野家は留まることができます.しかし,「大丈夫だ」という洋一の説得にもかかわらず,父・泰彦は福島の原発事故のことを忘れていませんでした.「国の言うことは信用できない.自分のことは自分で守るのだ」と言い,息子夫婦に避難するよう説得します.いずみの妊娠が後で分かります 「これは見えない戦争なの.弾もミサイルも見えないけど,そこいらじゅう飛び交ってるの,見えない弾が!」という叫びが心に響きます.彼女は洋一を説得して原発事故による放射能の子供への影響を恐れ避難することを決意します 

認知症の智恵子は時々,口癖のように「おうちへ帰ろうよ」と言います.その都度,泰彦は「10分待て.10分経ったら家に帰ろう」と言ってなだめます 自宅にいて「いえに帰ろう」という智恵子ですが,もはや帰る家がないことを誰も教えてくれません.もっとも何も知らされない方がよほど幸せなのかも知れません

 

          

 

一方,隣家・鈴木家の長男・ミツルと恋人のヨーコは,消息不明のヨーコの家族を探して,瓦礫に埋もれた海沿いの町を歩き続けます.しかし,家族を見出すことはできません 鈴木は避難所で妻に言います.「言いたくはないが,津波にさらわれたと思う」.二人の懸命な努力にもかかわらず,ついにヨーコの家族を見つけることはできませんでした

 

          

 

長島第一原発は水素爆発を起こし,最悪の事態を招きます.泰彦の家も避難区域に指定され,強制退去を告げる文書が届きます.「この土地から離れることは出来ない.ほかに帰る場所はない」と思う泰彦は決断します まず,飼っていた牛をすべて自らの手で銃殺し,妻・智恵子を道連れにして銃で自殺を図ります

一方,洋一はいずみの提案で半径20キロからさらに遠くに避難しようと車を走らせます.その途中,海辺に寄り,くつろぐ親子にやさしい眼差しを向けるいずみ.それを見つめる洋一のカバンの中からカチカチと言う音が.「ガイガー・カウンター」が放射能を捉えていたのです やさしく抱き合う二人ですが,「愛があれば,何があっても大丈夫」といういずみに対し,「そうだろうか?」と答える洋一.この会話は実際の被災者家族の夫婦間の,あるいは親子間の希望と不安の象徴だと思います

 

          

 

さて,この映画ではテーマ音楽のように流れている曲があります.それはマーラーの交響曲第10番「アダージョ」です マーラーは交響曲を11曲(大地の歌を含む)作曲していますが,第10番は最後の交響曲で,未完成の曲です.マーラーは第1楽章の「アダージョ」のみ作曲して死去しました.本来は5つの楽章から構成されるはずの曲でしたが,第2楽章以降はスケッチが残されているのみです

この映画で「アダージョ」が流れるのは5つのシーンです.最初は,小野一家がくつろいでいる時,急に地震の強い揺れが起こった後のシーンです.福島の大地震を想い起させるかのように悲痛なアダージョが流れます

2番目は,ミツルとヨーコが瓦礫の中を彷徨っているときに少年少女に会い,「これからは一歩,二歩,三歩でなく,一歩,一歩,一歩と言って歩くんだよ」と言われますが,いつしか彼らは消えてしまいます 彼らを呼ぶ「おーい,おーい」という声にマーラーのアダージョがかぶります たった今目の前にいた少年少女が次の瞬間いなくなってしまった喪失感を表しているかのようです

3番目は洋一といずみの会話のシーン.

4番目は認知症の智恵子が若い時に着ていた浴衣を羽織って一人で家を抜け出し,誰もいない町を抜けて避難指定区域にある思い出の場所に行くシーンです.

最後は泰彦の猟銃の音が空に轟き,思い出の木々や家が炎に包まれていき,続いて場面が転換し,洋一といずみを乗せた車が高速道路を走り抜けていくラスト・シーンです 炎を背景にアダージョ楽章が流れるシーンは,奇才ケン・ラッセル監督の「マーラー」(1974年制作)を想い起こさせます.映画の冒頭,湖で爆発が起こり,燃えさかる炎の中,このアダージョ楽章が流れます もっともラッセル監督の方は同じ第10交響曲のアダージョ楽章でも,冒頭部分ではなく,中盤の,オーケストラがフォルテッシモで爆発する部分ですが 使った部分が違っていても,二人の偉大な映画監督がマーラーの同じ曲を使ったことに感慨深いものがあります

前作「ヒミズ」ではモーツアルトの「レクイエム」が,やはり瓦礫の浜辺の町のシーンで通奏低音のように流れていましたが,「希望の町」ではマーラーの未完成の交響曲の「アダージョ」が選ばれました.なぜ,園監督はマーラーを使ったのでしょうか

その答えは鑑賞後にショップで買ったパンフレットにありました その中に監督インタビューが載っています.

「本作でマーラーの交響曲第10番第1楽章『アダージョ』を使用したのはなぜですか?」

園:「もともとマーラーは好きなんですが,今回は何も台本を書いていない時から,あの曲で行こうと思っていました 被災地でも,たまにあの曲を車の中で聴きながら,どんな映画を作ろうか考えていたんです.僕にとって,『アダージョ』は旋律の中から不穏さと眩しさが交互にあらわれるような曲で,不安定な中から湧きたつ光のイメージが今回の映画にぴったりだなと この音をシナリオにすればいいんだと思うほどでした」

監督の言葉に寄れば,マーラーの第10番のアダージョは,この映画と切っても切れない関係にあると言えるでしょう 同じマーラーの交響曲でも,ヴィスコンティの「ヴェニスに死す」で有名な第5交響曲第4楽章「アダージェット」でもなく,現世と別れを告げるような第9交響曲第4楽章「アダージョ」でもない第10番の「アダージョ」を選んだのは,監督の言う「不安定な中から湧き立つ光のイメージ」という表現にピッタリだからでしょう.最初は救いようのない悲痛なメロディーが流れますが,途中からほの明るい曲想が顔を見せ,わずかな”希望”が見えるような気分になります.それを監督は「希望の国」のタイトルにしたのかも知れません

ところで,この映画で使われているマーラー「交響曲第10番」のCDはアントニ・ウィット指揮ポーランド国立放送交響楽団による1994年11月録音による演奏(NAXOSレーベル)です

 

          

 

この映画で,もう一つ印象的だったのは,タイトルの扱いです.通常の場合,まずストーリーに入って,しばらくしてタイトルが表示され,再びストーリーが続く,というパターンが大いと思います しかし,この映画ではいつまで待ってもタイトルが出てきません.最後になってやっと「希望の国」というタイトルが横書きで出てきます

映画を観終わって思うのは「園監督は何と皮肉なタイトルを付けたのだろうか 『希望の国』とはいったいどこの国を指しているというのか」ということです.福島の現実を見た時,この映画の中に無理に”希望”を見出そうとするのは誤りだと思います.人々は,悲劇は喉元過ぎれば忘れるからです

私は園子温監督の映画が好きです.まだ観ていない「紀子の食卓」や「愛のむきだし」をはじめとする作品も,機会があれば是非観たいと思います.新しい映画もどんどん撮って欲しいと思います.大きな理由の一つは,園監督がクラシック音楽を効果的に使っているからです そのことを別としても,一人でも多くの方々にこの「希望の国」を観てほしい,と心から思います.現在のところ,私が今年観た映画の中でダントツ1位の映画です

 

          

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