人生の目的は音楽だ!toraのブログ

クラシック・コンサートを聴いた感想、映画を観た感想、お薦め本等について毎日、その翌日朝に書き綴っています。

「ラ・フォル・ジュルネTOKYO2019」第3日目②伊福部昭「二十絃箏とオケのための交響的エグログ」、ラヴェル「Vnソナタ」、モーツアルト「後宮よりの誘拐」を聴く

2019年05月06日 13時41分45秒 | 日記

6日(月・休)その2.よい子は「その1」も見てね モコタロはそちらに出演しています

 

         

 

昨日、東京国際フォーラムで「ラ・フォル・ジュルネTOKYO2019」第3日目の公演のうち公演番号344、335、326を聴きました

 

     

 

午後3時半からホールCで公演番号344「日本の抒情、田園詩」を聴きました プログラムは①伊福部昭「二十絃箏とオーケストラのための交響的エグログ」、②同「日本組曲」から「盆踊」「演伶(ながし)」「佞武多(ねぶた)」です 演奏は井上道義指揮新日本フィルです

自席は1階16列26番、センターブロック右から2つ目です

1曲目は伊福部昭「二十絃箏とオーケストラのための交響的エグログ」です この曲は「ゴジラ」のテーマ音楽で有名な伊福部昭(1914-2006)が、1969年に二十絃箏(従来は十三絃)が開発されたのを受けて作曲したもので、単一楽章の箏協奏曲です

ステージ中央には二十絃箏が置台の上に設置されており、オケが左から第1ヴァイオリン、第2ヴァイオリン、チェロ、ヴィオラ、その後ろにコントラバスという態勢で並んでいます コンマスはチェ・ムンス氏。第2ヴァイオリンの篠原英和氏と松崎千鶴さんを確認

11歳から筝曲を始め、東京音大の邦楽演奏コースを修了し、現在 複数の音楽大学で箏を教えている滝田美智子さんが黒の和服で登場します 典型的な和服美人です 滝田さんは椅子に座って箏をつま弾きます

井上道義氏の合図で演奏に入りますが、和服で演奏するこの曲は、さながら「和風ハープ協奏曲」のようです 滝田さんは時に立ち上がって演奏します。この曲は箏の独奏部分(カデンツァですね)がかなり多いのですが、そのテクニックは鮮やかです

カーテンコールに呼ばれた滝田さんは控えめで、舞台袖で一礼して引っ込もうとしたので、井上氏が中央に促しました 満場の拍手が滝田さんに送られました。全体を通して、令和の時代に昭和を感じる演奏でした

2曲目は伊福部昭「日本組曲」から「第1曲:盆踊」「第3曲:演伶(ながし)」「第4曲:佞武多(ねぶた)」です この曲は伊福部昭が1934年に書いた「ピアノ組曲」をもとに、1991年にオーケストラ用に編曲し、同年9月に井上道義指揮新日本フィルにより初演されました

井上氏は両手を挙げて踊る仕草のまま振り向いて「第1曲:盆踊」の演奏に入りました こういうスタイルをミッキー流といいます 打楽器が中心となって賑やかなリズム中心の舞踏音楽が展開しますが、ピーヒャラピーヒャラと吹かれる笛はほとんど「踊るポンポコリン」です 別名「お祭り騒ぎ」とも言います 井上氏はクラシック・バレエをやっていたので、身体の動きが柔軟です 「第3曲:演伶(ながし)」に入ると、弦楽器が抒情的なメロディーを奏で、日本の田園風景を想起させます 「第4曲:佞武多(ねぶた)」に入ると、再び打楽器が中心となり同じメロディーが繰り返されるオスティナートが大音響で演奏されます 中間部ではちょっと寂し気なメロディーが顔を出しますが、この「佞武多(ねぶた)」は、伊福部が弘前のねぷたの印象を基に作曲したということに関係がありそうです 「青森」のねぶたは立体的な工作物の周りで「ラッセラーラッセラー」と終始威勢よく踊られるのが特徴ですが、弘前のねぷたは、扇の形をした工作物の表面には戦いに臨む勇ましい男の絵が描かれ、裏面には男を戦場に送り出す女性の後姿の絵が描かれているのです 寂し気なメロディーは送る側の女性の気持ちを表していると解釈しました

さて「第4曲:佞武多(ねぶた)」は大団円のお祭り騒ぎの中、終曲を迎えます カーテンコールに現れた井上ミッキーは、空手の突きのような仕草で 三三七拍子のような手拍子を聴衆に求め、多くの人たちによる最後の一音が空手のひと突きで「パン」と決まると 満面の笑みを浮かべていました 聴衆を巻き込むパフォーマンスにおいては他の追随を許さない天下の演歌テナー、もとい、エンターティナーです

 

     

 

次いで、午後5時30分からホールB5で公演番号335「ヴァイオリン・ソナタ集」を聴きました プログラムは①イザイ「マズルカ第1番」、②ラヴェル「ヴァイオリン・ソナタ」、③エネスク「ヴァイオリン・ソナタ第3番」です 演奏はヴァイオリン=ニキータ・ボリソグレブスキー、ピアノ=ゲオルギー・チャイゼです

ヴァイオリンのニキータ・ボリソグレブスキーは1985年ロシア生まれで、2007年のチャイコフスキー国際コンクール第2位に入賞しています ピアノのゲオルギー・チャイゼは1988年サンクトペテルブルク生まれで、2009年にカナダのホーネンス国際コンクールで第1位を獲得しています

自席は4列57番、ピアノに向かって右側のサイドビュー席です。利点は演奏者の出入口に近いということです

1曲目はイザイ(1858-1931)の「マズルカ第1番」です 聴いていて、かなり技巧的な曲だと思いました 演奏中、気になったのは、ゴーゴー、あるいはゴロゴロという騒音が散発的に聴こえてきたことです 会議室の椅子をかたずけているような音です。あるいは遠雷だったのでしょうか

2曲目はラヴェル「ヴァイオリン・ソナタ」です この曲はモーリス・ラヴェル(1875-1937)が1927年に作曲しパリでラヴェル自身のピアノ伴奏により初演されました 第1楽章「アレグレット」、第2楽章「ブルース:モデラート」、第3楽章「パーペチューム・モビル:アレグロ」の3楽章から成ります

この日の曲目の中で唯一知っている曲だったので、楽しめました やはり第2楽章の「ブルース」がいかにもラヴェルらしいジャジーな曲想で、親しみを感じました

最後の曲はエネスク「ヴァイオリン・ソナタ第3番イ短調」です この曲はエネスコ(1881-1955)が1926年に作曲した作品で、「ルーマニアの民俗風に」というサブ・タイトルが付いています 第1楽章「モデラート・マリンコ二コ」、第2楽章「アンダンテ・ソステヌート・エ・ミステリオーソ」、第3楽章「アレグロ・コン・ブリオ、マ・ノン・トロッポ・モッソ」の3楽章から成ります

二人の演奏で第1楽章に入ります 超絶技巧のうねる様な曲想ですが、刻々と変わる音色の変化が楽しめます 圧巻だったのは第3楽章です。パワフルな演奏で、まるで作曲者の魂が乗り移ったような迫真の演奏でした 中間部でサン=サーンスの「エジプト風」のようなメロディーが聴こえてきて、おやっと思いました 全体的に相当の難曲だと思いますが、二人は息の合った演奏で楽しませてくれました


     

 

今年最後に聴くのは、午後7時からホールB7で開かれた公演番号326「モーツアルト:オペラ『後宮からの誘拐』」です これは1997年創設の英国の室内オペラ・カンパニー「ディーヴァ・オペラ」による上演で、ピアノ伴奏、原語上演、字幕なしが特徴です 出演はベルモンテ(スペインの貴族)=アシュリー・カトリング、オスミン(太守の監督官)=マシュー・ハーグリーヴズ、ペドリッロ(ベルモンテの召使)=リチャード・ダウリング、太守セリム=デイヴィッド・ステファンソン、コンスタンツェ(ベルモンテの婚約者)=ガブリエラ・キャシディ、ブロンデ(コンスタンツェの召使:英国人)=バーバラ・コール・ウォルトン。音楽監督・ピアノ演奏=ブライアン・エヴァンスです

ステージ上にはセンター後方にピアノが、その前のスペースに長椅子が、左右のスペースに人の背の高さほどの植木が2つずつ置かれているだけのシンプルな舞台設定です

最初に音楽監督ブライアン・エヴァンスが登場しピアノ独奏により「序曲」が軽快に演奏されます   そして、ベルモンテ、オスミン、ペドリッロ、セリム、コンスタンツェと相次いで登場しアリアを歌いますが、彼らの衣装は本格的なオペラ仕様で、天皇家御用達のような立派なものです

歌手陣は後に出てくるブロンデ役歌手を含めて充実していますが、一番声が出ていて歌唱力が抜群だったのはコンスタンツェを歌ったソプラノのガブリエラ・キャシディです 次いでオスミンを歌ったバスのマシュー・ハーグリーヴズです。彼は演技力も抜群でした ブロンデを歌ったバーバラ・コール・ウォルトンはチャーミングで、役柄がピッタリでした 彼女は「フィガロの結婚」ならスザンナを歌うタイプのソプラノです

面白かったのは、第1幕が終わり 舞台が暗転すると、何と 今まで歌っていた歌手たちが植木や長椅子やらを持って配置換えをしていたことです つまり、このオペラ・カンパニーは歌手以外の余計な人がいない、良く言えば「少数精鋭」の限られた人たちによって運営されているのです 別の言葉に置き換えれば、一人で何でもやらなければならない「家内制手工業的な零細企業」のようなものです しかし、そういう組織でも、高い技術力が世界から認められ、海外に商品を輸出している企業もあります このオペラ・カンパニーは、オペラ界におけるそうした企業のようなものではないか、と思います 

15分の途中休憩を含めて2時間の上演でしたが、「シンプル・イズ・ベスト」といった楽しいオペラ公演でした

 

     

 

帰りがけに、今回の音楽祭の記念にLfjオフィシャルCDを購入しました 毎年買っています これで私の「ラ・フォル・ジュルネTOKYO2019」も終わりです 来年も無事に生きていれば5月3、4、5日は東京国際フォーラムに通います

 

     

 

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「ラ・フォル・ジュルネTOKYO2019」第3日目①モーツアルト「FlとHp協奏曲」、ショーソン「Vn、Pfと弦楽四重奏のためのコンセール」、ドヴォルザーク「新世界より」を聴く

2019年05月06日 10時24分26秒 | 日記

6日(月・休)その1.わが家に来てから今日で1676日目を迎え、トランプ米政権と朝鮮半島の非核化をめぐる協議を進めてきた北朝鮮が4日、日本海に向けて「飛翔体」を相次いで発射した というニュースを見て感想を述べるモコタロです

 

     

     世界中で「また北がやった」と騒ぐから調子に乗るんだ 一切 無視したらどうなの

     

         

 

昨日、東京国際フォーラムで「ラ・フォル・ジュルネTOKYO2019」の第3日目(最終日)の公演を6つ聴きました 聴いたのは公演番号341(ホールC)、352(ホールD7)、343、344(以上ホールC)、335(ホールB5)、326(ホールB7)です ここでは前半の公演番号341、352、343について書きます

 

     

 

最初に午前10時からホールCで公演番号341「パリの生彩~時を超える2大協奏曲」を聴きました プログラムは①モーツアルト「フルートとハープのための協奏曲ハ長調K.299」、②ロドリーゴ「アランフェス協奏曲」です 演奏は①のフルート独奏=フィリップ・ベルノルド、ハープ独奏=吉野直子、②のギター独奏=エマニュエル・ロスフェルダー、フアド・イブラヒモフ指揮シンフォニア・ヴァルソヴィアです

自席は1階23列16番、左ブロック右通路側です

1曲目はモーツアルト「フルートとハープのための協奏曲ハ長調K.299」です この曲はモーツアルト(1756‐1791)が22歳の時に家庭教師を勤めていた貴族の令嬢の結婚祝いに送った作品です 第1楽章「アレグロ」、第2楽章「アンダンティーノ」、第3楽章「ロンド:アレグロ」の3楽章から成ります

フランス国立リヨン響の首席フルート奏者フィリップ・ベルノルドと、日本におけるハープ演奏の第一人者・吉野直子が指揮者フアド・イブラヒモフとともに登場、さっそく第1楽章に入ります

ブルーの爽やかな衣装の吉野さんは、その演奏スタイルのように優雅そのものです また、フルートの明るく優美な旋律を聴いていると、モーツアルトはフルートが嫌いだったという逸話が信じられません たぶん、よく言われているように 当時のフルートの音程が不安定だったとかいう事情もあるのでしょうが、私はフルート協奏曲やフルート四重奏曲などの作品を含めて考えると、本当のところ フルートは嫌いではなかったのではないかと思っています

これほど結婚式に相応しいBGMはありません 私は数年前に結婚した 職場のK君の結婚披露パーティーのBGMを依頼された際、二人の入場時のBGMにこの曲を選びました 懐かしい思い出です

2曲目は ロドリーゴ「アランフェス協奏曲」です この曲はロドリーゴ(1901-1999)が1939年にスペインからパリに来ていた時に書いたギター協奏曲です 第1楽章「アレグロ・コン・スピリト」、第2楽章「アダージョ」、第3楽章「アレグロ・ジェンティル」の3楽章なら成ります

独奏者エマニュエル・ロスフェルダーが白いギターを抱えて登場します この曲は音が小さいギターのための協奏曲なので、オーケストラの演奏部分が極めて控えめに書かれています そのため何となく物足りなさを感じるのが正直な感想です しかし、これをエレキ・ギターで演奏したら興ざめでしょう この曲の白眉は第2楽章「アダージョ」です。イングリッシュホルンの奏でるメランコリックな主題に導かれ ギターが美しく響きます

大きな拍手に ソリストはアンコールに応えてタレガ「グラン・ホタ」を演奏しましたが、実に楽しい曲でした

演奏が始まるとき、センターブロックの14~15列目の右から3~4つめくらいの女性がスマホを発光させました 「写メしたのか?」と思ったら、アンコールの演奏中ずっと発光したままでいたのです このバカ女は動画で撮影していたのです アンコールもコンサートのうち、ということが理解できていないのです どういう教育を受ければこういう破廉恥極まりない行動ができるのか、と不思議です 周囲の人が注意しないのも摩訶不思議です これがオーケストラの定期演奏会だったら、あんた袋叩きになってボコボコにされるから、覚悟しときな


     

     

次いで午前11時45分からホールD7で公演番号352「ショーソンのコンセール」を聴きました プログラムはショーソン「ヴァイオリン、ピアノと弦楽四重奏のためのコンセール ニ長調」です 演奏はヴァイオリン独奏=オリヴィエ・シャルリエ、ピアノ独奏=ミシェル・ダルベルト、弦楽四重奏=モディリアーニ弦楽四重奏団です

自席はA20番、3列目の右端です

この曲はショーソン(1855-1899)が1889年から91年にかけて作曲した作品です 長いタイトルですが、実質的には六重奏曲です 第1楽章「決然と」、第2楽章「シシリエンヌ」、第3楽章「荘重に」、第4楽章「終曲:非常に速く」の4楽章から成ります

第1楽章が「運命の動機」とでも言いたくなるような力強い3つの和音で開始されますが、この演奏が凄かった この主題が全曲を通して循環しますが、一気にショーソンの世界に引き込まれます 独奏ヴァイオリンのオリヴィエ・シャルリエは、その堀の深い顔立ちと 背筋を伸ばした立ち姿がまるで素浪人のようで、「寄らば斬るぞ」といった緊迫感を感じさせます。艶のあるヴァイオリンで5人をリードしていきます ダルベルトのピアノも素晴らしい モディリアーニ弦楽四重奏団のアンサンブルも見事です ロマンの極致をいく演奏というのはこういうのを言うのでしょう

私はショーソンの曲ではこの曲が一番好きです(もっとも、あとは「詩曲」くらいしか知りませんが)。初めてこの曲を聴いたのは数年前の「サントリーホール・チェンバーミュージックガーデン」でしたが、一度聴いてすっかり気に入り、CDを購入したくらいです 今回また生演奏で聴けて幸せでした


     

 

次に午後1時45分からホールCで公演番号343「アメリカからボヘミア~郷愁のメロディー」を聴きました プログラムはドヴォルザーク「交響曲第9番ホ短調作品95”新世界より”」です 演奏はリオ・クォクマン(エンヘの代演)指揮ウラル・フィルハーモニー・ユース管弦楽団です

この曲はドヴォルザーク(1841-1904)が新世界=アメリカ滞在中に作曲した作品です 第1楽章「アダージョ~アレグロ・モルト」、第2楽章「ラルゴ」、第3楽章「スケルツォ:モルト・ヴィヴァーチェ」、第4楽章「アレグロ・コン・フォーコ」の4楽章から成ります

自席は1階24列15番、最後列の左ブロック右から2つ目です

入場してくるウラル・フィルハーモニー・ユース管弦楽団の面々を見て、ビックリしました 管楽器と低弦そこ男性が中心ですが、弦楽器は女性が圧倒的多数を占めています 自席が会場最後列なので一人一人の顔が良く見えないのですが、「ユース」という看板は嘘偽りなく、みな若くてしかも美人(に見えます)。ペラ1枚のプログラムの解説によると、このオケは「2007年創設。エカテリンクブルク内の音楽教育機関の優秀な卒業生・在校生から構成されている」とあります

エンへの代演で急きょ指揮台に上がり、会心の出来に安心したのか、リオ・クォクマンは満面の笑みを浮かべ、オケの若い奏者たちを引き立てていました

この続きは「その2」をご覧ください

 

     

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