人生の目的は音楽だ!toraのブログ

クラシック・コンサートを聴いた感想、映画を観た感想、お薦め本等について毎日、その翌日朝に書き綴っています。

プロースト交響楽団第29回定期演奏会でチャイコフスキー「交響曲第4番」、ビゼー「カルメン」よりアリア他を聴く ~ 林美智子も出演 / 2019年上半期の目標達成状況のご報告

2019年06月30日 07時24分16秒 | 日記

30日(日)。昨日午前、マンションの管理組合の定期総会が開かれたので出席しました 議案が9つもあったので2時間半近くかかってしまいました 主だった議題としては「住宅宿泊事業(民泊)等の禁止に関する管理規約変更」と「総会及び理事会議案書・議事録、管理規約等の言語統一に関する管理規約変更」があります 前者は、現在の「専有部分の用途」の条項に、2017年6月に成立・公布された「住宅宿泊事業法」に規定する「宿泊料を受けて住宅に人を宿泊させる事業」を禁止する旨の条項を追加するというものです。この背景には、マンションの所有者や賃貸契約者以外の者(一般人)からお金を取って宿泊させると、騒音問題、ゴミ問題、治安問題等が発生する恐れがあるので、いわゆる「民泊」は禁止するというものです

後者は、「総会・理事会など管理組合運営に関わるすべての書類で使用される言語は日本語とする。ただし、理事長が認めた場合は例外とする」という趣旨の項目を管理規約に新設するというものです この背景には、いま住んでいるマンションで区分所有者の多国籍化が進んでいるという実態があります 「分別ごみ置き場」はすでに「瓶」「缶」「ペットボトル」「発泡スチロール・トレイ」の別に日本語、英語、韓国語、中国語の4か国語で表示されています(それでも分別しない 分別のない人がいますが)。これを管理組合に関係する書類全部について4か国語にしようとすると莫大な費用(翻訳費等)がかかるという問題があるので、あらかじめ日本語で統一することにしておこうというものです ただし、実生活の上で必要な注意事項等の掲示や配布については理事長判断で(日本語以外も)考慮するということです

総会では上記の2つの議案を含めたすべての議案を可決しましたが、いつもの通り本人出席が少なく、委任状提出が圧倒的に多い現状は如何ともしがたい大問題です

ということで、わが家に来てから今日で1731日目を迎え、20か国・地域首脳会議(G20大阪サミット)に出席するため来日中のトランプ米大統領は29日、韓国と北朝鮮を隔てる非武装地帯(DMZ)を30日に訪れ、北朝鮮の金正恩委員長と会う用意があるとツイッターに投稿した というニュースを見て感想を述べるモコタロです

 

     

     トランプがDMZを超えて北朝鮮に拉致されたら 悲しむ人 喜ぶ人 どっちが多い?

 

         

 

怒涛の6月が終わりました 1か月間でクラシック・コンサート26回、映画鑑賞7本、読書3冊をこなしたのは自己新記録かも知れません 最後は疲れて風邪を引いてしまいましたが

早いもので今日で2019年も上半期が終了です 年間目標として①クラシック・コンサート200回、②映画鑑賞160本、③読書65冊を掲げていますが、上半期(6か月間)の達成状況をご報告しようと思います なお、便宜的に目標数値を半分にしています ※スマホでご覧の方は見にくいかも知れません。ご容赦ください

               目 標   実 績   達成状況

①クラシック・コンサート  100回  121回   121%

②映画鑑賞          80本   82本   102%

③読  書          33冊   33冊   100%

上記の通り、①は目標を2割上回り、②③はほぼ目標通りクリアしました 言うまでもなく、”実績”のすべては当ブログでご紹介しています 問題は下半期です。最後まで油断しないで目標達成に向けて頑張りたいと思います

 

         

 

昨日、文京シビックホールで、プロースト交響楽団の第29回定期演奏会を聴きました プログラムは①サン=サーンス:歌劇「サムソンとデリラ」より「バッカナール」「あなたの声に心は開く」、②ビゼー:歌劇「カルメン」より「前奏曲」「ハバネラ”恋は野の鳥”」「第3幕への間奏曲」「セギディーリャ”セヴィリアのとりでの近くに”」「第4幕への間奏曲」「ロマの歌”賑やかな楽の調べ”」、③チャイコフスキー「交響曲第4番ヘ短調作品36」です ①②のメゾ・ソプラノ独唱=林美智子、管弦楽=プロースト交響楽団、指揮=石川星太郎です

プロースト交響楽団は2003年設立のアマチュア・オーケストラで、首都圏の大学オーケストラや第18回全日本大学オーケストラ大会合同演奏出演者が中心となって結成されました 団員は約130名とのことで、プロで言えば東京フィル並みの規模です

指揮者の石川星太郎は、東京藝大指揮科、ロベルト・シューマン音楽大学デュッセルドルフ指揮科を卒業。2011、2012年度ロームミュージックファンデーション奨学生。2016年第1回フェリックス・メンデルスゾーン国際指揮者クール第2位入賞を果たしています

 

     

 

自席は1階11列30番、右ブロック左から2つ目です。会場は結構入っています オケのメンバーが入場し配置に着きますが、弦の編成が変わっています。左から第1ヴァイオリン、ヴィオラ、チェロ、第2ヴァイオリン、その後ろにコントラバスという対向配置ですが、同じ対向配置でも多いケースはヴィオラとチェロが逆になっています 何か意図があるのでしょうね。メンバーをざっと見渡したところ平均年齢は極めて若いようです

1曲目はサン=サーンス:歌劇「サムソンとデリラ」より「バッカナール」です このオペラはカミーユ・サン=サーンス(1835-1921)が1868年から1874年にかけて作曲したグランド・オペラで、旧約聖書の物語に基づいています 物語は「ペリシテ人の支配に抗したイスラエル人の先頭に立ったサムソンは、ペリシテ人の舞姫デリラの誘惑にかかり、あざむかれて盲目にされ捕らえられるが、最後に怪力を振り絞ってダゴンの神殿の柱を倒し、居合わせたペリシテ人もろとも自らも命を絶つ」というものです

石川星太郎の指揮で演奏に入りますが、冒頭のオーボエによるエキゾチックなメロディーが印象に残ります

次いで、どこかの国の民族衣装のようなカラフルな衣装を身に着けた林美智子さんが、デリラがサムソンを魅惑するアリア「あなたの声に心は開く」を歌います とくに高音の伸びが素晴らしいと思いました

次いで、ビゼーの歌劇「カルメン」より「前奏曲」「ハバネラ”恋は野の鳥”」「第3幕への間奏曲」「セギディーリャ”セヴィリアのとりでの近くに”」「第4幕への間奏曲」「ロマの歌”賑やかな楽の調べ”」が続けて演奏されます

オペラ「カルメン」はジョルジュ・ビゼー(1838-1875)が1873年から74年にかけて作曲し、1875年にパリのオペラ・コミック座で初演されました

まず最初に勇ましい「前奏曲」が大音響で演奏され、会場後方から現れた林美智子さんが「ハバネラ”恋は野の鳥”」を歌いました 妖艶さが加わると鬼に金棒かな、と思いました 次いで、フルートの独奏が美しい「第3幕への間奏曲」が演奏され、再び林さんにより「ロマの歌”賑やかな楽の調べ”」が表情豊かに歌われました カーテンコールでスタッフから花束を受け取った林さんはとても嬉しそうでした こういう風景はとてもいいですね


     


プログラム後半はチャイコフスキー「交響曲第4番ヘ短調作品36」です この曲はピョートル・イリイチ・チャイコフスキー(1840-1893)が1877年から78年にかけて作曲し、1878年2月10日にサンクトペテルブルクで、ニコライ・ルビンシテインの指揮により初演された作品ですが、「わが親愛なる友に」という献辞が付されています これはパトロンのメック夫人を指しています。夫人あての作曲者の手紙にこの交響曲の細部にわたる標題的解釈が書かれています このメック夫人という女性は1877年から14年間もチャイコフスキーと一度も会うことなく多額の資金援助を続けたと言われていますが、それは彼女がチャイコフスキーの才能を見抜く能力を持っており、それだけの財産も持っていたということを表します もしメック夫人の全面的なバックアップがなかったら交響曲第4番、マンフレッド交響曲、第5番、第6番という傑作群は生まれていたかどうか、怪しいものです

第1楽章「アンダンテ・ソステヌート~モデラート・コン・アニマ~モデラート・アッサイ、クアジ・アンダンテ~アレグロ・ヴィーヴォ」、第2楽章「アンダンティーノ・イン・モード・ディ・カンツォーナ」、第3楽章「スケルツォ:ピッツィカート・オスティナート、アレグロ」、第4楽章「フィナーレ:アレグロ・コン・フォーコ」の4楽章から成ります

石川星太郎の指揮で演奏に入ります 第1楽章冒頭は”運命のテーマ”とでも言うべきファンファーレが金管によって派手に鳴らされますが、微妙にずれているような気がします その後の演奏ではホルンの調子が良くないように思います。強奏の時は問題ないのですが、弱奏のときに不安定になるようです ホルンにとって弱奏はよほど難しいのでしょうね おまえが吹いてみろ、と言われてもできません 第2楽章では木管、とくにオーボエの演奏が冴えていました 第3楽章は何と言っても弦楽器総動員のピッツィカートが楽しく聴けました そして、最後の第4楽章ではフル・オーケストラにより梅雨空を吹き飛ばすような爽快な演奏が展開し、圧倒的なフィナーレを迎えました

プロースト交響楽団は、アマチュア・オーケストラの中ではレヴェルが高い方だと思います   これからも頑張ってほしいと思います

 

     

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「ホールで選ぶ時代~個性豊かな形状・音響続々 奏者や曲だけで決めない」 ~ 朝日の記事から / 東川篤哉著「かがやき荘西荻探偵局」を読む ~ ギャグ満載のユーモア・ミステリー小説

2019年06月29日 07時18分21秒 | 日記

29日(土)。わが家に来てから今日で1730日目を迎え、モスクワで開かれていた第16回チャイコフスキー国際コンクールのピアノ部門で日本の藤田真央さん(20)が2位に入賞した というニュースを見て感想を述べるモコタロです

 

     

     あの童顔は 同じ真央でもフィギュアスケートの浅田真央に近いような気がするな

 

         

 

昨日、夕食に「鶏の唐揚げ」「マグロの山掛け」「生野菜とワカメのサラダ」を作りました 唐揚げは何度か作ったのでカラっと揚げるコツが身につきました

 

     

 

         

 

27日付の朝日朝刊に「ホールで選ぶ時代 ~ 個性豊かな形状・音響続々 奏者や曲だけで決めない」という見出しで 吉田純子編集委員の論考が掲載されていました リードには次のように書かれています

「コンサートホールの理想的な音響を巡り、欧州でちょっとした議論が起きている。伝統的な靴箱型か、新機軸のぶどう畑型かという風に、形状で音響のよしあしを論じる向きがある一方で、『形状だけで響きが決まるわけではない』との異議もあがる 『聴く』ためだけでなく、『集う』場として進化してきたホールの響きをいま、私たちはどう考えればいいのか

記事によると、話題になっているのは、北ドイツのハンブルクに2年前に完成したブドウ畑型のエルプフィルハーモニー(2100席)で、世界的な指揮者が「このホールでは演奏しない」と公言し、人気歌手が演奏中に聴衆から「聞こえない」とやじを飛ばされるなど、物議をかもしている、というもの この件については、6月4日付のtoraブログで朝日の記事を紹介しています。興味のある方はご参照ください

さらに記事(超訳)によると、

「東京芸術劇場の音響チーフ、石丸耕一氏は電気音響と音楽理論、音響心理学を熟知する『トーンマイスター』という専門職だが、彼は『パリ・オペラ座をつくったシャルル・ガルニエも、当時は四方八方からの批判に悩まされた 新しいホールには批判がつきもの。ホールごとに響きをつかさどり、指揮者や演奏家の”味方”をするのが私たちの仕事』と語る 海外の演奏会事情に詳しい音楽評論家の東条碩夫氏は『個性豊かなホールが増え、ホール自体のファンになって通い詰めるという人も今や少なくない。演奏家や楽曲だけでなく、”ホールで選ぶ”という時代が到来しつつある』と指摘する

「コンサートホールの本格的な歴史は、19世紀後半に始まる。度重なる革命を経て、音楽会が王侯貴族の専有物ではなくなり、市民を含む大人数を収容できるホールが求められるようになった 当時の基本は、舞台と客席が向かい合う長方形の靴箱型。代表格は1870年竣工のウィーン楽友協会大ホール(1680席)。ウィーン・フィルの本拠地だ 音楽家と観客を完全に分けるスタイルは、音楽家が王侯貴族のしもべだった階級社会時代の名残ともいえる。長所は天井や壁の反響が安定しやすいこと。弱点は『音源から遠くにいくほど生音より反響の方が大きくなる、つまり良い音響でなくなること』(石丸さん)。20世紀に入り、オケは巨大化し、弦楽器の弦は羊の腸からスチールへ。金管楽器も米国で革命的な進化を遂げる。大音量を受けとめ、多数を収容できる近代的なぶどう畑型やアリーナ型の模索が始まったのは時代の必然だった 試金石となったのが、1963年に完成したベルリン・フィルの本拠地フィルハーモニー(2440席)だ。カラヤンの提案で、ぶどう畑型が採用された。みなが同じ方向を向くのではなく、観客も奏者もランダムに向き合うことになるので、相撲観戦にも似た『ハレ』の一体感を味わえる カラヤンはその後、86年開館のサントリーホール(2006席)の建設にも協力した。世界的な音響設計士、永田穂の尽力を経て、反響の不安定なぶどう畑型で世界を驚かせる濃厚な音響が実現された

記事中の「『ホールで選ぶ』という時代が到来しつつある」というのはよく分かります 私はサントリーホールが一番好きなので、在京オーケストラの定期演奏会で複数のコース(シリーズ)がある場合には、余程のことがない限り、会場がサントリーホールのシリーズを選びます NHKホール(N響)やトリフォニーホール(新日フィル)で開催のシリーズを選ぶ時は、年間プログラムのラインアップがサントリーホール・シリーズよりも魅力的な時に限られます

 

         

 

東川篤哉著「かがやき荘西荻探偵局」(新潮文庫)を読み終わりました 東川篤哉は1968年広島県生まれ。岡山大学法学部卒。2002年、「密室の鍵貸します」でデビュー、2011年「謎解きはディナーのあとで」で本屋大賞を受賞しています

 

     

 

この本は、「かがやき荘アラサー探偵局」のタイトルで小説誌「yom yom」(新潮社)2014年夏号から2016年春号まで連載された後、2016年10月、新潮社から刊行された全4篇から成る連作スタイルのユーモア・ミステリー集です

「かがやきそうな女たちと法界院家殺人事件」「洗濯機は深夜に回る」「週末だけの秘密ミッション」「委員会からきた男」の4篇の主人公は西荻窪のシェアハウス「かがやき荘」で暮らすアラサー女子=小野寺葵、占部美緒、関礼菜の3人です 杉並の大豪邸に住むシェアハウスの”大家さん”法界院法子の身の回りで起こる数々の事件の探偵を引き受けるなら滞納家賃を相殺すると持ち掛けられ、これ幸いに飛びつきます

ミステリーのストーリーはともかく、主人公3人のキャラが際立っています 小野寺葵は長身で色白、長い黒髪、切れ長の目にメガネをかける知的な雰囲気を纏うミステリ・マニアの推理オタク31歳 占部美緒は赤いパーカーを着て、中国地方の怪しげな方言を喋りまくり、時には蹴りが飛び出す茶髪の元家電量販店販売員30歳 関礼菜は黒髪をツインテールに結び、濃いめのメイクで女子高生制服コスプレを偏愛する元銀行員29歳です 3人の共通点はお金も色気もないところです この3人が葵の推理をもとに事件を解明していきます

さきに「ミステリーのストーリーはともかく」と書いたのは、東川篤哉の小説の魅力はストーリーそのものよりも、むしろ、登場人物たちが発するギャグや突飛な行動にあるからです どんなギャグかは実際にお読みになってみてください

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藝大モーニングコンサートでブラームス「ピアノ協奏曲第1番」(Pf:山中惇史)、室元拓人「Sound Episome for Orchestra」を聴く / 「クリムト展」を観る ~ 東京都美術館

2019年06月28日 07時18分50秒 | 日記

28日(金)。わが家に来てから今日で1729日目を迎え、トランプ米大統領は28~29日に大阪で開く20か国首脳会議(G20サミット)に出席するためワシントンを出発する前に、ホワイトハウスで記者団に対し、「多くの国が米国を利用してきたが そんなことはすぐに全くなくなる」と強調した というニュースを見て感想を述べるモコタロです

 

     

      「賢者は歴史に学び 愚者は経験に学ぶ」 トランプは誰にも耳を傾けず 頭を傾ける

 

         

 

昨日の夕食は「牛タン塩焼き&牛ハラミ焼肉」「生野菜と生ハムのサラダ」「卵スープ」を作りました 実はちょっと風邪気味で調子が悪いので簡単なメニューにしました

 

     

 

         

 

昨日、東京藝大奏楽堂で第7回藝大モーニングコンサートを聴きました プログラムは①室元拓人「Sound Episome for Orchestra」、②ブラームス「ピアノ協奏曲第1番ニ短調作品15」(Pf:山中惇史)です   管弦楽=藝大フィルハーモニア管弦楽団、指揮=澤和樹(東京藝大学長)、コンマス=澤亜紀(学長の娘さん)です

 

     

 

全席自由です。1階13列12番、左ブロック右通路側を押さえました

オケは左から第1ヴァイオリン、第2ヴァイオリン、ヴィオラ、チェロ、それらを左右から挟むようにコントラバスが2本ずつ分かれて配置されています

1曲目は藝大4年在学中の室元拓人作曲「Sound Episome for Orchestra」です 開演前の本人のプレトークとプログラムに掲載のプログラム・ノートによると、この曲は「ノイズについて、ユダヤ人作曲家マリシオ・カーゲルの『ルートヴィヒ・ヴァン』を研究し、さらに、作曲家・大友良英のパフォーマンスに触発されて、ベートーヴェンをテーマに作曲した作品」であり、「Episome とは『遺伝子組み換えを自在に行える因子』のこと」とのことです

澤和樹氏の指揮で演奏が開始されます 冒頭は弦楽四重奏により 聴こえるか聴こえないかという微妙な”ホワイト・ノイズ”のような音が奏でられ、次第に大きな音になり、その後は波が寄せては返すような曲想になったり、いろいろと変容していきます しかし、「ベートーヴェンをテーマにしている」はずが、ベートーヴェンの音楽の片鱗も聴こえて来ません かろうじて終盤において、ホルンが英雄交響曲の有名なテーマを3~4秒 奏でたように感じた程度です   あまりにも「ノイズ」を中心に考えすぎているのでないか、もう少し遊び心があっても良いのではないかと思いました

その上で、作曲者の室元君には率直に謝らなければなりません 私にはこの曲を理解する能力が欠けていました。お許しください


     


プログラム後半はブラームス「ピアノ協奏曲第1番ニ短調作品15」です この曲はヨハネス・ブラームス(1833-1897)が1854年から1858年にかけて作曲し、1859年にハノーヴァーで初演されました この曲は当初「2台のピアノのためのソナタ」として着想され、その後、4楽章形式の交響曲に改作されましたが、最終的に3楽章から成るピアノ協奏曲の形として完成されました 第1楽章「マエストーソ」、第2楽章「アダージョ」、第3楽章「ロンド:アレグロ・ノン・トロッポ」の3楽章から成ります

ピアノ独奏は東京藝大大学院の作曲専攻を修了後、同大学ピアノ専攻に入り直して在学中の山中惇史君です

澤和樹氏の指揮で第1楽章に入りますが、冒頭のティンパニの連打が素晴らしい 一気にブラームスの世界に引き込まれます。長い序奏の後、山中君のピアノが入ってきます

全楽章を通して、山中君のピアノは力強くエネルギーに満ちており、1854年2月のロベルト・シューマンの死を乗り越えて運命に対峙しようとする若きブラームスの秘めた情熱を放出するかのようでした とくに、第3楽章のカデンツァは素晴らしく、コーダは圧倒的でした

山中惇史君はすでにテレビ等にも出演するなど多方面で活躍しているといいます 私も彼の名前どこかで見たような気がします 今後も作曲、ピアノ演奏に限らず多方面での活躍を期待したいと思います

 

     

 

         

 

コンサート終了後、藝大奏楽堂から直接、上野公園内の「東京都美術館」に向かいました。もちろん「クリムト展」を観るためです   時間的には12時半近くでしたが、「30分待ち」の表示が出ています。昼食を取ってからだとさらに並ぶことになりそうなので、そのまま並んで待ちました。約30分後無事に入館できました

 

     

 

この展覧会で是非観たいと思ったのは「ベートーヴェン・フリーズ」の原寸大複製です オリジナルはヨーゼフ・ホフマンのデザインによる分離派会館の展示室の左翼ホール天井近くの3つの壁面(縦2メートル16センチ、横34メートル38センチ)にクレヨン、サンギーヌ、パステル、カゼイン絵具、金、銀、漆喰、モルタルなどにより1901年から1902年までに製作され、第14回分離派展で展示されました 「ベートーヴェン・フリース」は分離派展の終了後には解体処分される予定でしたが、あるコレクターにより買い取られ、現在はベルヴェデーレ宮オーストリア絵画館の寄託作品として分離派会館の地下に展示されています

「ベートーヴェン・フリース」のテーマはベートーヴェンの「交響曲第9番」です 製作に当たってクリムトが下敷きとしたのはリヒャルト・ワーグナーによる叙述的な解釈で、分離派展のカタログにも掲載されたといいます すなわち、左側の壁にはまず「甲冑を纏う強者」が描かれる。強者は「苦しむ人間」から「敵対する力」と戦うことを懇願されている その「敵対する力」は、正面の壁に描かれる 幸福を求める人々に寄り添う精霊が、上空を舞う。精霊は、右側の壁面に竪琴を持つ女性として現われれる「詩」に充足を見い出す。続く空白の壁は、中央ホールのベートーヴェン像が見渡せる位置にあり、それを過ぎると、フリーズは「諸芸術」と「楽園の天使の合唱」で締めくくられる 天使たちが歌うのは、べート―ヴェンの交響曲の最後を飾るシラーの詩「歓喜の歌」だ 抱擁する恋人たちの姿は、純粋なる幸福への憧れが成就したことを示すーというものです

今回展示されているのは1984年製作の原寸大複製ですが、実際に展示室の中央に立って周囲の壁を見上げると圧倒されます

ところで、「甲冑を纏う強者」として描かれている男のモデルは誰か?といえば、ミシェル・マリー監督映画「クリムト エゴン・シーレとウィーン黄金時代」の中で、20世紀末の音楽界で先進的な作曲家・指揮者として名を馳せていたグスタフ・マーラー(1860‐1911)であることが明かされています  

 

     

 

この展覧会では、①クリムトとその家族、②修業時代と劇場装飾、③私生活、④ウィーンと日本1900、⑤ウィーン分離派、⑥風景画、⑦肖像画、⑧生命の円環 という区分けにより展示されています クリムトがいかに多種類の絵画を描いていたかが俯瞰できます

 

     

 

ところで、「ウィーン分離派会館」で思い出すことがあります 1986年4月~5月のゴールデンウィークの時、モーツアルトの墓参りをするいう名目でオーストリアに行ったのですが、ウィーン空港から市内のホテルに行く途中、頭が金ピカのこの建物が目に入りました この時は何の知識もなく、どこかの新興宗教の総本山かも、と思っていました その後、これがクリムトなどに深いゆかりの深い建物であることを知り、「あの時、知っていれば訪ねたのになあ」と悔しい思いをしました。ついでに言えば、旅行から帰ってきて新聞やテレビを観たら、旅行中にチェルノブイリ原発事故が起こり、ヨーロッパ諸国を巻き込んで大変な騒ぎになっていることを知りました オーストリアの新聞やテレビは見なかったので全然気が付きませんでした この時ほど「知らないことほど怖いものはない」と思ったことはありません

 

     

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ミシェル・マリー監督「クリムト エゴン・シーレとウィーン黄金時代」を観る ~ ベートーヴェン、モーツアルト、マーラー、シュトラウス等 ウィーンに所縁のある作曲家の音楽がふんだんに流れる

2019年06月27日 07時08分28秒 | 日記

27日(木)。わが家に来てから今日で1728日目を迎え、トランプ米大統領のメラニア夫人は25日、自身のツイッターで、政権の「顔」となる新しいホワイトハウス報道官に、メラニア氏の広報担当ステファニー・グリシャム氏が就くと発表した というニュースを見て感想を述べるモコタロです

 

     

      なぜ夫人が発表するんだ? トランプ政権の広報体制って かなりいい加減じゃね?

 

         

 

昨日、夕食に「ニラのスタミナ丼」「冷奴」「生野菜サラダ」「トマトとレタスの卵スープ」を作りました 「すた丼」は久しぶりに作りましたが、とても美味しいです 冷奴にはトロロとミョウガと鰹節が載っています

 

     

 

         

 

昨日、シネスイッチ銀座でミシェル・マリー監督による2018年イタリア映画「クリムト  エゴン・シーレとウィーン黄金時代」(90分)を観ました

この映画は、19世紀末のオーストリア・ウィーンを代表する画家グスタフ・クリムトとエゴン・シーレの没後100年に合わせて製作されたドキュメンタリーです 官能的かつ退廃的な匂いを感じさせる作品を残したグスタフ・クリムトと、彼から強い影響を受けながらも独自の表現を追求したエゴン・シーレの作品群を、様々な映像表現で紹介し、彼らの活躍した時代や二人の作品の魅力を紐解いていきます イタリアの新進俳優ロレンツォ・リケルミーがナビゲーターを務め、日本語版ナレーションを柄本佑が担当しています

 

     

 

この映画の冒頭シーンで モーツアルトの歌劇「ドン・ジョバンニ」序曲が衝撃的に流れます そして、クリムトやエゴン・シーレの絵画や彼らの写真を紹介する映像のバックには、グスタフ・マーラー「交響曲第9番」の第4楽章「アダージョ」、同「第5番」の第4楽章「アダージェット」、リヒャルト・シュトラウスの歌劇「ばらの騎士」のワルツ、同・歌劇「サロメ」の音楽、ヨハン・シュトラウス2世のワルツ「美しき青きドナウ」、同「南国のバラ」、ベートーヴェン「交響曲第9番」の第4楽章、同「エリーゼのために」、同「ピアノ・ソナタ”月光”」、シューベルト「弦楽四重奏曲」、クライスラー「美しきロスマリン」、シェーンベルク「清められた夜」、ワーグナーの舞台神聖祝典劇「パルジファル」第1幕への前奏曲などが流れます そして、終盤ではモーツアルトの「レクイエム」の「ラクリモーサ」が流れます 言うまでもなく、この映画で使われているクラシック音楽はすべて何らかの形でウィーンに所縁のある作曲家の作品です

これらの音楽を聴きながら映像を観ていると、20世紀末のウィーンは 音楽と美術が混然一体となって黄金時代を築き上げていたのだということが分かります

これで予習が出来たので、次は東京都美術館で開催中の「クリムト展」を観に行きたいと思います

 

     

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ペンデレツキ ✕ 庄司紗矢香 ✕ 東京都交響楽団でペンデレツキ「ヴァイオリン協奏曲第2番」、ベートーヴェン「交響曲第7番」他を聴く ~ 都響第880回定期演奏会(Bシリーズ)

2019年06月26日 07時19分26秒 | 日記

26日(水)。わが家に来てから今日で1727日目を迎え、トランプ米大統領はホワイトハウスで記者団に、北朝鮮の金正恩氏からの親書がトランプ氏の誕生を祝うものだったとし、金正恩氏あてに返信の親書を送ったと語った というニュースを見てトランプの親書の内容を推測するモコタロです

 

     

       金ちゃん バースデーカードありがとう おれ本当の友達がいないから嬉しかったよ

 

         

 

昨日、夕食に「アボカドと鶏ももの塩だれバター炒め」「まぐろの山掛け」「生野菜サラダと生ハムのサラダ」「モヤシ豚汁」を作りました 「アドカド~」は崩れやすいので熱加減が難しいです

 

     

 

         

 

昨夕、東京都交響楽団の第880回定期演奏会Bプロを聴きました プログラムは①ペンデレツキ「平和のための前奏曲」、②同「ヴァイオリン協奏曲第2番”メタモルフォーゼン”」、③ベートーヴェン「交響曲第7番イ長調」です    ①の指揮は急きょ代演となったマチェイ・トヴォレク、②ヴァイオリン独奏は庄司紗矢香、②と③の指揮はクシシュトフ・ペンデレツキです

クシシュトフ・ペンデレツキは1933年 ポーランド生まれ(今年86歳)の作曲家です  日本では「広島の犠牲者に捧げる哀歌」で多くの人々に知られています 作曲家としての顔のほか、毎年5月の連休に開かれる「ラ・フォル・ジュルネ音楽祭」に毎年のように来日して演奏しているポーランドの「シンフォニア・ヴァルソヴィア」の音楽監督に就任(1997年)、2003年以降は芸術監督を兼任しており、指揮者としての顔も持っています

1曲目はペンデレツキ「平和のための前奏曲」です この曲は、第二次世界大戦の始まり(1939年9月1日)から70年という節目に当たる2009年に委嘱された作品で、同年9月1日にクラクフで、ワレリー・ゲルギエフ指揮ワールド・オーケストラ・フォー・ピース2009により初演されました

事前に配布された「謹告」によると、「(作曲者本人から)高齢に伴う体力的な問題から本番における全曲指揮が困難であるとの申し出を受け、ペンデレツキ作曲『平和のための前奏曲』のみ、アシスタントとして同行している指揮者マチェイ・トヴォレクが指揮を務めることになりました」ということです プログラムを見ると、この曲の演奏時間は5分、2曲目のヴァイオリン協奏曲が40分、ベートーヴェンの第7番が38分と表示されています。つまりペンデレツキ氏は5分の自作の指揮だけ代演を立て、後の2曲を振るというのです これが自作は2曲とも自分で振るが、ベートーヴェンは代演を立てるというのなら理屈は分かるような気がするのですが、どうもよく理解できません よほど5分の曲が体力を使うのでしょうか

ホルン、トランペット、トロンボーン、テューバといった金管楽器とティンパニ、大太鼓、シンバルなどの打楽器が所定の位置に着きます マチェイ・トヴォレクの指揮で冒頭のファンファーレが会場に鳴り響きます。その後はカノンが演奏されます 一時不穏な曲想になりますが、再び明るさを取り戻し、平和を願うかのように明るいフィナーレを迎えます 都響のブラス・セクションと打楽器セクション、なかなかやるじゃんといった感じです

2曲目はペンデレツキ「ヴァイオリン協奏曲第2番”メタモルフォーゼン”」です この曲はアンネ=ゾフィー・ムターとの出会いが契機となって、1992年から95年にかけて作曲され、1995年6月24日にライプツィヒで、アンネ=ゾフィー・ムターの独奏、マリス・ヤンソンス指揮MDR交響楽団によって初演されました

オケは左から第1ヴァイオリン、第2ヴァイオリン、チェロ、ヴィオラ、その後ろにコントラバスという編成。コンマスは矢部達哉です 「メタモルフォーゼン」とは「変容」のことで、単一楽章40分の中で曲が次々と変容していきます 白のシンプルな衣装の庄司紗矢香がペンデレツキとともに登場し、さっそく演奏に入ります 後半に長大なカデンツァがありますが、庄司紗矢香は超絶技巧を駆使して正面から対峙します 曲全体としては重苦しさを感じる曲想です。独奏ヴァイオリンはほぼ鳴りっぱなしですが、庄司紗矢香の集中力は終始途切れず、表情豊かにストラディバリウスの美しい音色を会場の隅々まで届けました

ソリストはアンコールにバッハの「無伴奏ヴァイオリン・ソナタ第3番」から第3楽章「ラルゴ」をしみじみと演奏、聴衆のクールダウンを図りました

 

     


プログラム後半はベートーヴェン「交響曲第7番イ長調」です この曲はルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェン(1770-1827)が1811年から13年にかけて作曲し、1813年12月8日にウィーンで初演されました 第1楽章「ポコ・ソステヌート~ヴィヴァーチェ」、第2楽章「アレグレット」、第3楽章「プレスト」、第4楽章「アレグロ・コン・ブリオ」の4楽章から成ります

ペンデレツキの指揮で第1楽章に入りますが、テンポは速すぎず 遅すぎず、極めて中庸です   この楽章の後半を聴いていると、どうしても「のだめカンタービレ」を思い出してしまいます   都響は弦楽器が優れているとはよく言われることですが、それが良く表れたのは第2楽章でした   葬送行進曲風の曲想ですが、ヴァイオリン、ヴィオラ、チェロ、コントラバスすべてのアンサンブルがとても美しく響きました   第3楽章に入ると、今度は木管と金管のアンサンブルが美しく響きました   この曲の白眉は第4楽章です。ワーグナーがこの曲について「舞踏の聖化」と呼んだように、激しいリズムが曲に推進力をもたらします    ペンデレツキはこの楽章ではテンポを一気に上げます   私がこの曲で一番好きなところは、この楽章の終盤でチェロとコントラバスがうねる様な演奏を繰り広げるところです    バランス感覚ゼロの指揮者だとまったく低弦のメロディーが浮かんでこないのですが、さすがは作曲家であり指揮者でもあるペンデレツキは しっかりとバスを強調し全体のバランスを取ります   とても86歳の人の指揮とは思えない矍鑠とした指揮ぶりでした

満場の拍手にカーテンコールが繰り返されますが、最後にペンデレツキは譜面台のスコアブックを持ち上げ、「拍手はベートーヴェンに」と言いたげな表情を見せ、拍手の中、それを抱えて舞台袖に引き上げました   とても良いコンサートでした

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ボローニャ歌劇場来日公演、ロッシーニ「セヴィリアの理髪師」を観る ~ アントニーノ・シラクーザ、セレーナ・マルフィ、ロベルト・デ・カンディア、マルコ・フィリッポ・ロマーノにブラボー!

2019年06月25日 07時10分31秒 | 日記

25日(火)。わが家に来てから今日で1726日目を迎え、北朝鮮の朝鮮中央通信は23日、金正恩朝鮮労働党委員長に米国のトランプ大統領から親書が送られてきたが、正恩氏は「立派な内容が盛り込まれている」と評価したと報じた という記事を見て 手紙の内容を想像するモコタロです

 

     

               「金ちゃん  俺たち独裁者同士で気が合うね  またどこかで飲もうよ」トランプより

     

         

 

昨日は涼かったので、夕食に「クリームシチュー」と「生野菜と生ハムのサラダ」を作りました シチューは豚ブロック肉と野菜です。胡椒を振って食べると美味しいです

 

     

 

         

 

昨日、渋谷のオーチャードホールでボローニャ歌劇場来日公演、ロッシーニ「セヴィリアの理髪師」を観ました 出演は、アルマヴィーヴァ伯爵=アントニーノ・シラグーザ、フィガロ=ロベルト・デ・カンディア、ロジーナ=セレーナ・マルフィ、ドン・バルトロ=マルコ・フィリッポ・ロマーノ、ドン・バジジオ=アンドレア・コンツェッティ、ベルタ=ラウラ・ケリーチほか。管弦楽・合唱=ボローニャ歌劇場管弦楽団・合唱団、指揮=フェデリコ・サンティ、演出=フェデリコ・グラッツィ―二です

そもそも、私がこの公演のチケットを買おうと思ったのは、ロジーナを歌うセレーナ・マルフィを生で見て聴きたいからです METライブビューイング2016-17シーズンのうち2016年10月22日に米ニューヨークのメトロポリタン歌劇場で上演されたモーツアルト「ドン・ジョバンニ」でツェルリーナを歌った時の映像を観て、すっかりファンになりました セレーナ・マルフィはイタリアのナポリ生まれで、サンタ・チェチーリア音楽院で学び、2009年にチューリヒ歌劇場でサリエーリ「トロフォー二オの洞窟」でオペラデビュー。以後、パリ・オペラ座、ウィーン国立歌劇場、ミラノ・スカラ座、英ロイヤル・オペラなどに出演、METには2014年エド・デ・ワールト指揮「フィガロの結婚」のケルビーノ役でデビューしました

イタリア、シチリア島出身のアントニーノ・シラグーザは何度か聴きました 印象深いのは2011年9月24日のボローニャ歌劇場来日公演のベッリーニ「清教徒」です 声帯の異常により来日不能となったフアン・ディエゴ・フローレスに代わってアルトゥーロを歌いました この年は3月に起きた東日本大震災と東電の原発事故の影響で、ヨナス・カウフマンも来日せず、同じ年に来日したメトロポリタン歌劇場でも、アンナ・ネトレプコはじめ有力な歌手が来日しませんでした 私もフローレスとネトレプコでは悔しい思いをしました なお、シラクーザは新国立オペラでも「セヴィリアの理髪師」のアルマヴィーヴァ伯爵を歌っており、これも聴きました 有料プログラムに掲載のインタビューによると、シラクーザは「アルマヴィーヴァ伯爵」を340回も歌ったそうで、日本だけでも十数回歌ったということです あらまぁビヴァ・イタリアと叫びたくなります。息子の学校で「お父さんの職業について」という宿題が出た時、「僕の父はセヴィリアの理髪師をしています」と書いたそうです。”利発”なお子さんですね

ロベルト・デ・カンディアはイタリア南部プーリア州の出身で、1999年に新国立オペラで「マノン・レスコー」のレスコーを歌って以来、来日が多くなっています 最近では、昨年11月に新国立劇場で「ファルスタッフ」のタイトルロールを歌い、喝さいを浴びました

 

     

 

「セヴィリアの理髪師」は、ジョアッキーノ・ロッシーニ(1792-1868)が1816年に作曲した2幕4場からなる喜劇オペラです

原作の戯曲はフランスの作家ボーマルシェにより1775年に書かれました 「セヴィリアの理髪師」はモーツアルトが1786年にオペラ化した「フィガロの結婚」の登場人物たちの若い頃が描かれています 時系列で言うと、モーツアルトの作曲から30年後にロッシーニが作曲したという関係になります この2作品は、後に書かれた「罪ある母」と合わせて「ボーマルシェ3部作」と言われています

舞台はスペインのセヴィリア。アルマヴィーヴァ伯爵はプラドで見かけた娘ロジーナに一目ぼれし、パルコニー下でセレナードを歌うが、あえなく失敗する そこへ”町の何でも屋”フィガロが登場する。彼は伯爵に、ロジーナの後見人の医師バルトロが彼女を妻にしようと目論んでいることを告げる 伯爵は窓辺に現れたロジーナに、正体を隠して貧乏な学生のリンドーロと名乗る そしてフィガロに、礼金をはずむから手を貸してくれと頼む。ロジーナはリンドーロとの結婚に希望を抱く 音楽教師バジリオは、バルトロの恋のライバルとなる伯爵の中傷を流そうと提案する そこに酔いどれ兵士に変装した伯爵が乱入する。しかし、騒ぎすぎたため軍隊がやってきて大騒ぎになる(以上、第1幕)

伯爵がバジリオの弟子に化けてバルトロ邸にやってくるが、変装がばれて追い出されてしまう さらに、バルトロはロジーナに「リンドーロはお前を伯爵に売るつもりだ」と嘘を吹き込み、落胆した彼女はバルトロとの結婚を承諾してしまう 嵐の夜、フィガロとリンドーロに扮した伯爵はロジーナの部屋に忍び込む。そして伯爵がリンドーロは自分だと正体を明かすとロジーナは大感激する 2人はバジリオから取り上げた書類に署名し、結婚が成立する バルトロは兵士を連れてくるが、伯爵は無駄な抵抗を止めるように命令する。最後はバルトロも諦め、皆で2人を祝福して幕が降りる(以上、第2幕)

 

     

 

自席は1階9列13番、センターブロック左通路側です 9列といっても、オーケストラ・ピットが7列までを占めているので、実質的に2列目です。かなり理想に近い席です セレーナ・マルフィ―を見て聴くために根性で押さえました

指揮者フェデリコ・サンティが指揮台に上がり「序曲」が演奏されます この序曲は旧作「パルミラのアウレリアーノ」からの転用ですが、まるで「セヴィリアの理髪師」の内容を凝縮したかのように軽快で、ロッシーニ・クレシェンドの魅力に満ちた音楽です この演奏を聴いただけでも、このオーケストラが極めて優れていることが分かります。とくに弦楽のカンタービレがとても美しく響きました

幕が開くと、極めてシンプルで原色を強調した舞台が現われます

第1幕での聴きどころは、まずアルマヴィーヴァ伯爵がロジーナの部屋の窓辺の下で歌う「もしも私の名を知りたければ」です シラクーザは自らギターを弾いて情感豊かにカンツォーネを歌います

次にフィガロが登場し、自己紹介のアリア「町の何でも屋に道を開けろ」がロベルト・デ・カンディアによって威勢よく歌われます このフィガロは存在感があります

そして、いよいよロジーナの登場です セレーナ・マルフィはカヴァティーナ「今の歌声は」を魅力的な深いメゾソプラノで歌い上げます 歌は申し分ないのですが、鬘のような重めのヘアスタイルとポップ調の軽めの衣装がアンバランスに感じ、本人に可哀そうな気がしました 彼女の”素材”を活かしたナチュナルなヘアスタイルと衣装が似合うように思います

次の聴きどころは、ドン・バジリオのアリア「陰口はそよ風のように」です アルマヴィーヴァ伯爵は悪い奴だという噂をフェイクニュースとして広めようというアリアですが、フランケンシュタインのような容貌にメイキャップしたアンドレア・コンツェッティがドスの効いた声で歌うと、噂が次第に力を増して伯爵が致命的な打撃を受けるような気になります

そして、バルトロのアリア「私のような医者に向かって」がマルコ・フィリッポ・ロマーノによって早口で畳みかけるように歌われます これには聴いている方が舌を巻きます

 

     

 

第2幕での聴きどころは、まず、酔っ払いの真似をした伯爵とバルトロによる二重唱「平和と喜びがあなたにありますように」です このシーンはいつ見ても笑ってしまいます

次いで、ロジーナが歌のレッスンで歌うアリア「愛に燃える心」をセレーナ・マルフィが技巧を凝らして情熱的に歌い上げます

女中のベルタが唯一歌う「年寄りは妻を求め」は年老いた女性の悲哀を歌った短いアリアですが、ラウラ・ケリーチは滑稽ながらも寂し気に歌いました

このオペラの最大の聴きどころは、フィナーレ直前の伯爵のアリア「もう逆らうのはやめろ」です ロッシーニ・テノールのシラクーザは裏切りません 超絶技巧の長い長いアリアを見事にクリアします 会場は拍手喝采、阿鼻叫喚、千客万来(何のこっちゃ)で、拍手とブラボーの嵐が鳴り止みません ついに、「今日は東京での最終公演だからやっちゃおうか」とばかりにアンコールに応えます シラクーザは日本語で「ちょっと待って」と言って、息を整え、もう一度、超絶技巧アリアを歌いました 途中、舞台脇でピーナッツ(?)を食べながら聴いていたフィガロ役のカンディアが客席に向かって手拍子をリードしたので、聴衆は「ウィーン・フィルのラデツキー行進曲かい」と思いながらも、その気になって手拍子に打ち興じました 2回目を歌い終わったシラクーザはその場にへたり込んで犬のようになっていました 2日後の福岡公演大丈夫かな、と私は密かに心配したのでございました

オペラはその後、フィナーレに入ります 合唱付きのアンサンブルで「かくも幸せな結び付きを」が全員で歌われ、楽しい楽しいオペラの幕を閉じました

この日の公演はセレーナ・マルフィが聴ければ良いと思っていましたが、主役級の歌手陣が揃って好調で、オーケストラの演奏も良かったので、全体的には満足の公演でした

セレーナ・マルフィはモーツアルトやロッシーニを得意としていますが、現在レパートリーを広げつつあるようです プログラム掲載のインタビューで「いまロッシーニやモーツアルトを歌う機会が多いですが、近い将来,ドニゼッティ、あるいは『ウェルテル』『カルメン』などフランス・オペラも歌いたいと思っています 歌い始めたころと比べて声が発展し、大きく力強くなりましたからね でも、ロッシーニやモーツアルトは歌い続けますよ」と語っています。個人的な希望を言うと、まず今以上に演技力(とくに自分が演技をしていない時の演技力)を磨いた上で、ロジーナ路線ではモーツアルト「フィガロの結婚」のスザンナを歌って欲しいと思います ウィットに富んだ魅力的なスザンナになるでしょう その後、ビゼーの「カルメン」を歌って欲しいと思います 魅惑的な世界最強のカルメンになると思います

 

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荻原浩著「海の見える理髪店」を読む ~ 直木賞に相応しい6つの家族の感動の物語

2019年06月24日 07時23分46秒 | 日記

24日(月)。わが家に来てから今日で1725日目を迎え、横浜地検による身柄の収容を拒んで、何度も着替えた上に散髪して外見を変えて逃走を続けた小林誠容疑者が、神奈川県横須賀市のアパートの一室で逮捕された というニュースを見て感想を述べるモコタロです

 

     

       着替えようが散髪しようが 監視カメラを潜り抜けることはできない社会なんだな

 

         

 

昨日、息子が昼食に「盛岡冷麺」を作ってくれました 具が多くて麺が見えませんが、涼しくて美味しかったです 一緒に食べた後、息子は山形に向かいました

 

     

 

         

 

荻原浩著「海の見える理髪店」(集英社文庫)を読み終わりました 荻原浩は1956年埼玉県生まれ。成城大学卒業後、コピーライターを経て、97年「オロロ畑でつかまえて」で第10回小説すばる新人賞を、2005年「明日の記憶」で第18回山本周五郎賞を受賞 2016年に本書「海の見える理髪店」で第155回直木賞を受賞しています

 

     

 

この本は、「海の見える理髪店」「いつか来た道」「遠くから来た手紙」「空は今日もスカイ」「時のない時計」「成人式」の6つの短編小説から成ります

表題作はタイトルのとおり、海の見える理髪店が舞台。有名人も通うという理髪店の評判を聞きつけて「僕」ははるばる訪ねてくる 店主は意外に饒舌で、昔話をし始める。そしていきなり、昔 人を殺したことを語り始める なぜか店主は「僕」の頭の傷の原因を知っていた。その「僕」は評判が高いというだけの理由でこの理髪店に来たのではなかった 二人は初顔合わせだったが、他人ではなかった

「いつか来た道」は、母子の物語。杏子は母との折り合いが悪く、16年前に家を出たまま一度も帰っていなかったが、弟からせっつかれて実家を訪ねることになった 元美術教師で独自の美意識を持ち、子どもに厳しかった母の性癖は変わっていなかった しかし認知症を疑われる母が抽象画に込めた意味を知り、思いを新たにする

「遠くから来た手紙」は、結婚して3年の主婦が主人公。義母とマザコン夫にうんざりして娘を連れて実家に帰った祥子に謎のメールが届く まるで昔の戦中の時候のあいさつめいた旧仮名遣いに祥子は面喰う 一方、実家に隠しておいた、若いころ夫から届いた一連の手紙を読むうちに新たな気持ちが湧いてくる

「空は今日もスカイ」は小学3年生の茜が主人公。父を亡くし母と共に親戚の家に身を寄せる茜は 居心地の悪さから海を目指して家出を決行する 途中で親の虐待から逃げて来た森島陽太に出会い一緒に行動する。行き場を失った二人を助けてくれたのはホームレスの男性だった しかし、彼は誘拐犯と間違われ警察に連れていかれる 茜や陽太の「その人はいい人です」という言葉は無視される

「時のない時計」は商店街の外れにある時計屋に 父の形見の古いブランド物の腕時計の修理の依頼にきた男の話   母親から「お父さん、見栄っ張りだったから、自分の着るものにはぱあっとお金をつかってしまう」と聞かされていたので、それなりの価値があるはずと思っていた   修理した時計を手渡し、18000円を請求した時計屋は最後に冷笑的な言葉をかける

「成人式」は15歳で事故死した娘のことがいつまでも忘れられない夫婦の物語。5年経った現在でも娘が写ったビデオを繰り返し見ているうちに、夫は妻に「このままじゃ、俺たち、だめだ」と言い、娘あてに届いた成人式用の着物のカタログに触発されて、二人そろって晴着を着て成人式に出席することを思い付く そして頭を整え 成人式用の着物を着て、冷笑的な視線を背中に感じながら式場に向かう

どれもが家族を巡る物語ですが、どの作品にも著者の主人公に向けられる温かい眼差しを感じます 最後の「成人式」は暗い話を明るくする内容で、夫婦揃って成人式に出席すると決断した後のストーリー展開は、まさに荻原節全開で思わず吹き出してしまいます

ところで、巻末の「解説」を文芸評論家の斎藤美奈子さんが執筆していますが、冒頭「荻原浩さんと私は、同じ大学の同じ学部、しかも同じ学年だったらしい」と書いています つまり、二人とも成城大学経済学部の卒業生で、荻原氏は”文科系の花形サークル”「広告研究会」、斎藤さんは”ヤサグレ者の吹きだまり”「新聞会」に所属していたとのことです

荻原浩氏は”ついに”「直木賞」を受賞したわけですが、斎藤さんが書いているように「今ごろ直木賞?遅すぎだろっ!」という感じです 一方、斎藤美奈子さんは「文章読本さん江」で小林秀雄賞を受賞するなど、文芸評論家として最前線を行く人です 文芸評論の分野で、親しみやすい文体、分かり易い文章表現において齋藤さんの右に出る人はいないと思います toraブログでは齋藤さん執筆の「文庫解説ワンダーランド」(2017)、「日本の同時代小説」(2018)=共に岩波新書=をご紹介しました 興味のある方は2017年4月11日付(文庫解説ワンダーランド)、2019年1月4日付(日本の同時代小説)のtoraブログをご参照ください

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「第6回韓国芸術総合学校&東京藝術大学 交流演奏会2019 in 東京藝大」を聴く~東京藝大、韓国音楽院とも選抜メンバーだけあって素晴らしい演奏を展開

2019年06月23日 07時55分11秒 | 日記

23日(日)。昨夕、巣鴨駅近くのT飯店で息子の「山形地震生還祝賀会」をやりました 娘が仕事休みだったので家族が揃いました

   

     

                鴨肉、鶏肉、クラゲの前菜三種盛り

 

     

                    エビチリソース  

 

     

                 白身魚と野菜の黒酢あんかけ

 

     

            生ビールで乾杯した後は、紹興酒をデキャンタで

 

     

                      青椒肉絲

 

     

     

                 合鴨ロース揚げ蒸しパン添え

 

     

                  四川風麻婆豆腐

 

     

                五目あんかけ焼きそば

初めてのお店でしたが、料理はどれもが美味しく満足でした

ということで、わが家に来てから今日で1724日目を迎え、トランプ米大統領は21日のNBCテレビのインタビューで、イランに対する攻撃計画について「状況が変化するので実行の間際まで承認することはなかった。イランとの戦争は望まない」と語った といううニュースを見て感想を述べるモコタロです

 

     

     今回 いかにトランプが気まぐれで戦争のゴーサインを出すかが 良く分かっただろ!  

 

         

 

昨日、東京藝大奏楽堂で「第6回韓国芸術総合学校&東京藝術大学  交流演奏会2019 in 東京藝大 日韓の俊英ピアニストによる華麗なる競演」を聴きました この交流演奏会は、2015年にキム・デジン韓国芸術総合学校教授と、江口玲東京藝術大学教授がジュリアード音楽院時代からの友人であったことをきっかけに始まった演奏会で、それ以来、ピアノを中心としたプログラムで開催地を交代しながら継続しているものです 今回は東京藝大が当番校となります

 

     

 

全席自由です。1階11列24番、センターブロック右通路側を押さえました ステージに向かって左サイドは、ピアニストの運指が良く見えますが、逆サイドは演奏家の顔の表情が良く読み取れます 会場は5割~6割の入りでしょうか。梅雨空の悪天候にしては、よく入ったと思います

演奏者と演奏曲目は次の通りです

①イ・チャンギュ(韓国芸術総合学校音楽院3年):ハイドン「ピアノ・ソナタ 変イ長調」

②上田実季(東京藝大修士1年):ベートーヴェン「ピアノ・ソナタ第14番嬰ハ短調”月光”」

③ムン・ジス(音楽院4年):ドビュッシー「子どもの領分」より「グラドゥス・アド・パルナッスム博士」「象の子守歌」「人形のセレナード」「ゴリウォークのケークウォーク」

④京増修史(藝大修士1年):ショパン「アンダンテ・スピアナートと華麗な大ポロネーズ」

 

     

 

⑤秋山沙穂(藝大4年):ベートーヴェン「ピアノ・ソナタ第27番ホ短調」

⑥ユ・テウン(音楽院3年):ラフマニノフ「楽興の時作品16」より「1.アンダンティーノ」「2.アレグレット」「4.プレスト」

⑦尾城杏奈(藝大4年):リスト「巡礼の年『第2年 イタリア』より「第1曲『婚礼』」、リスト「パガニーニ大練習曲集」より「第3曲『ラ・カンパネッラ』」

⑧イ・ジェユ(音楽院3年):ラヴェル「ラ・ヴァルス」

 

     

 

韓国側も日本側も、選抜されて出場した学生たちだけあって、8人とも素晴らしいパフォーマンスを見せてくれました。あえて特に印象に残った学生を選ぶとすれば、前半最後にショパン「アンダンテ~」を演奏した京増修史君と、後半最初にベートーヴェン「ソナタ27番」を演奏した秋山沙穂さんの二人でしょうか 韓国側は「技巧的で受けやすい」曲を選んでいることもあり、聴きごたえ十分な演奏が揃いました

こういう交流会は素晴らしい企画だと思います これからも両国の政治情勢に関わらずずっと継続してほしいと思います

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マイケル・チミノ監督「ディア・ハンター」を観る ~ ロシアン・ルーレットとテーマ・ミュージック=スタンリー・マイヤーズ作曲「カヴァティーナ」が印象に残る作品 / シャルル・デュトワ現職復帰?

2019年06月22日 07時24分29秒 | 日記

22日(土)。わが家に来てから今日で1723日目を迎え、北朝鮮を訪れている中国の習近平国家主席は20日夜、数万人の市民が参加するマスゲーム公演を観覧した というニュースを見て感想を述べるモコタロです

 

     

       個人無視のマスゲームでは さすがの中国も金正恩独裁者国家に かなわないだろう

     

         

 

山形に単身赴任している息子が東京出張を機に、わが家に戻ってきました 毎日自炊している関係で料理の上達が著しい息子は、昨日の夕食に「ステーキ」を焼き、「ブロッコリーのスープ」「野菜と卵サラダ」を作ってくれました 言うまでもなく、牛肉代(1枚350グラム✕3人前)は私持ちです ブロッコリーのスープは初めて食べましたが、絶品で驚きました

 

     

 

         

 

昨日の朝日朝刊 文化・文芸欄に「『音で描く物語』生んだ感性とは 指揮者シャルル・デュトワ、ベルオーズ『幻想交響曲』を語る」という見出しの記事が載っていました スイス生まれの世界的指揮者、シャルル・デュトワが先月、大阪フィルを振ってベルリオーズ「幻想交響曲」を演奏した際に朝日新聞の吉田純子編集委員がインタビューしたものです 主なデュトワの発言は次の通りです

「ベルリオーズの感性はゲーテやシェークスピア、ギリシャ悲劇から影響を受け、歴史的にも地理的にも広く開かれていた ワーグナーも神話を音楽にしたが、素材にしたのはドイツの中のできごとだけ。国際感覚は対極的だ

「N響に限らず、当時の日本の楽団は、いずこもドイツ系がベースだった。折り目正しくきっちりやることに、楽員も聴衆も『居心地の良さ』を感じていた フランス音楽が最も大切にするのは『色』。音楽にどのような光を当て、無限のプリズム、虹のグラデーションを引き出すかが鍵だが、そうした価値観をドイツ系の楽団に理解してもらうのは、実はとても難しい 彼らは人生をかけて、音楽の精神という『核』に突き進むことが使命だと訓練されているのだから

「いまのN響には、私が音楽監督をしていた頃のエスプリがしっかり残っている エスプリとは、喜びをもって音を出す、色をうみだすということ。オーケストラは、もっと多様な世界へと開かれている

シャルル・デュトワはN響との関係が深く、1996年から常任指揮者、98年から音楽監督、2003年から名誉音楽監督を務めています(現在も)。そのデュトワに関するセクハラ疑惑報道が出たのは2017年12月のことだったと思います オペラ歌手4人の女性から1985年から2010年にかけてセクハラを受けたと訴えられたというものでした その報道以後、デュトワはN響のコンサートに登場していません

5月に大阪フィルを指揮した、ということは、セクハラ疑惑が晴れたということでしょうか? 「訴えられた」というからには裁判沙汰になったと思われますが、判決でも出たのでしょうか? しかし、そのような報道は見たことはありません 個人的にはデュトワの指揮するコンサートは素晴らしいと思うし、彼に対して何の恨みもありませんが、過去の疑惑が晴れたのか晴れないのか、あやふやなままで日本のオケの指揮をしたというのは気持ちの良いものではありません あるいは世間の情報に疎い私が知らないだけなのでしょうか? どなたか真相をご存知の方がいらっしゃったら教えていただければと思います

 

         

 

昨日、池袋の新文芸坐でマイケル・チミノ監督による1978年アメリカ映画「ディア・ハンター」(184分)を観ました これはベトナム戦争で心身ともに深い傷を負った若者たちの苦悩と友情を描いた映画です

 

     

 

1960年代末、米ペンシルバニアの製鋼所で働いていたマイケル(ロバート・デ・二―ロ)、ニック(クリストファー・ウォーケン)、スティーヴン(ジョン・サベージ)たちは休日となると鹿狩りをして楽しんでいた スティーヴンとアンジェラの結婚式を兼ねた壮行会が開かれ、やがてマイケルたちは徴兵されベトナムに派兵される 彼らは戦場で再会するが、捕虜となり残酷な拷問ゲーム、ロシアン・ルーレットを強要される マイケルの機転で3人は脱出に成功するが、途中で3人はバラバラになり、スティーヴンは両足を失い軍の病院に収容され、ニックは行方不明になる 故郷に帰ったマイケルはニックを探すために陥落寸前のサイゴンに赴く。やっと探し出したニックはロシアン・ルーレットの賭けに参加する伝説のアメリカ人となっていた 薬物で意識が朦朧としているニックは、やっとマイケルを認識しようとした矢先に拳銃の引き金を引き 弾丸が頭を貫く

この映画の前半では、スティーヴンとアンジェラとの結婚式を兼ねた壮行会の歌ありダンスありの賑やかなシーンが、これでもかというくらいに延々と続きます それだけに、中盤からのベトナムでの強制された「ロシアン・ルーレット」の恐怖が対極的な世界として浮き彫りにされます 実際に自分自身がその場にいて、回転式拳銃の弾倉に弾を1発だけ込めて弾倉を回転させて引き金を引くことを想像すると、恐怖で気が狂ってしまうのではないか、と思います

この作品には、ニックが壮行会の会場で突然結婚を申し込む相手のリンダを、デビュー間もないメリル・ストリープが演じています 魅力的な女優ですが、当時は、今日ほどの大女優になるとは誰が予想できたでしょうか

この映画では、スタンリー・マイヤーズ作曲「カヴァティーナ」がジョン・ウィリアムス(スター・ウォーズの作曲者ではありません)のギターで演奏されますが、このテーマ・ミュージックが素晴らしい また、映画の序盤で、連れ立って鹿狩りから帰ってきて酒場に入り、仲間がピアノでショパンのマズルカ(多分)を弾く場面がありますが、愛する故郷をあとにして戦場に赴かなければならないマイケルたちの心情が反映されたかのような音楽で、とても印象に残るシーンです

3時間があっという間に過ぎ去りました 良い映画の条件です

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パーヴォ・ヤルヴィ ✕ ロジェ・ムラロ ✕ シンシア・ミラー ✕ NHK交響楽団でメシアン「トゥランガリラ交響曲」を聴く ~ 第1917回N響定期(Bプロ)

2019年06月21日 07時20分56秒 | 日記

21日(金)その2。 昨夕、サントリーホールでNHK交響楽団の第1917回定期演奏会(Bプロ)を聴きました プログラムはメシアン「トゥランガリラ交響曲」です 演奏はピアノ=ロジェ・ムラロ、オンド・マルトノ=シンシア・ミラー、指揮=パーヴォ・ヤルヴィです

ピアノ独奏のロジェ・ムラロは1959年リヨン生まれ。パリ国立高等音楽院でオリヴィエ・メシアンの夫人、イヴォンヌ・ロリオのクラスに入学しメシアンと出会い、作曲者本人から激賞され、メシアン弾きの第一人者として活躍するようになりました 一方、オンド・マルトノ独奏のシンシア・ミラーはイギリス出身の女性奏者ですが、世界各地のオケでメシアンのこの曲の独奏を担っています

「トゥランガリラ交響曲」は、オリヴィエ・メシアン(1908-1992)がクーセヴィツキ-財団の委嘱によりボストン交響楽団のために1946年から1948年にかけて作曲し、1949年12月2日にレナード・バーンスタイン指揮ボストン交響楽団による演奏で初演されました 委嘱者のクーセヴィツキ-はメシアンに「望むだけの楽器を使って、望むだけの長さの作品を」書くように言ったということで、通常の楽器編成に、ピアノ、チェレスタ、オンド・マルトノ、タムタム、シンバル、大太鼓などが加わった大編成オーケストラとなり、演奏時間も80分に及ぶ大曲になりました なお、トゥランガリラとはサンスクリットで「愛の歌」というような意味です

この曲は第1楽章「導入部」、第2楽章「愛の歌 第1」、第3楽章「トゥランガリラ 第1」、第4楽章「愛の歌 第2」、第5楽章「星たちの血の喜び」、第6楽章「愛の眠りの園」、第7楽章「トゥランガリラ 第2」、第8楽章「愛の展開」、第9楽章「トゥランガリラ 第3」、第10曲「終曲」の全10楽章から成ります

 

     

 

弦楽器は左から第1ヴァイオリン、第2ヴァイオリン、ヴィオラ、チェロ、その後ろにコントラバスという編成ですが、指揮者のすぐ左にピアノが、その後方にチェレスタとジュ・ドゥ・タンブル(グロッケンシュピールの仏語)が、反対の右側にはオンド・マルトノがスタンバイします オケの後方には打楽器群が左右に広がっています コンマスはミュンヘン・フィルのコンマスを務めるロレンツ・ナストゥリカ・ヘルシュコヴィチです

最初に正直に告白しておくと、私がこの曲を聴くのは生まれて初めてです CDは4000枚、LPは1500枚持っているというのに・・・・モーツアルトはCDとLP合わせて1000枚近く持っているというのに・・・・ベートーヴェン交響曲全集はフルトヴェングラー、クレンペラー、チェリビダッケ、セル、ワルター、スイトナー、ブロムシュテット、ケーゲル、コンビチュニー、クリュイタンス、ヘルシェン・・・・と10数種類も揃っているというのに・・・・メシアンは1枚も持っていません この片寄りようはどうでしょう ある曲が気に入ると、異なる演奏家のLPやCDを集めたくなる収集癖のせいです ”CDの百科事典”と言われるNAXOSのCDが売り出された時には、新発売のCDを片っ端から買い集め、カタログに掲載のCDを赤線で消していったものです 同じ曲で別の指揮者のCDを買わないで、NAXOSのCDだけをあのまま買い続けていれば、これほどの偏りは生じなかったと思います 今となっては後の祭りです

したがって早い話が、予習なしのぶっつけ本番で80分に及ぶこの曲を聴くことになったわけです 事前に「プログラム・ノート」を懸命に読み込むのはもちろんのこと、演奏中も「今どこを演奏しているのか」を確認しながらオケの発する音に耳を傾けることになります 特に、オンド・マルトノはスピーカーの前に拡声マイクが付けられているにも関わらず、音が良く聞こえないので、演奏者の指の動きを見ながら、いま鳴っている音がオンド・マルトノの音であることを確認することになります 自席が演奏者の左手の動きが見える位置なので良かったです

演奏を聴いていて、「プログラム・ノート」に書かれていた「この交響曲には4つの循環主題がある。トロンボーンの提示する重々しい『彫像の主題』、クラリネットの奏でる優しい『花の主題』、弦楽器あるいはオンド・マルトノが歌う恍惚とした『愛の主題』、そして、さまざまな響きの母体となる和音の連続である『和音の主題』。これらのモチーフが中心である」ということは、おぼろげながら分かりました

メシアンにおける適切なテンポはどの程度か よく分かりませんが、ヤルヴィは比較的速めのテンポでメリハリを付けながらサクサクと演奏を進めていったように思います 特に印象に残ったのは、ピアノ独奏のロジェ・ムラロの演奏です オケに負けない力強い演奏の一方で、第6楽章「愛の眠りの園」で示したような、煌めく星座のような弱音の魅力を活かした音楽作りがとても印象に残りました

私の課題は、次に「トゥランガリラ交響曲」を生演奏で聴く時は、事前にCDを買って予習しておくことです

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