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人生の目的は音楽だ!toraのブログ

クラシック・コンサートを聴いた感想、映画を観た感想、お薦め本等について毎日、その翌日朝に書き綴っています。

MINAMIさんシベリウス国際コンクール第2位に入賞 / METライブビューイングでモーツアルト「フィガロの結婚」を観る ~ 最高の歌手陣と高速テンポによる演奏と回転舞台による迅速な舞台転換

2025年05月31日 00時20分27秒 | 日記

31日(土)。月日の流れは速いもので、今日で5月も最終日を迎えたので、恒例により5月の3つの目標の達成状況をご報告します ①クラシックコンサート=18回、②映画鑑賞=5本、③読書=5冊、合計28でした コンサートはここ数か月こんなペースです

さて、「ぶらあぼ ONLINE」によると、ヘルシンキで5月19日から開催されていた「第13回シベリウス国際ヴァイオリンコンクール」は、27日~29日の3日間にわたるファイナル(6名)の審査を終え、現地時間29日深夜に表彰式で結果が発表され、吉田南(MINAMI)さんが第2位に入賞、併せてシベリウス「ヴァイオリン協奏曲」最優秀演奏賞を受賞しました MINAMIさんを陰で密かに応援しているファンの一人としてすごく嬉しいです 既報の通り、MINAMIさんは今年秋からベルリン・フィルの第1ヴァイオリン奏者としても活躍することが決まっています 現状に甘んじることなく、次々と新しいことにチャレンジするMINAMIさんを これからも応援したいと思います

コンクールといえば、現在ベルギーのブリュッセルで開催されているエリザベート王妃国際コンクール・ピアノ部門のファイナルはどうなっているのでしょうか

ということで、わが家に来てから今日で3791日目を迎え、米国際貿易裁判所がトランプ関税の大部分を違法とした一審判決をめぐって、二審にあたる米連邦巡回区控訴裁判所が29日、判決を一時的に停止することを命じたことから、関税の差し止め命令も当面は発効せず、関税の徴収は続く見通しとなった  というニュースを見て感想を述べるモコタロです

圧力か? 忖度か? 民主主義の基本原則”三権分立”がトランプ政権下で崩壊したことを示す事例だ

         

昨日、夕食に隔週金曜日のローテにより「鶏のガーリックチーズ煮、スパゲッティ添え」を作りました 今回もガーリックが利いて美味しく出来ました

         

昨日、新宿ピカデリーでMETライブビューイング、モーツアルト「フィガロの結婚」を観ました これは今年4月26日に米ニューヨークのメトロポリタン歌劇場で上演されたオペラのライブ録画映像です キャストはアルマヴィーヴァ伯爵=ジョシュア・ホプキンス、伯爵夫人=フェデリカ・ロンバルディ、フィガロ=マイケル・ムスエル、スザンナ=オルガ・クルチンスカ、ケルビーノ=サン・リー・ピアース、アントニオ=ポール・コローナ、バルバリーナ=メイ・グェイ・ジャン、マルチェリーナ=エリザベス・ビショップ、バルトロ=マウリツィオ・ムラーロ。管弦楽=メトロポリタン歌劇場管弦楽団、合唱=メトロポリタン歌劇場合唱団、指揮=ヨアナ・マルヴィッツ、演出=リチャード・エアです

開演前に、ロシアがウクライナに侵攻した2022年に上演したMET公演で、出演者全員でウクライナ国歌を合唱する映像が流れ、「METは常にウクライナを支援する」というテロップが表示されました プーチン・ロシアがウクライナへの攻撃を激化させる一方で、トランプ政権が世界中に混乱をもたらし、教育・文化にも介入する中、米国の芸術団体としてウクライナへの連帯の姿勢を明確に表明するMETは素晴らしいと思います

  

「フィガロの結婚」K.492はウォルフガング・アマデウス・モーツァルト(1756-1791)が1785年から86年にかけて作曲、1786年にウィーンのブルク劇場で初演された4幕からかるオペラ・ブッファです

物語の舞台は18世紀のスペインのセヴィリャ。アルマヴィーヴァ伯爵の従僕フィガロは、小間使いのスザンナとの結婚を控えて幸せいっぱい しかしスザンナは、伯爵が彼女に横恋慕し、以前廃止した初夜権を復活させようと目論んでいると打ち明ける 怒り心頭のフィガロは、冷淡な夫に悩んでいる伯爵夫人の助けを借りて、伯爵に一泡吹かせる計画を練るが、フィガロに想いを寄せる女中頭のマルチェリーナや小姓ケルビーノらがからんで大騒動に発展する

リチャード・エアの演出は舞台を1930年代のスペインに置き換えています したがって、登場人物の服装はスーツやドレスといった現代風です 重厚感のある落ち着いたステージ造りで、回転舞台で場面転換を行います

指揮を執るヨアナ・マルヴィッツは1986年ドイツのヒルデスハイム生まれ ハノーファー音楽演劇大学で研鑽を摘む。2020年にザルツブルク音楽祭で「コジ・ファン・トゥッテ」でデビュー 23年/24年シーズンからベルリン・コンツェルトハウス管弦楽団の首席指揮者兼芸術監督を務めている 今回がMETデビューとなる

マルヴィッツの指揮で「序曲」の演奏に入りますが、高速テンポによる軽快な演奏はオペラ・ブッファ「フィガロの結婚」のハチャメチャな楽しさを先取りするかのように疾走します

マルヴィッツによる高速テンポは全体を通して維持され、回転舞台による迅速な舞台転換と相まって、ストーリーの進行にスピード感を与え、楽しさを倍増させます

歌手陣は総じて絶好調でしたが、実は この日出演の歌手でこれまで聴いたことがあるのはバルトロ役のマウリツィオ・ムラーロだけで、他の歌手陣はまったく初めて聴きました

アルマヴィーヴァ伯爵役のジョシュア・ホプキンスはカナダ出身のバリトンです 2002年にフリヤン・ガヤレ国際声楽コンクールで優勝以来、数々の受賞を誇る 歌唱力はもちろんのこと、卓越した演技力の持ち主で、伯爵のいやらしさが良く出ていて存在感抜群でした

伯爵夫人役のフェデリカ・ロンバルディは1989年イタリア出身のリリック・ソプラノです ザルツブルク音楽祭の若手歌手プロジェクトやミラノ・スカラ座アカデミーで学ぶ。METでは「ドン・ジョバンニ」のドンナ・アンナやドンナ・エルヴィーラを歌っています リリカルで美しい歌声とスター性のある容姿は伯爵夫人そのもので、聴衆を魅了しました

フィガロ役のマイケル・ムスエルは米テキサス州出身のバスバリトンです ヒューストン・グランド・オペラ・スタジオ等で学び、2009年にダラスのオペラ・ギルド声楽コンクール第1位 METには「シンデレラ」や「マルコムX]に出演し好評を博しました 魅力のある声質で、声もよく通り、存在感がありました

スザンナ役のオルガ・クルチンスカは1990年ウクライナ生まれのリリック・ソプラノです キーウのグリエール音楽大学で楽理を、ピョートル・チャイコフスキー国立音楽アカデミーで声楽を学ぶ。ボリショイ劇場に所属後、世界の主要歌劇場や音楽祭に進出しました このオペラで一番出番の多いスザンナをリリカルな歌唱と卓越した演技力でこなし、大喝采を浴びました

ケルビーノ役のサン=リー・ピアーズはニューヨーク生まれの中国系アメリカ人のメゾソプラノです イーストマン音楽学校及びバード音楽院で学ぶ。2024年のドミンゴ主宰「オペラリア」で3位に入賞しました 「恋とはどんなものかしら」「自分で自分が分からない」は、恋に恋する少年の不安定な心の動きを見事に表現していました

全曲聴き終わって、脇役の歌手たちを含めて何と素晴らしい歌手陣だろうと感嘆しました

オペラブッファ(コミカルなオペラ)で一番重要なのは、歌手がふざけて歌ったり演じたりせず、終始 真面目に歌い演じるということです そうすることによって本当の笑いが生じます その点、本公演の出演者は誰もが真面目に歌い演じていて、思わずクスリと笑ってしまう場面が少なくありませんでした

本公演の成功は、歌手陣の歌唱力と演技力に負うところが大きいですが、マルヴィッツの高速テンポによる演奏と、回転舞台によるスムーズな場面転換が、オペラ全体に流麗な流れを作り出していたことも大きいと思います METオペラは極めて水準が高いことをあらためて感じたライブビューイングでした

METライブビューイング、モーツアルト「フィガロの結婚」は新宿ピカデリー他で6月5日まで(東劇のみ6月12日まで)上映されます

本日、toraブログのトータルアクセス数が970万ページビューを超えました これもひとえに普段からご訪問くださっているフォロワーの皆様のお陰と感謝しております gooブログ閉鎖まであと4か月。それまでに目標の1,000万PVを達成すべく毎日休まず書き続けて参りますので、これからもご訪問くださるようお願いいたします

【忘備録】5月31日現在のtoraブログのアクセス数など

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シフのモーツアルト / エレネ・ナベリア二監督ジョージア映画「ブラックバード、ブラックベリー、私は私」を観る ~ 48歳で新しい人生を切り拓こうとする独身中年女性の葛藤を描く

2025年05月30日 00時01分50秒 | 日記

30日(金)。昨夜8時過ぎに室内で洗濯物を干している時、BGM代わりに聴いていたNHKーFMからモーツアルト「ピアノ協奏曲第20番 ニ短調 K.466」の第3楽章が流れてきました 誰が弾いているのか分かりませんでしたが、「おやっ?」と思ったのはカデンツァです モーツアルトの歌劇「ドン・ジョバンニ」の序曲の一部が採用されていたのです なかなか面白い趣向だなーと思いましたが、なぜ「ドン・ジョバンニ」なのか疑問に思いました やがて演奏が終わって 解説があり、アンドラーシュ・シフ(1953年~。ハンガリー出身)の指揮&ピアノによる来日公演での演奏であること、その曲の前に「ドン・ジョバンニ」序曲が演奏されたことが分かりました これで私の疑問は解消されました

モーツアルト(1756-1791)はウィーンに進出してからフリーランスの音楽家として、予約演奏会を開いて生計を立てていたわけですが、「ピアノ協奏曲」では指揮をしながらピアノを弾いていました(弾き振り)。自作曲なので、カデンツァは即興で思いつくまま演奏したのではないかと想像しますが、「第20番 K.466」のカデンツァに「ドン・ジョバン二」の音楽を採用することはなかったでしょう なぜなら、「K.466」が作曲されたのは1785年であるのに対し、「ドン・ジョバン二」はその2年後の1787年の作曲だからです いずれにしても、カデンツァは演奏者の個性が現われるので興味深いものがあります

ということで、わが家に来てから今日で3790日目を迎え、アメリカのトランプ政権がハーバード大学への政府支援を削減するなど圧力を続けている中、末息子バロン氏(19)のハーバード大学を含む名門私立大学群「アイビーリーグ」不合格への報復だという疑惑がSNSを通じて急速に拡散している  というニュースを見て感想を述べるモコタロです

   

   単なる噂に過ぎないと思うけど ”報復のトランプ”ならやりかねないと思うのはおいらだけ?

         

昨日、夕食に「茄子と豚肉の中華風煮込み」「生野菜と生ハムとビーンズのサラダ」「エノキダケの味噌汁」を作りました 「茄子と~」は新聞の「料理メモ」を見て作りましたが、何とか美味しくできました

         

昨日、新文芸坐でエレネ・ナベリア二監督による2023年製作ジョージア・スイス合作映画「ブラックバード、ブラックベリー、私は私」(110分)を観ました

東ヨーロッパのジョージアの小さな村に住む48歳の寡黙な女性エテロ(エカ・チャブレイシュビリ)は、今まで一度も結婚したいと思ったことがない 両親と兄を亡くし、日用品店を営みながら一人で生きてきた彼女は、自分でブラックベリーを摘んで作るジャムと同じくらい現在の暮らしが気に入っている しかし、彼女が独身でいることは村の女性たちの噂の的になっていた そんなある日、ブラックベリー摘みの最中に崖から足を踏み外し、九死に一生を得る その時に死を意識したエテロは、突発的に人生で初めて出入りの業者ムルマン(テミコ・チチナゼ)と肉体関係を持つ。それ以来、彼女は不安と希望を抱いて日々を送るようになるが、最後に まったく予想外のサプライズが待っていた

この映画はジョージアの新進女性作家タムタ・メラシュビリの小説を原作に、新しい人生を踏み出そうとする中年女性の葛藤を描いたドラマです

エテロが48歳まで結婚せずに一人で生活しているのは、母親が早死にし 父親と兄が厳格で、エテロに男を近づけなかったからであることが分かります 近所の既婚女性たちは、「独身でいるのは良くない」とか「私は子どもを産んで国家に貢献している」とか言ってエテロを非難しますが、彼女は負け惜しみではなく「ひとりでいるのが気楽でいい」と気にも止めません   ムルマン(妻帯者)から一緒にトルコに行って暮らそうと誘われても断ります。彼女はあくまでも自立した女性であり、どこまでも自分の意思で行動すると決めているのです

映画のラストは、自分が子宮がんではないかと疑い、トビリシの病院で腹部のエコー検査を受けて、医師から「48歳にしては異例です」と言われ、カフェでエコーの写真を見ながら嗚咽するシーンです その時、彼女だけに聴こえたのは村でブラックベリーを摘んでいた時に聴こえていた鳥の鳴き声でした その時のエテロを演じたエカ・チャブレイシュビリの泣いて嗚咽してのか笑っているのか、微妙な顔の表情が「まさかこんな皮肉な結果になるなんて」といった戸惑いと幸福感が交錯していて、思わずニヤリとしてしまいました さて、エテロはこれからどうするのか・・・一人だけの人生を満喫するのか、それとも まったく想定外の人生を送るのか・・・どちらにせよ、エテロを応援したくなりました

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ルキノ・ヴィスコンティ監督「ベニスに死す」を音楽に焦点を当てて鑑賞する ~ マーラー「交響曲第5番」アダージェット&「交響曲第3番」第4楽章、レハール「メリー・ウィドウ」&「金と銀」他

2025年05月29日 00時07分23秒 | 日記

29日(木)。わが家に来てから今日で3789日目を迎え、トランプ米大統領は27日、自身のSNSでロシアのプーチン大統領について「彼は火遊びをしている」と投稿し、米国が仲介する停戦交渉のさなかにウクライナ各地への大規模攻撃を続けるロシアへの批判トーンを強めた  というニュースを見て感想を述べるモコタロです

   

   プーチンは火遊びだけど トランプは関税で世界の自由経済に水を差して水遊びしてね?

         

昨日の夕食は、私が「イワシの塩焼き」と「舞茸の味噌汁」を作り、娘が「蒸し豚バラ&小松菜」と「日本酒の熱燗・タタミイワシ入り」を作りました 娘から「魚の向きが反対じゃね?」と言われましたが、「そんなに向きにならなくても」と思うんですが どうでしょうか

         

昨日、早稲田松竹でルキノ・ヴィスコンティ監督・製作・脚本による1971年公開イタリア・フランス合作映画「ベニスに死す」(131分)を観ました 早稲田松竹は久しぶりで、今年初めてかもしれません これまで長い間 2本立てでシニア900円でしたが、今回は1200円に値上がりしていました 今回は「ブリキの太鼓」と2本立てでしたが、腰痛悪化防止のため「ベニスに死す」1本だけ観ました この映画はこれまで何度か観ましたが、忘れているシーンも少なくありませんでした

1911年。ドイツの名だたる作曲家グスタフ・アシェンバッハ(ダーク・ボガード)は、休暇で水の都ベニスのリド島を訪れる ホテルのロビーには世界各国からの観光客が集まっていたが、アシェンバッハは 母親の隣に座る金髪碧眼の少年タジオ(ビョルン・アンドレセン)に目を奪われる 透き通るような美貌としなやかな肢体、まるでギリシャの彫像を思わせる少年の姿に心は震え、その時からアシェンバッハはタジオの虜となる その頃 街中に白い消毒液が撒かれていたが、地元の住人は予防のためだとして疫病の流行を否定する しかし、実はベニスではコレラが流行っていた アシェンバッハは手荷物のトラブルで帰国が遅れたため コレラに罹り、海岸でタジオの姿を見ながら絶命する

本作はトーマス・マンの同名小説をもとに、ロマン派の作曲家グスタフ・マーラー(1860ー1911)をモデルに描いた不朽の名作です 全編を通して流れるのはマーラー「交響曲第5番」の第4楽章「アダージェット」です 弦楽合奏とハープだけで演奏されるロマンティシズムの極致を行く音楽です

この映画の中で「アダージェット」が流れるのは次の5つのシーンです

①タイトルバックと、アシェンバッハを乗せた蒸気船がベニスに向かうオープニングシーン。

②心臓発作で倒れたアシェンバッハの傍らで、友人アルフリートが「アダージェット」をピアノで弾く回想シーン。

③ベニスのリド島をいったん離れることを決意し、ベニス駅に向かったアシェンバッハが手荷物のトラブルから再びリドに引き返すシーンと、アシェンバッハが妻と娘の幸福な日々を回想するシーン。

④アシェンバッハと妻が幼い娘の死に打ちひしがれる回想シーンと、理髪店で髪を染めたアシェンバッハが、タジオの姿を求めてベニスを徘徊するシーン。

⑤リドの海岸でタジオの姿を目にしながらアシェンバッハが絶命するエンディングとエンドロール。

上記のシーンで流れる「アダージェット」はアシェンバッハの苦悩と歓喜、恍惚と絶望を見事に謳い上げていると同時に、彼の死と結びついていることが窺えます

本作で使用されているマーラーの曲は「アダージェット」だけではありません 大広間でアシェンバッハがタジオを見るシーンでは「交響曲第3番 ニ短調」の第4楽章「極めてゆるやかに(神秘的に ~ 一貫してピアニッシモで)」が流れていました アルトによってニーチェの「ツァラトゥストラはこう語った」の「夜の歌」(おお人間よ!注意せよ!~)が歌われます

本作ではマーラー以外の曲も使用されています アシェンバッハが、宿泊するリドのホテルのロビーに入った時に流れていたのはフランツ・レハール(1870-1946)のワルツ「金と銀」です また、大広間でアシェンバッハが寛いでいるシーンで流れていたのはレハールのオペレッタ「メリー・ウィドウ」の「ワルツ」と「ヴィリアの歌」です

このほか、タジオがベートーヴェン「エリーゼのために」を弾くシーンもありました

以上のことを含めて、これほど映像と音楽が見事に融合した作品は稀でしょう ヴィスコンティ監督の音楽センスの良さを感じます

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尾高忠明 ✕ 読売日響で尾高尚忠「交響的幻想曲”草原”」、ブルックナー「交響曲第9番」を聴く ~ 読響第648回定期演奏会

2025年05月28日 00時01分46秒 | 日記

28日(水)。わが家に来てから今日で3788日目を迎え、ウクライナのゼレンスキー大統領は26日、ロシアが23日夜以降で「900機を超える無人機で攻撃した」と表明し、停戦に追い込むために米欧による新しい強力なロシア制裁が必要だと強調した  というニュースを見て感想を述べるモコタロです

        

        ウクライナ全土の掌握を目指す強欲プーチンの横暴を止めるには  徹底的な制裁が必要だ

       諸般の事情により、昨日の夕食作りはお休みしました 

         

昨夜、サントリーホールで読売日響「第648回定期演奏会」を聴きました プログラムは①尾高尚忠「交響的幻想曲 ”草原” 」、②ブルックナー「交響曲第9番 ニ短調」です 指揮は尾高忠明です

オケは16型で 左から第1ヴァイオリン、第2ヴァイオリン、チェロ、ヴィオラ、その後ろにコントラバスといういつもの読響の並び コンマスはゲストの白井圭、隣は戸原直という2トップ態勢を敷きます

1曲目は尾高尚忠「交響的幻想曲 ”草原” 」です この曲は尾高忠明の父・尾高尚忠(1911-1951)が1943年に作曲、1944年5月4日に国内放送向けに初演された後、同月7日に日比谷公会堂で公開初演されました 作曲者自身の言葉によると「蒙古草原、いわゆるステップ地帯を主題とする幻想的交響詩」です

尾高の指揮で演奏に入りますが、とても聴きやすい曲で、広大な蒙古草原の風景を描いた映画音楽のように感じました

プログラム後半はブルックナー「交響曲第9番 ニ短調」(コールス校訂版)です この曲はアントン・ブルックナー(1824-1896)が1887年から1896年にかけて3楽章まで作曲、ブルックナーの死後の1903年2月11日にウィーンで初演されました 第1楽章「荘重に、神秘的に」、第2楽章「スケルツォ:快速に、生き生きと」、第3楽章「アダージョ:ゆっくりと、荘重に」の3楽章から成ります 未完を予期したブルックナーは生前、「フィナーレの代わりに自作の『テ・デウム』を演奏しても良い」と語ったと言われています この日演奏されるのは、ドイツの指揮者で音楽学者でもあったベンヤミン=グンナー・コールス(1965-2023)が2000年に出版したコールス版によるものです

なお、この曲は尾高尚忠が1950年12月に日本交響楽団(現N響)で取り上げたが、その2か月後に急逝しただけに、次男の尾高忠明にとって思いの深い大切な作品となっているようです

管楽器は3管編成ですが、ホルンだけ8本(うちワーグナーチューバ4本持ち替え)となっています 何気なくホルンセクションを見渡したら、日橋辰朗の隣の隣に東京シティ・フィルの谷あかねが客演していました(間違いないだろうな?)

尾高の指揮で第1楽章に入ります 分厚い弦楽セクションにより重心の低い演奏が展開します 尾高はエネルギッシュな指揮で読響の面々を鼓舞し、白井コンマス以下オケのメンバーが渾身の演奏で応えます オーボエの金子亜未、フルートの倉田優を中心に木管楽器群の演奏が冴えています ホルンセクションの輝く演奏が素晴らしい 第2楽章は第1楽章に輪をかけてエネルギッシュな演奏が繰り広げられ、パワフルな演奏が会場を震わせました 第3楽章は一転、弦楽セクションにより、神に祈るような敬虔な精神に満ちた演奏が展開します ホルンからワーグナーチューバに持ち替えた4人の演奏が素晴らしい この楽章でもフルートとオーボエが冴えていました 金管楽器が咆哮し、ティンパニが炸裂し、弦楽器が渾身の演奏を繰り広げ、壮大な音の大伽藍を築き上げました

満場の拍手とブラボーが飛び交い、カーテンコールが繰り返されました この日の演奏は、読響のパワフルな底力を見せつけたコンサートでした

今月末で読響を退団するエルダー会員でチェロ奏者の渡部玄一氏に、私服姿の遠藤真理さん(間違いないかな?)から花束が贈呈され、聴衆とオケのメンバーから大きな拍手が送られました 読響は温かいですね

本公演をもって23日から続いていた5日連続コンサートが終了しました しばらく充電して、次のコンサートに備えます

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「伊福部昭 総進撃 キング伊福部まつりの夕べ」を聴く ~ ピアノ小品、パイプオルガンによる「SFファンタジー第1番」、オーケストラによる「交響譚詩」「シンフォニア・タプカーラ」ほか

2025年05月27日 01時03分34秒 | 日記

27日(火)。豊島区から例年の「がん検診」と「特定健診」の案内が来ていたので、とりあえずWEBサイトから6月下旬の「肺がん検診」と「胃がん検診」を申し込んでおきました 「胃がん検診」は昨年内視鏡検査をやったので、今年はバリウムによるX線検査です 「大腸がん検診」は行きつけのクリニックで検査ユニットをもらって任意にやればよいし、「特定健診(一般の健康診断)」は同じクリニックでいつでもできるので、いずれ受診しようと思います このほか、今回初めて「帯状疱疹ワクチン定期予防接種」の案内が届きました これについてはこれまで罹患したことがないし、有料(生ワクチン3000円または不活化ワクチン11,000円)なのでパスすることにしました

ということで、わが家に来てから今日で3787日目を迎え、ウクライナのイワシチェンコ対外情報局長官は、中国がロシアの軍需企業に対し、火薬や部品のほか 武器製造に必要な薬品、工作機械を供給しているのを確認したと述べた  というニュースを見て感想を述べるモコタロです

トランプ独裁政権の横暴ぶりを批判する陰で プーチン強盗殺人政権を支えている中国は ワルよのう

         

昨日、夕食に「ビーフカレー」と「生野菜とモッツアレラチーズのサラダ」を作りました 今回ビーフは切り落としを使いましたが、美味しく出来ました

         

昨夜、東京オペラシティコンサートホールで「伊福部昭 総進撃 キング伊福部まつりの夕べ」を聴きました これは「伊福部昭生誕110年・ゴジラ生誕70年」を記念して開かれたコンサートです 3部構成となっており、第1部は①子どものためのリズム遊び(抜粋)、②ピアノ組曲(以上ピアノ=松田華音)、③SFファンタジー第1番(和田薫編曲パイプオルガン版):オルガン=石丸由佳。第2部は①SFファンタジー第1番、②SFファンタジー第2番、③SFファンタジー第3番(以上和田薫指揮東京フィル)。第3部は①交響譚詩、②シンフォニア・タプカーラ(以上本名徹次指揮東京フィル)となっています

伊福部昭(いふくべ あきら)は1914年5月31日、北海道釧路町で生まれる。北海道大学農学部在学中から演奏活動を行う   1935年に初の管弦楽曲「日本狂詩曲」がパリで開催された「チェレプニン賞」第1席を受賞し国際的な注目を集める    1946年に東京音楽学校(現・東京藝大音楽学部)に講師として就任。1974年に東京音楽大学に教授として招かれ、1976年から87年まで同大学学長を務めた 門下生に芥川也寸志、黛敏郎、松村禎三、矢代秋雄、石井眞木らがいる オーケストラ作品のほか、「ゴジラ」をはじめ映画音楽を数多く作曲、その数は300本とも言われている

開演30分前にロビーに入ると、記念グッズ売り場に長蛇の列ができていました CDやらLPやらTシャツやらトートバックやらが売られています 「これはイカン。見たら買ってしまう」と自分に言い聞かせ、売り場を素通りして会場に入りました

自席は1階13列9番、左ブロック右から2つ目です 会場内を見渡すと圧倒的に男性客が多く、女性は1割くらいしかいないのではないかと思いました いかに男性に「ゴジラ」の伊福部ファンが多いかということです

田添菜穂子さんの司会で公演が開始されました   ステージ上にはグランドピアノが中央に置かれています

ピアノ独奏の松田華音は6歳でロシアに留学、グネーシン中等(高等)学校で研鑽を積み、モスクワ音楽院を首席で卒業、同大学院を修了 内外のオーケストラと共演を重ねています 私が松田のピアノを聴くのは今年4回目です

赤の勝負衣装で登場した松田がピアノに対峙します

最初に「子どものためのリズム遊び」(1949年)から①運動行進曲、②楽しい学校、③場所とり鬼を演奏、次いでピアノ組曲(1933年)=①盆踊、②七夕、③演伶(ながし)、④佞武多(ねぶた)をリズミカルに演奏、満場の拍手を浴びました

次にパイプオルガンによる「SFファンタジー第1番」の演奏に入ります

パイプオルガンの石丸由佳は東京藝大大学院、デンマーク王立音楽院、ドイツ国立シュトゥットガルト音楽大学修了 2024年4月より所沢市民文化センターミューズ第5代ホールオルガニストを務める

黒を基調とする金の模様入り衣装を身に着けた石丸が2階正面のパイプオルガンの椅子に座り 演奏に入ります    足の操作による重低音が巨大なゴジラの登場を宣言します    中盤では、まるでゴジラが口から火を吐いているような迫力のある重低音が演奏され、圧倒されました    石丸は様々な音色とダイナミックレンジの広い大迫力の演奏によってゴジラの快進撃を表現しました

ここで休憩時間に入りますが、田添さんによる2人へのインタビューが行われました    松田へのインタビューで初めて知ったのは、彼女がモスクワ大学大学院の修了論文のテーマが伊福部昭の音楽だったということです    これを聞いて私は彼女に親近感を覚えると同時にピアニストとして見直しました    一方、石丸へのインタビューでは、「ゴジラとパイプオルガンとの共通点は、巨大であることくらいしか思いい浮かびません」と語って笑いを取り、「曲を聴いて土の香りを感じました パイプオルガンは風によって音を出すので、土と風との相性の良さを感じました」と語りました

続いて第2部に入ります 和田薫の指揮により①SFファンタジー第1番、②SFファンタジー第2番、③SFファンタジー第3番が演奏されます

オケは12型で 左奥にコントラバス、前に左から第1ヴァイオリン、チェロ、ヴィオラ、第2ヴァイオリンという対抗配置をとります コンマスは客演奏者と思われます

指揮を執る和田薫は東京音楽大学で作曲を伊福部昭に師事、オーケストラを中心とした作品を発表するとともに、アニメ音楽など幅広い分野で活躍しています

和田の指揮で演奏に入りますが、第1番~第3番の内容は上のチラシに記載の通りで、伊福部作品のエッセンスをメドレーにように繋いで演奏していきます 伊福部特有のリズム重視の土俗的エネルギーと抒情性に満ちた音楽が次から次へと繰り広げられます 伊福部昭のDNAが詰まった音楽のオンパレードといったところです ただ、金管楽器の咆哮が木管や弦楽器の音を消し去ってしまうキライがあって、バランスが難しいと思いました    ただ、この手の音楽はそれでよいのかもしれません

東京フィルのゴージャスなサウンドが堪能できました

ここで、2人の指揮者に対するインタビューがありました 本名氏は、「伊福部先生が亡くなった翌日にお宅を訪問した際に、奥様から先生が生前吸っていたダンヒル(タバコ)がたくさん余っているから、好きなだけ持って行ってよいと言われたので、持ち帰り ベトナムのオケの人たちに分けた    一つだけ封を切らないままのダンヒルがあったので、今日は持参した    胸のポケットに入れてお守りとして指揮をしたい」と語りました

休憩時間に昨年末に指揮者を引退した井上道義氏を廊下で発見しました 彼の伊福部昭も良かったな、と過去の演奏を思い出しました

次いで第3部(①交響譚詩、②シンフォニア・タプカーラ)の演奏に入ります

指揮を執る本名徹次は東京国際音楽コンクール最高位、トスカニーニ国際指揮者コンクール第2位、ブダベスト国際指揮者コンクール第1位などの受賞歴を誇る 2009年よりベトナム国立交響楽団音楽監督兼首席指揮者を務める

最初の「交響譚詩」は1943年に作曲された曲で、第1楽章「アレグロ・カプリチオーソ」、第2楽章「アンダンテ・ラプソディコ」の2楽章から成ります

何十年ぶりかで聴きましたが、オスティナート全開の曲でワクワクしながら聴きました。第2楽章ではオーボエやイングリッシュホルンの演奏が冴えていました

最後の曲は「シンフォニア・タプカーラ」です この曲は1954年に作曲(1979年改訂)された作品で、第1楽章「レント・モルト ~ アレグロ」、第2楽章「アダージョ」、第3楽章「ヴィヴァーチェ」の3楽章から成ります 

冒頭のチェロの豊かな響きが印象的です 後半のアレグロではオスティナート全開です 第2楽章ではハープに乗せて奏でられるフルートのソロが抒情的で素晴らしかった 第3楽章は再び独特のリズムによるオスティナート全開です 東京フィルはアグレッシブな演奏を展開し、圧倒的なフィナーレを飾りました

満場の拍手とブラボーが飛び交う中、カーテンコールが繰り返されました    本名は胸ポケットからダンヒルを取り出して、「伊福部先生、聴いてくれましたか?」と無言で語っているように見えました 鳴りやまない熱狂的な拍手に、本名 ✕ 東京フィルは伊福部昭「ロンド・イン・ブーレスク」(1972年)をノリノリで演奏、再び満場の拍手とブラボーの嵐に包まれました

伊福部昭の作品だけの3部構成に加え、アンコールまで伊福部昭という まさに「伊福部まつり」でした   18時開演で 終演は21時15分だったので、正味3時間近くかかったことになります 忘れがたいコンサートになりそうです

         

今夜はサントリーホールで読売日響「第648回定期演奏会」を聴きます

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新国立オペラでロッシーニ「セビリアの理髪師」初日公演を観る ~ 脇園彩、ローレンス・ブラウンリー、ロベルト・デ・カンディア、ジュリオ・マストロトータロにブラボー!

2025年05月26日 00時03分52秒 | 日記

26日(月)。わが家に来てから今日で3786日目を迎え、北朝鮮の朝鮮中央通信によると、北朝鮮が建造した5000トン級の駆逐艦が浸水に失敗した事故を巡り、北東部・清津(チョンジン)の造船所の技師長ら3人が拘束された  というニュースを見て感想を述べるモコタロです

金正恩将軍様の目の前で失態を演じたこの3人は 良くて強制収容所送り 悪くて公開処刑だろう

         

昨日、新国立劇場「オペラパレス」で新国立オペラ、ロッシーニ「セビリアの理髪師」初日公演を観ました 出演はロジーナ=脇園彩、アルマヴィーヴァ伯爵=ローレンス・ブラウンリー、バルトロ=ジュリオ・マストロトータロ、フィガロ=ロベルト・デ・カンディア、ドン・バジリオ=妻屋秀和、ベルタ=加納悦子、フィオレッロ=高橋正尚、隊長=秋本健、アンプロージオ=古川和彦。管弦楽=東京フィル、合唱=新国立劇場合唱団、指揮=コッラード・ロヴァーリス、演出=ヨーゼフ・E・ケップリンガーです

「セビリアの理髪師」はジョアキーノ・ロッシーニ(1792-1868)が1816年にローマのアルジェシティーナ劇場で初演したオペラです

アルマヴィーヴァ伯爵は、町一番の美人ロジーナに一目ぼれする しかし、財産目当てでロジーナにご執心の後見人バルトロのせいで、ロジーナはアプローチ不可能の箱入り娘状態 そこで伯爵は、お金さえもらえれば散髪から身の上相談、恋の仲介、手紙の代筆まで何でもござれの”町の便利屋”フィガロに助けを求める あの手この手でバルトロ家に侵入し、伯爵の想いはロジーナに伝えられるが、大混乱を引き起こす フィガロの機転でピンチを脱し、すったもんだの末にハッピーエンドで幕を閉じる

私が新国立オペラ「セビリアの理髪師」を観るのは2002年、2005年、2006年、2012年、2016年、2020年に次いで今回が7回目です また、ヨーゼフ・E・ケップリンガーの演出で観るのは2005年以来6回目です。ということは、20年間同じ演出で観てきたことになります ほとんどのシーンは頭に記憶されていますが、冒頭、序曲の演奏の間に登場人物全員が登場し、パントマイムで小芝居をするシーンは、「あれ、こんな開始だったかな」と思ってしまいました 忘却とは忘れ去ることなり

ケップリンガーの演出は、舞台をフランコ政権下の1960年代のセビリアに移し替えています フィガロは「町の便利屋」を自称していますが、本演出では、子どもたちを手なずけてスリをやらせてお金を稼いでいます また、バルトロ家の家政婦ベルタは近くで娼館を営んでいて金儲けをしています

ステージは回転舞台で、正面は下の写真のように3階層となっていて、中央の階段を境にして部屋が左右に各3つずつあります 1階と2階の部屋はらせん階段で繋がっています 歌手たちは中央の階段やらせん階段を使って上下左右の部屋を行き来するので、相当の運動量です

さて、歌手陣は世界レヴェルが揃い踏みでした 現在望み得る最高の歌手陣と言っても過言ではありません

ロジーナ役の脇園彩は東京生まれのメゾソプラノです 東京藝大大学院修了。2013年文化庁派遣芸術家在外研修員としてパルマ国立音楽院に留学。ペーザロのロッシーニ・アカデミー及びミラノ・スカラ座アカデミー修了 ヨーロッパ各国の歌劇場で活躍し、日本では2017年藤原歌劇団「セビリアの理髪師」ロジーナでオペラデビュー 主にロッシーニ、モーツアルトとベルカント作品をレパートリーとしてイタリアを拠点に活躍しています 新国立オペラへは2019年「ドン・ジョヴァン二」ドンナ・エルヴィーラでデビュー、20年「セビリアの理髪師」ロジーナ、21年「フィガロの結婚」ケルビーノ、「チェネレントラ」タイトルロール、23年「ファルスタッフ」ページ夫人めぐに出演し喝采を浴びました 前回(2020年)に続いての登場ですが、今回も最高の歌唱、最高の演技でコメディエンヌぶりを発揮しました 第1幕のカヴァティーナ「今の歌声は」では力強くも美しいコロラトゥーラで、自立した女性ロジーナを見事に歌い上げ大喝采を浴びました 第2幕冒頭では、バジリオの弟子アロンソと偽って変装したアルマヴィーヴァ伯爵とバルトロが2階右側の部屋で二重唱を歌っている間、左側の部屋ではロジーナ役の脇園彩が二重唱に合わせてシャドウボクシングをしたり、Y字バランスをしたり(彼女、身体が柔らかい!)、ノリノリで踊ったりして笑いを誘いました 私には、現在 ロジーナ役は脇園彩以外 考えられません

アルマヴィーヴァ伯爵役のローレンス・ブラウンリーはアメリカ出身のテノールです メトロポリタン歌劇場、ミラノ・スカラ座、バイエルン州立歌劇場、英国ロイヤルオペラをはじめ世界各国で主要な役で登場し絶賛されています 新国立オペラでは2006年「セビリアの理髪師」アルマヴィーヴァ伯爵を、21年「ルチア」エドガルトに出演し称賛されました 現代におけるベルカントオペラの第一人者と言っても過言ではないでしょう 特に第2幕終盤の「もう逆らうのはやめろ」とバルトロを一喝する開始部から、ロジーナに優しく呼びかけるカンタービレ、そして喜びを表すカバレッタまでの一連の長大なアリアは圧巻のひと言でした 私はこれまでアルマヴィーヴァ伯爵役はペルー出身のフアン・ディエゴ・フローレスが最高だと思っていましたが、ブラウンリーは彼に勝るとも劣らないベルカント歌手だと思いました

バルトロ役のジュリオ・マストロトータロはイタリア出身のバリトンです ロッシーニを中心にヨーロッパ各国の歌劇場で歌っています 第1幕で、便せんが1枚足りないロジーナの言い訳に怒るバルトロのアリアの、後半で歌う”早口言葉調”の超絶技巧の歌唱は見事でした 演技力も十分でしたが、狡猾なバルトロにしてはスマートでカッコよすぎるのが難でした これはない物ねだりです

フィガロ役のロベルト・デ・カンディアはイタリア出身のバリトンです ミラノ・スカラ座、英国ロイヤルオペラ、メトロポリタン歌劇場をはじめ世界各国のオペラハウスで活躍しています 新国立オペラでは1999年「マノン・レスコー」レスコー、2002年「セビリアの理髪師」フィガロ、09年「チェネレントラ」ダンディー二、18年「ファルスタッフ」タイトルロールに続き5回目の登場となります 圧倒的な声量と卓越した演技力で存在感を示します 特に第1幕序盤におけるカヴァティーナ「登場のアリア」は圧巻で、大喝采を浴びました

ドン・バジリオ役の妻屋秀和は新国立オペラの常連バス歌手です 1994年~2001年にライプツィヒ歌劇場、02年~11年にワイマールのドイツ国民劇場の各専属歌手を務めました 第1幕で「蔭口が広まる恐ろしさ」を歌うアリアはロッシーニクレッシェンドで歌い上げ、満場の拍手を浴びました

ベルタ役の加納悦子は東京藝大、ケルン音大で研鑽を積み、ケルン市立歌劇場専属歌手を歴任したメゾソプラノです 新国立オペラでは常連歌手として活躍しています 第2幕で歌う 恋に振り回される男女に呆れ、自分の老いも風刺したアリアは説得力がありました  私はこのアリアが大好きです

指揮を執るコッラード・ロヴァーリスはベルガモ生まれ。フィラデルフィア・オペラ音楽監督、アートスフィア音楽祭管弦楽団音楽監督を務めています ベルカントやヴェリズモ・オペラで特に評価されています 新国立オペラでは2019年「ドン・パスクワーレ」、23年「ファルスタッフ」を指揮しました

ロヴァーリス ✕ 東京フィルはオペラ・ブッファの楽しさを演奏を通して伝えてくれました

演出のヨーゼフ・E・ケップリンガーはウィーン生まれ。アメリカで演劇を学んだ後、ウィーン音楽大学でピアノと声楽を学び、在学中から俳優・歌手として活躍しました 現在、ゲルトナーブラッツ州立歌劇場の総監督を務めています 今回の公演の時代を1960年代に移していますが、まったく違和感がありませんでした カラフルでポップな舞台作りはブッファに相応しく、楽しく鑑賞することが出来ました

何度も何度もカーテンコールが繰り返され、ブラボーとブラビーが飛び交い、満場の拍手がステージに押し寄せました 本公演はロッシーニのオペラの本質を突いた素晴らしい公演でした

2025年はあと数日で5か月が過ぎますが、本公演はこれまで聴いたクラシック関係のコンサート&オペラ公演の中で「マイ・ベスト1」と言っても良いと思います これほど楽しいオペラはありません あと4回ありますので、時間と興味のある方は是非鑑賞することをお薦めします 絶対 後悔しません

         

今日は東京オペラシティコンサートホールで「伊福部昭総進撃 キング伊福部まつりの夕べ」を聴きます

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沼尻竜典 ✕ マルティン・ガルシア・ガルシア ✕ 東京交響楽団でリスト「ピアノ協奏曲第1番」、チャイコフスキー「交響曲第4番」、バルトーク「中国の不思議な役人」を聴く

2025年05月25日 00時02分57秒 | 日記

25日(日)。わが家に来てから今日で3785日目を迎え、香港の公立大学で経営や理工系の研究・教育に定評がある香港科技大は23日、トランプ米政権がハーバード大の留学生の受け入れ資格の停止を通達したことを受け、同大学の留学生を無条件で受け入れると表明した  というニュースを見て感想を述べるモコタロです

米国で学んだ多くの優秀な頭脳が中国へ流れていくのは トランプ政権が犯した失敗の 当然の帰結だ

         

昨夜、サントリーホールで東京交響楽団「第730回 定期演奏会」を聴きました プログラムは①バルトーク「中国の不思議な役人」、②リスト「ピアノ協奏曲第1番 変ホ長調 作品124」、③チャイコフスキー「交響曲4番 ヘ短調 作品36」です 演奏は②のピアノ独奏=マルティン・ガルシア・ガルシア、指揮=沼尻竜典です

マルティン・ガルシア・ガルシア人気のためか、会場は満席近い客入りです

オケは16型で 左から第1ヴァイオリン、第2ヴァイオリン、チェロ、ヴィオラ、その後ろにコントラバスといういつもの東響の並び ステージ下手にはピアノ、オルガン、ハープがスタンバイします    コンマスは小林壱成です

1曲目はバルトーク:組曲「中国の不思議な役人」です この曲はベーラ・バルトーク(1881-1945)がロシアバレエ団の主宰者ディアギレフの依頼により1918年から24年にかけて作曲、その後、1927年に組曲として編まれ1928年にブタペストで初演されました 登場人物は隠れ家に集まる3人の悪党たち、彼らが支配する少女ミミ、そして少女に誘われる3人の男たち(老紳士、青年、中国の役人)です ミミは最初に老人を誘い、次に青年を誘い、最後に役人を誘いますが、役人はミミを執拗に追い回すというストーリーです

この曲は4月21日の読響定期でオクサーナ・リーニフの指揮で聴いたので、うっすらと演奏が頭に残っています

沼尻の指揮で演奏に入りますが、導入部における不協和音は街の喧騒を表しています 少女の客引きを表す吉野亜希菜のクラリネットが素晴らしい その後のティンパニの強烈な連打はストラヴィンスキー「春の祭典」を思い出させます 考えてみれば、あの曲も少女が生贄になる音楽です 老紳士を表すトロンボーン、学生を表すオーボエが冴えています 役人が執拗にミミを追い回すラストは、オーケストラの総力を挙げたアグレッシブな演奏で駆け抜けました

2曲目はリスト「ピアノ協奏曲第1番 変ホ長調 作品124」です この曲はフランツ・リスト(1811-1886)が1835年から56年にかけて作曲、1855年にワイマルで初演されました 第1楽章「アレグロ・マエストーソ」、第2楽章「クアジ・アダージョ」、第3楽章「アレグレット・ヴィヴァーチェ ~ アレグロ・アニマート」、第4楽章「アレグロ・マルツィーレ・アニマート」の4楽章から成ります

協奏曲のため弦楽器は12型に縮小します ステージ中央にはFAZIOLI(ファツィオリ)のグランド・ピアノが主(あるじ)を待ちます🎹 FAZIOLIは1981年にイタリアで創業したグランド・ピアノメーカーです。2021年のショパン国際ピアノコンクールでは1位のブルース・リウ、3位のマルティン・ガルシア・ガルシア、5位のレオノーラ・アルメッリー二がFAZIOLIを弾いて審査に臨みました

沼尻の指揮で第1楽章が力強い管弦楽で開始され、独奏ピアノが決然と入ってきます 吉野のクラリネット、竹山愛のフルート、福士マリ子のファゴットといった木管楽器群がよく歌い、ソリストの演奏に華を添えます 第3楽章ではこの曲の代名詞のようなトライアングルが、独奏ピアノの演奏に弱音で合いの手を入れますが、あまりにも小さい音で、ほとんど聴き取ることができません それとも私の耳が悪いのか(いや、私の場合は頭か)と不安になります 第4楽章ではガルシア・ガルシアの力強いピアノと重量感のあるオーケストラとの混然一体となった演奏により壮大なフィナーレを飾りました 最後にガルシア・ガルシアは鍵盤から両手を離すや否や立ち上がり、会心の笑みを浮かべ、沼尻とハグをして健闘をたたえ合いました

文字通り満場の拍手とブラボーが飛び交い、カーテンコールが繰り返されました ガルシア・ガルシアはシューベルト「楽興の時」第2曲(変イ長調)を静かに そして鮮やかに演奏し、聴衆のクールダウンを図りました

プログラム後半はチャイコフスキー「交響曲4番 ヘ短調 作品36」です この曲はピョートル・イリイチ・チャイコフスキー(1840-1893)が1877年から78年にかけて作曲、1878年2月10日にモスクワで初演されました 第1楽章「アンダンテ・ソステヌート ~ モデラート・コン・アニマ」、第2楽章「アンダンティーノ・イン・モード・ディ・カンツォーナ」、第3楽章「スケルツォ:ピッツィカート・オスティナート:アレグロ」、第4楽章「フィナーレ:アレグロ・コン・フォーコ」の4楽章から成ります

弦楽器は16型に拡大し、沼尻の指揮で第1楽章の演奏に入ります 冒頭のホルンによる”運命の動機”の演奏が素晴らしい この曲でもクラリネット、フルート、オーボエ、ファゴットといった木管楽器群が冴えています 第2楽章では冒頭の荒木良太の寂寥感に満ちたオーボエが素晴らしかった 第3楽章では弦楽器のピッツィカートと木管楽器群との対話が印象的で、ピッコロの濱崎麻里子が存在感を示しました 第4楽章は喜びが爆発したような活気あふれる演奏が展開します 終盤では、沼尻がスピード違反ギリギリの超高速演奏を求め、小林コンマス以下弦楽セクションは必死の形相でアグレッシブに弾いてタクトに応えていました

満場の拍手とブラボーの嵐がステージに押し寄せました 沼尻はかなりテンポを揺らしていましたが、自然な流れを作っていたので好感が持てました

         

今日は新国立劇場「オペラパレス」でロッシーニ「セヴィリアの理髪師」初日公演を聴きます ロジーナ役の脇園彩さんの歌とパフォーマンスが楽しめる待望の公演です

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ハインツ・ホリガー ✕ 吉野直子 ✕ 新日本フィルでルトスワスキ「オーボエとハープと室内楽のための二重協奏曲」、メンデルスゾーン「交響曲第4番”イタリア”」他を聴く

2025年05月24日 00時36分27秒 | 日記

24日(土)。N響の公式サイトによると、6月定期公演Aプログラムに出演予定のウラディミール・フェドセーエフ氏は、体調不良により来日を見合わせることとなったため、代わりに6月定期Bプロに出演するフアンホ・メナが指揮を執ることになったとしています なお、曲目、共演者(ユリアンナ・アヴデーエワ)に変更はないとのことです

フェドセーエフと言えば、2023年11月度A定期公演も体調不良でキャンセルとなり、N響指揮研究員の平石章人と湯川紘惠がオール・ロシア・プログラムを前半と後半で分担して指揮を執り、急場をしのいだのでした

フェドセーエフは1932年8月生まれなので、現在92歳です もう十分活躍されたと思いますが、同じN響の客演指揮者のヘルベルト・ブロムシュテットは1927年生まれの97歳 「上には上がいる」ということでしょうが、日本に来るだけでも大変だと思います お二人とも身体を大事にして、無理をしないようにした方が良いと思います

ということで、わが家に来てから今日で3784日目を迎え、トランプ米政権は22日、対立が続いているハーバード大学に対し、留学生を受け入れるための許可を停止したと発表したが、これにより、在校している留学生も「転校か、法的資格の喪失」を選ばなければならない、と政権側は説明している  というニュースを見て感想を述べるモコタロです

  

  今こそアメリカの大学には全学連が必要だ! 横暴な権力に対峙するには破壊力が必要だ

         

昨日、夕食に「豚肉のみそチーズ焼き」「生野菜とモッツアレラチーズのサラダ」「チンゲン菜とシメジのポン酢蒸し」「大根の味噌汁」を作りました 「豚肉~」は新聞の「料理メモ」を見て初めて作りましたが、何とか美味しくできました

         

昨夜、サントリーホールで新日本フィル「第663回定期演奏会」を聴きました プログラムは①ルトスワフスキ「オーボエとハープと室内楽のための二重協奏曲」、②ヴェレシュ「ベラ・バルトークの思い出に捧げる哀歌」、③ルトスワフスキ「葬送音楽 ~ ベラ・バルトークを偲んで ~ 」、④メンデルスゾーン:演奏会用序曲「フィンガルの洞窟」、⑤同「交響曲第4番 イ長調 作品90 ”イタリア” 」です 演奏は指揮と①のオーボエ独奏=ハインツ・ホリガー、①のハープ独奏=吉野直子です

ハインツ・ホリガーは、ジュネーヴとミュンヘンの国際音楽コンクールで優勝を果たし、その後、指揮者、作曲家としても国際的に活動しているマルチタレントです

1曲目はルトスワフスキ「オーボエとハープと室内楽のための二重協奏曲」です この曲はヴィットルド・ルトスワフスキ(1913-1994)がスイスの指揮者、パウル・ザッハーからの委嘱により作曲、1980年8月24日にルツェルンでハインツ&ウルスラ(夫人)ホリガー、ザッハー指揮コレギウム・ムジクス・チューリッヒにより初演されました

オケは弦楽器が12人(ヴァイオリン6,ヴィオラ3,チェロ2,コントラバス1)と打楽器が4人です。コンマスは西江王子、その隣はアシスタント・コンマスの立上舞です

指揮とオーボエを兼ねたホリガーとハープの吉野直子が登場し、さっそく演奏に入ります 冒頭は弦楽各セクションがテキトーに弾いているとしか思えない弾き方で、混沌とした音楽が奏でられ、面くらいます そのうち、オーボエとハープがまるでフリージャズのように絡み合いながらエキセントリックな演奏を繰り広げていきます どうやらこの作品は「偶然性」がテーマになっているようです ホリガーのオーボエと吉野のハープは超絶技巧による演奏で、流石だと思いました とくにホリガーの演奏はとても86歳とは思えないほど完璧な技巧に裏付けられていて驚きます 中盤ではパーカッションの腰野真那が胸のすくような素晴らしい演奏を展開し、19日に聴いた室内楽シリーズでの大活躍を思い出しました

2曲目はヴェレシュ「ベラ・バルトークの思い出に捧げる哀歌」です この曲はハンガリー生まれのシャンドール・ヴェレシュ(1907-1992)が1945年9月、ハンガリー芸術評議会がブダペストの文化生活の再開を祝して3人の作曲家にオーケストラ作品を委嘱した際の1作として作曲しました

オケが14型に拡大します 弦楽器は左から第1ヴァイオリン、第2ヴァイオリン、ヴィオラ、チェロ、その後ろにコントラバスという並びで、管楽器も加わります

ホリガーの指揮で演奏に入りますが、全体的にエキゾチックな曲想で、聴きやすい曲でした 中盤におけるクラリネットのマルコス・ペレス・ミランダとオーボエの岡北斗の叙情的な演奏が素晴らしかった

前半最後の曲はルトスワフス「葬送音楽 ~ ベラ・バルトークを偲んで ~ 」です この曲は1954年に指揮者ヤン・クレンツから、バルトーク没後10年を記念する作品を書くように提案されて作曲、カトヴィツェで初演されました   曲は全体としてプロローグ ⇒ 変容 ⇒ 頂点 ⇒ エピローグという流れになっています

冒頭はチェロのトップ、長谷川彰子と佐山裕樹のデュオによる演奏から開始されますが、基本の音型がヴィオラへ、第2ヴァイオリンへ、第1ヴァイオリンへと受け継がれていきます 最後は再びチェロのトップに戻ってきますが、末尾における長谷川のpからppへ、そしてpppへと弱音を極めていく演奏が素晴らしかった

プログラム後半の最初はメンデルスゾーン:演奏会用序曲「フィンガルの洞窟」です この曲はフェリックス・メンデルスゾーン(1809-1847)がスコットランドのヘブリディーズ諸島への旅でスタッファ島にある洞窟から着想を得て1830年に作曲、1832年に改訂しロンドンで初演されました

この曲でもペレスのクラリネットをはじめ木管楽器が大活躍し、色彩感豊かな演奏が繰り広げられました

最後の曲はメンデルスゾーン「交響曲第4番 イ長調 作品90 ”イタリア” 」です この曲はイタリアへの旅の印象を基に1831年から33年にかけて作曲、1833年にロンドンで初演されました 第1楽章「アレグロ・ヴィヴァーチェ」、第2楽章「アンダンテ・コン・モート」、第3楽章「コン・モート・モデラート」、第4楽章「サルタレッロ:プレスト」の4楽章から成ります

ホリガーの指揮で第1楽章に入りますが、地中海の空に輝く太陽のような明るく溌溂とした音楽が展開します 第2楽章は長調と短調の入れ替わりが日向と日陰を表しているようで、音楽自体が素晴らしい 第3楽章はノーブルなメヌエットです 中間部のトリオではホルンの演奏が素晴らしい 第4楽章では、18世紀末からイタリアで流行した3拍子の舞曲「サンタレッロ」によるアグレッシブな演奏が展開します 木管楽器がよく歌い、弦楽器が渾身の演奏を展開します 次第にテンポを速めていく有様は、ロッシーニ・クレッシェンドも顔負けです ホリガーはエネルギッシュな指揮ぶりで新日本フィルの面々から最大限の力を引き出し、輝かしいフィナーレを飾りました

満場の拍手とブラボーが飛び交うなか、カーテンコールが繰り返されました 86歳のホリガーは元気だなあ とあらためて思いました

そういえば、この日は「プレコンサート」があったのでした 私はあることは知っていましたが、開始時間を知りませんでした 開演30分前に会場入りしたら、ホール内からメンデルスゾーンの弦楽四重奏曲のメロディーが流れてきました もう始まっていたのです。仕方ないので途中から聴きましたが、どうやら公式サイトには事前に告知が載っていたようです 私としたことが大失態です それでも、チケットボックス部の登原さんとお話しできなかったものの、終演後に笑顔で見送ってくれたので、差し引きゼロということにします

         

今日はサントリーホールで東京交響楽団のコンサートを聴きます

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ピアニスト・中川優芽花インタビュー ~ 朝日新聞の記事から / 鴻上尚史著「人生にがっかりしないための16の物語」を読む ~ 新しい古典としてこれから先も存在し続けるであろう不朽の名作を紹介

2025年05月23日 00時01分02秒 | 日記

23日(金)。昨日はトリフォニーホールで新日本フィル「第663回定期演奏会」の公開リハーサル(指揮=ハインツ・ホリガー)があったのですが、今日から5日連続コンサートが控えているので、腰痛悪化防止のため見学を諦めました 無理をすると5回のコンサートがオジャンになるので、ここが我慢のしどころです

さて、昨日の朝日新聞夕刊にピアニスト・中川優芽花さんのインタビュー記事が載っていました インタビュアーは朝日編集委員・吉田純子さんです 超略すると以下の通りです

「2001年、デュッセルドルフ生まれ。同地のロベルト・シューマン音楽大学、ロンドンのパーセル音楽院を経て、21年からドイツ・ワイマールのフランツ・リスト音大に在籍中 日常的に話すのは英語とドイツ語である。2021年に19歳で受けたクララ・ハスキル国際ピアノコンクールで優勝した 河村尚子や藤田真央に続く快挙だった しかし、『周囲からの期待が重く、好きだからやっていたはずの音楽が”仕事”になっていく感覚もつらかった コンクールの後、半年間くらいの記憶があまりないんです』。何を信じていいか分からなくなった。答えをくれたのは、やはり音楽だった 『モーツアルトやシューベルトの音のはしばしに、同じ苦しみのかけらを感じとれることがあった 時代や国がどれほど違っても、人間は人間なんだって』。そんな日々を『自分と徹底的に向き合う貴重な時間だった』と今は思える 『今、人生で初めて、練習がとっても好きです』と笑顔がはじける 現在開催中のエリザベート王妃国際音楽コンクールはセミファイナルまでの進出となった。秋にはショパン国際ピアノコンクールに出場する。何のためにコンクールを受けるのか、今ならはっきり答えられる。音楽と生きていくため。音楽を決して手放さない。揺るぎない自分をつくるため。勝っても負けても私は変わらない。結果のその先の、未来を見据える

中川さんがエリザベート王妃国際音楽コンクールでセミファイナルに進んだ24名(うち日本人は6名全員)に入った時、私は6人の中では中川さんを推していたので、ファイナルに進めなかったのはとても残念に思っていました コンクールの功罪は様々あるでしょうが、個人的には若い演奏家が世界的なコンクールにチャレンジするのは素晴らしいことだと思います インタビューによると、中川さんはショパンコンクールにチャレンジするとのことなので、また応援したいと思います

ということで、わが家に来てから今日で3783日目を迎え、イスラエル軍は21日、パレスチナ自治区のヨルダン側西岸ジェニンを訪問していた外交視察団に警告射撃を行ったと発表した  というニュースを見て感想を述べるモコタロです

後ろ盾のアメリカが放任しているのをいいことに 殺人優先のネタニヤフ政権はやりたい放題だな

         

昨日、夕食に「鶏のから揚げ」を作りました いつもは隔週金曜日のローテになっているのですが、今週はコンサートの関係で1日繰り上げました 

         

鴻上尚史著「人生にがっかりしないための16の物語」(ちくま文庫)を読み終わりました 鴻上尚史(こうかみ しょうじ)は作家・演出家。1958年愛媛県生まれ。早稲田大学卒。在学中に劇団「第三舞台」を旗揚げし、1987年「朝日のような夕日をつれて’87」で第22回紀伊國屋演劇賞団体賞、95年「スナフキンの手紙」で岸田國士戯曲賞、2010年「グローブ・ジャングル」で読売文学賞戯曲・シナリオ賞を受賞 著書に本ブログでもご紹介した「鴻上尚史のほがらか人生相談」はじめ多数

本書は、2008年に「人生に希望をくれる12の物語」として講談社より刊行された単行本を改題・加筆し、文庫化したものです

本書で取り上げられている作品は次の通りですが、⑬以降があらたに書き下ろされたものです

①ダニエル・キイス「アルジャーノンに花束を」

②G.ガルシア・マルケス「百年の孤独」

③浜田廣介「泣いた赤おに」

④阿部公房「友達」

⑤太宰治「人間失格」

⑥柴田翔「贈る言葉」

⑦藤子・F・不二雄「劇画・オバQ」

⑧筒井康隆「大いなる助走」

⑨フランツ・カフカ「変身」

⑩葉山嘉樹「セメント樽の中の手紙」

⑪ジョン・アーヴィング「ガーブの世界」

⑫村上春樹「羊をめぐる冒険」

⑬村田沙耶香「コンビニ人間」

⑭ディーリア・オーエンズ「ザリガニの鳴くところ」

⑮田中未知「寺山修司と生きて」ほか3冊

⑯辻村深月「傲慢と善良」

著者は「はじめに」の中で概要次のように書いています

「この本は、自分が20代の頃に読んで感動し『生きる希望』を感じることができた物語について書いている いわば、新しい古典としてこれから先も存在し続けるであろう作品である

そして、「文庫本まえがき」の中では次のように書いています

「自分の人生が一度しかないからこそ、いろんな物語を読み、知り、自分の人生の可能性を考えるだけで、なんだか自分の人生が豊かになったような気がします そして、物語から発見することがあります それは、評論や実用書から教えられる価値とは違います。物語を味わうことは、人生そのものを体験することです ビジネス書や新書のような『大切な知識』だけを得るのではなく、『たいして重要でないノイズ』も経験します それを含めて物語で、それが人生そのもので、だからこそ、物語から得た価値は読者の実人生にしみ込むのだと僕は思っています

本書の特徴は、単なる作品の内容紹介だけではなく、鴻上氏がどういう時代にどういうシチュエーションでその本に出合ったか、そして読んでどう感じたかを、自分に引き寄せて書いているところです

著者は小学校の教科書に載っていたという浜田廣介「泣いた赤おに」についても取り上げていますが、何年経っても感動する物語だとして紹介しています 物語を簡単に説明すれば、友達が出来ない赤オニに、青オニが「自分が悪者になって村を襲うから、君が途中で登場して自分を殴ってくれ。そうすれば村人たちは君を信用して友達になってくれる」と話す その通りにすると、赤オニは人間の友達が出来るようになった しかし、青オニのことが気になった赤オニが遠い住処に住む青オニを訪ねると「人間の友達と仲良くやっていってくれ。我々がまた会うと人間は君を疑う。だから僕はしばらく君と会わない。さようなら」という張り紙が貼ってあった それを見た赤おには何度も読み返し涙を流して泣いた・・・という内容です

歳を重ねると「どうして青オニは去ったのか?」という疑問が湧いてきたといいます 中学生のある時、鴻上氏はこの作品の「解説」に「無償の友情」という表現を見つけます これについて、「理解はできても、納得はできなかった」と言います 大人になるまで疑問を抱き続けてきた鴻上氏は、これを「ハルシオン・デイズ」という戯曲にします。さまざまな登場人物に「なぜ、青オニは去って行ったのか」を語らせるというものです 本書の中で様々な解釈が語られていますが、「プロは読みが深い どんな小さな物語でも戯曲に仕立て上げるんだな」と大いに感心しました

辻村深月著「傲慢と善良」は私も読みましたが、2024年10月時点で100万部を突破したそうです この作品は簡単に言えば「婚活途中で突然失踪してしまった女性」を巡る物語ですが、鴻上氏の指摘している通り、「婚活真っ只中」だったり、「恋愛中」の人が読むと、衝撃を受けると思います

結婚相談所の所長の次の言葉が、現代の婚活中の人たちの実情をよく表しています

「皆さん、謙虚だし、自己評価が低い一方で、自己愛の方はとても強いんです 傷つきたくない、変わりたくない。(中略)親に言われるがまま婚活したのであっても、恋愛の好みだけは従順になれない

「現代の日本は、目に見える身分差別はもうないですけど、一人一人が自分の価値観に重きを置き過ぎていて、皆さん傲慢です その一方で、善良に生きている人ほど、親の言いつけを守り、誰かに決めてもらうことが多すぎて、”自分がない”ということになってしまう 傲慢さと善良さが、矛盾なく同じ人の中に存在してしまう、不思議な時代なのだと思います

作家・辻村深月は鋭いです

すべての作品を紹介するわけにもいきませんが、小説や演劇の賞を選ぶ選考委員について不満を述べる筒井康隆著「大いなる助走」の解説も面白かったし、プロレタリア文学の葉山嘉樹著「セメント樽の中の手紙」も原文で読んでみたいと思いました

人生に絶望している人、人生にかすかな希望を抱いている人・・・幅広い読者にお薦めします

         

今夜は すみだトリフォニーホールで新日本フィル「第663回定期演奏会」を聴きます

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第一生命ホール「第3回 小山実稚恵の室内楽 新章 ヨハネス・ブラームス」のチケットを取る / 小野寺史宣著「奇跡集」を読む ~ ちょっとしたひと言や小さな出来事が人生を変える

2025年05月22日 00時01分09秒 | 日記

22日(木)。朝日新聞デジタルによると、天皇陛下は21日、皇居・御所で、大阪・関西万博などのために来日したハンガリーのシュヨク大統領と会談したが、約25分の会見の中で音楽の話も多く出たとのことです 大統領からは指揮者・小林研一郎氏の同国での活躍について、「ハンガリー人のように受け止められている」などと紹介があり、陛下からはかつて同国のチェリスト、シュタルケルの演奏を聴いて大変感動した話などを披露したとのことです

”炎のコバケン”の異名を取る小林研一郎は1940年4月9日、福島県生まれの85歳。東京藝術大学卒業。1974年の第1回ブタペスト国際指揮者コンクール(ハンガリー)に年齢制限ギリギリで参加し第1位と特別賞を受賞 これをきっかけとしてヨーロッパ各国のオーケストラをはじめ日本のオーケストラを指揮するようになりました ハンガリーとの関係では、ハンガリー国立交響楽団(現・ハンガリー国立フィルハーモニー管弦楽団)でマーラー以来2人目の外国人として常任指揮者(1987-1992)、音楽監督兼常任指揮者(1992-1997)を務めました(現在は桂冠指揮者) このような経緯から、シュヨク大統領の「ハンガリー人のように受け止められている」という発言になったのでしょう なんだかんだ言っても、コバケンは偉大です

天皇陛下が演奏を聴いて大変感動したというヤーノシュ・シュタルケル(1924-2013)はハンガリー生まれのチェリスト・教育者です ブタペスト国立歌劇場管弦楽団、ブタペスト・フィルハーモニー管弦楽団の首席チェロ奏者を務め、その後ハンガリーを離れ、米ダラス交響楽団、メトロポリタン歌劇場管弦楽団の首席チェロ奏者を務め、シカゴ交響楽団でも活躍しました インディアナ大学で教鞭を執った時の門下生の一人にチェリストでサントリーホール館長の堤剛(1942~)がいます

シュタルケルは、下のCD全集(6枚組)にも収録されているコダーイ「無伴奏チェロソナタ」で大センセーションを巻き起こし、世界的な名声を獲得しました

ということで、わが家に来てから今日で3782日目を迎え、アメリカのトランプ政権が、裁判所の命令に反して、移民を第三国の南スーダンへ強制送還したことについて、マサチューセッツ州のブライアン・マーフィー連邦判事は20日、法廷侮辱罪に問われる可能性があると警告した  というニュースを見て感想を述べるモコタロです

司法・行政・立法の三権を超越する”王様”を自認するトランプにとって  裁判所命令など紙切れ同然

         

昨日、夕食に「鮭のムニエル」「生野菜とアボカドとモッツアレラチーズのサラダ」「シメジの味噌汁」を作りました 魚も食べないとバランスが取れませんからね

          

12月6日(土)14時から晴海の第一生命ホールで開かれる「第3回 小山実稚恵の室内楽  新章」のチケットを取りました オール・ブラームス・プログラムで①ヴィオラ・ソナタ第2番、②ピアノ三重奏曲第3番、③ピアノ四重奏曲第1番です 演奏はピアノ=小山実稚恵、ヴァイオリン=矢部達哉、ヴィオラ=川本嘉子、チェロ=宮田大です

ブラームスの室内楽はどれも好きなので、今から楽しみです

         

小野寺史宣著「奇跡集」(集英社文庫)を読み終わりました 小野寺史宣(おのでら  ふみのり)は1968年千葉県生まれ。2006年に「裏へ走り蹴りこめ」で第86回オール讀物新人賞を受賞 2008年「ROCKER]で第3回ポプラ社小説大賞優秀賞を受賞し、同作で単行本デビュー 19年「ひと」で本屋大賞第2位となる。著書に「ライフ」「タッグ」など多数

「次の駅まで15分止まらない満員の快速電車の中で、具合が悪くなった新倉凪がしゃがみこんでしまう」という出来事をベースに、たまたま凪と同じ車両に乗り合わせていた人々の視点で物語が繰り広げられていきます

第1話「青戸条哉の奇跡 竜を放つ」 = 大学生・青戸条哉は腹具合が悪く、もう限界だという危機的状況にあったが、自分より一瞬早く隣の女性(凪)がしゃがみ込んでしまった 先を越された形になり戸惑う間に腹は落ち着き、次の駅で降りてトイレに行き、危機を回避できた    しかし、そのために大学でのテストに間に合わなくなってしまう

第2話「大野栞奈の奇跡 情を放つ」 = 凪の前に座っていた女性・大野栞奈は、席を譲ろうと声をかけるが、凪はこのままがいいという 次の駅で降りた凪が気になった栞奈は、一つ先の駅から折り返してくる

第3話「東原達人の奇跡 銃を放つ」 = 刑事・東原達人は、同じ車両に乗っているターゲット黒瀬悦生の行動を監視している

第4話「赤沢道香の奇跡 今日を放つ」 = ガス会社に勤務する赤沢道香は、電車内で痴漢に間違えられた男性の冤罪を晴らすべく、自分が見た状況を説明し男性の無実を証言する

第5話「小見太平の奇跡 ニューを放つ」 = 食品会社の宣伝部に勤務する小見太平は、新商品のカップうどんの宣伝のアイディアを考えている

第6話「西村琴子の奇跡 業を放つ」 = 西村琴子は同じ車両に乗っている交際相手・古場豊久の浮気相手・岩渕奈緒を監視している 琴子が電車を降りた奈緒の後をつけていくと、奈緒も別の男性と浮気をしていた

第7話「黒瀬悦生の奇跡 空を放つ」 = 黒瀬悦生は密造銃を運んでいた 刑事らしい人物が自分を監視していることに気が付く ヤバい仕事から手を引きたい黒瀬は、電車を降りて思い切った行動に出る

以上の7つの物語は、快速電車内で起こった小さな出来事をきっかけに、同じ車両にたまたま乗り合わせていた人たちにドミノのように起こった小さな奇跡が描かれています ちょっとしたひと言や小さな行動が、人生を変える可能性を秘めているーというのが本書のテーマになっています 何気ない日常生活が愛おしく感じるようになる連作短編集です 広くお薦めします

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