人生の目的は音楽だ!toraのブログ

クラシック・コンサートを聴いた感想、映画を観た感想、お薦め本等について毎日、その翌日朝に書き綴っています。

矢部太郎著「大家さんと僕 これから」を読む ~ 大家のおばあちゃんと2階に住むカラテカの矢部くんの微笑ましい交流を描いた漫画 / イスラエル、国連WFPの車両を銃撃

2024年08月30日 00時13分27秒 | 日記

30日(金)。わが家に来てから今日で3517日目を迎え、米共和党政権の元高官ら約240人が、11月の大統領選の共和党候補・トランプ前大統領について「プーチンのような独裁者にこびへつらう一方、同盟国に背を向けることは許されない。トランプの混乱したリーダーシップがあと4年も続けば、現実の生活が傷つき、神聖な制度が弱体化する」と断定し、民主党のハリス副大統領を支持する内容の書簡を発表した  というニュースを見て感想を述べるモコタロです

     

     共和党でまともな神経の持ち主は元高官しかいないのか? トランプ党そのものだな

         

昨日、夕食に「鶏の唐揚げ」を作りました 通常は隔週金曜日に作っていますが、コンサートの関係で1日繰り上げました。今回も外カリカリ内ジューシーに揚がり美味しく出来ました

     

         

昨日の朝日夕刊に「ガザ  国連車両に銃撃  ~   WFP、イスラエルを非難」という見出しの記事が載っていました    記事を超略すると次の通りです

「国連世界食糧計画(WFP)は28日、パレスチナ自治区ガザで人道支援活動をしていた車両がイスラエル軍から銃撃されたと発表した   防弾仕様の車両に乗車していたスタッフにけがはなかったが、WFPはガザでの移動を停止した。すでに停滞している人道支援に影響が出るのは必至だ 少なくとも10発撃たれたが、車両には大きく「UN(国連)」という文字が入っており、イスラエル側から何度も接近の許可を得ていたという WFPのマケイン事務局長は声明で『このような事態は容認することはできない。ガザにいるWFPのチームの命を危険にさらす一連の不必要な事件だ』と非難。人道支援活動に携わる人の安全確保を、戦闘の全ての当事者に訴えた

私は 毎月わずかながらWFPに銀行引き落としの形で寄付をしていることもあって、このニュースを読んで怒りを禁じ得ませんでした 「UN」と表示された車両を銃撃する行為は、世界を相手に戦いを仕掛ける行為にほかなりません こんなことが許されて良いわけがない イスラエルのやっていることは、多くのユダヤ人を虐殺したヒトラーの「ナチス・ドイツ」や ウクライナを一方的に侵略する「プーチン・ロシア」と同じ野蛮な行為だ ナタニヤフは、クーラーの効いた安全な場所からガザ地区に攻撃を仕掛ける命令を下しているだけで、現地でどれほど無実の人々が殺されているかなど考えたこともないだろう 現地に行って自分の目で悲惨な状況を確かめてみろ 自分の家族が同じような目に遭ったらどう思うか 想像してみろ このアホダラチンが

     

     

         

矢部太郎著「大家さんと僕 これから」(新潮文庫)を読み終わりました 矢部太郎は1977年東京生まれ。芸人・漫画家。1997年に「カラテカ」を結成、芸人としてだけでなく、舞台やドラマ、映画で俳優としても活躍している 2018年に初めて描いた漫画「大家さんと僕」で手塚治虫文化賞短編賞を受賞 著書に「大家さんと僕」「『大家さんと僕』と僕」、「ぼくのお父さん」などがある

本書を購入したのは、前作「大家さんと僕」が面白かったことが一番の理由ですが、ブログに感想を書いて X にもアップしたところ、著者の矢部太郎さんから「いいね」をいただいたのがトドメになりました

     

大家さんは東京生まれ東京育ちで、挨拶は「ごきげんよう」、好きなものは新宿伊勢丹とNHKと羽生結弦くんというおばあちゃんです 「僕=矢部」は新宿区の外れにある大家さんの木造一軒家の2階に間借りして8年以上が立つ独身お笑い芸人です

前作同様、ほのぼのした笑いに満ちたエピソード満載の漫画です 大家さんはよくお裾分けを持ってきてくれますが、鮎をいただくのはいいが、網焼き器がないと言うと、焼き器ごと差し入れしてくれたり、肉まんを蒸し器ごと持ってきてくれたりと、過剰なほどの心配りを見せます そんな大家さんの親切に、矢部さんもたまにプレゼントを持っていくことがありますが、「この前のカップ使ってくれていますか?」と聞くと、「もったいなくて使えないわ。とっても素敵で飾らせてもらっています」と言います。室内の一画をみると、矢部さんがあげた品々が顔写真と共に飾られていて、祭壇のようで「亡くなってるっぽい」と焦ります

矢部さんがいかに大家さんを大事に思っているかというエピソードは大みそかの過ごし方にあります 大みそかと言えばお笑い芸人にとっては1年で一番の書き入れ時です それを「売れる気あんの?」と相方に批判されながらも、仕事を入れず、大家さんと2人で年末年始を過ごすために休暇を取るのです 2人ですこし早めのおせちを食べながら紅白歌合戦を観るのです 矢部さんて、なんて優しいんでしょう 大家さんは幸せを感じているはずです

大家さんが足をケガして入院したので見舞いに行ったとき、看護師さんから「ご親戚の方ですか?」と訊かれ、言い淀んでいると、大家さんが「そうよ。血のつながらない親族」と答えます 矢部さんは「あ、ちょっとお手洗いに・・・」と言い残して部屋の外に出ます。次の一コマは矢部さんが病室の外で、壁に向かって佇んでいます 矢部さんは背中を見せているので顔の表情が分かりませんが、きっと、大家さんが自分のことを「血のつながらない親族」と言ってくれたことが余程嬉しかったのだと思います 矢部さんの涙が見えるようです

矢部さんが「また一緒に食事に行きましょう」と誘うと、大家さんは「今は入院してるから行けないわ」と言います 矢部さんは「それじゃ、食べたいものを買ってきてあげますよ」と提案します。すると大家さんは「そんな、悪いわ・・・」と言いながらも、「伊勢丹地下の志乃多寿司の太巻き」と指定します 矢部さんはさっそく新宿伊勢丹の地下に行って買い物をします すると大家さんから電話がかかってきて、「あと海老の揚げたもの」・・・「あと、昆布の佃煮とソフトサーモンと・・・その並びを柿山の方に・・・2軒となりに・・」と次々と商品とお店を指定してきます 矢部さんは、大家さんの頭の中に「VR伊勢丹」が完璧に出来ていることにビックリします

ある日、大家さんの親戚の方から電話があり、「入院中の回復が思わしくなく、もう自宅に戻ることが難しい。取り壊して、そのお金でどこか施設に入れたい、ついては退去してほしい」と言われます それを聞いた矢部さんは、大家さんを見舞った時、「あの家を僕に買わせてもらえませんか?  大家さんがいつでも戻って来られるように」と提案し、所持金以上の金額を示します しかし、大家さんから「矢部さん、全然足りないわ。それに、もう決めてしまったから」と言われてしまいます 矢部さんは、大家さんが自分で自分の人生を決めたこと、それに比べて”全然足りない”金額を提示した自分を恥ずかしいと思いました でも、大家さんは矢部さんの提案をとても嬉しく感じただろうと思います お金の多寡の問題ではありません

大家さんは亡くなりましたが、大家さんにとっては矢部さんあっての楽しい人生だったでしょうし、矢部さんにとって大家さんあっての充実した人生だっただろうと思います

本書の最後の一コマは、大家さんが、大好きな羽生結弦くんと手を繋いで4回転を決めているシーンです 亡くなった大家さんは元気そうです いつまでも矢部さんのことを見守っていることでしょう

本日、toraブログのトータル訪問者数が295万IPを超えました(2,950,957 I P。トータル閲覧数は9,024,507 P V)。これもひとえに普段からご訪問くださっているフォロワーの皆さまのお陰と感謝しております これからも毎日休まずド根性で書き続けて参りますので、モコタロともどもよろしくお願いいたします

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まんが超訳「論語と算盤」(原作:渋沢栄一)を読む ~ 逆境の会社員が”現代の渋沢栄一”に「論語と算盤」を学んだらどうなるか?という問いから企画された書

2024年08月29日 00時36分29秒 | 日記

29日(木)。わが家に来てから今日で3516日目を迎え、靖国神社の石柱に落書きしたとして、警視庁公安部から指名手配された中国籍の男について、中国の公安当局は中国国内の恐喝事件で拘束したと発表した  というニュースを見て感想を述べるモコタロです

     

     反日思想犯だと思ったら ただの恐喝犯じゃないの!どこの国にもいるノータリンだ

         

昨日、夕食に「茄子と油揚げの煮物」「オクラの豚肉ロール焼き」「生野菜とアボカドのサラダ」「シメジの味噌汁」を作りました 料理2品は初挑戦ですが、美味しく出来ました

     

         

「まんが超訳  論語と算盤(原作:渋沢栄一)」(光文社文庫)を読み終わりました 本書は1916年に刊行された渋沢栄一著「論語と算盤」を漫画化し2020年1月に光文社から刊行、2024年1月に文庫化したものです 監修=守屋淳、解説=澁澤健(渋沢栄一の玄孫)、シナリオ=山本時嗣、漫画構成=今谷鉄桂、作画=新津カタヒトです

渋沢栄一(1840-1931)は「道徳経済合一説」を説き続け、生涯に約500もの企業の創立・発展に貢献した実業家 経済団体を組織し、商業学校を創設するなど、実業界の社会的地位の向上に努めた 同時に、約600の教育機関・社会公共事業の支援並びに民間外交に尽力した 2024年7月発行の新1万円札の”顔”に選ばれたことから大きな話題を呼んだ

     

本書のシナリオを書いた山本時嗣が巻頭の「まんが 超訳『論語と算盤』によせて」の中で「逆境の会社員が、”現代の渋沢栄一”に『論語と算盤』を学んだらどうなるか?」という問いから企画した」と書いています ”現代の渋沢栄一”とは、上場企業をはじめ100社以上の大株主となって”日本一の個人投資家”として名を馳せた故・竹田和平のことです その投資スタイルは、短期売買で利益を稼ぐのではなく、日本の未来を担うであろう企業の株を長期に持ち続け、応援していくというものです 渋沢栄一が多くの企業の創立・発展に貢献したように、渋沢を尊敬する竹田和平は、多くの優良企業を資金面で支えていったことから、”渋沢哲学”の語り手として選んだのだと思われます

本書は次の各章から構成されています

プロローグ「出会い」

第1章「僕の『領分』って何だろう?:処世と信条」

第2章「大きな志と小さな志:立志と学問」

第3章「『智・情・意』3つのバランス:常識と習慣」

第4章「できることをコツコツと:仁義と富貴」

第5章「『ワクワクすること』の強さ:理想と迷信」

第6章「『行動』を通して自分を磨く:人格と修養」

第7章「私利私欲より社会の利益:算盤と権利」

第8章「『武士道』で『信用』を得る:実業と士道」

第9章「不安な時期にこそすべきこと:教育と情誼」

第10章「人事を尽くして天命を待つ:成敗と運命」

エピローグ「成功とは結局・・・」

解説「今、なぜ渋沢栄一なのか?」

渋沢栄一と竹田和平

プロローグからエピローグまでは、「月刊経文」編集者の鈴木孝が日本一の個人投資家・吉田和平と出会い、彼を通して渋沢栄一の経営哲学を学んでいき、人間として成長する過程が漫画で描かれています

解説「今、なぜ渋沢栄一なのか?」は、「月刊経文」編集長に昇格した鈴木が渋沢栄一の玄孫・澁澤健にインタビューするという設定になっています 鈴木の「渋沢栄一の”道徳経済合一説”は現代風に言うとどういう意味なのでしょうか?」という質問に、澁澤健は次のように語っています

「『サステナビリティ―』です これは目先の利益を追う資本主義に欠けているものですよね サステナビリティーのためには『論語と算盤』にあるように、算盤勘定は不可欠だけれども、算盤だけを見つめているとつまづいてしまうかもしれない 一方、世の中が著しく変化する中、道徳のご高説だけでもサステナビリティーに欠ける と栄一は説いていると思います   経済と道徳は、たとえるならば未来へ前進するための車の両輪のような存在です。どちらかが欠けても前にうまく進めなくなってしまいます

『サステナビリティ―』とは、自然環境や社会、健康、経済などが将来にわたって、現在の価値を失うことなく続くことを目指す考え方で、「持続可能性」と訳されています 「論語と算盤」は、まさに経済面での持続可能性を探った書と言えると思います

本書は漫画で描かれているので、私のようなアホでもすんなりと読むことが出来ました お薦めします

     

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ソン・ウォンピョン著「アーモンド」を読む ~ 偏桃体が小さく 感情が分からない16歳の少年ユンジュと激しい感情の持ち主の不良少年ゴニの成長物語 / バーチャル・ピアニスト

2024年08月28日 00時07分31秒 | 日記

28日(水)。26日付の日経夕刊に編集委員の瀬崎久真子さんが「技術で広げる音楽の可能性 アニメ ✕ 人、クラシックに『バーチャルアーティスト』」という見出しのもと、8月12日に開かれたフェスタサマーミューザKAWASAKI参加公演「東京交響楽団フィナーレ・コンサート」の模様を書いていました バーチャル・ピアニストの潤音ノクトが原田慶太楼指揮東京交響楽団とガーシュイン「ラプソディ・イン・ブルー」を共演した公演です 当日の実演の模様と感想は8月13日付toraブログに写真入りで書きましたので、興味のある方はご覧ください

ブログには書かなかったことで気になる点があったので、ここで書いておきたいと思います

このプロジェクトはドワンゴと、親会社のKADOKAWAが絡んでいることから、当日の模様は「ニコニコ生放送」で中継していたのですが、ステージ下手にテレビカメラが設置されていて、忙しなく上下に動いていました これは演奏を聴く側からは目障りで、はっきり言って邪魔でした 次回も同様の形式で演奏する場合は改善すべきだと思います

ということで、わが家に来てから今日で3515日目を迎え、防衛省によると、中国軍のY9情報収集機は26日午前11時29分頃から約2分間、長崎県五島市の男女群島沖合の日本領空に侵入した  というニュースを見て感想を述べるモコタロです

     

     領海の次は領空の侵犯かよ 覇権主義国・中国の国家拡張志向は 際限なく続くよな

         

昨日、夕食に「白身魚のバジルソテー」「生野菜サラダ」を作り、「十八穀米」と「鮭の刺身」と一緒に食べました 娘が外食だったので一人分作りましたが、美味しかったです

     

         

ソン・ウォンピョン著「アーモンド」(祥伝社文庫)を読み終わりました ソン・ウォンピョンは1979年ソウル生まれ。西江大学校で社会学と哲学を学ぶ。韓国映画アカデミー映画科で映画演出を専攻。2001年「シネ21」映画評論家賞受賞 初の長編小説「アーモンド」でチャンピ青少年文学賞を受賞し、2017年文壇デビュー 「三十の反撃」「プリズム」「TUBE」など著書多数

本書は2019年7月に祥伝社から刊行された作品に、2024年の文庫化にあたり加筆修正を加えたものです

     

「アーモンド」は、人よりも脳の一部である偏桃体(アーモンド)が先天的に小さく、喜びや悲しみ、愛や恐怖や怒りという感情の起伏がほとんど感じられない16歳の少年ソン・ユンジュの姿を通して、「心」とは何か、「感情」とはどんなものかを探る小説です

ソン・ユンジュは病院で「失感情症(アレキシサイミア)」と診断され、15歳の時に祖母やシングルマザーの母が目の前で通り魔に襲撃されても、泣きも嘆きもせずただ傍観していたのだった そんな彼の前に、物心もつかないうちに両親とはぐれ不良少年となったゴニが現れ、不思議な交流が始まる ユンジュは感情の起伏がないことから「怪物」と呼ばれ、ゴニは反対に激しい感情の持ち主で手が付けられないことから「怪物」と呼ばれ、ともにクラスの仲間からも社会からも浮いた存在となっていた そんな彼らが、様々な出来事を経験する中で、失ったものを取り戻しながら成長していく過程が、ユンジュの視点で淡々と描かれていきます

ユンジュは人間の感情が分からないがゆえに、激しい感情の持ち主ゴニの”心”を理解しようとします 一方のゴニは”共感”の意味や”愛”とは何かをユンジュに気づかせます

本書を読んで思い出したのは、ブレイディみかこさんの「ぼくはイエローで ホワイトで、ちょっとブルー」に出てきた『シンパシー』と『エンパシー』という言葉です ごく簡単に言えば、『シンパシー』は「共感。誰かをかわいそうだと思う感情。同じような意見を持っている人々の間の友情や理解」などを表し、一方『エンパシー』は「他人の感情や経験などを理解する能力」です 「アーモンド」は、ユンジュがゴニとの交流を通じて「シンパシー」と「エンパシー」を学んでいく成長物語と言えるかもしれません

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稲垣えみ子著「魂の退社 会社を辞めるということ」を読む ~ 朝日新聞社を50歳で退社した夫なし子なしのアフロヘア編集委員の覚悟と生活

2024年08月27日 00時03分15秒 | 日記

27日(火)。昨日午前、整骨院から家に帰る途中、日陰を歩いていたら トンボがすぐ前を横切りました その瞬間 涼しい風が通り抜けていったので、もう秋はすぐそこまで来ているのか と感慨に耽りました しかし その後、日向に出たら途端に暑くなり、「まだ残暑があるじゃないのよ だれだよ、もう秋はすぐそこまできているのか  なんて風流ぶってるのは」と自分にツッコミを入れました また台風が来るというし、東京はまだまだ暑い日は続きそうです

ということで、わが家に来てから今日で3514日目を迎え、北朝鮮の朝鮮中央通信は26日、金正恩総書記が24日に自爆型無人機(ドローン)の性能試験を視察し、「1日も早く人民軍部隊に装備しなければならない」と強調した  というニュースを見て感想を述べるモコタロです

     

     そのドローンを金正恩の大邸宅で自爆させたら 北朝鮮国民も世界の人々も喜ぶだろ

         

昨日、夕食に「キーマカレー」と「生野菜とアボカドのサラダ」を作りました キーマカレーは初挑戦ですが、素揚げした野菜を乗せて食べたら美味しかったです

     

         

稲垣えみ子著「魂の退社 会社を辞めるということ」(幻冬舎文庫)を読み終わりました 稲垣えみ子は1965年 愛知県生まれ。一橋大学社会学部卒。朝日新聞社で大阪版デスク、高松総局デスクを経て論説委員、編集委員を務め、2016年に自主退社 夫なし、子なし、冷蔵庫なし、ガス契約なしの生活を送る 「もうレシピ本はいらない」「アフロえみ子の四季の食卓」ほか著書多数

     

本書は2016年6月に東洋経済新報社から刊行され、2024年5月に幻冬舎文庫として刊行されたものです

本書は次のように構成されています

〇「アフロにしたことと会社を辞めたことは関係ありますか」

プロローグ「会社を辞めるということ」

その1「それは安易な発言から始まった」

その2「『飛ばされる』という財産」

その3「『真っ白な灰』になったら卒業」

その4「日本ってば『会社社会』だった!」

その5「ブラック社員が作るニッポン」

その6「そして今」

エピローグ「無職とモテについて考察する」

稲垣えみ子さんが編集委員時代に朝日新聞に書いた論考を何度か読んだことがあります 顔写真付きで掲載されていて、アフロヘア姿を見た時「この人、お堅い朝日の社内で浮いているんじゃないか? 大丈夫か?」と思った記憶があります 朝日新聞社は稲垣さんが受験した十数年前に受けて あっけなく落とされた新聞社の一つです そんなこともあって、どういう理由・経緯で退職したのか興味を持ちました

彼女がアフロヘアにしたのは、大阪府警のサツ回りをしていた時に開かれた懇親会のカラオケで、アフロのカツラを被って歌ったところ「似合う似合う」と爆笑が巻き起こったことがきっかけだったと書いています その数年後に「変化が欲しい」と思った時に「そうだ、アフロ、しよう」と決心したとのこと アフロは意外にもモテたそうです

彼女は教育ママのもと、中学、高校、大学と順調に受験競争を勝ち抜いて、”給料が高く 社会的ステータスも高い”朝日新聞社に就職します そして38歳の時、大阪本社の地域版デスクから香川県の高松総局デスクへの”左遷”を経験し、「人生の折り返し地点の手前」にいることを認識します 「自分は飛ばされたのではないか 能力がないと見做されたのではないか」と悩みます。しかし、彼女は高松で「お金を使わなくても楽しく充実した生活が出来る」ことを発見し、それまでの放漫生活の見直しを図ります そんな”意識改革”のもと、「出世競争や『もっと給料が欲しい』という欲望から自由になりたいと思うようになり、50歳でついに退社を決断します

会社を辞めるにあたり、様々な手続きをする過程で、いかに自分は会社という組織に頼ってきたか、日本という国がいかに「会社社会」であるかを思い知らされます 健康保険、国民年金、失業保険の手続き、さらには退職金から多額の税金が引かれること・・・初めて経験することばかりです 年金受給者の皆さんはもう経験済みですね

さらに退職して一番驚いたのは、会社の社宅を出て新たに借家を探したが「50歳、独身、無職」の女性には保証人問題でハードルが高いということです 最終的に保証会社の保証が受けられると知り安堵します また、クレジットカードを作ろうとすると、無職の者は簡単にカードは作れないことが分かります 結論を言えば「カードを作るのなら、会社を辞める前に作っておくべき」ということを知ります スマホやパソコンはこれまでは会社支給のものを使用していたが、退職してからは自分で購入しなければならない しかし、何を購入すれば良いのか分からない。スマホ販売店に行って説明を受けるが、さっぱり理解できないまま高額の契約をしてしまう・・・これも経験済みの方は多いと思います

巻末に59歳となった稲垣さんが「文庫版のためのあとがき」を書いています

「あの時50歳で会社を辞める決断をして、本当に、本当によかった・・・・と、心から思わずにはいられない 何しろ今、私は最高に元気である 今の私は幸せを感じるのに富もステイタスも必要としていない。最低限の家事力と、人に優しくしようとする気持ちさえあれば、人はどこにいてもどんな状態に置かれていても、健康に元気に愉快に生きていくことができると私は心から信じているのである

これを読んで私は、今年1月に観たヴィム・ヴェンダース監督・役所広司主演映画「PERFECT DAYS」を思い出しました

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「ガルシア=マルケス 中短篇傑作選」を読む ~ 「大佐に手紙は来ない」「この町に泥棒はいない」「純真なエレンディラと邪悪な祖母の信じがたくも痛ましい物語」ほか

2024年08月26日 00時01分03秒 | 日記

26日(月)。予定では、昨日10時半から東劇で「METライブビューイング・アンコール2024」のうち、ベッリーニ「夢遊病の女」を観る予定でした しかし、朝から腰痛が厳しいので諦めました 特にベッドから起きあがる時と立ち上がる時に激痛が走ります 上映時間が約3時間なので、ここで無理をすると痛みが長引く一方です 今が我慢のしどころです 9月16日(月・祝)10時半の部もあるので、そちらを観ようと思います

ということで、わが家に来てから今日で3513日目を迎え、毎日新聞が24,25の両日実施した全国世論調査によると、9月の自民党総裁選で選ばれてほしい人は、1位が石破茂元幹事長(29%)、2位が小泉進次郎元環境相(16%)、3位が高市早苗経済安全保障担当相(13%)だった  というニュースを見て感想を述べるモコタロです

     

     いくら人気があっても 実力がない政治家はダメだ  世界を相手にするんだからね!

         

「ガルシア=マルケス  中短篇傑作選」(河出文庫)を読み終わりました ガブリエル・ガルシア=マルケスは1927年コロンビア生まれ。1955年に長編「落葉」でデビュー 67年に世界文学の記念碑的傑作「百年の孤独」を発表し、「ラテンアメリカ文学ブーム」を主導する 他に「族長の秋」、「予告された殺人の記録」など多数。82年ノーベル文学賞受賞 2014年没

     

本書には次の10作品が収録されています

「大佐に手紙は来ない」(中編)

「火曜日のシエスタ」(短編)

「ついにその日が」(短編)

「この町に泥棒はいない」(中編)

「バルタサルの奇蹟の午後」(短編)

「巨大な翼をもつひどく年老いた男」(短編)

「この世で一番美しい水死者」(短編)

「純真なエレンディラと邪悪な祖母の信じがたくも痛ましい物語」(中編)

「聖女」(中編)

「光は水に似る」(短編)

作品数が多いので、中編2作品についてご紹介します

「大佐に手紙は来ない」は、軍人恩給支給の知らせを待つ大佐の話です 大佐は知らせが来ないと生活費を賄う収入がないので、飼っている軍鶏を売ろうか売るまいかと迷うが、タイミングを計って売ることにする 今日食べる物がない!と切れた妻が「何を食べるの?」と問い詰めると、彼は「糞食らえだ(mierda)」と吐き捨てる、というオチが待っています 英語でいう「shit」ですね💩 大佐の焦燥感や生活苦の”やるせなさ”を描いているかと思うと、最後にダジャレのような台詞で肩透かしを食らう この作品は、「百年の孤独」(P583)に書かれている「文学は人をからかうために作られた最良のおもちゃである」という言葉を思い出させます

「この町に泥棒はいない」は、マッチョな若者ダマソと年上の妻アナの物語です ダマソがビリヤードのボールを盗んでくると、アナから返すべきだと言われる 迷っているうちに何の罪もない黒人が犯人として逮捕されてしまう ダマソは人の目を盗んでボールを返しに行くが、店の主人に見つかってしまう 彼は現金を盗んだ事実はないのに、店の主人から「盗んだ現金も返せ」と言われ、唖然とする この話は、元々現金はなかったのに店の主人がダマソをひっかけて「ボールを盗んだのだから現金も盗んだんだろう ボールを盗んだことを黙っててやるから金を払え」と言っているのです この話はビリヤードのボールを盗まざるを得ない貧しい若者の生活実態など、暗い世相が描かれています

「純真なエレンディラと邪悪な祖母の信じがたくも痛ましい物語」は、ガルシア=マルケスが少年時代に見かけた、祖母らしき女性に連れられて各地をめぐる11歳の少女娼婦の姿に強い印象を受けたことからインスピレーションを得て書いた物語です ここでは少女を14歳に設定しています。祖母は少女に売春させながらカリブ海沿岸の砂漠地帯を巡っていきますが、オランダ人の密輸業者の息子ウリセスがエレンディラの前に現れ、お互いに惹かれ合うようになります エレンディラはウリセスに「祖母に酷使されて疲れた 自分を愛するなら祖母を殺せるはず」と迫ります 紆余曲折があり、彼は祖母を殺しますが、エレンディラは彼を残して 祖母が身に着けていた金の延べ棒入りのチョッキを持って一人走り去って行くのです このストーリーは抑圧者である祖母から自らを開放する少女の物語とも解釈できます

以上のほか、短編も味わいのある作品が揃っています 本書は巻末に「解題」が掲載されており、各作品の背景や内容を簡単に解説しているので、作品理解に役立ちます 「百年の孤独」を読んだ人にも、これから読む人にもお薦めします

     

     

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