ある広報誌の仕事をして3年目、振り返ると自分はつくづく「井の中の蛙」であったと思う。ちょこっと何か書いては口に糊してきたけれど、月刊だったので忙しないばかりで、毎回自分の中で充分にやれていたかというと、どうだったろう。ただ過信してやってきたのではないか。
大元のクライアントが省庁だったために、取材した人達の本当の声が反映されていたかというと疑問だし、小さな抵抗はしてはみたものの、最終的には体裁のいいものにまとめてしまったように思う。
縦割り行政、たらい回し、役人の体質……、今まで耳では聞いていても肌で感じられなかったことを実感する機会があったことはよかったと思っている。経験から学ぶべきことは多かった。
戦後、日本人は限りなく復興への慾望を膨らませ、それを実現させるために走り続けてきた。科学技術も飛躍的に進歩し、高度経済成長を成し遂げたと思っている。その恩恵を受けたことは確かであろうけれど、私たちは科学や医療などへの過信から、人の幸福の本質を誤解してしまったのではなかろうか。
原発事故を起こし、甚大な被害が発生したにもかかわらず、まだ技術を過信し、慾望を満たすために、国民を欺こうとしている政府や東電の人々。
「充分過ぎるほど富も得ているだろうに、まだ何が欲しいのだろうか」と思ったとき、充分な富はない私ではあるが、じゃあ、私は何が欲しいのか。これからどう生きたいのかって考えてしまったなあ。
私たちはとかく人の悪いところはよく目につき、自分の行為は分からないものだけど、反面教師はたくさんいて、それが分かったらそのつど自分を振り返らなければいけなかった。それが足りなかったのではないかと思う。さて、では、どうするかね。
それにしても、ダボス会議での渡辺謙さんのスピーチは素晴らしかった。
「原子力と言う、人間が最後までコントロールできない物質に頼って生きて行く恐怖を味わった今、再生エネルギーに大きく舵を取らなければ、子供たちに未来を手渡すことはかなわないと感じています」
人間がすべてをコントロールできるなどという過信を捨て、今まさに謙虚にならなければいけない時なのです。