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KYOTO GRAPHIE 2020の会場の一つとなっている京都府庁舎旧本館は明治37年建築の官公庁の建物としては現役最古で重要文化財。
京都は第二次大戦の空襲を免れた街なので町家や寺社仏閣はもちろんのこと御所もそのまま現存しているのは言うに及ばず。
当然、こういう明治時代建築の庁舎が残っていても不思議ではない。
KYOTO GRAPHIEというアートイベントではあるけれども写真のアート性はもとより会場となっている建物の芸術としての価値も計り知れないものがあった。

この会場では私は見る側よりも撮影する側に回ってしまったのは言うまでもない。

私は地元関西の大阪に住みながら葵祭も時代祭も見たことがなく、金閣寺、銀閣寺も訪れたことのない純粋無垢な灯台下暗しである。
だから京都府庁も訪れるのはこれが初めて。
これまでは丸太町通りを通る時に、
「お、あれは何や?」
とちょこっと見える府庁の建物をちょい見しては、
「何やらものすごい建物があるやんけ(←微妙に下品)」
と思っていたのだ。
そのうち訪れることもあるだろうと思いながら、今日まで一度も訪問したことがなかったのだ。



写真のアートイベントで訪れたこの日。
空は完璧な秋空で澄み渡る蒼。
雲がポッカリと浮かぶなんとも言えない雰囲気で、その蒼をバックに黄色い庁舎がどっしりと、そして美しく私とカミさんを出迎えてくれたのであった。

立派なエントランスをくぐると、正面に2階へ登る階段がある。
大理石で創られた階段はルネサンス様式の教科書になりそうな重厚でかつ繊細なフォルムなのであった。
窓から入ってくる淡い光にしばし見惚れる瞬間でもある。
写真展の一つの会場はこの階段を上がったところにあるのだが、この建物は現役でもあるのでイベント用ではなく生きた空気が漂っている。

「ちょっとトイレ行ってくるわ」

烏丸御池から移動してきて用を足しに行きたかった私はここのトイレに入ってみると、なんと!洋式便器がなかったのであった。
今どき和式一辺倒。
洋風建築の建物なのに、なぜかトイレは和式なのであった。

建物はロの字になっていて中央に中庭がある。
この中庭から東の廊下に差し込む日差しが窓のシルエットを廊下と黄色い壁に映し出し、なんとも言えいない美しさだ。
もう庁舎というよりも美術館。
先日生まれ変わった京都市立美術館もとい京都市立京セラ美術館の味気なさちとは比べ物にならない暖かさが漂っていた。
たとえ補修が中途半端なところがあっても、たとえトイレが和式でも、この方が私の感覚にフィットする。
美しく愛らしい建築物なのだ。



クライマックスは京都府議会議場。
ここも今はアートイベントに使用されている。
だがいつもは現役の議場として使わているようで完璧な保存状態であることはもちろんのこと、最近建てられている近代的な庁舎と比較して、今は手に入れるのも難しいのではないかというシャンデリアを初めてとする各種照明器具や木製什器などが素晴らしい。
まるで映画の世界のようなのであった。

きっと日本映画の都でもある京都のこと、映画の撮影にも使われたりしているのではないかとも思ったのであった。

KYOTO GRAPHIEがなかったら訪れることはなかったかもしれない京都府庁旧庁舎。
改めてコロナ禍の中、万全の体制で開催してくださったその方々に感謝なのであった。




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