<新・とりがら時事放談> 旅・映画・音楽・演芸・書籍・雑誌・グルメなど、エンタメに的を絞った自由奔放コラム
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1982年。
初めて本格的なコンピュータグラフィックスが採用された長編映画として、一躍世間の注目を集めた映画が「トロン」だった。
当時、大学生だった私はすでにCGに強い興味を持っていた。
例えば「ニュースセンター9時」のタイトル。
「俺たちひょうきん族」のエンドタイトル。
「SF映画に登場するワイヤーフレーム映像」
などを見るたびに、凄いな~、と思って感心しきなのであった。

私自身もパソコンテレビX1というシャープ製のパソコンを夏休みのバイト代で購入。BASIC言語を駆使して拙いCG静止画や、アニメーションを作成していたのだった。
素人が作るCGだし、当時の8ビットパソコンでは画面に表示できる色数は7つしかなく、それをいかに多くの色に見せるのかがテクニックのひとつだった。
さらにまた、画面の解像度も640×200ドットという、そらもう線を一本描いただけでジャギーがギザギザのすさまじい画質だったので、ディズニーが製作し、ボブ・エイブルが携わったという「トロン」には大いに注目し、期待して劇場に足を運んだのであった。
ワイヤーフレームではなく、ちゃんと映画画質にレンダリングした映像は、こりゃ凄い、と思い込んでいたのだった。

で、見た結果、失望したのだった。

CGで作成した場面はほんの数ヶ所で、映画のほとんどはネガを光学的に処理したり手で書き入れたアナログ映像なのであった。

「人の心を打つ映画でなければなりません。未知との遭遇のエイリアンはそういう手本です」
という意味合いのことを、当時映像論を講義していた宮川一夫先生はおっしゃった。
暗に、「ディズニーのトロンみたいな奇を衒った映像を作ってはいけませんよ」と私たち学生に語りかけてくれていると、その時、私は理解したのであった。

あれから約30年。
その「トロン」がスクリーンに帰ってきた。
主演したジェフ・ブリッジスはすっかりジイサンになってしまい、見ていた私もすっかり中年のオッサンになってしまったのであった。
しかし、CGの技術は、最新のテクノロジーでメチャクチャ凄いことになっていたのだった。

このトロン。
当初私は「つまらんと思うので、見るつもりはない」と家族に公言していた。
ところがどういうわけかこの映画、IMAXという大型スクリーンの規格で製作され、しかもそれが大阪の新しいIMAXシアターで上映されるというので、家族に無理やり引っ張り出さるハメになってしまったのだ。
しかも高い料金は私もち。嫌々気が進まないままに、あまり好きではない3Dメガネをかけて劇場の座席に腰をかけたのであった。

ところが、どっこい。
見てビックリしたのだった。

前作はたった数カットしかなかった本格的CG場面が、今回はほとんど全部に及んでおり、しかもどこがCGでどこがセット撮影なのか、サッパリ分からない。
そのスピード感、リアリティは前作と比べることさえできないくらい飛躍的に向上しており、見終わって「見て良かった」と迂闊にも私は呟いてしまったのであった。
さらに、CGにも増して魅力的だったのはジェフ・ブリッジスに育てられたという新しいプログラミングキャラの「クオラ」を演じるオリヴィア・ワイルドなのであった。
正直、CGなどどうでもよく、このセクシーなオリヴィア・ワイルドを見れただけでもメッケモノに感じたのだが、家族に話すと「アホちゃう」と言われる恐れがあるので自分の胸の内にだけしまっておくことにした。

ということで、物語は相変わらずショーもないのだが、見せ場が多く、2時間以上もの上映時間内に退屈することは一度もなく、気がついたら「オリヴィア、ええな、あの黒髪」と映画のキャラに魅了されている自分に気付いて、とりあえずは合格点を与えてもええんじゃないか、と思える作品に生まれ変わっていたのであった。

なお、なんでタイトルが脇役のキャラ名「トロン」なのか。
今回も謎を解くことはできなかったのであった。

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