平ねぎ数理工学研究所ブログ

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棋聖戦第二局-羽生茹蛙戦法炸裂-

2018-06-19 08:10:29 | 将棋

棋聖戦第二局は、羽生棋聖の茹蛙戦法により豊島八段が見事に茹で上がった一戦だった。
羽生の▲7二金が近代将棋の常識を覆す意表の一手であり、茹蛙戦法の恐ろしい正体なのだ。
▲7二金は7一にいた金を下がっただけの手で1手パスのように見える。非常に生ぬるい。
豊島はあまりにも生ぬるいのですっかり好い気分になり△2七角と打ってこの金を取りにきた。
しかしこの手は遊び金を相手にし、遊んでいる駒の顔を立てる危険な手だったのだ。
△2七角打は桐谷マッサージ戦法によく似ている。
桐谷マッサージ戦法は、遊んでいる駒を攻撃するため相手は痛くも痒くもなく、寧ろ快い刺激を感じるのでそのように呼ばれている。
豊島は意図してマッサージ戦法を用いたのではなく、羽生の茹で蛙戦法に触発されて無意識に手が動いたのであろう。
△2七角打の真の狙いは7二の金を取ることよりも、7二に成り返って飛車を捕獲することにあった。
しかし、飛車を詰ますには、さらに4二に銀を投入しなければならない。
仮に△4二銀打として羽生の飛車を詰ましたとしても、羽生は飛車を切って4一の銀と交換するので頗る効率が悪い。
飛車と銀を交換するために2手を費やすことになる。
豊島はこのとき眠りから覚め、相手の攻め駒を攻撃するマッサージ戦法を用いていることに気づいたのだ。
そして、きわめて効率の悪い手順を選んだことに対して激しい自己嫌悪の感情が湧いてきて、フラフラと4八に銀を打ってしまったのだ。
羽生は待ってましたとばかりに▲5二角と打つ。この時点で将棋は事実上終了した。評価値は2000以上動いた。
非常に生ぬるい手を指して相手を眠らせてしまう茹蛙戦法は、羽生の新境地を開く戦い方になるかもしれない。