長屋茶房・天真庵

「押上」にある築60年の長屋を改装して
「長屋茶房・天真庵」を建築。
一階がカフェ、2階がギャラリー。

粒々皆辛苦の毎日

2010-11-22 08:01:24 | Weblog
粒々皆辛苦という言葉が好きだ。
中学のころから好きだった。大嫌いな数学の先生に
教えてもらった言葉。職員室によばれ、何か説教を
受けたときに、でてきた。先生の名前も顔も、何を
怒られたかも覚えていないけど、その言葉だけ脳裏に焼きついている。

蕎麦も種の粒を植え、毎日水をあげ、雑草をぬいたり、肥料を
あげたりして、秋に収穫する。それを脱穀し、石臼で挽き、
それに水を入れ、捏ね、のし棒でのばし、たたんで、蕎麦包丁で切る。
簡単にいうと、そんな順番で蕎麦ができる。
そして、醤油屋さんも大豆の粒を、選りすぐり、温度管理や麹や菌を
つかったミクロの世界で、古式な製法を紡いできた。
みんな「粒々皆辛苦の世界」だ。
また、蕎麦の種(粒)も、大豆のそれも、風雪な世界的な異常気象
にめげず、がんばって生きて生きて生き抜こうとしている。これも
また粒々皆辛苦、だ。

便利さや、商業的なことから、いろいろな工程が機会化されたり、
簡略化されてきたけど、本来は、その工程も大事な自然な流れだと
思う。一物一体という言葉もある。すべてを受け入れたり、愛したり、
食べたりすることが自然だ、という意味だろう。

今朝は、一物一体「玄蕎麦」(殻ごと挽いた蕎麦粉100%)を、つなぎを使わず、打ってみた。
もう何万人という数の蕎麦を打ってきたけど、今朝の蕎麦打ちは、
打ち負かされた。1ラウンドからコーナーにつまり、サンドバック
のように殴られ、KO負けしたような気分。理想を実現するためには、
ときどき完敗するけど、それを乗り越えた時に、いい酒で乾杯する
喜びもいい。ひとりひとりが、小粒な存在で、毎日毎日は辛苦な
こともあるけど、それがまたいい。

今日は「ダメ中」
明日は「エリカ庵」
11月も最終コーナーにさしかかった。歳月人を待たず、
またうれしからずや。