天然居士の独り言

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10月21日・・・

2015年10月23日 19時52分40秒 | 日記
 昨年の9月30日、救急車で移送されて入院した同居人でしたが、
 抗癌剤による免疫力の低下から感染症を起こしてしまい、入院が長引いていました。
 感染症や痛みへの対応が何とかなりそうになっていましたが、
 10月16日、CT検査で血栓がある事が判明して、その対応が加わって、
 また点滴に繋がれてしまいました。
 しかし、病気と闘おうとする意欲は低下していなかったような感じでした。

 ベッドに寝ているばかりでは体力が落ちてしまうからと、
 夕食後病院内の廊下を散歩するようになったのは、10月21日の事でした。
 それまでも、日中の暖かな日などには、僕と一緒に病棟から1階に降りて、
 玄関前のベンチで外気に当たる事がありました。
 その時は、とりとめのない思い出話などをしていました。
 しかし、病院内は日中かなり混雑していて、散歩するのには不安な感じでした。
 人のいなくなった夜ならば大丈夫だろうと、僕が誘いました。

 エレベータで1階に降りて歩き出した際、同居人は突然僕の手を握りました。
 彼女の右手は、点滴をぶら下げたキャスター付きの棒を押していましたので、
 空いている左手で僕の右手を握っていました。
 2人で手を繋いで歩いたのはいつ以来だろうと彼女に訊きましたが、
 彼女も思い出せない感じでした。
 後で、彼女は手を繋いでいた方が歩きやすいからと言っていましたが、
 それは彼女の照れなのかも知れません。

 1階のフロアを半周して、コンビニなどがある場所に近づきました。
 前から若くて綺麗な感じの女性が歩いて来るのが見えたので、
 咄嗟に僕は手を離そうとしましたが、彼女は却って力を入れて離してくれませんでした。
 彼女は、綺麗な人の前では格好を付けてしまう僕の性癖をよく知っていましたから、
 僕をからかうために手を離してくれなかったのだと思います。

 その後コンビニに行って、彼女の欲しい物を買って、会計をしましたが、
 店の外でそれを待っていた彼女は、
 店の反対側にあるスターバックスを見ていて動かなくなってしまいました。
 どうしたと声を掛けたら、カフェラテが飲みたいと言うので、
 それを買って病室に戻って一緒に飲みました。

 それからしばらくの間、夕食後の散歩は続きました。
 もちろん手を繋いでです。
 そしてスターバックスでコーヒーを買うのも毎度の事になりました。
 僕が会計している最中、ミルクや砂糖などをかいがいしく用意してくれました。

 前に6月18日の日記に彼女が残した僅かな俳句について書きました。
 その中の「手を借りて 歩く廊下に 菊揺れて」は、
 こんな状況を詠んだものだと思います。

 そして、ある夜から、
 僕が帰る時に自分の部屋から顔を出して送ってくれるようになりました。
 長い廊下、人が通る事はほとんどなかったので、
 多分僕の姿が見えなくなるまで見ていたのだと思います。
 僕も、この辺が限界かなと思う所で振り返って手を振りました。
 もう一つの「薄紅葉 夫(つま)の背中に 合わせる手」は、
 そんな時の気持ちだったのかも知れません。

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