MITIS 水野通訳翻訳研究所ブログ

Mizuno Institute for Interpreting and Translation Studies

お知らせ

来月からこのサイトをMITIS(水野通訳翻訳研究所)ブログに変更します。研究所の活動内容は、研究会開催、公開講演会等の開催、出版活動(年報やOccasional Papers等)を予定しています。研究所のウェブサイトは別になります。詳しくは徐々にお知らせしていきます。

『同時通訳の理論:認知的制約と訳出方略』(朝日出版社)。詳しくはこちらをごらん下さい。

『日本の翻訳論』(法政大学出版局)。詳しくはこちらをごらん下さい。

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同時通訳におけるシラブル間隔(ISI)

2009年03月26日 | 通訳研究

Mundayのゲラが出てきているのに余裕こいているわけではないのだが、気分転換にちょっとだけ書いておく。Piccaluga et al.のDisfluency Surface Markers and Cognitive Processing: The Case of Simultaneous Interpretingという論文がネット上にある。(年度不明だが引用文献から見て2005年以降。著者はベルギーの人たち。)タイトルからは内容がわかりにくいが、簡単に言うと同時通訳における「チャンキング」の測り方について(そしてそれだけ)の論文である。チャンクを客観的に検出することは非常に大事な課題なので読んでみた。実際にはチャンク測定の指標として「シラブル間隔」(ISI=Intersyllabic Interval)を提案しているだけである。ISIというのは文字どおりシラブルのピークと後続のシラブルのピークの間の時間のことで、図に示した通りである。見にくいが、双方向に矢印のあるSPの右下がISIである。(ただしこの図はこおろぎの音に関する別の論文から。)

所見のひとつは、「認知的制約が最小の場合、ISIは小さく、逆に認知的負荷が大きくなるとISIの値は増大する」というものだ。結論として、この論文は同時通訳のチャンキングについて何かを明らかにしたというのではなく、同時通訳というタスクを使ってシラブル間隔の一側面を明らかにしたにすぎない。同時通訳のとらえ方が浅いうえに、ISIがなぜチャンクを測れるのかについて説得的な説明もないので理論的価値は小さい。