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光山鉄道管理局・アーカイブス

鉄道模型・レイアウトについて工作・増備・思うことなどをば。
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「テツドウモケイの細密化」に思うこと

2016-03-20 05:42:30 | 思いつくままに・考察
 先日来私を色々と考えさせてくれている16番の天賞堂ED75を眺めていて思ったことから。
 このブログだけで考察めいた事を3度も書かせてくれていますから天賞堂は偉大ですね(笑)

 最近はNゲージの造形面の進化がかなり急速に進み、それに伴い細密感もかなりのレベルになった事は実感しました。
 事実、模型の進化を実感させようとすればとにかく細密に作る、実物の縮小コピーにできる限り近づけるというのは最も有効な手法です。

 ですが今の模型製品を俯瞰して見ると逆に「細密化以外のベクトルが見いだせないでいる」印象も又あります。

 実はここで先日購入したKATOのミニカー、トヨタスープラが出て来ます。
 KATOが鉄道模型のノウハウを43分の1のミニカーに応用しミニカー市場への本格的な参入を企図したのがこのスープラとFTO(あとフェアレディZもあったかもしれません)でした。
 ですがいざ蓋をあけて見るとこれらのミニカーは意外に不振だった様でこれ以後KATOのミニカーと言うのはついぞ聞いていません。

 値段の問題なのか、プラ製だったからか
 NゲージでのKATOの売れっぷりからすればこれらのミニカーも大ヒットは当然だった筈です。
 しかし実際はそうならなかった。

 長い事その理由が私には分からなかったのですが、昨年暮れにそのスープラを手にして見てその理由の一端に触れた気がしました。

 確かにこのスープラはよく出来ています。
 造形面や細密化への努力は惜しみなく払われている事が感じられますし、製品としての組み立て工程にNゲージ模型のノウハウが注ぎ込まれている事も実感できます。

 しかしこのスープラ、それ以上に私を感動させる物がなかったのです。

 それこそ悪い意味での「実物の縮小コピー」を見る様な一種の薄気味悪さがこのスープラから感じられるのです。
 ですが、もしこれが鉄道模型だったら一定の層の歓迎は受けたと思います。
 事実このスープラの造形センスにはKATOの16番の機関車モデルのそれに共通した物が感じられますから。

 ですがミニカーユーザーにはそれは受け入れられなかった。
 市場で持て囃されているミニカーメーカーの製品も細密感ではこのスープラに負けない物も出ています。
 ですが細密感でこのスープラに劣るはずのモデルがかなり市場で受け入れられているのも現実なのです。

 ここに考える事があります。

 ミニカーコレクターやユーザーは実車が好きでこの趣味に入った人も多いと思います。
 が、その過程で「実車の印象把握のセンス」という価値基準で好みの製品を選ぶ癖を経験的に身につけている節があります。
 更に進めば実車と同じ様に「ミニカーそのものも嗜好する」という価値の転換がごく自然に行なわれている印象すらあるのです。

 ですから実車の設計図をそのまま縮小した様なモデルはなかなか受け入れられない。
 造形の過程で作り手のセンスによるディフォルメが施された、印象把握に優れたモデルが「いいミニカー」として売れていると思われます。

 実はこの点が最近のNゲージモデル(あるいは16番も含めた鉄道模型全体の)が抱える問題なのではないかと思えます。
 確かに細密なのは細密なのに不思議と心を打たない、まるでしんこ細工を思わせるモデルがここ10年位の鉄道模型ではたまに見かけられます。

 かと思うと昔の鉄コレやBトレみたいにディフォルメがあってもそれが味として感じられるモデルもいくつか出てきています。あるいはディテーリングの点ではラフなのに全体の印象で得をしている「むかしのモデル」もありますし。
 この造形センスと言う奴はあくまでアナログの感覚であってデジタルに実物を縮小する様な感覚では決して身に付かない感じがします。

 今の鉄道模型メーカや一部のマニアの中には「実物を正確に縮小する事こそが唯一無二の真理」と思いこむ向きも多いと思います。
 ですがその行き方では早晩行き詰るのは目に見えています。
 何故ならどんなに細密に作っても「実物を超える事は絶対に出来ない」からです。

 むしろディフォルメの名を借りて見た目では粗削りでも「実物よりも実物らしいモデル」を目指す方が精神衛生上良いのではないかと。
 今回の天賞堂のED75は単なる実物の縮小版を超えた「いい印象」を思わせる造形を感じました。


 これに限らず天賞堂のモデルはブラスとプラを問わずに造形面でこの「いい印象」のモデルが多い感じがします。少なくとも「ただ細密なだけではない何か」は確実に持っている気がします。

 なんとなくこの辺りにこれからの車両模型のヒントが隠されている気もします。