ゴールデンウィークを過ぎてから、毎日のように見学者や同業者の研修が遣ってくる。「萬相談申し込み所」と看板を掲げようか?と思うほどである。昨日も、今年、別府の竹の職業訓練校を卒業して、これから本格的な「竹細工の職人」を目指している、大分県の工芸試験所の研修生一行が見学にやって来た。
私の所の経営形態は竹細工の中でも一種独特の経営形態をとっている。従業員というのはごく僅かしかいない。作品を作ってくれる職人さん達との関係は、師弟関係ではあるが、「独立した個人の仕入れ先」という言わば、協同組合的な経営形態である。
従業員では無いので、勤務時間もない。それぞれが自分の仕事の流れの中で工房にやってきては全員が別々の作業をしている。「分業してみんなで一つの作品を大量に生産する」という事はしない。私が一人、一人に技術指導していき職人として育てているのだ。将来独立するために私の所で技術を学んでいるものも居れば、ずーと、力が続く限り私の所に作品を納入していこうと考えている人も居れば、家庭の主婦だが、副業で竹細工をしている人も居る。実に多種多様な人たちが入れ替わり、出入りしているのである。
「昔の徒弟制度を現代に当てはまる様に再構築した師弟関係。」「労使の関係でなく、独立した職人同士の協同組合」なんとなく、こんなニュアンスなのだろうか?考えてみると30前に学生から初めて社会に出た時、「孫 時英」師匠から教え込まれた事だったのだ。レストランと竹細工と職種は違うのであるが、師匠から教わった事を自分なりに租借して、自分なりの表現で、新しい経営としてやっているが、根本はまったく同じである。
昨日見学に来た皆さんも、厳しい職人の世界を目指しているのですが、どの世界も一緒、自分で遣っただけのことしか戻ってこない。表面に現われる事には浮き沈みもあるが、蓄積されていく技術や感性は、本人が遣った分だけ 身になっていくし、いつか必ず芽を出してくれます。
頑張って下さい。