この記事のポイントです
【結論】詳細計算ルートを使えば、リーズナブルな省エネルギー住宅を計画できる
1.外皮性能(UAとη)
2.断熱材は色々あります
3.断熱材の熱抵抗Rと各部位のU
4.サッシの性能
5.国交省モデルのサッシ性能
6.省エネルギー基準は国交省モデルのサッシが変わっただけ
7.省エネルギー基準の外皮性能
です。
1.外皮性能 ~UAとη |
「外皮」は建物の内と外を隔てる外壁や天井、床、サッシ等の「面」を指します。
各部位によって、断熱材の入れ方が異なるので、それぞれの断熱性能を計算し、建物全体の「外皮性能」(熱貫流率UAと日射熱取得率η)を求めます。
天井(屋根)、外壁、床、サッシのそれぞれで断熱性能が違います
各部位の断熱性能を計算して、建物全体のUAとηを求めます
2.断熱材は色々あります |
天井や外壁、床に入れる断熱材には色々な種類があり、厚さや重さによって施工性が違います。
よく使う「グラウウール(GW)」にも重量(10kg品や16kg品)や厚さ(5㎝、10㎝)、普通のGWや高性能GW、固形や吹き付け等の形状の違いがあります。
色々な断熱材
床材に使う断熱材は固形の面材でカットして施工できます。
3.断熱材の熱抵抗Rと各部位のU |
外壁、天井、床の各部位に入れる断熱材の種類が異なり、厚さも違っています。
断熱材の種類や厚さによって、それぞれ熱抵抗Rが決まっています。
外壁の断熱材R≧2.2
というのは、「Rが2.2以上の断熱材を入れなさい」という指示ですが、これは断熱材自体のRを指しています。
実際には各部位によってボードや下地の違いもあるので、「面」全体としての性能(U)を求めます。
(詳しい計算方法は別の機会に・・)
部位 | 断熱材 | 断熱材のR | → | 部位別のU |
天井 | 高性能グラスウール16kg品 155㎜ | 4.709 | 0.23 | |
外壁 | 高性能グラスウール16kg品 90㎜ | 2.368 | 0.44 | |
床 | 押出法ポリスチレンフォーム3種bA | 2.321 | 0.48 |
4.サッシの性能 |
サッシにも色々種類があります。枠の種類によって断熱性能が違います。
また、ガラスにも種類があり、それぞれ性能が異なります。
計算が面倒なので、メーカーではひとまとめにして、
熱貫流率(U値)=1.31
とか表示します。つまり、窓も玄関ドアもメーカーのカタログを見れば一目瞭然なのです。
5.国交省モデルのサッシ性能 |
国交省の場合は、特定のサッシメーカーの製品を表示するわけにもいかないので、一般的なサッシの性能を採用しています。
場所 | 材料 | 熱貫流率U |
洋室窓 | アルミサッシ+複層ガラス(A6)(付属部材:なし) | 4.65 |
和室窓 | アルミサッシ+複層ガラス(A6)(付属部材:障子) | 4.65 |
ドア | スチールドア(ハニカムフラッシュ構造・ガラスなし) | 4.65 |
更に、各窓に「庇」が設置されていて、庇を含めてηを計算しなければなりません。(庇の必要性については別の機会に・・・)
それにしても、「U=4.6」というのは大分昔の数値です。現在はU=1.3とかの時代ですから、サッシの性能がかなり低い・・
省エネルギー基準は国交省モデルのサッシが変わっただけ |
仕様基準ガイドブックの「省エネルギー基準編」に関しては、複雑な計算をしなくてもいいように、単純にまとめてありますが、実は、サッシ以外は今までの断熱性能がそのままなのです。
場所 | 材料 | 熱貫流率U | 日射熱取得率ηAC |
有効な庇等のある窓 | 金属製建具+複層ガラス(A6) | 4.7 | |
庇の無い窓 | 金属製建具+LowーE複層ガラス(A6) | 4.1 | η=0.32(日射遮蔽型) |
ドア | 枠:金属製 戸:金属製フラッシュ構造 二層複層ガラス | 2.9 |
「庇」については別の機会に詳しくやろうと思いますが・・要は、
Low-Eペアガラスにすれば庇は要らないし計算が単純になる
という結論に達したようです。(くどいようですが、庇の必要性については別の機会にしたいと思います)
いずれにせよ、
「省エネルギー基準」は今までの国交省の標準モデルの「サッシが変わっただけ」
です。
言い換えれば、今までの国交省の標準モデルがいかに優れていたか・・を物語っているわけです。(ヨイショか?)
7.省エネルギー基準の外皮性能 |
以上を踏まえて、外皮性能の計算を行ってみます。
部位 | 外皮面積A | U | 温度差係数H | 貫流熱損失q | 損失率% |
屋根・天井 | 67.91 | 0.23 | 1 | 15.62 | 6.71% |
外壁 | 140.04 | 0.44 | 1 | 61.62 | 26.47% |
ドア | 3.51 | 2.90 | 1 | 10.18 | 4.37% |
窓 | 28.71 | 4.10 | 1 | 117.71 | 50.58% |
床 | 58.8 | 0.48 | 0.7 | 19.76 | 8.49% |
基礎(外) | 8.65m | 0.44 | 1 | 3.80 | 1.63% |
基礎(内) | 8.65m | 0.67 | 0.7 | 4.05 | 1.74% |
合計 | 308.07 | 232.74 | 100% |
それにしても、未だに熱の半分が窓から逃げています・・
気になる外皮性能の計算です。
UA=232.74 ÷ 308.07=0.76 ≦ 0.87 (5地域UA)OK
mc=7.19
mH=12.60
ηAC=7.19 ÷ 308.07 =2.33 ≦ 3(5地域ηAC) OK
ηAH=12.60 ÷ 308.07 =4.08
となり、基準をクリアしている事が確かめられました。
この外皮性能が求められれば、「精密計算ルート」での計算が可能となってきます。
例えば、サッシを高性能に上げて、設備機器のランクを落とす・・という自由度が出てくるのです。
「仕様基準」を使うと、どうしても安全側になってしまいコスト高になってしまいますが、「詳細計算ルート」を使えば
性能は確保したままで、リーズナブルな住宅の設計が可能
となるわけです。
次回は、それをやってみましょう。
次の記事へ・・
もくじへ・・
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます