べんりや日記

住まいのこと、情報発信!

標準モデルの外皮性能

2023-10-03 21:29:23 | 次世代省エネ基準
標準モデルの断熱性能を整理し、「省エネルギー基準」について考えてみます


この記事のポイントです

【結論】詳細計算ルートを使えば、リーズナブルな省エネルギー住宅を計画できる 
 1.外皮性能(UAとη)
 2.断熱材は色々あります
 3.断熱材の熱抵抗Rと各部位のU
 4.サッシの性能
 5.国交省モデルのサッシ性能
 6.省エネルギー基準は国交省モデルのサッシが変わっただけ
 7.省エネルギー基準の外皮性能
です。

 1.外皮性能 ~UAとη

「外皮」は建物の内と外を隔てる外壁や天井、床、サッシ等の「面」を指します。
各部位によって、断熱材の入れ方が異なるので、それぞれの断熱性能を計算し、建物全体の「外皮性能」(熱貫流率UAと日射熱取得率η)を求めます。

外皮のイメージ

天井(屋根)、外壁、床、サッシのそれぞれで断熱性能が違います
各部位の断熱性能を計算して、建物全体のUAとηを求めます


 2.断熱材は色々あります

天井や外壁、床に入れる断熱材には色々な種類があり、厚さや重さによって施工性が違います。
よく使う「グラウウール(GW)」にも重量(10kg品や16kg品)や厚さ(5㎝、10㎝)、普通のGWや高性能GW、固形や吹き付け等の形状の違いがあります。


色々な断熱材



床材に使う断熱材は固形の面材でカットして施工できます。


 3.断熱材の熱抵抗Rと各部位のU

外壁、天井、床の各部位に入れる断熱材の種類が異なり、厚さも違っています。
断熱材の種類や厚さによって、それぞれ熱抵抗Rが決まっています。

 外壁の断熱材R≧2.2

というのは、「Rが2.2以上の断熱材を入れなさい」という指示ですが、これは断熱材自体のRを指しています。
実際には各部位によってボードや下地の違いもあるので、「面」全体としての性能(U)を求めます。
(詳しい計算方法は別の機会に・・)

各部位に入れる断熱材と熱抵抗R、各部位の熱貫流量率U
 部位断熱材断熱材のR部位別のU
 天井高性能グラスウール16kg品 155㎜4.7090.23
 外壁高性能グラスウール16kg品 90㎜2.3680.44
 床押出法ポリスチレンフォーム3種bA2.3210.48


 4.サッシの性能

サッシにも色々種類があります。枠の種類によって断熱性能が違います。
また、ガラスにも種類があり、それぞれ性能が異なります。

サッシの種類と性能



計算が面倒なので、メーカーではひとまとめにして、

 熱貫流率(U値)=1.31

とか表示します。つまり、窓も玄関ドアもメーカーのカタログを見れば一目瞭然なのです。

カタログを見れば熱貫流率が分かります



 5.国交省モデルのサッシ性能

国交省の場合は、特定のサッシメーカーの製品を表示するわけにもいかないので、一般的なサッシの性能を採用しています。

サッシの種類と熱貫流量率U
 場所 材料熱貫流率U
 洋室窓アルミサッシ+複層ガラス(A6)(付属部材:なし)4.65
 和室窓アルミサッシ+複層ガラス(A6)(付属部材:障子)4.65
 ドアスチールドア(ハニカムフラッシュ構造・ガラスなし)4.65


更に、各窓に「庇」が設置されていて、庇を含めてηを計算しなければなりません。(庇の必要性については別の機会に・・・)
それにしても、「U=4.6」というのは大分昔の数値です。現在はU=1.3とかの時代ですから、サッシの性能がかなり低い・・

 省エネルギー基準は国交省モデルのサッシが変わっただけ

仕様基準ガイドブックの「省エネルギー基準編」に関しては、複雑な計算をしなくてもいいように、単純にまとめてありますが、実は、サッシ以外は今までの断熱性能がそのままなのです。

省エネルギー基準のサッシ
 場所 材料熱貫流率U日射熱取得率ηAC
 有効な庇等のある窓金属製建具+複層ガラス(A6)4.7
 庇の無い窓金属製建具+LowーE複層ガラス(A6)4.1η=0.32(日射遮蔽型)
 ドア枠:金属製 戸:金属製フラッシュ構造 二層複層ガラス2.9


「庇」については別の機会に詳しくやろうと思いますが・・要は、


Low-Eペアガラスにすれば庇は要らないし計算が単純になる


という結論に達したようです。(くどいようですが、庇の必要性については別の機会にしたいと思います)

いずれにせよ、

「省エネルギー基準」は今までの国交省の標準モデルの「サッシが変わっただけ」

です。
言い換えれば、今までの国交省の標準モデルがいかに優れていたか・・を物語っているわけです。(ヨイショか?)

 7.省エネルギー基準の外皮性能

以上を踏まえて、外皮性能の計算を行ってみます。

貫流熱損失qの計算
 部位外皮面積A U 温度差係数H貫流熱損失q 損失率%
屋根・天井67.910.23115.626.71%
外壁140.040.44161.6226.47%
ドア3.512.90110.184.37%
28.714.101117.7150.58%
58.80.480.719.768.49%
基礎(外)8.65m0.4413.801.63%
基礎(内)8.65m0.670.74.051.74%
 合計308.07   232.74 100%
q=A×U×Hで計算します

それにしても、未だに熱の半分が窓から逃げています・・
↓ q=A×U×Hの式はここで説明しています
U値を補正する 一次エネルギー消費量の計算(2) - べんりや日記

U値を補正する 一次エネルギー消費量の計算(2) - べんりや日記

実際の建物では各部位で熱の逃げ方が違います前回は犬小屋を例にU値を求めました。実際の建物の熱の逃げ方は屋根と壁、床で違ってきます。室内では空気の対流が起こり、天井...

goo blog

 


気になる外皮性能の計算です。

UA=232.74 ÷ 308.07=0.76 ≦ 0.87 (5地域UA)OK
mc=7.19
mH=12.60
ηAC=7.19 ÷ 308.07 =2.33 ≦ 3(5地域ηAC) OK
ηAH=12.60 ÷ 308.07 =4.08

となり、基準をクリアしている事が確かめられました。

この外皮性能が求められれば、「精密計算ルート」での計算が可能となってきます。
例えば、サッシを高性能に上げて、設備機器のランクを落とす・・という自由度が出てくるのです。

「仕様基準」を使うと、どうしても安全側になってしまいコスト高になってしまいますが、「詳細計算ルート」を使えば


性能は確保したままで、リーズナブルな住宅の設計が可能


となるわけです。
次回は、それをやってみましょう。


次の記事へ・・



U値とは? 一次エネルギー消費量の計算(1) - べんりや日記

U値とは? 一次エネルギー消費量の計算(1) - べんりや日記

U値とは熱の逃げやすさを表す値です省エネ住宅エコポイントの新築に関して、U値計算が必要となります。U値(旧Q値)は建物の外皮(屋根、外壁、床)から逃げる熱量を表し、...

goo blog

 


U値を補正する 一次エネルギー消費量の計算(2) - べんりや日記

U値を補正する 一次エネルギー消費量の計算(2) - べんりや日記

実際の建物では各部位で熱の逃げ方が違います前回は犬小屋を例にU値を求めました。実際の建物の熱の逃げ方は屋根と壁、床で違ってきます。室内では空気の対流が起こり、天井...

goo blog

 




平成30年(令和元年)省エネルギー基準の地域区分  外皮性能の基準値 - べんりや日記

平成30年(令和元年)の省エネ基準では地域区分1~8地域が見直されましたこの記事のポイント1.省エネ基準では地域区分が見直された・・2025年4月に省エネ基準適合が...

goo blog



平成25年省エネルギー基準の地域区分  外皮平均熱貫流率UAの基準値 - べんりや日記

平成11年省エネ基準ではⅠ~Ⅵ地域に分かれていた地域区分が平成25年省エネ基準では1~8地域になりました平成25年省エネ基準の地域区分細かい地域は市町村単位で決め...

goo blog



一次エネルギー消費量の計算 省エネ住宅エコポイント対応の新築工事の断熱設計 - べんりや日記

一次エネルギー消費量の計算方法の解説です新築工事で省エネ住宅エコポイントの申請を行う場合、一次エネルギー消費量の検討で等級4以上の性能が必須となります。平成25...

goo blog











もくじへ・・





コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 詳細計算ルート | トップ | 仕様基準(省エネ基準編)を... »

コメントを投稿

次世代省エネ基準」カテゴリの最新記事