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「誘導基準編」を評価する

2023-10-10 17:56:27 | 次世代省エネ基準

「誘導基準編」を「詳細計算ルート」で解析します


「ZEH水準」である「誘導基準」を評価してみます。
手順は今までと同じです。

 1.「誘導基準」の外皮性能を求める
 2.「誘導基準」の設備機器を選ぶ
 3.一次エネルギー消費量を計算&評価する
 4.誘導基準から読み解ける事
 5.世界水準を目指している日本

です。

 1.「誘導基準」の外皮性能

今まで使ってきた「国交省のモデル」に「誘導基準」の断熱性能を入れていきます。


誘導基準の断熱材


ここで特筆すべきは、壁の厚みです。

壁の断熱材の厚みが105㎜となっています。これに中空層を設けると120㎜の壁厚さが必要となります。
すなわち、関東方面で充填断熱工法を行う場合は4寸角の柱を使わないと難しいということです。

3寸柱や3寸5分柱のままだと、高性能グラスウールやロックウール断熱材ではなく、他のフェノール系(ネオマフォーム)等の仕様変更が必要となります。
また「外張り断熱工法」の採用も視野に入れる必要がでてきます。
 
 

誘導基準の開口



サッシは「YKK エピソードNEO + Low-Eペアガラス」のランクとなります。


以上の仕様から、例のごとくq値を求めていきます。

貫流熱損失qの計算
 部位外皮面積A U 温度差係数H貫流熱損失q 損失率%
屋根・天井67.910.20113.587.59%
外壁140.040.40156.0231.31%
ドア3.512.2717.974.45%
28.712.27165.1736.43%
58.80.520.721.4011.96%
基礎(外)8.65m0.9117.864.40%
基礎(内)8.65m1.140.76.903.86%
 合計308.07   178.91 100%
q=A×U×Hで計算します


上記の表から外皮性能を計算すると

UA=0.58 ≦ 0.6 (5地域ZEH水準)
MC=7.06
MH=12.45
ηAC=2.29 ≦ 3.0 (5地域ZEH水準)
ηAH=4.04

となります。
UA=0.58ですから、ギリギリでクリアしている感じがあります。

 2.「誘導基準」の設備機器

次に、設備機器を選んでいきます。

誘導基準の設備機器



上記の仕様の中から、最低ラインの設備機器を選びます

誘導基準の設備機器を選択
 設備設備器具
 冷暖房設備ルームエアコン(い)
 換気設備ダクト式第一種換気・熱交換でない
 給湯設備高効率ガス給湯器(エコジョーズ)モード熱効率86.6%以上
 給湯配管ヘッダー方式
 ユニットバス高断熱浴槽+節湯式シャワー
 照明器具全室にLED


「最低ライン」といっても、殆ど選択の余地がないくらい高効率の設備が指定してあるのが分かります。

 3.一次エネルギー消費量を計算&評価

以上の外皮性能、設備機器を一次エネルギー消費量計算プログラムに入力し、計算します。

一次エネルギー消費量計算プログラムの結果



BEIが 0.79 ですから、思ったほど高水準ではなさそうです。
「誘導」と言われる所以(ゆえん)でしょう。
逆に当社の標準で十分クリアできる水準です。

当社の標準と比較しますと

 当社   UA=0.59 BEI=0.77
 誘導基準 UA=0.58 BEI=0.79

ですから、UAをもう少し頑張れば達成できるレベルです。

「金属+樹脂サッシ(YKK エピソード)」を「樹脂製サッシ(YKK APW330)」に変更することで達成可能と思われます。

 4.誘導基準から読み解ける事

前述の数値から、「ZEH水準」(誘導基準)はZEHでも序の口のランクと位置付けられるのでしょう。

2030年以降は、この誘導基準が標準となるように準備を進めているようですが、本当のゼロエネルギー住宅となると、この程度のランクでは物足りないくらいだと思われます。
更に高水準だと住宅性能表示・断熱等級6,7のランクが用意されています。
ただし、それだけランクを上げたとしてもエネルギー・ゼロにはなりません。本来のZEHは太陽光発電システムを導入し、創エネルギーを行う必要があります。

将来、ソーラーパネルを導入して
ゼロエネルギーになるように
交換が難しい外皮性能を高めておく


というのが、現在のZEH政策の基本姿勢だと思われます。

2030年からZEH誘導基準が義務付け・・オール・ゼロ・エネルギー住宅までは程遠い道のりです。2050年までに二酸化炭素排出量を産業革命前の1.5%まで抑える事は可能なのでしょうか・・


 5.世界水準を目指している日本

住宅需要の大半を占める「6地域」が「4地域」と同等の省エネルギー水準まで要求され、義務付けされるというのは意味があると思います。

高性能グラスウールや樹脂サッシにしても、寒冷地のみでしか需要が無かったものが、関東方面でも需要が高まるとなると、圧倒的に流通量も多くなって、今まで高価で手が届かなかった製品の価格が下がって来る可能性がある。
実際には、高性能な樹脂サッシ、アルゴンガス入りの複層ガラス、高性能グラスールなどです。





ここからは、世界の省エネ基準の動向についてです。

まず、
 「ドイツって、冷房を使わないから省エネだ」
・・って言われてますが、夏だけ考えれば「正解」です。
でも、冬の暖房に使うエネルギーを考えたら日本よりも多いんです。

家庭用エネルギー消費の国際比較

野村総合研究所 各国における省エネ基準の動向より

ドイツの暖房器具でポピュラーなのは「セントラルヒーティング」です。
地下室にガスのボイラーがあって、高温の熱水を作って全館に回し、パネルヒーターを熱して室内の暖房にしています。
このボイラーを止めることなくガンガン火を焚いて熱水を作り続けることで効率を高めているとされています。
この暖房エネルギーがカウントされていないのです。
おそらく、イギリス、フランスも同様です。

アメリカなんて、石油も安いし、エネルギーが有り余ってるので、ガンガンエネルギーを使いまくってます。



そんな中、日本は真っ正直に、京都議定書の宣言を守るためにZEH政策をかかげて、ひたすら低燃費、高耐震、高耐久の高性能な住宅を目指して邁進しているわけです。

各国の外皮平均熱還流率(住宅)

野村総合研究所 各国における省エネ基準の動向より

日本の外皮性能は2013年なので平成25年省エネルギー基準のデータです。
日本は各国に比べると遅れをとっていますが、断熱等級4,5,6,7の政策指針を打ち出して次のような水準を目指しています。


日本の住宅性能表示・断熱等級の比較


ZEH水準になると、世界水準と肩を並べるくらいになることが分かります。
トップランナー水準である等級6,7に関しては世界に類を見ない水準に達する事が見て取れます。

これで10年、20年経ったら、世界でもトップクラスの住宅水準になってるんだろうけれど、あいかわらず「日本の住宅は性能が低いと言われている」と報道され続けてるんでしょうね~。




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