今の日本にとって必要な国創りの方針選択は、「トップ階層が豊かになってトリクルダウンの効果で全体に恩恵を広める政策」を採用するかである。
この方針とは対立する政策は、「底辺の勤労者階層に恩恵を厚くし、ボトムアップで全体を活性化する政策」を採用することである。
民主党政権は、「コンクリートから人へ」のスローガンのもとに、勤労者に手厚くする政権公約を掲げて政権交代した。
しかし、3年間の政権担当の期間に、働く人の「最低賃金アップ、時給1000円」の公約すら、実行できないであえなく政権交代に追い込まれた。
これは、民主党の迷走政策が原因であって、実行力不足で出来なかった『最低賃金アップ』の公約が国民から否定されたわけではない。
多くの識者が、日本の長期経済停滞の最大原因は、勤労者への所得配分、「労働分配率の低下」が原因であって、【賃金デフレ】が最大の癌である、と指摘する。
自民党政権になっても、勤労者の所得増加が急務であることは公言しているが、その政策は、大企業を豊かにしてから順番に広がる「旧来の発想の政策」だ。
どちらも底辺層の所得アップが必須であり、その手法、政策手段の違いである。
ところが、旧来の発想に縛られた経営者や経済評論家からは、「最低賃金を政府が介入して引きあげるのは経済活動のブレーキ」になると批判する。
賃金のレベルは、労働市場の需給に任せるのが正道で、政府が介入するとロクなことがない、との「自由市場化」路線を人の賃金にも広げる発想だ。
働く人の賃金までも、モノの売買と同じ発想とは、恐れ入った考え方であるが、弱肉強食の経済活動では、当然のルールであると言わんばかりである。
この理屈によって、規制緩和(非正社員の増加)で、全体に労働分配率が低下し続けたことには、何の説明も出来ないで、口を紡ぐばかりだ。
この様な旧来型の一国内の経済市場だけの理論では、グローバル経済化された成熟国の経済が成り立たないのは明確である。
アメリカ経済もEU諸国の経済も、停滞と同時に高失業率に社会不安が増大したままである。
そこだけに着目して、最低賃金を引き上げたら、各企業が生産拠点を海外に移転するのが加速する。
だから、ここは我慢をしてグローバル企業の言う通りにし、労働分配率の低下には目をつぶって雇用確保を重視すべきだと、守旧派は言い続けている。(続)