庵KM

技術屋OBの環境問題独り言

経済問題。交通問題。健康問題。そして、日本の国創り問題。快適社会問題。

税金の無駄使いは恣意的な業界優遇「エゴカー減税」にも。

2010-05-25 | 交通問題・自動車
日本の将来産業を育成することの重要性は、すでに多くの人の共通認識である。
しかし、どの産業をどのような方向へ向けて育成するかとなると、議論は深まっていない。
たとえば、自動車産業に例をとって見ても、将来へ向けての戦略構想は曖昧なままに置かれて、当面の動きと目先の問題の対応を追いかけているだけの政策が多い。
特に近年における「エコカー優遇」の政策は、支離滅裂に近い状態で、担当官庁の良識を疑う。

本日の朝日新聞(5月25日朝刊29面)に、「エコ助成、大型に甘く」の見出しで、昨年の自民党政権が実施した「エコカー減税」の隠された矛盾を指摘している。
これは、このブログで2010年1月23日に『賢くない減税の代表になっているエコカー減税』として、経済産業省の現実迎合主義を批判した内容と、同じ趣旨である。
現行の「エコカー減税」は、省エネルギー推奨の看板を掛けた「エネルギー消費奨励策」である。

事例として、ガソリン乗用車の燃費基準を見てみる。
これは車両区分毎に、燃費の目標基準値を定めたものであるが、区分は車両重量毎に区切られる。
702㎏までの乗用車は21.2km/㍑(10・15モード)で、もっとも基準値が高くなっている。
1516~1765㎏の乗用車は10.5km/㍑で、半分以下であり、重量が重い車ほど、目標燃費基準が低い状態である。
これは、省エネルギー目標を決めた当時の「経産省のトップランナー制度」で、目標燃費を数値化して、各企業にそのクラスのトップ性能の数値目標で、企業の自主努力を促す制度であった。

それが、いつの間にか、エコカーを認定する基準に横滑りして、この目標基準を上回る数値によって、減税額を算定する制度に化けてしまった。
つまり、重量が重い車は努力する目標値が低いので、達成が比較的容易であり、減税の恩恵を受けやすい制度となってしまった。
国民の目を欺く、トンでもない制度であり、その上、お話にならない抜け穴ができた。
それは、たとえば、1760㎏の乗用車を売るよりも、装備を10㎏追加して、1770㎏の乗用車として売ると、目標燃費基準が緩くなり、8.9km/㍑で良いことになる。
その有利な分をエコカー減税の恩恵で、購入者の費用負担が減ることに、貴重な税金が使われる。
より燃費の悪い乗用車を購入する様に仕向けている、「お粗末としか言いようがない制度」に化けてしまった。

昨年の4月から今年の4月までに、約250万台に約3240億円の補助金を出して、「エコカー優遇」との名目で、「エネルギー浪費車」の販売支援をしてきたことになる。
もちろん、本当にエネルギー節約になる「本物エコカー」がほとんどであるが、その抜け穴を利用して、自動車業界の利益の回復に税金を投入したとしか思えない。
経済産業省の役人に「確信犯」がいることは確実で、いつかは自動車業界に隠れ天下りをする、恩恵を期待していることであろう。

このお粗末な政策は麻生内閣の責任であるが、それを引き継いで、いまだに改革をしていないでズルズルと同じ制度で税金の無駄使いをしている、だらしがない鳩山内閣にも責任がある。

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