穴村久の書評ブログ

漫才哲学師(非国家資格)による小説と哲学書の書評ならびに試小説。新連載「失われし時を求めて」

世界の終わりとハードボイルド・ワンダーランド

2023-06-24 19:02:37 | 村上春樹

世評でも、また村上自身の後書きでも彼の初期作品「世界の終わりと、、、」との関連が言われているが、実際は第一部の前半までが類似しているだけである。第一部の結末は「世界の終わりと」は全く違う。

世界の終わり、は地下水脈を辿って主人公が普通の世界に戻る、いわば冒険小説がメインである。壁の中の都市と言うのは前半というか導入部であって地底冒険小説といえる。日本では少ないジャンルだが、欧米では地底冒険小説としてひとつのジャンルを形成している。日本ではほとんどない。翻訳されたものも少ない。

日本では題は忘れたが夏目漱石か家出少年をポン引きが引っ掛けて足尾銅山に売り渡す小説がある。漱石だけあって一応の地底冒険小説のていをなしている。題名は忘れた。それ以外日本に地底冒険小説があるのをしらない。まえにこの本を書評したときに「地底冒険小説」として努力していると書いたことがあった。

 

註、ポン引きと言うのは性的供応をする店に男性客を誘導するのばかりではない。本当は家出少年をだまして労働環境が劣悪、危険な職場に引き込む連中をいったらしい。