あと百ページのところまで読んだ。少年少女向けのファンタジー小説だな。1959年の作品だから半世紀以上前のものだ。例によって巻末の解説を読んだ。牧真司というひとだが、書評などと言うものは「褒めてなんぼ」という商売だからしょうがないが、これはディックの出世作だそうである。そこで紹介されている日本での受容過程がヘエと思ったりして面白い。かなり高く評価されている。筒井康隆なんかも一、二を争うと言っているそうだ。とても同意は出来ないけどね。もっともSFなんてそんなものだと言われればしょうがないが。
異世界への転移のきっかけはこの手の作品に多い先端機械の事故故障だ。陽子加速器が事故を起こして素人の見物人が巻き込まれる。死んだの生きたのかはっきりと作品には書いていない。巻き込まれたのは八人。
気がついたら(生死不明でも気が付くことがあるんだね)、別次元にいる。その別次元が次々と変わる。種がつきない。最初はイスラムのカルト宗教を尋ねて、呪文を唱えると傘が開いて上空に上る。宇宙まで上る。そこでは地球が宇宙の中心で太陽が地球の周りをまわっている。ようするに古代の地動説の宇宙だ。
やがて傘が落ちて地上に激突、すると別の次元へ場面が転換だ。それが何回か続くのだが、それぞれの次元で中心となる人間がいる。いずれも事故に遭った八人のうちの誰かなんだ。いわばほかの七人も世界もその時々の主役の思いのまま、なんだね。消えて無くなれと念じると無くなる。飛行機もなくなる。海もなくなる。人間もなくなる。
あと百ページで中心人物の交代が何人あるのか。落ちはどうなるのか。まだ読んでいない。