
高原の魅力を満喫した後、今度は海。
観光の最後はグリーン島だった。
グリーン島はケアンズ沖、グレートバリアリーフに浮かぶ珊瑚でできた島。歩いて1周しても1時間ほどの小さな島で、最も高い地点で標高3メートルだそうである。
ターミナル港を午前10時30分に出発。
乗り物、ことに船が苦手で船酔いを心配していたが、船内探索、撮影、みんなとおしゃべりしていて全く平気だった。デッキにスーツケースが並んでいるのは、島にもホテルがあるから。
45分で到着。席を立つ時、ふと見ると隣の席に携帯電話の忘れ物!
若者が長椅子に横になって寝ていたのを目の端に留めていた。
慌てて追いかけたが、全員背を向け混雑する通路、誰だかわからない。服装もよく憶えていない。
と、一人の青年が横を向いて大きな欠伸をした。起きぬけの眠たそうな表情をしている。
「彼だ!」と確信し、「Excuse me. Yours?」と携帯を見せると「Oh ! Thank you !」と驚いた表情。無事本人に渡すことができた。
下船後すぐにグラスボトムボートで海中の魚、珊瑚礁を見た。
もう少し若かったら、絶対シュノーケリングをしていたのに!
海中が無理なら空中!という訳でみんなでパラ・セーリングをした。
島に来る船中でツアー会社のスタッフに勧められ、「やろうか?」「やろう!やろう!」ということになったのだ。
私たちを含め5組10名、ボートに乗って沖へ。
それぞれライフジャケットを身に付け、2人1組で舞い上がる。
Kさん・Tさんは姉妹で、Zさんと私が最終組。他には金髪のカップル、日本人の若いカップル(ハネムーン?)、もう1組は金髪の女性2人で、揃ってかなりFATだった…
「彼女たちがOKなら大丈夫よね。」と、小声でZさんと話した
順番を待つ間、小さなボートでさすがに酔ってきた。船で揺られているよりパラ・セールで舞い上がった方が遥かに快適そうで、早く飛びたかった。
ずいぶん昔バリ島で一度経験したが、その時は水上バイクが牽引し、ビーチで自ら助走して舞い上がり、着陸も砂浜に駆け下りるやり方だった。
今回は船尾に付いたシートがスッと舞い上がり同位置に戻るので、恐怖心は全くなかった。
防水カメラ以外船内持ち込み禁止だったことを後で知ったが、ストラップを手首に巻きつけ空中まで持参し、撮影した。
下船後クルーズの様子を収めたCDを販売していたので、乗客自ら撮影するのは営業妨害だったらしい。
道理で船内で撮る時、係員のお兄さんがふざけたふりしてレンズを覆ったりしていた。
CDはちゃんと共同で購入したのでお許しあれ。(左下★印のある画像は購入CDより使用)
カモメになった気分で空から見るグリーン島、それを囲む巨大な珊瑚礁。挑戦して大正解だった。
スリリングなパラ・セーリングを愉しんだ後、CDが出来上がる間を利用して水中観測室からも珊瑚や魚を観察した。
長い桟橋を歩いてグリーン島上陸。
島の入口の一画にホテル、レストラン、土産物店、プールなどが集中していて、数分歩けば繁華な風景は尽き、うっそうとした密林に遊歩道が伸びている。
ちょうどお昼時。みんなでホット・ドッグと飲み物を買い、木陰のテーブルで昼食を摂った。
帰りの船は午後4時30分発。それまで別々に自由行動することにした。
別々にと言っても小さな島。小径を抜けてビーチに出ると、優雅に日傘をさしたZさんに会う。森の遊歩道を歩いていると、KさんTさん姉妹と合流する。
時計回りに森の中の遊歩道を歩いて行った。浜に出る小径が随所にあり、そのたびに出てみる。
シュノーケリングをしている人、ビーチバレーをしている人、昼寝をしている人、愉しみ方はいろいろである。
長編ミステリーでも読みながら、日がな寝そべっていたい感じだった。
人が少なくどのビーチも静かだった。しかしそれだけではない静けさが…、そうだ!珊瑚礁に囲まれているので打ち寄せる波音が無いのだ。
日差しが気になり、砂の上を歩くのに疲れると森に入る。そうして島を1周した。
ホテル前の広場に戻ると、Zさんはビールを飲みながら旅のしおりにメモしていた。Kさん、Tさん姉妹も戻ってきた。
どうやら島を完全1周したのは私だけらしい。





ここで、自分にとってこの旅最大のアクシデントが!
ソフトクリームでも食べようかとバッグを覗いて、カメラが無いことに気づいた。
中身を全部出してみたが無い!最後に使ったのは…、広場の隅のベンチで画像確認した時だ。15分以上たっている!
走ってそこに行ってみたが無い。カメラ本体より、旅の初日からの画像を失うことの方がショックだった。
すると、「カメラを探しているんじゃないですか?」と背後から女性の声、しかも日本語で。振り向くと2人連れの女性がいた。
「絆創膏を貼ったカメラ、インフォメーションに預けておきましたよ。」
「ありがとうございます!」
シーフード・レストランで落としてから、バッテリーの蓋を絆創膏で留めて使っていた(現在もそのまま)。
取り急ぎインフォメーション・センターに駆けつけた。
「I lost my camera.」「O.K.」と係員がカメラを差し出した。「One dollar.」
「I see.」と財布を出すと、「No. Joke.」係員はニヤリと笑って渡してくれた。
冷静だったら落し物の引き取りが有料なのは変だと思っただろうが、無事戻った嬉しさで見事に引っかかった。でも愉快だった。気分は10ドル払っても惜しくなかった。
改めて届けてくれたお二人の所に戻ってお礼を言った。
「お礼にせめてビールかジュースでも。」
「いえ、もう船の時間なので。」
「同じ船です。どちらから?」
「広島からツアーで。」
戻ってきたカメラでお二人を撮ったが、ここを見てくれることはないだろう…。
どうもありがとうございました!
「船で携帯の忘れ物を届けたお返しよ。」三人に言われ、確かにそうだと思った。
桟橋で船を待つ間、三人の乙女は申し合わせたように同じポーズでグリーン島を見つめていた。その背中は同じ想いを語っていた。
船中で、カメラを拾ってくれたお二人がいないか見まわしたが見当たらなかった。
ビーチで立ち話した日本人青年も同じ船だと言っていたが、見当たらなかった。一期一会の縁。


ケアンズに戻ると町は黄昏。俄かに旅の終わりを実感した。明日は日本に帰る…。
私たち4人だけと言いながら、港までの送り迎えをMさんにしていただき、トラブルの起きようがなかった

最後の夕食はMさんの手料理でグリルチキン。デザートのチョコレート・ムースも手作りだった。コアラのクッキーがさりげなく添えられ、器も和の食器を上手に使って、目にも舌にもmarvelous!