
1stステージを勝ち上がった3名は、お題は変わらずに新たな俳句で対戦した。
優勝 歌舞伎揚げの 家紋三枡や 竜天に 梅沢富美男(永世名人)
【自 解】歌舞伎揚には歌舞伎役者さんの家紋が刻印されている。
ほとんどが丸い煎餅だが、市川團十郎さんところの家紋は四角い枡なので煎餅も四角。
非常にレアなので、袋にこれがあったらラッキーとのこと。
上五に「の」はいらないと思われるかもしれないが、調べが良くなるので敢えて六音にした。
【解 説】長い季語「竜天に昇る」は、春になると淵に潜んでいた竜も天に昇っていくかのようだという、中国の伝説に由来したもの。(対して「竜淵に潜む」は秋の季語)
「竜天に」で止め余白を残すことで、三枡のおうちの隆盛を祈るご挨拶句のような味わいになっている。いかにも粋ではないか。
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花曇 ため息代わり フエラムネ 犬山紙子(特待生1級)
【自 解】春曇りの憂鬱な気分の日、将来のことなど考えてため息をつきたいところ、フエライムをピーと吹いて気分を変えようと思った一句。
【解 説】気分が伝わって来るいい句だが、上五で切れ、中七も軽く意味の切れ目があって、この調べ(3段切れ)が損している。
上五中七をつなげるなら。中七下五をつなげるなら。
添削 花の日の ため息代わり フエラムネ
花曇 ため息めける フエラムネ
【自 解】YouTubeで、長距離フェリーに乗って一人旅する動画が好きでよく見ている。
その一人旅をしている人は、自分が乗っているフェリーと逆の航路から来てすれ違う「反航」を楽しみにしている。
シーフードヌードルを食べながら反航を見ている状況を詠んでみた。
【解 説】「春夜のハンコウ」を耳で聴くと思春期の反抗のようだが、「反航」の文字を見て意味がわかると、旅のオタクみたいな人物が浮かび上がってくる。
反航を楽しみたいために甲板でシーフードヌードルを食べているのではないか。
そういう気分が伝わってくる面白い取り合わせだった。
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1stステージの11位以下もTVerで順位発表と添削があった。
自解はなくナレーションで要約されていた。
11位 ポッキーも 春もボートと 浮いている 春風亭正吉(特待生3級)
【 N 】若い男女がボートの上でポッキーを食べている姿を詠んだ一句。
【解 説】発想は楽しくて面白い。
しかし「も」「も」「と」という助詞の使い方がこれでいいのだろうかと悩まされた。
作者の意図を聞いてないので「私ならば」ということになるが、例えばすべて「と」でつないで恋の気分も入れると面白い句になる。
添削 ポッキーと 恋とボートと 春と雲
12位 モノクロの桜に グリコの赤い箱 立川志らく(名人8段)
【 N 】幼少期、花見に行った時のグリコのキャラメルの思い出を詠んだ一句。
【解 説】「モノクロの桜」となると記憶っぽいイメージで、季語「桜」の鮮度が心配だが、追憶の後継として浮かび立っている。
惜しいのは「に」。これが不要だった。
添削 モノクロの桜 グリコの赤い箱
13位 馬連かワイドか エクレア喰む春夜 皆藤愛子(名人6段)
【 N 】競馬予想中に必ずエクレアを食べる週末の日常を詠んだ。
【解 説】惜しいのは一点、「喰む」という動詞がいらなかった。
添削 幽馬連かワイドか 春の夜のエクレア
これで食べているのは否応なく分かる。
14位 たんぽぽや ヘッドロココと 通学帽 森迫永依(特待生2級)
【 N 】ビックリマンチョコに付いているシールを持って通学していた幼少期の思い出。
【解 説】「たんぽぽ」と「ヘッドロココ」の取り合わせは楽しい。
しかし「ヘッドロココ」が出た瞬間に子どもだと分かるので、「通学帽」はない方がよかった。
15位 ポッキーポリポリ 受験子スパークす 中田喜子(名人10段)
【 N 】勉強中にポッキーで一息つき、やる気スイッチを入れる状況を詠んだ一句。
【 N 】勉強中にポッキーで一息つき、やる気スイッチを入れる状況を詠んだ一句。
【解 説】カタカナをいっぱい入れて揃えるという意図は意欲的だったと思う。
しかしポッキーに対してポリポリは少し安易。その部分こそ工夫して欲しい大事な点だった。
16位 飛花の夜や 鴇羽(ときは)ひとひら 親子丼 的場浩司(特待生2級)
【 N 】舞い散る桜の花びらが、食べていた親子丼に落ちた瞬間を詠んだ。
【解 説】入れたい言葉が多すぎた。「夜」を諦めていただけるなら、
添削 親子丼に 飛花のひとひら 鴇羽色
とすると調べがゆったりと流れる。調べと内容を工夫していただきたい。
17位 フルーチェの ミルク増し増し 草萌や 馬場典子 (特待生1級)
【 N 】大好きなフルーチェをたくさん食べたくて、多めに牛乳を入れて作った状況を詠んだ。
【解 説】下五に詠嘆の「や」を付けると俳句の型が不安定になり、バランスがとりにくい。
また「増し増し」の表現もリズムがあって楽しいが、借り物の感じがするのでひと工夫の余地あり。
このままの形で行きたかったら、「や」を使わずに着地して欲しかった。
添削 フルーチェの ミルク増し増し 草萌ゆる
添削 フルーチェの ミルク増し増し 草萌ゆる