謎めいた女主人
古いフランス映画に「ミモザ館」という作品があった。
観たと思うがよく憶えていない。
その映画のせいか、ミモザはフランスの花だと勝手に決めつけてしまっている。
そして庭木にミモザのある家を見ると、どんな人が住んでいるのか、とりわけ女主人はどんな人かとイメージを膨らませる。
故岸田今日子さんが演じそうな謎めいた女主人がいやしないか。

プリザーブドフラワーといって、生花のうちに色素を抜き、改めてオーガニック染料を吸わせたものらしい。
ドライフラワーの色褪せ、カサカサ感がなく、色鮮やかで感触も生花そのもの。
その分デリケートだが、水やりせずに(してはいけない。褪色する。)2~3年持つらしい。
ささやかでも、儀礼的な行為でも、気にかけてくれたことが何よりうれしい。

そして3月11日の東日本大震災。大津波と原発事故。
やがて2ヶ月になろうとしている今、亡くなられた方15,000人近く、未だ行方不明の方10,000人以上、避難されている方125,000 人という新聞の記事に暗澹たる思いになる。
それでも桜は咲き、若葉は萌え、季節は巡っている。
そして復興に向けて一歩一歩歩いている。
今回のことで誰もが何かを感じ、何かに気づき、何かを学んだ。
被災直後に瓦礫の中でインタビューを受けていたお年寄りの男性の言葉が印象に残っている。
「流された家の軒先に500個ほどのチューリップの球根を吊していました。来年の春、そこここで咲くでしょう。」
その横顔は不屈の表情だった。
日本は人も自然も美しい。