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夢枕獏著『大江戸釣客伝 上』講談社 2011.7.27 第1刷
1,600円+tax
おススメ度:★★★★★
かって、時代小説において釣り談義を題材にした小説というものにお目にかかった事が無い。そんな江戸時代における釣りにまつわる物語をなんとあの夢枕獏氏が描いたもの。
ただし、一読してすぐに分かるのであるが、単に江戸時代の釣り師を描くといったものではなく、釣り談義がいつしかこの時代の徳川綱吉治世の裏面をするどくえぐり出していく。
また江戸時代の遊行文化といったものも語られ非常に興味深い。
この時代小説に登場する主人公は津軽采女(うぬめ)という津軽家四千石の旗本でありながら小普請組で無役。暇にあかせて家臣の者から釣りの手ほどきを受けて次第に釣りの魅力に取りつかれることになる。
更にサブの主人公たる芭蕉の弟子其角、絵師の朝湖がおり、彼らの周辺には紀伊国屋文左衛門、吉良上野介、加えて水戸光圀公が登場して物語の厚みを増している。
何より面白いのは江戸時代の釣りが(今回の対象魚がキスやハゼといった小物が主体で、たまに鯛やスズキといったやや大きめの魚も加わるのだが)今日の釣りと大して変りなく行われていたこと。それは釣り船を雇っての釣り、海岸からの釣りにおいても各人のタックル(竿や針)へのこだわり具合が現代人のそれと比べても引けを取らないほど熱心であったこと。
この時代の遊び人である其角と朝湖の釣りはほぼ完全に遊びのひとつとしての釣りであるのに比して津軽采女(うぬめ)のそれは“釣りとはなんぞや”“釣りの面白さはどこから来る?”といったやや哲学的思索へ誘うのであった。
そんな彼らに衝撃的な出来事が起こるのであった。それは将軍綱吉の「生類憐みの令」が当初犬や馬が対象であったが、ついに魚介類にまで及び、果ては漁師以外魚を釣ってはいけない条例が発布されたのであった。
とにかく釣りの場面は出てくるものの、それをきっかけにサスペンス調の物語が進行し、釣りをするもの、釣りをしないもの、そんなことは関係なく物語に引き込まれる構成となっている。
1,600円+tax
おススメ度:★★★★★
かって、時代小説において釣り談義を題材にした小説というものにお目にかかった事が無い。そんな江戸時代における釣りにまつわる物語をなんとあの夢枕獏氏が描いたもの。
ただし、一読してすぐに分かるのであるが、単に江戸時代の釣り師を描くといったものではなく、釣り談義がいつしかこの時代の徳川綱吉治世の裏面をするどくえぐり出していく。
また江戸時代の遊行文化といったものも語られ非常に興味深い。
この時代小説に登場する主人公は津軽采女(うぬめ)という津軽家四千石の旗本でありながら小普請組で無役。暇にあかせて家臣の者から釣りの手ほどきを受けて次第に釣りの魅力に取りつかれることになる。
更にサブの主人公たる芭蕉の弟子其角、絵師の朝湖がおり、彼らの周辺には紀伊国屋文左衛門、吉良上野介、加えて水戸光圀公が登場して物語の厚みを増している。
何より面白いのは江戸時代の釣りが(今回の対象魚がキスやハゼといった小物が主体で、たまに鯛やスズキといったやや大きめの魚も加わるのだが)今日の釣りと大して変りなく行われていたこと。それは釣り船を雇っての釣り、海岸からの釣りにおいても各人のタックル(竿や針)へのこだわり具合が現代人のそれと比べても引けを取らないほど熱心であったこと。
この時代の遊び人である其角と朝湖の釣りはほぼ完全に遊びのひとつとしての釣りであるのに比して津軽采女(うぬめ)のそれは“釣りとはなんぞや”“釣りの面白さはどこから来る?”といったやや哲学的思索へ誘うのであった。
そんな彼らに衝撃的な出来事が起こるのであった。それは将軍綱吉の「生類憐みの令」が当初犬や馬が対象であったが、ついに魚介類にまで及び、果ては漁師以外魚を釣ってはいけない条例が発布されたのであった。
とにかく釣りの場面は出てくるものの、それをきっかけにサスペンス調の物語が進行し、釣りをするもの、釣りをしないもの、そんなことは関係なく物語に引き込まれる構成となっている。
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