山本一力著『銭売り賽蔵』集英社 2005.2.28初版 1800円+tax
オススメ度★★★☆☆
山本一力氏の江戸経済ものの系譜となる作品だろうか。先ず「銭売り」とは何ぞや?ということから始まる。
江戸幕府によって「金座」や「銀座」が開かれたことはほぼ誰もが知っていることだろう。テレビや映画の時代劇などを観ていると「小判」がよく出てくるが、これは大店や殿様の世界で流通する貨幣であって、一般の庶民が日々使う貨幣単位ではない。
市井の人々が必要とするものは、小判や銀のつぶではなく、「銭座」で造られる銅銭や鉄銭である。
主人公の賽蔵は彼の父由蔵の代から銭売りの稼業を受け継いだ。銭売りは「銭座」から直接仕入れが出来るものと卸しを介して行うものの二つに別れる。
賽蔵の父由蔵はその人柄を見込まれ、「銭座」から直の仕入れが出来るようになっていた。
銭売りはその日の相場によって、「一両小判」「一分金」「二朱金」の金貨や「丁銀」「豆板銀」などの銀貨と町民が普段遣う「文銭」との両替を行う。
ある日賽蔵は自分が仕入れる「深川銭座」とは別に金座が後押しする「亀戸銭座」が近直に開かれる噂を聞く。「深川」は日に30貫の鉄銭を鋳造するのだが「亀戸」はその5倍、150貫の製造能力を持つといわれている。そうなれば明らかに「亀戸」のほうに軍配が上がろうというものだ。
ここから賽蔵とその11人の配下及び賽蔵が仕入れる「深川銭座」と「亀戸銭座」の攻防戦の火蓋が切って落とされる。
物語の半分以上は「亀戸銭座」との競合が語られるのであるが、そのほかにも賽蔵の顧客の新規開拓の話やら江戸の火事に纏わる人情話やら賽蔵の恋についても語られるのであるが、ちょっと物語が散漫になってしまった嫌いがある。
本編の骨子は「身寄りやらカネやらを失う怖さを持たないものが、高いこころざしを支えに生きることの強さ」を描くことにあり、主人公、賽蔵の生き様を活写しており読後感は爽やかである。
オススメ度★★★☆☆
山本一力氏の江戸経済ものの系譜となる作品だろうか。先ず「銭売り」とは何ぞや?ということから始まる。
江戸幕府によって「金座」や「銀座」が開かれたことはほぼ誰もが知っていることだろう。テレビや映画の時代劇などを観ていると「小判」がよく出てくるが、これは大店や殿様の世界で流通する貨幣であって、一般の庶民が日々使う貨幣単位ではない。
市井の人々が必要とするものは、小判や銀のつぶではなく、「銭座」で造られる銅銭や鉄銭である。
主人公の賽蔵は彼の父由蔵の代から銭売りの稼業を受け継いだ。銭売りは「銭座」から直接仕入れが出来るものと卸しを介して行うものの二つに別れる。
賽蔵の父由蔵はその人柄を見込まれ、「銭座」から直の仕入れが出来るようになっていた。
銭売りはその日の相場によって、「一両小判」「一分金」「二朱金」の金貨や「丁銀」「豆板銀」などの銀貨と町民が普段遣う「文銭」との両替を行う。
ある日賽蔵は自分が仕入れる「深川銭座」とは別に金座が後押しする「亀戸銭座」が近直に開かれる噂を聞く。「深川」は日に30貫の鉄銭を鋳造するのだが「亀戸」はその5倍、150貫の製造能力を持つといわれている。そうなれば明らかに「亀戸」のほうに軍配が上がろうというものだ。
ここから賽蔵とその11人の配下及び賽蔵が仕入れる「深川銭座」と「亀戸銭座」の攻防戦の火蓋が切って落とされる。
物語の半分以上は「亀戸銭座」との競合が語られるのであるが、そのほかにも賽蔵の顧客の新規開拓の話やら江戸の火事に纏わる人情話やら賽蔵の恋についても語られるのであるが、ちょっと物語が散漫になってしまった嫌いがある。
本編の骨子は「身寄りやらカネやらを失う怖さを持たないものが、高いこころざしを支えに生きることの強さ」を描くことにあり、主人公、賽蔵の生き様を活写しており読後感は爽やかである。
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