min-minの読書メモ

冒険小説を主体に読書してますがその他ジャンルでも読んだ本を紹介します。最近、気に入った映画やDVDの感想も載せてます。

横山秀夫著『クライマーズ・ハイ』

2008-10-09 20:19:01 | 「ヤ行」の作家
横山秀夫著『クライマーズ・ハイ』文春文庫 2006.6.10第一刷 629円+tax

オススメ度★★★★★

この作品は原作を読む前にテレビ・ドラマ化されたものを観たが故に今まで読み損なってしまった。
原作を先に読んでおかなかった事を激しく後悔した。
著者横山秀夫氏の作品は「半落ち」ほか2,3作しか読んでいない。いずれも警察モノである。鼻からこの作家は自らの職歴(多分“サツ廻り”の記者上がりだろうと)を生かした作家なのだろうと勝手に決めてかかったところがあった。
著者が群馬の地方紙「上毛新聞」の元記者であることを巻末の“解説”で知り、「ああ、この作家はこれが一番書きたかった作品なんだろうな」と確信めいたものを感じた。
それほど地方紙の会社組織、中央紙との戦いと負い目、などなどに詳しく、普通の作家が単に取材した程度の内容ではないことが容易に理解できる。

1985年の日航ジャンボ機が羽田を飛び立ち大阪に向かう途中、隔壁の破壊が原因で操縦不能に陥り、当時流行語にもなった“ダッチロール”を繰り返しながら群馬県と長野県の県境に近い御巣鷹山に激突した。航空機事後としては世界最大級の大惨事となったニュースは未だに記憶に生々しく残っている。。

これが「もらい事故」みたいなものとは言え、降って湧いたような未曾有の大事故に遭遇した地方紙の騒ぎたるや想像に難くない。
齢40近くなった主人公悠木は気楽な遊軍記者からいきなり「日航機墜落全権デスク」に局長から指名される。
この瞬間から悠木のとてつもない戦いが始まる。その様相はまさに戦場であった。

悠木は幼い頃の屈折した家庭環境の影響のせいで今も息子への対応に戸惑っている。職場ではこれはサラリーマン生活を10年もやった者にとっては誰しも味わうであろう社内の組織との軋轢。
本編ではかなりデフォルメされた表現かも知れないが社内での社長や上層部、他セクションとの激突は胸にせまるものがある。
本編は家庭を持つ男の生き様と報道姿勢に係わる真摯な葛藤を描く男の、熾烈な戦いのドラマである。
内容が熾烈であるが故に読後のカタルシスは形容しがたい!





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