min-minの読書メモ

冒険小説を主体に読書してますがその他ジャンルでも読んだ本を紹介します。最近、気に入った映画やDVDの感想も載せてます。

西木正明著『ウェルカム・トゥ・パールハーバー(上・下)』

2009-03-11 10:32:58 | 「ナ行」の作家
西木正明著『ウェルカム・トゥ・パールハーバー(上・下)』 2008.12.10
第1刷 各2,000円+tax

オススメ度★★★☆☆

真珠湾攻撃の真の首謀者、ウィリアム・ワイズマンとは何者か!?
スターリン、ヒトラーをも翻弄する大英帝国MI6の元アメリカ支部長が、アメリカとイギリスの国益の為日本を罠にかける日米交渉を仕掛けたのだ・・・・・

この日米交渉なるものがクセモノで、そもそも決裂することを前提にシナリオが書かれ、日米とも民間主導の国家間交渉を始めたのだ。
当初は日本側の立場に立った見かけ上は極めて友好的な草案が、ある日を堺に内容が180度展開し日本が交渉を蹴っ飛ばすしか選択肢のない方向へ導いてゆく。この間独英停戦協議やドイツのソ連侵攻の可能性が色濃く日米の関係に影響を与え、各国間のエスピオナージは最高潮を迎える。
いづれにしても当時の日本の諜報機関の稚拙さが、米英ソ連との情報戦に完璧に敗れ去った、というのが歴史の事実であろう。
いや、単に諜報戦に敗れたというばかりではなく、日本には国家を担う政治家がおらず、また確固たる政治思想がなかった。それ故に軍部の独走を抑えきれず無謀な戦争に突入し国を滅ぼしたといえる。

1941年12月8日、日本海軍がパールハーバーを奇襲攻撃したのだが、これをアメリカ側は事前に知っていたのでは?という説がある。
いかにも“陰謀説”のように思われるかも知れないが、“状況証拠”から言えばなかなか信憑性に富んだ説ではなかろうか。
だが、確証を残すほどアメリカもドジではない。いずれはケネディ暗殺の真実同様、その歴史的真実が明らかにされるやも知れないが自分はそれまで生きている可能性はない。それで真実を推論するしかない。

上下巻合わせて千ページを超える大作である。NY、ワシントンDC、東京、ホノルルその他で繰り広げられる世界情勢の分析の描写及び日米交渉の裏事情の分析場面はいかにも冗長である。
作中二人の日本陸軍所属の天城大佐と江崎大尉がNYに乗り込み活躍するが、これはあくまでサシミのツマでしかない。
後半、ぐっと胸に迫るシーンがある。それは日本の行く末がどうのこうのではなく、あくまでも国家という化け物に翻弄された男女の個人的生き様に感動するのだ。

ところで真珠湾攻撃が米国の策略に乗せられた結果だという、いわゆる米国の“謀略論”は目新しいものではないが、本作品中に登場する元MI6アメリカ支部長、ウィリアム・ワイズマンを調べてみるととんでもないバックグランドが浮かび上がる。
彼が日米開戦前に所属していたクーン・レープ商会は実在の会社であった。
同社のルーツはロスチャイルドにも繋がるユダヤ資本で、後にリーマン・ブラザーズ・ホールディングスとなった会社である。ク-ン・レープ商会は次にリーマン・ブラザーズ・クーン・レープとなるのであるが、この時にはもう今で言う“産軍複合体”みたいなものを目指していたようだ。
こうした背景を考えると、米国は「自由と民主主義」をファシズムから守るという大義名分の陰に、既にその後の世界支配を目論むシステムの構築を始めていたと言える。この実態は米の“ネオコン”に象徴され、9.11同時多発テロ以降我々の眼前にその正体が暴かれた。
昨年のリーマン・ブラザーズの破綻は上記の世界支配システムが崩壊し、米の一極支配が終演する兆しの発端となるのか興味深いところだ。


それと作中登場するソ連のダブルスパイでは?と目される人物、通称エコノミストとは実在の人物であったのであろうか?あのY.Sのことであろうか?最後の最後まで謎として残された。


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