min-minの読書メモ

冒険小説を主体に読書してますがその他ジャンルでも読んだ本を紹介します。最近、気に入った映画やDVDの感想も載せてます。

そして粛清の扉を

2006-09-03 17:09:46 | 「カ行」の作家
黒武洋著『そして粛清の扉を』新潮社 2001年1月

本の題名によっては「うむ、ちょっと読んでみようか」と思う作品がいくつかある。本作もその中のひとつだ。
だが生来ホラー・サスペンスというジャンルがあまり好きではないため手に取ることはなかった。先日たまたまB○○Kオフでみかけやはりこの“タイトル”のせいでとうとう手にした次第。
さて、本作は読み始めてすぐに「バトルロワイヤル」よりも質が低い作品ではないのか?と思わせる書き出しでちょっと前途が危ぶまれた。
「粛清」を始めた女教師のイメージと駆使する武器、技があまりにも現実から乖離しているのでは?と思い始めたのだ。だが、ここはちょっとがまん、どころか最後までがまんし続けなければならなかったのだが・・・・ま、最後にはある種のドンデン返しでちょっとは納得できるが充分な書き込みではない。

この作品を読んだ全国の教師、特にあまりに教育の場が荒んでいる環境で教鞭をとっている現職の教師の何割かは大いに“溜飲を下げる”思いで読んだかも知れない。
この作品では「よくもよくもこんなに酷い生徒を一クラスに集めたもんだ」と思われ、いかにも小説世界のお話だなとは思いながらも、こんな連中は確か周りにもいるよな、という現実感もあり
「更正なんて一かけらも望めない連中」の最適な判断は女教師の言うところの「緊急処置」でこの世から消えてしまうのが世の為人の為、最良の策である、と自分でも納得、同意しちゃうところが恐ろしい。
世間一般のモラル基準からいうと完全に逸脱してはいるものの、読者の心の中で大いに共感を呼ぶところに現代社会の病巣の根の深さが思い知らされた気がする一篇だ。


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