min-minの読書メモ

冒険小説を主体に読書してますがその他ジャンルでも読んだ本を紹介します。最近、気に入った映画やDVDの感想も載せてます。

REQUIEM FOR AN ASSASSIN

2008-06-03 11:27:31 | 「ナ行」の作家
Barry Eisler『REQUIEM FOR AN ASSASSIN』Penguin Group(USA)$7.99

オススメ度 ★★★★★

ドックスは前回レインと共に日本のヤクザから強奪した金を元に、かねてからの願いの通り、インドネシアのバリ島の田舎にコテイジを建て優雅な日々を送っていた。
しかし、戦士の休息は短いものと相場は決まっている。
ドックスは不覚にも元CIAヒルガーの手下に補足されてしまったのだ。
ヒルガーのレインに対する憎しみは大きく、けっして忘れ去ることなどできないほどのもの(実際、レインとドックスは彼の部下2名を殺したし、彼のビジネスに多大なるダメージを与えたことは事実)であった。
ヒルガーは、レインのバディであり今や数少ない彼の友人のひとりであるドックスを人質にとることによって、レインをおびき寄せ抹殺するつもりであった。
ヒルガーはレインに対し、彼が指名する3人のターゲットを暗殺することを指示した。
この暗殺を遂行しない限り、ドックスの命はないものと思えと。レインにはこの要求に従うほか選択肢はなかった。
だが、ヒルガーはこの暗殺の背後に更なる巨大な陰謀を持っていたのだ。

本編ではレインの暗殺技術が存分に発揮され、読者を唸らせる。特に彼の場合「自然死に見せかけた暗殺」という際だった暗殺技術を持っているのである。
舞台はバリ(インドネシア)、サイゴン(ベトナム)、アメリカ西海岸、ニューヨーク・シティ、シンガポール、ロッテルダム(オランダ)そしてパリとめまぐるしい。
はたしてレインは要求された暗殺を果たし、ドックスを救うことができるか?
また背後に隠された更なるヒルガーの陰謀とは何か?全編を通じ、息もつかせないプロットが展開する。

一方、ハデなアクションばかりではなくレインの内面の葛藤が描かれる。それは時に切なく哀愁に満ちたものとなっている。
特に今やレインの手の届かない存在となってしまったミドリと息子への想い、そしてデリラとの関係など、読者も切ない気持ちでいっぱいになる。
さて、シリーズも6作目を迎え、そろそろ暗殺者ジョン・レインの物語も手詰まり状態を迎えたことは否定できない。
本編を読了し、この先本シリーズは続くのであろうか?というのが今気がかりでもある。



余談:
邦訳されるのを待ちきれずに前作『THE LAST ASSASSIN』を読んだ。更に第6作の存在を知るにいたりこれも待ちきれるものではなくなってしまった。
とにかく読みたい!という切なる思いで本編に取りかかったものの、やはり読み進めるには多大の努力が必要であった。読むスピードも邦訳物に比べ数倍かかり、時に何時間も読むと頭痛がしてきたこともあったが、内容の素晴らしさが全ての苦痛を排除した感がある。
また、今までは通常の英和辞典で分からない語彙を調べながらの遅々たる作業をしていたわけだが、今回は後半から「電子辞書」の助けを借りることによってかなり単語の検索が早まったことをご報告しておきたい。やはり文明の利器は凄いものだ。