min-minの読書メモ

冒険小説を主体に読書してますがその他ジャンルでも読んだ本を紹介します。最近、気に入った映画やDVDの感想も載せてます。

HAMMERED―女戦士の帰還

2008-06-08 16:54:29 | 「ハ行」の作家
エリザベス・ベア著『HAMMERED―女戦士の帰還』ハヤカワ文庫 2008.3.25 820円+tax

オススメ度 ★★☆☆☆

時は2062年、ジェニー・ケイシーは米国東部のハートランド市のうらびれた下町の一角に暮らしていた。
彼女は25年前、南アでカナダ軍の輸送車運転中アンブッシュに会い車は大破、彼女自身も左半身を失うほどの重症を受けたが軍のサイボーグ化手術によって一命を取り留めた。
その後ジェニーは優秀なサイボーグ戦士としていくつもの戦功によるメダルを授与されたが、今はこの下町で中古車修理をしながら老朽化したサイボーグ器官の痛みを酒とコーヒーでなだめながらひっそりと暮らしていた。
いわば隠遁生活をしながら過去から縁を断ち切るような人生を送っていたのだが、再び自分を過去の世界に呼び戻そうという密かな策動を感じさせる事件が身辺で起き出した。
その中に自分の実の姉の存在を感じ、更に自分のサイボーグ化手術を行ったあのヴァレンズ大佐の影を強く感じたのであった。
一体、彼らは今更自分に何をさせようというのか?

地球は温暖化現象によって生態系が壊滅的に破壊され、軍事、経済大国であったアメリカは内紛状態で完全に崩壊を遂げた。
今、世界を、特に宇宙開発の軍事大国となったのはカナダと中国である。どうも自分はこの宇宙開発の秘密軍事作戦に関与されそうな感じがするのだが・・・

このあたりの世界状況の設定がなかなか面白い。ジェニー・ケイシーを取り巻く人物が皆、一癖も二癖もありそうな連中ばかり。
物語はジェニー・ケイシーの現在と過去、その他バーチャル世界での出来事が断片的に語られ、最初は何が何だかわからず、ある程度「忍耐」が強いられる。後半から徐々に有機的に結合してゆく雰囲気があるのだが。
このシリーズは三部作とのことで第一作目はある意味プロローグと割り切って読むしかないのかも。これは次に進まねばならないだろう。

全体の印象としては単なるSFというのではなく、謎解きがかなりあるサスペンスとも言える構成となっている。
またタッチは硬質なハードボイルドだ。